たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ リターンズ』2024
(週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)
2024年執筆分
↑1984年のTVライフ 10月19日号 より
2024/01/10
北陸地震の伝え方が冷たすぎて違和感
2024年は元日から能登半島を中心とした北陸で最大震度7という甚大な地震に見舞われるというショッキングな幕開けとなった。
なにしろ元日である。ニューイヤー駅伝がゴールして間もない夕方4時10分に発生。多くの家では帰省した子供たちなども交え、ほろ酔い気分でテレビを見ていただろう。
テレビはどのチャンネルも長尺の正月特番を組んでいて、それがぶった切られる形で緊急特番に切り替えていたが、元日で取材体勢が取れず、伝わってくる情報が極端に少ない。震度7という言葉だけがポッカリ浮き上がり、映し出されるのは固定カメラのよく分からない映像だけ。
2日、3日の箱根駅伝の生中継では、画面に太い枠がつくのかなと思ったらそうはならなかった。というより、なぜか地震のことには触れるなというお達しでも回ったかのような雰囲気が漂う。石川県出身の選手の紹介や、北陸から応援に来たという両親へのインタビューなどでも地震のことには触れない。甚大、深刻な被災状況が少しずつ伝わってくるのは5日以降あたりからだった。
救助、援助の初動が遅く、その内容が薄いのも奇妙で、「応援ボランティアに駆けつける車で道路が渋滞して自衛隊車両の通行に支障をきたす」などという報道も、SNSで伝わってくる現地情報とはずいぶん違うようだ。自衛隊も簡単には近づけない、海からの援助も難しいようなエリアに原発は何基も建っているし、なぜかドローン飛行禁止とか、海外からの救援隊を拒否するとか、何もかも違和感しかない。なぜそんなことになっているのかを知りたいのだが、モヤモヤは晴れない。
2024/01/22
BS無料チャンネルで「お宝」探しをする
今までも何度か嘆いてきたが、日本のBSチャンネル事情はひどすぎる。通販番組の波の合間に昔の番組の再放送や安く仕入れた海外ドラマが顔を覗かせるという構成。ハナから「BSは見ない」という人が多いが、そんな荒れ野に咲く花を見つけて、毎週録画予約して見るのも一興。
●クイズ!脳ベルSHOW(BSフジ) 岡田圭右がのびのび司会をする人気番組。地上波での早朝再放送がなくなり、その後、平日毎日放送だったのが月曜のみになってからも久しいが、今も人気番組であり続けている。
●号外!日本史スクープ砲(BS松竹東急) このチャンネルの存在自体を知らない人も多いだろうが、毎週チェックしている番組がこれと『ジョニ男のぶらぶら昭和』。BS松竹東急には、低予算でいいので、ぜひオリジナル番組を増やしてほしい。
●BS11の欧州ミステリードラマ ミス・マープルシリーズや英国サスペンスなど、CSからのお下がり番組を放送。2月24日からは『刑事ダルグリッシュ』が始まる。
●鶴瓶ちゃんとサワコちゃん ~昭和の大先輩とおかしな2人~(BS12 トゥエルビ) 笑福亭鶴瓶と阿川佐和子が自分たちより先輩のゲストを呼んで話を聞き出す。今までのゲストは、由美かおる、田中泯、中村メイコ、岡林信康、伊東四朗、セルジオ越後、由岐さおり、養老孟司。
●花王名人劇場(BSよしもと) 1979~1990年までフジテレビ系列で放送されていた人気番組をそのまま放送している。特に桂三枝(現・文枝)の創作落語は今聴いてもすごい。
……とまあ、荒れ野でも発掘する気があれば砂金のような番組が眠っているのであるよ。
2024/02/01
TVレスチューナーとチューナーレスTV
チューナーレステレビが売れているという。テレビチューナーを積んでいないのだから、それはもうテレビではなく、ただのモニターだと思うのだが、それをテレビで報じているのだから、意味が分からん。
その逆で、画面がないチューナー単体製品というものもある。これは、モニターをつないでテレビを視聴することもできるが、主な使い方はUSBでHDD(ハードディスク)やSSDをつないでテレビ番組を録画することだ。我が家のチューナー単体製品は、地上波、BS、CSに関わらず、3番組を同時録画できる。
これを、チューナー3台内蔵、同時2番組録画可能のテレビ(60型)につないでいるので、同時に5番組を録画でき、さらに別のチャンネルをリアルタイム視聴できるという「同時6チャンネル態勢」である。
そんな我が家は重度のテレビ中毒だが、テレビをリアルタイム視聴することはまずない。CMが煩わしいし、時間の制約を受けるからだ。少しでも気になった番組は片っ端から録画しておき、CMスキップで見ていく。冒頭の30秒を見ただけで「ダミだこりゃ~」と判断したら、即座に消去する。この時代、テレビを漫然とリアルタイム視聴している生活習慣というのはちょっと信じられない。時間がもったいないでしょうに。
そんなわけで、テレビで「チューナーレステレビ(モニター)が売れている」と報じることの意図が分からない以上に、なぜテレビレス(モニターなし)テレビチューナーがもっと売れないのか不思議でしょうがない。同時5番組録画なんてやる機会はめったにないけれど、同時3番組録画は普通にあるよ。
2024/02/19
MCやるのが夢みたいな芸人ランクの百害
ダウンタウン松本人志がテレビから姿を消してからひと月以上経った。ダウンタウンはだいぶ前から漫才やコントをすることはほぼなくなり、仕事のほとんどが番組MC的なものになっている。レギュラー番組が多いため、テレビ業界での対応が注目されたが、消えてからの方が視聴率が上がった番組もあるという。島田紳助のときと同じで、すぐに視聴者も慣れてしまうのだろう。
で、ここでは裁判の行方が、とか、そういうことを論じるつもりはない。芸人と呼ばれる人たちがバラエティ番組のMCを務めることにどんな意味があるのかと考えてみたい。
