軟弱音楽宿
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1 音名と階名は違うものである


今の日本の音楽教育は世界的に見て非常におかしなことになっているのではないか、という気がして仕方がありません。
具体的に2点挙げれば、
  1. 幼児音楽教育が「ピアノ教室でバイエル」一辺倒
  2. 音名をドレミで言わせる「固定ド」があたりまえになっている
という点です。

幼児音楽教育が、なぜか「ピアノ教室でバイエル」一辺倒

ピアノ(鍵盤楽器)を習得させるにしても、バイエルなんていう教則本を使っているのは日本だけといいます。
バイエルの母国であるドイツでさえ、「バイエル? 製薬メーカーの? え? ピアノの教則本? 知らんなあ……」と言われてしまうらしい。
私も中学3年生だったか、近所のピアノ教室(若い音大生OBがやっていた)に通い始めたときは、あたりまえのようにバイエルをやらされました。その先生に最初「クラシックピアノを弾きたいわけじゃなくて、ピアノでコードを弾きたいんです」と訴えたのですが「基礎からやるのはあたりまえだから」と、まったく相手にしてもらえませんでした。
何か月かは我慢しましたが、あまりにもつまらなく、苦痛なのでやめてしまいました。

与えられた楽譜の通りに楽器で音を出せることが「音楽」ではない、と私は思います。

この際はっきり言いましょう。バイエルはまったくやる必要はありません。むしろ、鍵盤楽器を楽しく、創造的に学ぶことを阻害するのではないでしょうか。
↑↓バークリー音楽院のキーボード教則本。こういうもので教えたほうが音楽の素養は100万倍身につくのでは?

音名をドレミで言わせる「固定ド」の罪

テレビのクイズ番組で、ピアノの鍵盤を示し「ドはどれでしょう」という問題を出していました。
Cの音が正解だというわけですが、本当の答えは「すべての鍵盤の音がドになりうる」です。

「音名」、つまり音の高さを示すときはABC……を使うのが普通で、ドレミ……は長音階(メジャースケール)・短音階(マイナースケール)という代表的な「音階」の中でのルート(基音)からの位置を示すものです。
CメジャーならC・D・Eがド・レ・ミですが、DメジャーならD・E・F#がド・レ・ミになります。
『ドレミの歌』をヒットさせた映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中で、主演のジュリー・アンドリュースと子供たちは、Bbメジャー(変ロ長調)で『ドレミの歌』を歌っています↓。

つまり、ここで「ド~は……♪」と歌っている「ド」はBbであって、Cではないわけです。
そんなあたりまえのことが、「固定ド」で歌わせるという過ちによって壊されてしまった子供たちが、日本にはたくさんいます。

まずはこの大きな誤りを「それは違う」と認識することから始めたいと思います。

音楽の3大要素はメロディ、ハーモニー、リズムですが、最大の、そして最も魅力的な要素であるメロディというものを味わい、創造していくためには、自分の脳内に、メロディの元になっている「スケール感」という音感を植え込むことが役に立ちます。
メロディは個々の音の集合ではありません相互に関連し合っている「文章」のようなものです。
それを忘れて、ただ単に譜面を読ませて再生させるような音楽教育が楽しくないのは当然でしょう。

もちろん、苦労と努力を重ねて高度な演奏技術を身につけた演奏家の存在価値や人生を否定するものではまったくありません。そういう一流の演奏家のおかげで、多くの人たちは「すごい演奏」を聴いて楽しむことができます。
しかし、それはプロスポーツ選手や一流の役者のような一握りの特別な人たちであって、ほとんどの人たちはそのレベルの芸を身につけることはできません。
また、一流の演奏家が素晴らしい曲を創り出す作曲家ではないように、新しい音楽を創り出す能力と演奏技術は基本的には関係ありません。

自分がどんな音楽の楽しみ方、音楽との向き合い方をしたいかを、まずは考えてみましょう。

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