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のぼみ~日記 2020

2020/08/23

週刊喫煙室

持ち帰ってきた古い週刊誌の創刊号。強いていえば、50年、60年前の日本がどんな世相だったのか、これらの週刊誌が時代の空気感を伝えてくれるだろうが、それを娯楽としてとらえられるだけの気持ちの余裕がないのだなあ。

いちばん薄くて小さい『週刊喫煙室』というのを手にとってパラパラと中を見てみた。
こんなタイトル、現代ではありえないし、字が小さくて驚く。
でも、中身は今の週刊誌とあまり変わらない。ここ半世紀の風俗は変わっていない、というより、どんどん貧しくなっていると感じる。


こんな縦長の変型。キャッチフレーズが「見るトランジスター」。印刷面がズレていたり、活字(文字通りまだ写植が出てくる前だから、活字だったのでは?)が小さくて、かすれていたり。
20円というのは、今なら200円くらいの感じなのかな? もちろん消費税などなかった。



扉のグラビア記事は羽仁進と左幸子夫妻のお宅訪問。



「朝、めざめるとき あついコーヒーと一服のタバコが一日の健康を占う。鏡よりも正確に瞳をくまどるは、昨日の恋の甘ずっぱい首尾。 今日、ながいながい電話のあとで ひきあてる富くじ 紫の煙ふきぬけて心身ともに爽快」
……という短文で始まる。
昔なのにずいぶん仮名が多いなあ、と感心していたら、
牧羊子(文・え) 開高夫人
……とある。開高健の妻ということか。



目次。 特集①は、イブ・モンタンを日本に招聘することに成功した人の回顧録。
②は「パーティ屋」と呼ばれる商売が大学生や怪しげな大人たちの間で流行っているという記事。
現代となんにも変わらない。



ザイラーというのはスキーヤーのトニー・ザイラーのことだろう。この頃、日本ではスキーブームで、トニー・ザイラーは大スターだった。 あたしもこれは覚えている。お袋がよくザイラーの名を口にしていた。
全民放が一斉に同じ番組画面になった「ゆく年くる年」も、ここに出てくる越路吹雪、フランキー堺……といった人たちの名前も、ついこの間のことのように思える。60年も前のこととは思えない。やっぱりあたしは正真正銘のジジイなのか。



発行年が書いてない。版面が斜めにずれている。



トニー・ザイラー来日。デパートの屋上に15分姿を見せるだけで20万円のギャラだそうで。 今だと200万円くらいの感じかな。



広告も面白い。除湿器ではなく「脱湿器」。
しかもよく見ると「お手持ちのコンプレッサーに直結」と小さく書いてある。これ単体では機能しないらしい。



SKDは今ならAKBとか、なんとか坂とかですかね。 やっぱり60年経っても日本は何にも変わってない。



ロマ・グレ族と有閑マダム……。
今は、有閑マダムは希少種になって、ほとんどの既婚女性はパートに出たりして生活を支えている。
その娘たちがエンコーとかして、相手はロマグレどころか……。むしろ貧しくなっている感じだな。

「青春」に「わかさ」ってルビ振っているのも、カラオケ文化に引き継がれているのかしら。



開高健はこの頃の文壇スターだったのかな。しょーもないこと書いてる。



こういうのも何にも変わってない。というか、タレントが餌食にされる構図は今のほうがきつくなっていて、これもまた貧しくなっているのかなあ。



カミナリ族、っていう言葉、まだこの頃はあったんだね。今は暴走族も希少種になった。



この手の怪しいしかない下半身商品の広告って、今はもうないのかな。

コンパクトな判型の中に小さな活字(文字通り。当時はまだ写植とかなかったはず)がビッシリ。昔の人は目がよくて、ハズキルーペなしでもこんなの読めていたのかな。

60年以上生きてきて、60年前の世の中が今と同じようなものだった……と感じることで、言いようのない疲れを感じるのだよなあ。
週刊誌文化というのも、もうそろそろ終わりを告げるんじゃないかな。文春砲もネットで有料配信とかが中心になったりして……。
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