本芸(?)よりも、出演者いじりやフリートーク的なアドリブのほうがずっと面白い芸人はいる。千鳥やくりぃむしちゅーはその代表だろう。上田晋也はもはや芸人というより「司会者」といったほうがいい。
しかし、大悟は完全なMCの位置に納まると力を発揮しない。『ヤギと大悟』(テレ東)のようなゆるい番組のほうが圧倒的に光る。かまいたちもそうで、冠番組でいちばん面白いのはユルユルの山陰ローカル番組『かまいたちの掟』だったりする。
そういう視点で見ると、松本人志のMCは、半分くらいは「神話化」されていたのではなかろうか。『水曜日のダウンタウン』(TBS)や『IPPONグランプリ』(フジテレビ)などは、番組の企画内容そのものが勝負であり、MCがどうのというものではない。芸人の中で「いつかはMC」「MCやれる芸人が一流」みたいな風潮が蔓延しているのは気持ちが悪い。錦鯉やサルゴリラみたいに、いつまでも仲よく本芸を続けているのを見るほうが、気持ちも明るくなる。
2024/03/04
「趣味番組」の可能性を広げよう
日本ではBS放送というメディアが生かされていない理由の一つは「金をかけられない」であろう。視聴率が取れないなら通販番組として番組枠をそっくり売ってしまったほうが早い。番組内容を考えなくてもいいし、金だけが入ってくる。
過去のドラマなどの再放送も同じ理屈で、スポンサーはほぼ通販会社である。「番組を作りたがらない放送会社」だらけの日本のテレビ界。
この現状を少しでも改善するには、点在する「趣味番組」の内容を向上させて数を増やすことだ。
落語中継、囲碁・将棋、DIY、ガーデニング……といったいわゆる趣味番組はあることはあるのだが、数が少なく、つまらないものが多い。
つまらない理由は、その趣味にまだ目覚めていない人を引き込もうという情熱がないことだ。例えば、話の下手な落語研究家?のおじいさんが演目の解説をボソボソと述べてから演者の演目が放送される番組があるが、なによりもテレビでは見ないけれど面白い落語家を出す努力だろう。漫然と演者選びをしていては新しいファンは付かない。
DIY番組では、スクラップ同然のクルマをピカピカに仕上げるような素人には到底無理なものとは別に、誰もが「俺もできるかな」「こんなの作ったら面白そう」と思える身近な工作を集めてみたらどうか。ホームセンターで数百円で買える2x4木材のみで作るベンチとか、テレビ用の小型スピーカー&置き台とか。
あとはぜひやってほしいのがジャズライブの収録。CSにはたまにあるが、BSではほぼない。どれもそんなに金はかからないはず。要は「やる気と工夫」なのである。
2024/03/18
「報道特集」の「安楽死」問題を見て
3月16日放送の「報道特集」~「安楽死」を考える スイスで最期を迎えた日本人 生きる道を選んだ難病患者~を見た。パーキンソン病を患う64歳の日本人女性が死ぬためにスイスに渡り、自ら致死薬の入った点滴のコックを開けて自殺する最後の瞬間まで映像に収め、放送した。
その後、ALSで眼球しか動かなくなった66歳男性が中高生の前で講演(声は出ないので介護士が代弁)する姿などを見せて、先の女性の選択と対比させる、という構成。
取材から映像化までの苦労は分かるが、見ていてモヤモヤした。
まず「安楽死」という言葉。スイスでの死を選んだ女性の場合は「医療者による自殺幇助」である。日本では認められていないため「安楽死は認められるべきか否か」という二択議論に持ち込まれがちだが、頭がしっかりして判断力のある人が死を選ぶ場合と、終末期で意識がはっきりしていなかったり、重度の認知症で本来の判断力がなくなっている人に延命処置をせず、できる限り苦しまないで死ねるように処置するのとはまったく違う。多くの人が直面するのは後者であり、その判断を委ねられる当事者は親族や医師だ。
しかし、後者の問題では、見送る親族も処置する医師もテレビ番組の素材にされることは迷惑でしかない。
スイスでの死を選んだ女性も、ALSで全身が動かなくなっても懸命に自己主張する男性も、自分の意志でそうしている。だから番組にもできる。映像的にショッキングなシーンも撮れる。今は他にもっと重要、広範、緊急な「医療問題」があるのに、テレビではまだアレを黙っているのか……と思うからのモヤモヤなのだった。
2024/04/01
『ブギウギ』の「超安全飛行」への賛否
NHKの朝ドラ『ブギウギ』が終了した。毎回見ていたにも関わらず、特に感動もせず、感心もせず、かといっていちゃもんをつけるほどのことでもなく……という、なんとも中途半端な印象のまま終わった。
いうまでもなく、このドラマは戦後、歌手・女優として成功した笠置シズ子と、作曲家・服部良一を中心に描いた史実をベースにしたもので、ドラマの中で演奏される曲もすべて実際にあったものだ。主人公スズ子役の趣里や、淡谷のり子をモデルにした茨田りつ子役の菊地凛子らもかなり頑張って演じていたと思う。
それを生かしきれなかったのは、登場人物をことごとく善人にしてしまう脚本だ。吉本の御曹司・吉本頴佑がモデルの愛助との関係はその最たるもの。ドラマでは愛助が一方的にスズ子に惚れ込んでしまったように描かれたが、実際には逆だったらしい。子供のことも、史実では頴佑は母親(吉本せい)に最後まで言わなかったようだし、そのへんの無責任ぶり、弱さなどは、もっと細かく描いてくれないと、人間ドラマとしての奥深さが消えてしまう。
ドラマ後半に登場する家政婦(史実では存在しない)や、誘拐未遂犯父子のエピソードなども、あまりにも「世の中に本当の悪人はいません」的なきれいごと演出がシラけた。
最後に羽鳥善一(服部良一がモデル)が、一度は絶縁宣言したスズ子に頭を下げるシーンも余計だ。実際には二人が和解するのはずっと後になってから。そんな風に、あらゆるところできれいごとにした「安全飛行」ぶりが最後まで不満だったが、朝ドラはこれでいいという視聴者も多いだろうから、このへんで。
2024/04/15
Tverはテレビ視聴革命を起こしたか?
