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のぼみ~日記2017たくき よしみつの日記2017


2017/11/20

鷲宮神社(佐野市犬伏上町)の佐野市最古の狛犬


もうすっかり暗くなってきた。ここが最後になるかな、と思いつつ向かったのは鷲宮神社。ここには元禄16(1703)年の狛犬がいるはず。
参道の横にクルマが一台停まっていて、境内を掃除している人の姿がチラッと見えた。
「こんばんは~。狛犬の写真撮らせてください」と挨拶しながらも、目は狛犬の場所を探している私。
入り口には小振りな江戸タイプがいるが、これは天保10(1839)年の狛犬。完全に日が落ちる前に、もう一対、元禄のほうを先に撮りたい。
奥のほう、社殿の右横に見つけたので、一直線に奥へ。
これこれこれ~


すでにあたりは暗くなっていて、いい写真を撮るには光量が圧倒的に足りない。急いでシャッターを押しまくる。

こんな感じでいる



阿像 胸に「奉寄進」の文字がはっきり読み取れる



吽像 口が欠けており、阿像よりもやや摩耗の度合が進んでいる



背中側。鬣のカールは、越前禿型に通じるものがあるが、尾のデザインは越前狛犬とはまったく別



↑ 元禄十六癸未年十一月吉日 
↓ 鷲宮大明神 廣前 一一?求(未?)願各各 成就所 再?拝? 早河□佐康

佐康という名字は存在するらしい。読みは「さこう」または「さやす」か。あるいは佐藤の「藤」の字が画数が多いのでこんな形に略して書くことがあるのだろうか。いずれにしても、佐康は名前ではなく、早河さんと佐康さんが共同で奉納したということだろう。とすれば「各々」というのも理解できる。
「早河と佐康がそれぞれ、まだ叶っていない(求める)願いが一つ一つ(残らず)成就しますように願い奉る」みたいなことだろうか?


吽像にも同じことが書かれているようだが、こちらはだいぶ摩耗している



どちらもかわいい犬、という感じ。はじめ狛犬としてもかなりユニーク



前脚がどんな風についていたのかとても気になる。地面まで伸びていたとしたら長すぎるし、ちんちんのようなスタイルだったのだろうか。下の台石?とは一体で彫られているようだが、であれば、脚の先は敢えて彫らなかったことになる。最初から縦長に設置することを意図しているわけで、それも相当変わっている。



真横から見ると越前禿型に似ているが……。この石工は越前禿型を見ていたのだろう。見て、知っている上で、単にコピーせず、さらに別のデザインを工夫したのだとしたらすごいことだ



尾がこれだけ凝っているのも極めて注目に値する。越前禿型は紐型のシンプルな尾が多いが、これは違う。鬣のカールと合わせてデザインしているセンスが素晴らしい

いや、これは本当にすごい狛犬だ。年代が古いだけでなく、この時代の狛犬として、突出してユニークなデザインなのだ。
顔も何かの真似ではなく、個性的だし、技術的にも優れている。
これは大切にしないといけないなあ。

……と、そこに掃除をしていた男性がやってきて、いっぱい講釈をしてくれた。
そもそも犬伏という地名は、ここに伝わる狒々退治伝説からきていて……云々。
猿の化け物みたいなのが悪さをしていたが、山伏が「チョッペ太郎」という犬を連れてきて退治して……。
その手の伝説は日本各地にある。犬の早太郎とかしっぺい太郎とか岩見重太郎とか。
ここに伝わるのもそのバリエーションだろう。
地元の人で、氏子総代とかなのかな。その人の話を聞きながら、犬はおそらくオオカミ犬で、その犬を使うのは九州の原住民だったハヤト族の末裔、犬飼一族……かなあ……なんて考えたりもした。
というのも、栃木にたくさんある高龗神社はオオカミ犬を使う犬飼一族と関係があるのではないか、というような話もあって、実際に、宇都宮には狛犬ではなくオオカミ像がある高龗神社もあるからだ。

犬伏の地名由来が1600年代以前からのものだとすれば、この元禄16年の狛犬は、この地に伝わる「チョッペ太郎」をモデルにしたものなのだろうか?
もしそうなら面白いのだが……。

で、辺りはすっかり暗くなってしまった。

ちなみに、ネットでいろいろ調べていたら、狛研の山田さんと阿由葉さんは5年前の10月20日に佐野市郷土博物館の山口館長による狛犬講座を聴きに行っており、その前にこの神社を訪れていたのだね。知らなかった。
奇しくもその日、僕は宇都宮のCRT(栃木放送)に出演中で、福島の話なんかをしていた。そのときの放送内容は、日記の中に埋め込んだ隠しリンクの先で聴ける……かも??


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