
吽像。台座部分全体が岩山風に仕上げられており、寅吉・和平よりも江戸の「獅子山」風だ。
吽像の後ろ脚の支え部分には子獅子を絡ませており、市三郎としては「後ろ脚の支えを目立たなくする」ためには花だろうが子獅子だろうが利用してみる……という発想だったように思える。

↑吽像 ↓阿像 顔が縦長なのは寅吉の鹿島神社の狛犬をモデルにしているかもしれないが、表情が優しくなるので、和平のようなほんわかしたテイストが加わる。結果、市三郎独自の世界が醸し出されている。



真横から見ると、阿像の下は雲に見えなくもない。多分、そういう意図はないとは思うが……。

口の中の自然さ、鬣や尾の彫りの深さや柔らかさ、ボリューム感は、寅吉・和平にひけを取らない素晴らしい出来だ。


一瞬足にも見えるが、牡丹の花なんだろうなあ……。

口の中の彫り込みがすごい。これは真似しようにも並みの石工では到底無理。

花に鬣が巻き付くという、こういう表現がなんとも面白い。

この後ろ脚の格好は生物学的にはありえないものだろう。関節はどこ? で、これはまさに和平の飛翔獅子の後ろ脚そのものなのだ。そんなところまで真似してしまったのか?

後ろ脚を支えている部分に牡丹の花を絡ませて目立たなく?させている。

子獅子がじゃれつく姿は和平の石都都古和気神社の親子獅子を真似たのだろう。これは和平のほうがうまい。


「石工 岡部市三郎」の隣に「生田目佐伊助」の名があるが、なぜかその上が削り取られている。ここにどんな文字があったのか? 「石工」と彫られていたのであれば、なぜ消したのか? おそらく生田目佐伊助は台座部分を担当しているのだと思うのだが……。