Tverは、全国で放送されている地上波テレビ番組をインターネット回線経由でオンデマンド(見たいときに視聴)で配信している無料サービスである。視聴にはWEBブラウザやスマホ、タブレットの専用アプリ、Amazon FireTVやGoogleのChromecastなどが必要となる。我が家ではFireTV経由で、居間の大型テレビで見ている。
Tverは生配信番組も一部あるが、ほとんどは「見逃し配信」と呼ばれる、放送直後からおよそ1週間にわたって配信される番組が中心だ。我が家でも録画し損なった番組をTverで見ることが年に数回程度あるが、その度に思うのは「スポンサーは地上波よりTverに流れるのではないか」ということだ。Tverの視聴ではCMがスキップできないからだ。我が家のようにテレビは必ず録画してからCMスキップで見るという視聴者にも、必ずCMを届けられる。
Tverのもうひとつの特長としては、地方局制作の番組など、地域によっては地上波だと見られない番組を見ることができることだ。例えば『かまいたちの掟』はTSKさんいん中央テレビが制作していて、地上波では島根と鳥取という極めて限定された視聴エリアだが、Tverでも提供しているので全国で視聴できる。もっとも、同番組はBSよしもとでも放送しているので、うちではそれを録画してCMスキップで見ているが。
今後は地方局制作番組がTver経由で全国的に知られるというケースが増えるかもしれない。いずれにせよ、テレビの視聴形態はどんどんリアルタイム視聴が減り、オンデマンド配信が主流になる日が来るかもしれない。それはそれでいいことだろう。
2024/04/23
『虎に翼』をより深く楽しむ方法
日本初の女性弁護士・三淵嘉子をモデルにしたNHKの朝ドラ『虎に翼』は、例の如く、ネット上にはドラマと史実の違いなどを紹介しているページが複数出現しているが、それらとはひと味もふた味も違うのが、ドラマの法律考証に協力している明治大学法学部の村上一博教授が明治大学のWEBサイトに連載している「『虎に翼』今週の解説」(https://meijinow.jp/article/toratubasa)だ。ドラマに出てくる「明律大学」のモデルが明治大学だが、村上教授は明大の大学史資料センター所長も務めている。連載記事ではドラマに出てくる判例や法廷劇の内容を法律家の立場で解説しているだけでなく、ドラマの制作現場裏話などもふんだんに紹介している。
例えば、ドラマにたびたび登場する大学近くのおしるこ屋「竹もと」は、神田須田町に今もある「竹むら」がモデルで、渋谷のNHKスタジオ内にセットを作り、店に残っていた当時のレシピや器をもとにドラマで再現したとか。黒っぽい電車が通過するお茶の水橋も何度か登場しているが、あれは多摩ニュータウンの長池公園にある長池見附橋でロケして、背景などをCG加工しているとのこと。
日本初の女性弁護士は3人いて、主人公の寅子のモデルとなった三淵嘉子の他に、久米愛、中田正子がいる。このうち、久米愛が男装で気の強い山田よねで、中田正子が男爵家令嬢の桜川涼子のモデルではないかと言われているが、男装や男爵家令嬢というのはドラマ独自の設定だそうだ。しかし、当時日本統治下の朝鮮から来た留学生が混じっていたことは史実だとか。ドラマを何倍も楽しめる連載執筆に感謝。
2024/05/15
『老害の人』に見る「コロナ社会」の描写
5月5日よりNHK BSプレミアムでドラマ『老害の人』が放送されている。
内館牧子原作の「老後」小説のドラマ化第三弾!と銘打っているが、初回を見ていちばん感じたのは、老後がどうということよりも、2020年から突然始まったステイホーム、ソーシャルディスタンス、マスク着用といった「コロナ社会」の描写が緻密に計算されていることだ。
今なお一歩家の外に出ればマスクをした人たちはたくさんいるし、店のレジにビニールの垂れ幕やアクリル板の衝立を設置している光景は残っている。テレビのロケ番組などでも、出演タレントはようやくマスクや、馬鹿げた透明なマウスシールド?を外したが、街中や学校内を映しだした映像はまだまだマスクだらけ。
多くの人たちは「あれは一体何だったんだろう」と自虐的に振り返っているのではないかと思うが、誰も口に出しては言わない。テレビはなおのこと、シラッと何もなかったかのように振る舞っている。
しかしこのドラマでは、当時の風景や行動様式を、言葉(台詞)にはせずとも忠実に再現することで、視聴者に「あれは何だったのか?」と問いかけているように思える。
特に面白いのはマスクの扱いだ。主人公の孫が働く野菜農園の人たちはみなノーマスクで仕事をしていて、そこに訪ねていく父親はマスクを外さない。小さな「アベノマスク」をしている爺さんや、花の刺繍入りのマスクをしているクレーマー老婦人。どれも計算された演出だ。
情景描写だけで何かを伝える。伝わり方は視聴者によって違う。しかし、その「伝える」姿勢こそが、小説やドラマなどの命なんだよね。
2024/05/27
BS4K・8Kという「貧乏臭さの証明」
先日、BS4Kが突然映らなくなった。BSアンテナが4K放送開始以前の製品で10年以上経っているので劣化したのかと思い、BS4K・8K対応の新しい製品に交換してみたのだが、まったく変わらず。翌日には元に戻っていた。太陽フレアの影響だったのかもしれないが、その際に改めて思ったのは、現状では、BS4K・8Kはまったく無駄なものだということだ。
まず、BSには右旋と左旋という2種類の電波があり、右旋ではNHK BSプレミアム、民放5局の通常BS(2K)と4K放送、WOWOW3チャンネルなど、ほとんどのBS放送が集中している。
左旋はまだ帯域ががら空きで、現在はNHKのBS 8K、WOWOW 4K、4Kの通販チャンネル2局が入っている。
