一年のうち突出してクソ暑い時期に、来年はオリンピックなんだよなあ……と、改めて呆れながら、好きな陸上競技のことをちょろちょろ調べていた。
来月はマラソン代表選考レース(MGC)だし、その後はドバイで世界陸上だからね。
そもそも世陸や五輪の標準記録を突破している日本選手はどれだけいるんだろう……と調べていたら、「ターゲットナンバー」という聞き慣れない言葉にぶつかった。
ググってみても、これ!という解説が見つからない。
いろいろな記事を読み合わせて判断すると、以下のようなことらしい。
- 世界陸連が、陸上競技にもテニスや卓球、バドミントンのような「世界ランキング」をつけて、その順位をオリンピックや世界陸上などの出場資格に含めるという改革案を進めている。しかも、世界ランキングでの順位が優先で、参加標準記録突破は世界ランキングで条件を満たせなかった選手の救済措置的な位置づけとのこと。
- ほんとは来月の世界陸上から取り入れる予定だったのが、間に合わなかったらしい。来年の東京オリンピックでは採用するらしい。
- その際、種目別に、代表として選ばれるためのランキング足切り順位に相当するのがターゲットナンバーらしい。
- 例えば、ターゲットナンバー48なら、代表に選ばれるためには世界ランキングポイントで48位以内に入っていることが望まれる、という意味らしい。
この
世界ランキング一覧は世界陸連のWEBサイトで見られるのだが、この順位というのがなかなか難しくて、我々が感じている順位とだいぶ違う。
例えば、日本選手で目下いちばんランクの高いのは新谷仁美選手の1万/5000メートルジャンルでの6位(ついこないだまでは3位だった)。
話題の大迫傑選手のマラソン、ハーフマラソンのランキングは125位で、日本人選手としては設楽悠太(9位)、服部勇馬(51位)、中村匠吾(114位)の後で福田穣と同点の125位。
福田穣という選手は、このランキング表を見るまで名前も知らなかった。
なぜこうなるのか……。
マラソンの場合、過去1年半のレース成績で得た「ポイント」の平均値でランク付けされる。大迫の場合、2018年10月7日のシカゴマラソンの3位で1327点。2018年3月24日のヴァレンシア世界ハーフマラソンの24位で1113点。平均1220点。
一方、設楽は、2019年7月7日のゴールドコーストマラソン優勝で1341点。2018年2月25日の東京マラソンの2位で1336点。平均1338点で、大迫に118点差をつけている。
ポイントはタイムや順位のほか、気象条件や大会の「格」、コースの難易度などが考慮され、複雑な計算で算出される。その結果、世界陸連の評価では大迫より設楽悠太(9位)、服部勇馬(51位)、中村匠吾(114位)のほうが評価が上で、日本ではほぼ無名の福田穣選手と同点なのだ。
ちなみにこの福田選手は、
2018年7月1日のゴールドコーストマラソン3位(2:09:52)で1254点。2018年12月2日の福岡国際マラソン7位(2:10:54)で1186点。平均1220点で大迫選手と同点。
彼らは9月15日のMGCレースに出る予定だが、このレースで1位2位は自動的に東京五輪代表内定というはずだったのが、ここに来てちょこっと水を差すようなことが言われている。
世界陸連が決めた男子マラソンの参加標準記録(2019年1月1日~2020年6月29日)が2時間11分30秒なので、上記の選手らはみんなまだ今年になってからこの記録を突破していないので、万が一、MGCの優勝タイムが2時間11分30秒より遅ければ、来年6月末までにもう一度レースを走って記録を出さなければ出場資格を得られないということになってしまうらしいのだ。
まあ、いくら気温が上がっても、台風が来ても、そこまでタイムが遅くなることはないとは思うのだが……。
世陸、五輪で期待できる種目ナンバーワンは競歩
東京五輪の出場資格を得るには、参加標準記録の他に「ターゲットナンバー」で上位ランクであることが条件ということらしいが、ターゲットナンバーという分かりづらい条件を除いても、まず参加標準記録を突破することが日本人選手にとっては難しい。

東京五輪陸上競技参加標準記録、日本記録、今年の日本選手最高記録
↑これを見ると、日本記録が五輪参加標準記録以下の種目がゴロゴロある。
ちなみに、東京五輪の男女100mのターゲットナンバーは56なので、世界ランキング56位以内に入っていることが条件になるらしい。現時点では、桐生祥秀が11位で、小池が14位、サニブラウンが24位、山縣が33位……なので、彼らが標準記録さえ突破すれば問題なく代表に選ばれる(もちろん、1か国3人までだけど)。
それ以外は、女子1万mと男子400mハードルがなんとか出場資格を得られそうだ。男子400mHのターゲットナンバーは40だが、安部孝駿選手の世界ランクは現在10位なので大丈夫だろう。
一発勝負の女子1万mのターゲットナンバーは27とかなり厳しい。参加標準記録は31:25.00。新谷がランキング6位で鈴木亜由子が20位、鍋島莉奈が23位、山ノ内みなみがギリギリの27位だが、今のところ今年以降で標準記録を突破しているのは新谷だけなのだ。鈴木、鍋島らが出場資格を得るには、来年5月末までに31分25秒を突破しなければならない。
こうして見ていくと、男子400mリレー以外、メダルはおろか、出場さえできないんじゃないの……と悲観してしまうが、さらに見ていくと、ちょっとだけ希望が見えてくる。

↑走り幅跳びの今年の記録が8m40になっているが、つい先日、アスリートナイトゲームズ・イン福井という新設の大会で日本選手権3連覇中の橋岡優輝選手(20・日大)が8m32の日本新記録(27年ぶり)、その30分後に城山正太郎選手(24・ゼンリン)が8m40の日本新記録を出した。
これによって、橋岡選手は一気に世界ランク10位、城山選手は14位に浮上。走り幅跳びのターゲットナンバーは32なので、これも軽くクリア。
さらには、競歩がすごい。

↑20km競歩は世界ランク ↓50km競歩世界ランク

なんと、20kmでは1位2位が日本選手。50kmでもトップ10に5人もいるのだねえ。
メダル確率からすれば、男子400mリレーより確実なんじゃないか。それにしてはあまり話題にならない。競歩という地味な競技ゆえの悲哀か。種目差別だよなあ。