助手さんがまた「カメラ、カメラ」というので見に行くと、バルコニーに出るガラスドアに脱皮直後のカゲロウがとまっていた。
助手さんは最初、黄色いのと白いのが2匹、仲よく並んでいると思ったらしいが、白いほうは抜け殻だ。
こんな風にじっくり見るのは初めてかもしれない。
改めて調べてみた。
まず、これはカゲロウの中でも
「キイロカワカゲロウ」という種らしい。
体全体が黄色っぽく、前翅の前縁が茶褐色のカゲロウ。尾は3本ある。
平地・低山地の河川周辺で見られ、灯火にもよく飛来する。
幼虫は、ゆるやかな流れの、川底の石の下にひそんでいる。
(昆虫エクスプローラ)
……なるほど。
珍しいものではないのね。しかし、なんでこんなところで脱皮しているのか。緩やかな流れの川底の石の下……なんて、我が家の周りにはなさそうだが……。
それに、ここは二階。どうやってここまで登ってきたのか……。
幼虫は成熟すると、水面または水辺で羽化して亜成虫となり、さらにもう1回脱皮して成虫となる。亜成虫という形質は、ほかの昆虫類にはみられず、カゲロウ目に固有のもので、成虫とよく似た形態をもつが、性的には未熟で、飛ぶ力も弱い。また、成虫よりもやや大きく、灰色がかっており、肢や尾は太くて短く、はねは不透明である。
(略)幼虫期間は平均1年、長いもので3年を経過するが、亜成虫の時期はおよそ1日ぐらいのもので、成虫も1日程度、短い種で4~5時間しか生存できない。このように成虫期間の短いことから、はかないもののたとえに用いられ、分類階級の目の名称もギリシア語のephmeros(わずか1日の命の意)に由来する。また、カゲロウの名は、成虫になってから飛び交うさまを陽炎(かげろう)になぞらえたもので、英語のmayflyは5~6月に羽化するものが多いところから出た。
(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説より)
……へええ。「亜成虫」ねえ。初めて知ったわ。
つまり、このキイロカワカゲロウは、どこかこのへんの「緩やかな流れの川底の石の下」で1年以上過ごした後、水面か水辺で亜成虫になってここまで飛んできて、ここでまた脱皮して、その直後の状態が今目の前にいるこれ……なのだね。

しかし、成虫はピクリとも動かない。死んでしまったのか?
数時間経っても動かない。
成虫の寿命は長くて1日、短いものは数時間というのに、こんなに何時間も動かないというのは、第二の脱皮で力尽きて死んでしまったのか……。
きっとそうなんだろうなあ、切ないね。