まずこの左旋4K放送だが、右旋と違って従来のBSアンテナでは見られない。アンテナだけでなく、中継器やブースター、アンテナ端子などもすべて左旋に対応した新規格のものに交換しないと見られない。8K放送を見られるテレビはまだまだ普及していないし、通販番組を4Kの高精細画面で見る意味はまったくないので、現在の存在価値は限りなくゼロだ。
民放5局のBS通常放送(2K)と4Kは、同じ時間帯に同じ番組を放送していることが多い。この原稿を書いている現在、番組表で確認したが、BS朝日は『おばはん刑事!』、BS-TBSとBSフジは共に西村京太郎サスペンス。20年以上前の番組の再放送で、当然、画質は粗い。そもそも、60型のテレビで見ても、2Kと4Kの差はほとんど分からない。ましてや8Kなんて正気かと疑う。この「コンテンツ貧困状態」を放置したまま4Kだの8Kだのと煽っても、日本の放送文化の貧乏臭さを証明するだけだよね。
2024/06/10
『虎に翼』のリアルとアンリアル
NHK朝ドラ『虎に翼』。前々回のこのミニコラムで、日本初の女性弁護士は3人いて、主人公・寅子のモデルとなった三淵嘉子の他に、久米愛、中田正子がいると書いた。当初の「久米愛が男装で気の強い山田よねで、中田正子が男爵家令嬢の桜川涼子か」という予測は見事に外れて、よねも涼子もドラマのためのオリジナルキャラクターだったようだ。
フィクションなのだから、そうした「違い」はまったく構わない。
沢村一樹が演じる久藤頼安のモデルは、「殿様判事」と呼ばれ、家庭裁判所設立などに貢献した内藤頼博だが、内藤頼博がかつてのNHKのバラエティ番組『サラリーマンNEO』で沢村が演じた「セクスィー部長」のようなキャラだったわけではない。でも、視聴者はそれが楽しいわけで、こうした誇張や脚色は歓迎だ
登場人物が大胆にデフォルメされているのに対して、小道具の作り込みなどは徹底している。寅子が川べりで読んだ新聞で憲法の内容を知るシーンは、ドラマの初回にあったが、念のため初回の録画を見直してみたら、新聞紙にはしっかり、団子のタレでついた染みが付いていた。こうした仕掛けや伏線回収を見抜くのも、視聴者には至福の時だろう。
一方で、戦争で片脚を失った傷痍軍人がハーモニカを吹いて物乞いしているすぐそばにベンチがあり、そこで寅子が一人で弁当を広げる場面などは、なぜわざわざそんなところで若い女性が……と、リアリティのなさが引っかかってしまう。あの時代の空気感や人々の感情を現代人が再現したり感じ取ったりすることの難しさを改めて感じながらも、今後の展開に期待してしまう爺である。
2024/06/23
クイズ番組の「広告化」が止まらない
最近、クイズ番組の堕落ぶりがひどい。まず、いわゆる「ひらめき問題」やパズル系の、頭を使う問題が激減した。クイズ作家に払うギャラをケチっているのだろう。
代わりに増えているのが、ランキング系や知識系など、ネットで検索すれば誰にでも作成できる問題だ。
難読漢字などは、「水豚」を「カピバラ」と読ませるといった「やりすぎの熟字訓」が多く、単にその手のリストを暗記した人だけが答えられ、一般視聴者は楽しめない。難読漢字に強いことで有名な女性タレントが、熟語や慣用句の常識的な使い方を知らないことがバレる、というシーンなどは面白いけれどね。
もっと安直なのはランキング系だ。まず、そのランキングを作成した業者やデータの作成方法に疑問が残る。「全国の10代から60代の男女にききました」とか言っても、例えばコインランドリーの利用に関する問題などは、都市部と地方ではまったく違う数字になるはずだ。
しかも、そこに「広告要素」を絡ませてくる。全国チェーンの店舗で売れているメニューの順位とか、食品メーカーの人気商品順位といった問題は、その企業の広告枠といえる。
例えば6月19日放送の『東大王』(TBS)は、「難関中学からの挑戦状!」と銘打った3時間特番だったが、後半は某食品メーカーとの完全なタイアップ枠だった。
さらには政府広報的な「広報枠」(例えばSDGsだのなんだの絡みの企画)も増えている。このままだと、純粋なクイズ番組は姿を消して、クイズ番組のふりをした広告番組、広報番組ばかりになるのでは、と憂えている爺である。
2024/07/04
政見放送無用論とメディアの印象操作
今回の東京都知事選挙では、過去最多の56人が立候補した(これまでの最多記録は前回の22人)。ポスター掲示板の枠が足りなくなったり、ポスターに全裸の女性モデルを使ったり、風俗店への誘導QRコードが埋め込まれたりして、警察も動く事態になった。選挙制度そのものの弱点、問題点が浮き彫りになった形だ。
テレビの政見放送もその一つ。悪ふざけでしかないような主張や映像が公共の電波を使って垂れ流された。こうした「トンデモ政見放送」は以前からあったが、公職選挙法が改正されない限り、今後もエスカレートするだろう。要するに、決められた掲示板にポスターを貼るとか、テレビで政見放送を流すという規定そのものがもはや古いのだ。候補者の政策主張はネットを使って自由にやればよい。リアルタイム放送ではなく、都合のいいときに見られるオンデマンドのほうが適している。ネットが使えない人が困るなどという主張も、スマホの普及率が9割を軽く超えている今は説得力がない。
もう一つ気になったのは、同時期にフランスで行われた下院議員選挙の報道だ。マリーヌ・ル・ペン氏率いる国民連合を、テレビも新聞も「極右」と呼ぶだけで、その政策がどんなものかは伝えない。多くの人は「極右」という二文字から、過激な危険思想の集団だと思い込むのではないか。ル・ペン氏は、フランスが問題解決のために武力行使することや、グローバリズムによって独自性を奪われることに反対している。
右派、左派という言葉も時代遅れだ。メディアがそうした固定観念に訴えて、巧みに決めつけや印象操作をすることこそが危険だ。
2024/07/21
「○時間テレビ」という長時間企画、いる?
