佐渡に渡ったDさん夫妻、Kさん夫妻から、佐渡のお米、餅、酒、魚などがいっぱい送られてきた。
二家族とも、人生の最後を阿武隈の山村で終えることを決意し、ふさわしい土地を探して川内村にやってきて、退職金や工場を売却したお金で土地を買い、立派な家を建て、農業を始めていた。
「きのこ里山の会」という会を作って、農業体験や自然観察などのイベントも数多くやってきた。
川内村だけでなく、楢葉町や葛尾村、飯舘村、いわき市など、阿武隈エリアで志を同じくする人たちとの情報交換や交流を進めてきた。
3.11直後、Dさん夫妻は炊きだしに参加して富岡町から逃げてきた人たちの面倒をみていた。
パンを焼いて役場に届けたら、入り口のドアを即座にピシャッと閉められてしまったという話が強烈だった。
爆発直後、放射能汚染を知っていた人と知らされなかった人の差……。
二家族とも、ほぼ僕らと同じくらいの時期に川内村に移住してきたが、数千万円のお金を注ぎ込んでいるはずで、使った金はうちとは桁違いだ。
それを捨てて佐渡で再出発をする決意は大変だったと思う。
Dさんは「今思えば、川内村での7年間は、佐渡で暮らすための準備期間、修業時間だったのかもしれません」と言うが、そういう心境になるまでの葛藤は大変だっただろう。
数千万円を捨てて、海を渡り、「島民」になる決意をしたいちばんの理由は、「川内村ではもう安心して土をいじれない。農業ができない」ということだ。
新天地で田植えの準備をしている写真も添えられてあった。すっかりかの土地に溶け込み、さまになっているのが、なんとも複雑な気持ちになる。
Kさんとは、何度か一緒に福島県内に移転先を探して回った。
汚染が低かった南の方向、矢祭町では役場を訪ねて空き家物件を直接案内してもらったし、塙町では議員さんの紹介で物件探しをしたが、いい場所が見つからなかった。
福島県内の不動産価格は下がらないままで、高値のまま売りに出されている。日光の空き家に行き着くまで、福島県内の物件をずいぶん見て回ったが、どれも、ここ、日光の家より高くて手が出なかった。
安い物件は、相当手を入れないと住める状態にならないようなものばかり。
大玉村の物件(650万円)を一度目をつけていたのだが、川内村よりも環境はよくなかったのでやめた。
そこが最近、売約済みになっていてびっくりした。線量は確実に川内村より高いと思う。
放射能汚染で土地を追われた人たちが、「それでも福島に住みたい」と、そういう物件を買うのだろうか。それとも都会から移住してくる人が、残された時間を考えたら放射能なんて関係ないと思って買うのだろうか。
そういえば、3.11のとき、ちょうど川内村に新居を建てている最中だった東京の人が、そのまま家を完成させ、引っ越して来たという。みんな村から出て行き、あるいは帰ってこない中で、外から家を新築して移住してくる人もいる。こういう肝が据わっている人たちばかりなら、阿武隈の未来も見えてくるのだろうか。
佐渡では、相続する人もいなくなって国が管理しているような空き家がいっぱいあるという。
『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』にも書いたのだが、血族相続以外に、行政が仲介して、そこで本気になって生活をしたい人たちに「一代限定借地権」のようなものを設定できないものか。
死んだら、親族ではなく、一旦行政に管理が戻り、また、次に済みたい人へ安価に貸与する。そうすれば、常に気力の充実した人たちがそこに住み続けるから、家も荒れないし、きれいに改築されたりもして、次に入ってくる人たちも住みやすくなる。
土地を守るのはそこで生活する人たちだ。投資目的で買い占められたり、土地を壊す事業を呼び込む行政に委ねてしまうと、取り返しがつかないほど環境が破壊されてしまう。
日本では外国人が土地を買うこともできるため、北海道の土地などは、地下水資源を狙った中国資本でどんどん買い占められているという。そんなことを許していたら、本当に大変なことになる。
尖閣諸島が個人の所有だというのも、国家安全保障上、とんでもない話だ。
この国は本当にどうかしている。
……ともあれ、うちはほんとうに軽症というか、幸せなほうだと言いきかせながら、川内村から運んできた荷物を片づけ始める。
X90はタイヤだけ持ってきた。日光市の冬も、四駆がないと厳しいから、X90はそのうち持ってくることになるだろうが、タイヤ保管だけでこれだけのスペースを食うのだなあ。この高さまで積み上げるのは、腰を一発で傷めそう。怖い↓
X90は、1年中スタッドレスのままでもいいかもしれない。
浄化槽ブロワーの音があまりにもひどいので、タイマーをつけて夜中だけ切っていたのだが、昼間もちょっと耐えられないレベルになってきたので、思いきって新品に交換した。
結果、嘘のように静かになった。動いているのかしら? と思うほど。
こういうものって、進化しているのね。