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のぼみ~日記 2020

2020/06/20

キイロカワカゲロウ


助手さんがまた「カメラ、カメラ」というので見に行くと、バルコニーに出るガラスドアに脱皮直後のカゲロウがとまっていた。

助手さんは最初、黄色いのと白いのが2匹、仲よく並んでいると思ったらしいが、白いほうは抜け殻だ。
こんな風にじっくり見るのは初めてかもしれない。
改めて調べてみた。

まず、これはカゲロウの中でも「キイロカワカゲロウ」という種らしい。
体全体が黄色っぽく、前翅の前縁が茶褐色のカゲロウ。尾は3本ある。
平地・低山地の河川周辺で見られ、灯火にもよく飛来する。
幼虫は、ゆるやかな流れの、川底の石の下にひそんでいる。
(昆虫エクスプローラ)
……なるほど。
珍しいものではないのね。しかし、なんでこんなところで脱皮しているのか。緩やかな流れの川底の石の下……なんて、我が家の周りにはなさそうだが……。
それに、ここは二階。どうやってここまで登ってきたのか……。
幼虫は成熟すると、水面または水辺で羽化して亜成虫となり、さらにもう1回脱皮して成虫となる。亜成虫という形質は、ほかの昆虫類にはみられず、カゲロウ目に固有のもので、成虫とよく似た形態をもつが、性的には未熟で、飛ぶ力も弱い。また、成虫よりもやや大きく、灰色がかっており、肢や尾は太くて短く、はねは不透明である。
(略)幼虫期間は平均1年、長いもので3年を経過するが、亜成虫の時期はおよそ1日ぐらいのもので、成虫も1日程度、短い種で4~5時間しか生存できない。このように成虫期間の短いことから、はかないもののたとえに用いられ、分類階級の目の名称もギリシア語のephmeros(わずか1日の命の意)に由来する。また、カゲロウの名は、成虫になってから飛び交うさまを陽炎(かげろう)になぞらえたもので、英語のmayflyは5~6月に羽化するものが多いところから出た。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説より

……へええ。「亜成虫」ねえ。初めて知ったわ。
つまり、このキイロカワカゲロウは、どこかこのへんの「緩やかな流れの川底の石の下」で1年以上過ごした後、水面か水辺で亜成虫になってここまで飛んできて、ここでまた脱皮して、その直後の状態が今目の前にいるこれ……なのだね。


しかし、成虫はピクリとも動かない。死んでしまったのか?
数時間経っても動かない。
成虫の寿命は長くて1日、短いものは数時間というのに、こんなに何時間も動かないというのは、第二の脱皮で力尽きて死んでしまったのか……。
きっとそうなんだろうなあ、切ないね。

2020/06/21

一夜明け、起きて階下に降りて行ったら、助手さんが開口一番「いなくなっているわよ。飛んでいったんじゃない?」と言う。
ん? そういえば階段を降りてくるときチラッと見たが、白いほうしかなかったな。風に飛ばされたか下に落ちたかしたのだろうと思ったのだが、改めて確認してみると、抜け殻のほうはしっかりくっついているが、成虫の姿はない。周りを探しても見あたらない。
あんなに長い時間、動かないままでいるものなのだろうか。そういうものなの?
生きていて、飛んでいったならよかった。あとは残りの短い命の中で相手を見つけて子孫を残すことができるかどうか。難しそうな気がするが……。


家の中から見たところ。ここに抜け殻だけ残っている。

抜け殻も、よく見ると尾が3本なのが分かる。

ちゃんと空を飛んでいったのならいいねえ……
あのカゲロウは、なぜ我が家に飛んできたのだろう。それって、子孫を作る上では「不正解」な行動だったのではないのか?
群舞しているような中にいたほうが、相手を見つけられる確率はずっと高かっただろうに。
失敗したと思っても、あと数時間の命では、取り返しがつかないんじゃないのかなあ。それとも、仲間にまじらずに一人で飛翔することに、もっと意味を見いだせたのだろうか。

人の一生を決める一瞬、というのがある。もちろん、それは一つではない。
自分の今までを振り返ると、重要な分岐点は20代に集中している。
あのとき、あのとき、そしてあのとき……と、今はその別れ道がすべてはっきり分かる。
あそこでああだったら、社会的に成功していた(アーティストとして名を残していた)かもしれないけれど、それと引き替えに取り返しのつかない罪を犯していたかもしれない。ろくでもない人間という烙印を押されていたかもしれない。芸能人のスキャンダルなどを見聞きするにつけ、そう思う。これが自分であってもおかしくはないな、と。
社会的に失敗したことで、今、平穏な生活をしていられるのかもしれない。
それでも、あのときにまともな人間としての判断・行動ができていたら……などと思う。自分の人生だけではない。大切な仲間の人生も変わっていたはずだ。
その結果、多くの人たちに「お得な」体験、記憶を残せたはずだ。それができなかったことは本当に残念だし、情けない。
でも、所詮自分はそんな器ではなかったのだろう。失敗するように生まれついていたのかもしれない。

何をもって幸福な人生……うまく生き抜けたといえるのか。

世の中、この世界は、ほんっとにしょーもないけれど、そのしょーもない世界の中に、まだまだ見極められない、複雑で深い価値が眠っている。それを掘り起こしていくことに、生きる意味を見いだせればいい。
……そんな思いもあって、去年はこんな曲を作ったのだった……
コロナが教えた「新しい生き方」のヒントがここに?

カエルやらカタカムナやら…… 森水学園第三分校

森水学園第三分校

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このページの写真はオリンパスのStylus1とXZ-10で撮りました。たくきのカメラガイドはこちら



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