民放地上波番組の長時間化が目立つ。「なんとかSP」と銘打ったり、複数の番組を無理矢理くっつけて、2時間半とか3時間とか、平気で枠を拡大する。その分面白くなるならいいのだが、まず間違いなく中身が冗長になって薄味、グダグダになる。
制作会社には番組1本あたりいくらという制作費で発注するので、1本にまとめたほうがテレビ局としては予算削減になるからだと聞いたことがある。……知らんけど。
その最たるものが「○時間テレビ」という2日にわたってやる特番だろう。日本テレビ系が「24時間テレビ」、フジテレビ系が「27時間テレビ」。
長時間の生放送で、出演者も集中力が切れてしまい、普段のキレがない。今年の「27時間テレビ」では、芸人の若いときの写真を見ながらあだ名をつけるというお笑い企画で「連続レイプ犯」とか「村人30人殺し」など、生放送でなければ完全にカットされる答えが連発された。それも、キャラクター的にそういうことを言いそうもない芸人の口から出たので、視聴者は笑うどころか驚き、本気で心配したことだろう。
また、24時間も27時間もマラソン企画があるが、タレントが疲れ果てて倒れる寸前になる姿を見て楽しめる視聴者がいるのだろうか。
いきすぎのコンプラ規制の一方で、こうしたサディスティックな企画がどんどん過激化している。タレントに長距離を歩かせるのが醍醐味みたいに勘違いしている旅ロケ番組が増えていることも嘆かわしい。バス旅やタクシー乗り継ぎ旅の醍醐味は長時間歩きではない。ゲーム性や計算できない出会いにおけるやりとりだ。もっと真剣に番組作りしようよ。
2024/08/13
五輪中継の「フォーマット化」を嘆く
パリ五輪が終わった。盛りあがる観客や抱き合う選手たちの光景を見るにつけ、前回の東京大会は何だったのだろうと、怒りと絶望が甦る。
それはさておき、ここではテレビ中継の質の低下について苦言を。
開会式はカオスな演出の連続で、NHK的な良識では対応できず、アナウンサーがあたふたしたり、沈黙してしまう場面が多かったのが、逆に「見どころ」だったかな? それ以前に、開会式中継前から、日本選手団騎手の江村美咲に「フェンシング男子フルーレ個人」などというテロップをつけるなど(正しくは女子サーブル)、ひどいミスの連続。各競技でも一夜漬けなんだろうなあと思えるような、浅い解説が目立った。
メダルを取れそうな、あるいはドラマになりそうな選手だけに焦点を絞るようなこともやめてほしい。皮肉にも、そうした選手の多くが早々と敗退したり、失敗したりしたね。
私はマラソンではアキラ(赤崎暁)とゆうかりん(鈴木優花)に最も期待していて、実際、予想を超える活躍だったが、中継では事前の情報収集不足を露呈していた。ゆうかりんが6位入賞でゴール後、優勝したハッサン(エチオピア難民からオランダ国籍取得)と抱き合う場面などでも、二人の関係性を説明できない。解説・増田明美の「仲がいいんですよね」の一言だけ。深掘りできる、いい場面だったのに、残念。
ハイライト番組で最初から最後までアップテンポの「テーマソング」を流し続けるのにもイラついた。表彰式のシーンにまで流している。愛のないフォーマット化はやめて、視聴者に生の状況をつぶさに伝える、プロの姿勢と技術を見せてほしい。
2024/08/26
千鳥大悟はすでに松本人志を超えている
ダウンタウン松本人志はもうテレビに戻って来ないのではなかろうか。
2011年、島田紳助が突然芸能界引退を宣言したときは、今田耕治らが何の問題もなく、むしろ今までよりもいい感じで「代役」を務め、そのままバラエティ番組の顔として太く深く根を張っていった。松本がテレビから消えた後も、千鳥大悟や上田晋也などが松本以上の手腕を見せているので何の問題もない。
最近、特に感心させられているのは千鳥大悟だ。『ヤギと大悟』(テレ東)で、ロケ番組に革命(?)を起こし、『大悟の芸人領収書』(日テレ)では、MCとして松本以上の切れ味と人間味を見せる。漫才はつまらないのに、一般人や芸人を相手にしたときの回し(←嫌いな言葉だが)の技術は目下最強ではないか。
大悟の強みは、松本のように持ち上げられてきていないことだ。
『テレビ千鳥』(テレ朝)で、まともに勉強してこなかった大悟が小学生の算数の問題を解くという企画があった。5/6+3/4=? という問題に対して、大悟は図を描いてみたり、小数に直してみたりして苦労した挙げ句、分母を揃えるということにたどり着く。普通の大人は「通分」「約分」を知っているから簡単に解けるが、その知識がないまま「考え方」から挑戦していく大悟の「自然体」に、視聴者は「こんなのも解けないのか」と馬鹿にするよりも「大悟すげえな」と感心し、感動する。
カリスマだの伝説だのと持ち上げられず、苦労して芸能界を生き抜いてきた者の強みだね。不安は健康面だけかな。煙草と酒をやめないまま、師と仰いでいた志村けんより長生きしたらカッコいい。
2024/09/05
テレ東の深夜ドラマに未来はあるか?
たまたま見た『いわくらと吉住の番組』(テレ朝)で、吉住が「テレ東の深夜ドラマで主演してみたい」と言っていた。たまたま『私の死体を探してください。』(テレ東)の初回を見たところだったので、テレ東の深夜ドラマについて、あれこれ考えてしまった。
独自路線を切り拓きたいということはなんとなく分かる。2022年に放送していた『何かおかしい』などは、原案にユーチューバーの雨穴を起用し、スタジオセットに小型カメラを定点設置して撮るなど、まさに「新機軸」を意識した作りだったが、最近はごく普通の作りのものが多い。
「普通」でも、NHKのBSドラマにたまにある名作(『グレースの履歴』とか『海の見える理髪店』とか)くらい質が高ければもちろん大歓迎なのだが、演技がクサかったり、台詞や展開が冗長という国産ドラマの「伝統的短所」はしっかり踏襲している。そこでいくつか改革案を。
まず、脚本の面白さが中途半端なので、いっそ『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ)の再現ドラマ的な分かりやすい感動ものを超真面目に作ってみたらどうだろう。日本の台湾統治時代の女性教師が100歳を超えて昔の教え子に手紙を出してみたら…みたいなやつ。あるいは、原案はすべて時代を経た名作小説や古典落語に求めてみたらどうか。
実験としては、演技派AV女優(実はたくさんいる)にシリアスな役を与えて、一切お色気なしで演じさせる、なんてのも面白いかもしれない。お高くとまっている人気女優より美しく、しかも演技もうまい、という驚きが生まれるし、話題にもなる。そんなのを見てみたい。
2024/09/24
最近見た国内ドラマの感想など
爺は国内制作ドラマはあまり見ないのだが、9月は4つも見た。『団地のふたり』、『母の待つ里』(どちらもNHK BS)、『終りに見た街』(テレ朝)、『私の死体を探してください。』(テレ東)の4つ。
『終わりに~』は山田太一が1981年に発表した小説が原作で、これまでに1982年、2005年にテレ朝でドラマ化され、今回は宮藤官九郎の脚本で3度目のドラマ化。2005年版は発表から24年経っていたので、山田自身が脚本を当時に合わせて書き直したたそうだが、それを踏襲した今回の宮藤版も、タイムスリップした家に電話がかかってくるなど、あちこちに無理があったのが残念だった。
『母の~』は文句なしの出来だ。もちろん浅田次郎の原作が優れているからこそドラマ化しても面白いのだが、役者陣が素晴らしい。特に「母」役・宮本信子の演技は世界レベルだ。演出も緻密で、NHKが本気を出したドラマはやはり面白い。
『団地の~』は連続ドラマだが基本的には1話ごとに話が完結していて、嫌みがないのが好印象。一言で言えば「気楽に見られる」ドラマだ。難しいテーマや謎解きがあるわけでもなく、ただただニコニコしながら見ていられる作品。そういうドラマ、かつてはいっぱいあったが、最近では消えてしまった気がする。
『私の死体~』は、これを書いている時点でまだ結末まで放送されていないが、謎解きでなんとか引っ張っている。役者の演技がクサいのは、役者のせいなのか演出のせいなのか、その両方なのか。この手のドラマはまだまだ良質の欧州ミステリーには遠く及ばないが、正攻法で地道にレベルを上げていってほしい。
2024/10/03
『虎に翼』終盤の「詰め込みすぎ」感
NHK朝ドラ『虎に翼』が終了した。最近の朝ドラでは『らんまん』『ブギウギ』『虎に翼』と、良作が3作続いたが、惜しむらくは終盤の無理矢理感、詰め込みすぎ感だ。
男女格差、親族殺人厳罰の違憲性、少年法厳罰化問題などは当時の重要な社会問題、法律問題で、しっかり扱うべきテーマだが、夫婦別姓やLGBTまで詰め込んだのは脚本家の欲張りすぎだったのではないか。
寅子と航一は結婚するとどちらかの姓に合わせなければならないという問題から、婚姻届の代わりに双方が書いた遺言書を交換して「事実婚」という道を選ぶ。映像では一部しか映らなかったが、寅子が書いた遺言書には、自分が死んだら財産は航一に3分の1、義姉・猪爪花江に3分の1、残りを実子の優未、弟の猪爪直明、航一の子の朋一、のどかに等分に遺贈し相続させると書かれていたそうだ(ドラマの法律考証担当・村上一博明治大学教授のブログより)。
……はて?
寅子と航一が事実婚ならば、寅子の実子である優未は寅子の全財産を相続できるが、この遺言書の内容通りに相続が実施されれば、優未は実母の財産の12分の1しか相続できず、血縁のない花江の取り分と比べても4分の1しかない。優未には実子として法律で定められている「遺留分」(法定相続人に保障される最低限の遺産取得分)である2分の1を主張する権利があり、揉めた場合は家庭裁判所に調停を求めることになる。法律家が、将来こんなもめ事を起こす可能性が大きい遺言書を書くだろうか? 少年法厳罰化阻止など、三淵嘉子が実際に取り組んだテーマを最重視してもよかったと思う。
2024/10/22
深夜番組は深夜のままがいい説
深夜時間帯に放送していたお笑い番組、バラエティ番組などが、ゴールデン枠と呼ばれる19時から22時の時間帯に移動することがある。番組にとっては「出世」なのだろうが、なぜかゴールデンへ出世した途端につまらなくなる番組が多い。
最近では『ネタパレ』(フジテレビ)が金曜深夜から土曜の18時半~に繰り上がったが、その途端に「私の地元テッパン飯」などという超しょーもないコーナーができて、唖然とさせられた。『ネタパレ』と『にちようチャップリン』シリーズ(テレ東)は、純粋にお笑いネタを見ることができる貴重な番組なのに、そのうちの一つが堕落してしまい、悲しくてやりきれない。このやるせないモヤモヤを誰~かに告げようか~♪と、今こうして書いている(わっかるかな~ぁ。高齢者ネタ?)。
放送時間帯が繰り上がった途端、内容は変わらなくても、すぐに打ち切りになった番組も多い。『ヤギと大悟』(テレ東)や『トゲトゲTV』(テレ朝)がそのケース。どちらもまだまだ見続けたかったのに残念。
その逆に『私のバカせまい史』(フジテレビ)は、ネット局では木曜21時~1時間枠だったのが深夜帯で30分番組になってからのほうがギュッと締まって見やすくなった。
ゴールデン枠のクイズ番組などは、どんどん「広告番組」化していて目もあてられない。スポンサーへの配慮やタイアップなどの縛りがあるなら、深夜帯だろうが早朝だろうがBSだろうが関係なく、しっかり面白い、マニアックな番組を流してほしい。こちとら、どうせ録画してCMは飛ばして見ているんだもんね、放送時間帯なんて関係ないのよ~ん。
2024/11/05
朝ドラ「はずれ期間」は昔の作品を見る
このコラムを担当していることもあって、NHKの朝ドラは基本見ることにしているのだが、今期の『おむすび』は予想通り、いや、予想をはるかに超えてひどいので、初回を我慢しながら見た後はキッパリとお別れした。その代わり(?)に見ているのが2018年に放送された朝ドラ『カーネーション』の再放送だ。
NHK BSでは朝7時半に放送される『おむすび』の前、7時15分から放送されている。まるで「今期の朝ドラは見てられん」という人のために用意してくれているかのよう。我が家ではこれを毎日録画予約して、朝飯(昼過ぎに一食目なのだが)の時間に見ている。
『カーネーション』は服飾デザイナーとして有名な「コシノ3姉妹」の母・小篠綾子がモデル。「朝ドラ史上最高傑作」とも評された名作で、2011年度テレビ部門ギャラクシー賞大賞はじめ、数多くの放送関連賞を受賞した。当時も毎日見ていたのだが、古希を迎えて物忘れにターボ加速がかかっている爺もかみさんも、完全に新しい気分で楽しめている。
朝ドラの出来不出来の格差というのは昔からものすごいので、今後も過去の名作を再放送し続けてほしい。『ちりとてちん』『ひよっこ』『カムカムエブリバディ』あたりは何度でも楽しめるだろう。
ちなみにNHKの過去の朝ドラは他局にも売られていて、現在、『なつぞら』『半分、青い。』が無料放送のBSイレブンで放送されている。こちらは名作とはかなりかけ離れたチョイスなのが残念だが、売る側のNHKも、出来のよかった朝ドラは簡単には売らないってことかしら……な~んて勘ぐったりして??
2024/11/19
テレビで歴史を学ぶことはできるか?
私も古希を迎え、最近の執筆活動は歴史に関することが多い。『真・日本史』というシリーズを現在第二巻まで書き上げて出版している。
この執筆にもたまに影響を与えてくれた希有な番組が『号外!日本史スクープ砲』(BS松竹東急)。タイトルはちょっとあざとさをうかがわせるが、極めて真面目な教養番組で、歴史の中のピンポイントを深掘りしていく良質な番組だったが、残念ながら今は放送されていない。
『英雄たちの決断』(NHK BS)もなかなかよい。番組コンセプトは『日本史スクープ砲』とほぼ同じで、教科書には書いていない興味深い出来事や人物像を、資料をもとに解明していく。四国の小さな村で起きた村同士の境界線争いが江戸の奉行所に持ち込まれた、なんていう出来事から見えてくる当時の社会状況や空気感。こうしたものこそが真の歴史であり、現代人が歴史から学ぶべきことも見えてくる。番組制作費はかけられないから、制作者や出演者、協力者の情熱と誠意で成立している。
その対極にある番組の代表格がNHK大河ドラマだろう。歴史上の人物を勝手にドラマチックに仕立て上げ、主人公に都合のいい話に歪曲する。そのため、ある作品ではとんでもない悪党が、何年か後には英雄としてドラマの主役になったりする。
今放送されている『光る君へ』を見ても平安貴族の生活を正確に想像するのは難しいだろう。むしろ同じNHKの『100分de名著』の「百人一首」編や『英雄たちの決断』の「清少納言 枕草子の真実」編のほうが、はるかに「歴史から何かを学び取る」には役立つし、刺激的だ。この手の番組が生き残ることを切に願う。
2024/11/29
テレビドラマの中のテレビと電話
このミニコラムも今回を入れてあと2回ということになった。
私はテレビライフ創刊号から毎号ずっと何かしら本誌には書いているので、少し感慨深いものがある。
本誌の創刊は1983年3月で、私はその頃まだ20代だった。当時はBS/CSはなくて、地上波のみ。画面が4:3のアナログ放送で、画像にゴースト(二重映り)が入るのはあたりまえだった。だから、時代設定の古いテレビドラマなどで、茶の間(死語?)に置かれたブラウン管テレビにゴーストのないきれいな画像が映っているのを見ると「こんなんじゃないんだよなあ」と思う。
テレビライフ編集部にファクシミリは1台あったと思うが、一般家庭に普及するのはもっと後なので、私が家で急ぎの原稿執筆を依頼されたときは、バイク便のお兄さんが往復していた。パソコンはおろか、ワープロ専用機もまだ使いものになるレベルではなかったから、原稿は原稿用紙に鉛筆と消しゴムで書いていた。
その後、我が家にファクシミリを入れてからはバイク便はなくなったが、リース代が月に数万円かかった。
スマホはおろか、ケータイもない時代だから、やりとりは固定電話なのだが、私が生まれた1955年には1%の家庭にしか電話はなかった。そもそも一般家庭に電話が普及し「一家に一台」となるのは1980年代以降で、「電話の普及はテレビの普及よりも後」なのだ。だから朝ドラなどで、戦前の一般家庭に電話があって、平気で通話しているシーンを見ると「そんなわけないだろ!」と呆れる。
……なんて書いている私は、すでに「昭和時代の生き証人」なのか。すごい時代を生きてきたなぁ。
2024/12/16
最終回:連載開始からの30年を振り返る
このミニコラム、今回が最終回である。私は本誌の創刊号(1983年3月)から毎号何かしら書き続けているのだが、「ちゃんと見てるよ」というタイトルでのミニコラムが始まったのは1994年で、それから30年も連載が続いた。過去のすべてのコラムをアーカイブとして https://tanupack.com/chanto/ に残してある。初期の頃のものを流し読みしていると、「ドリフターズが全員一緒に収録をしないようになってからどれくらい経つだろう」とか「『いたずらウォッチング』に一般人の役でジュンカッツの片割れが出ている」とか、「『ダウンタウンの裏番組をブッ飛ばせ!94』で2時間半野球拳やって」云々とか、なんとも懐かしい記述がいっぱい。ちなみに「ジュンカッツ」はネプチューンの名倉潤が最初に組んでいたお笑いコンビ。解散後、フローレンスというコンビを組んでいた堀内健と原田泰造に誘われてトリオになった。名倉はその後、ストレスで休養していた時期もあったが、今もしっかりレギュラー番組をこなしている。
太川陽介や竹中直人にはデビュー直後にインタビューしている。二人とも私より年下だが、太川は特徴のない青年で、芸能界で生き残るのは難しいと思ったものだが、バス旅という意外な場所で復活。竹中は「笑いながら怒る人」「文豪顔真似」などで売り出したお笑い芸人だった。
テレビの画面から消えた人、しぶとく生き残っている人、どんどん売れていって大物扱いされるようになった人、いろいろいたけれど、爺も含めて、人生って計算できないね。
というわけで、最終回も読んでいただき、ありがとうございました。
『真・日本史』第1巻・第2巻・第3巻発売!

明治「維新」がいかに愚劣なクーデターであったかを告発する本は多数出ている。本シリーズの第2巻でも、戊辰クーデターは「維新」などと美化されるものではなかったことを順を追って解説したが、そのクーデター後に始まった明治という時代を作った明治新政府は、やはりダメダメだった。副題では思いきって「馬鹿が作った」と言いきっているが、では一体どのへんが馬鹿だったのか。
例によって、講師と生徒一人の対話形式で、講談を聞いているようにスラスラ読める。
-----内容の一部-----
οゴシップ記事から見えてくる明治政府の主役たちの素顔(女狂いの伊藤博文、渋沢栄一/黒田清隆の「妻殺し」/彼らの裏に見え隠れするロスチャイルドの影)
οないないづくしで発進した明治政府/兵制と御親兵を巡る対立/廃藩置県というクーデター/福知山線事故は明治政府の責任?
ο征韓論という病理/台湾出兵というガス抜き策/欧米にしてやられた以上のことを朝鮮にした日本
ο廃仏毀釈という悪夢/破壊されたのは「もの」だけではなく人々の心
ο司法卿をまともな裁判もせずに斬首・晒し首/西南戦争の実相
ο渋沢栄一成功物語の裏にある藩閥政治/渋沢は日本初の銀行の「創設者」ではない/渋沢と岩崎弥太郎の違いと共通点
ο自由民権運動とは何だったのか?/板垣は藩閥政治が産み落とした鬼っ子/福島事件の実相/板垣は死せずとも自由は死んだ?
ο薩長閥 vs 大隈・板垣の権力闘争/大日本帝国憲法は「伊藤憲法」/大日本帝国憲法という呪い
ο日清戦争への助走/当時の中国と朝鮮もトンデモな政体だった
ο日清戦争と日本の戦争依存症/大院君vs日本の裏工作対決
ο日露戦争勝利という歴史の番狂わせ/ポーツマス条約という「成功」を理解できなかった日本国民
ο満州と朝鮮への進出という毒饅頭/ハーグ密使事件と伊藤の韓国保護政策/伊藤博文暗殺で韓国併合が加速
ο大逆事件と特高創設で終わる明治時代
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『真・日本史(1) -縄文時代~黒船来航まで- 1万年の平和を壊し続けた者たち』
弥生時代を築いた渡来人は2系統いた。1000年の「暴力団時代」の後に訪れた奇跡のような戦のない200余年。西郷、大久保、板垣らが「まともな維新」をぶち壊して、イギリス傀儡政権を作ってしまった。
……学校で刷り込まれた日本史を今こそ正しく上書きしよう。講師と生徒一人の対話形式で、スラスラ読める、まったく新しい「真」日本史読み物が登場!
旧版『馬鹿が作った日本史 縄文時代~戊申クーデター編』の前半部分を補完・改定してAmazon KDP版にすることで価格を大幅ダウン。
-----内容-----
1. 縄文時代~大和王権まで
「縄文時代」は1万年以上/「縄文人」は単一種族ではない/日本列島に殺し合いが持ち込まれたのはいつか/歴史から消された出雲王朝/邪馬台国は南九州にあった/西洋と日本の歴史を戦争の視点で比べる/空白の四世紀/「記紀」という権力者による歴史創作/日本書紀に記された原住民殺戮の記録/聖徳太子は架空の人物なのか?/大和王権成立までの大筋を推理する/ニギハヤヒは鬼伝説となって生き残った/現在も皇室の中に残る出雲の力/現日本人の特質は古代からの混血によって生まれた
2. 江戸徳川政権時代まで
朝廷の弱体化の下で暴力団国家となっていく日本/「下請け」が力をつけて成り上がる時代/合戦の時代に横行した略奪や奴隷売買/権力が弱まっても天皇家が消滅しなかった理由/徳川政権確立までの道のり/家康の「代わり」が務まる人物はいたか/徳川政権創生期を支えた裏方たち/天海とは何者だったのか?/戦争がなくなり開花していく庶民文化/江戸時代の特異性を世界史視点で考える/インカ帝国殲滅のようなことが日本で起きていたら?/島原の乱は「宗教戦争」ではない/「キリシタン」を巡るゴタゴタ/日本が西欧列強の植民地にならなかった理由/人が大量に死ぬ最大の要因は疫病/歴代将軍の治世を再評価/一気に花開いた江戸庶民文化
3. 攘夷テロと開国までの道のり
江戸時代の世界情勢/帝国主義と資本主義/産業革命の条件/ノーベル兄弟とロスチャイルド家/黒船来航前にあったこと/アヘン戦争ショック/ペリー来航前に書かれた一冊の「日本攻略本」/ペリー来航前の日本/マンハッタン号とクーパー船長/日本に憧れたマクドナルド青年/優秀な人材を生かせず、殺してしまった幕府/ペリーは日本の開国に失敗していた/日本を開国させたのはハリス/最高の人材ヒュースケンを殺した日本のテロリストたち/日米修好通商条約は「不平等」条約ではなかった
ISBN978-4-910117-54-6
A5判・134ページ
★Amazon KDP版 1298円(税込)
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『真・日本史(2) -幕末史「戊申クーデター」の実相- テロリストと欧米エリートが壊した「維新」』
徳川政権が続いていれば日本の近代化(維新)はずっとうまくいき、イギリスの傀儡政府のようになることはなかった。幕末の「志士」や明治の「元勲」たちの残虐なテロ犯罪を検証していくだけでも、
「明治維新」がいかに暴虐かつ無知なクーデターであったかが分かる。
旧版『馬鹿が作った日本史 縄文時代~戊申クーデター編』の後半部分を補完・改定してAmazon KDP版にすることで価格を大幅ダウン。
-----内容-----
1. テロリストたちが作った幕末史
日本崩壊序曲は水戸藩から始まった/幕末史の重要人物まとめ/優秀な人材はほとんど明治前に消された/幕末のテロ事件一覧/幕末日本に関わった外国人たち
2. 戊申クーデターまでの経緯
生麦事件と薩英戦争が大きな転換点だった/倒幕のキーマンは久光とパークス/西郷らにも影響を与えたサトウの「英国策論」/公武合体派の奮闘と挫折/長州藩唯一の良心・長井雅楽の無念/久光が動く/松平春嶽、横井小楠の悲運/「まともな維新」を不可能にさせた人たち/孝明天皇という最大の障壁/禁門の変という愚挙/中途半端すぎた長州征討/小栗忠順、栗本鋤雲、赤松小三郎らの無念/孝明天皇は暗殺されたのか?/坂本龍馬の実像/「大政奉還」「王政復古」の真実/江戸で大規模テロを起こした西郷隆盛の大罪
3. 戊辰戦争は日本史の恥
「国造りという仕事」を放棄して逃げた徳川慶喜/江戸「無血」開城の裏側/上野戦争の無残/シュネル兄弟と東北諸藩/「ジャパン・パンチ」から読み取る諸外国の動向/庶民が見た幕末を伝える「風刺錦絵」/奥羽列藩同盟結成までの経緯/恩賞原資としての東北侵攻/白石会議による東北諸藩の自衛団結/世良修蔵暗殺で始まった東北戊辰戦争/北越戦争の裏でも動いていたサトウ/東北戊辰戦争の悲惨と理不尽/東軍はなぜ負けたのか/「白虎隊の悲劇」をより正確に知る/二本松藩の悲劇/裏切り・離反の連鎖と庄内藩の孤軍奮闘/最後はイギリスがとどめを刺した/テロリズムと武力が作った明治政府
ISBN978-4-910117-55-3
A5判・162ページ
★Amazon KDP版 1397円(税込)
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