一つ前の日記へ一つ前へ |  目次へ   | 次へ次の日記へ

 たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ リターンズ』

 (週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)

 2007年執筆分

   

いちばん得をしたのは山本モナ?

 昨年、民主党代議士と派手なデートシーンをスクープされ、ニュースキャスター短命記録?を打ち立てた山本モナ。
 元朝日放送アナウンサーの彼女は、現在オフィス北野の所属。その関係もあり、元旦放送の『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』(日本テレビ系)で復帰するという噂はきいていたが、いや、ほんとでしたね~。
 井手らっきょやダチョウ倶楽部上島竜兵らが全裸ではしゃぎ回るこの「伝説の番組」で、バラエティタレント完全デビュー?を果たしたと思ったら、翌日深夜の『朝までたけし的ショー』(テレビ朝日系)では、筑紫哲也に扮した「つくしんぼ哲也」ことビートたけしの横に座り、「ニュースアナウンサー」という役所。この映像を、『ニュース23』スタッフはどんな思いで見ていたことだろう。
 彼女はこれでもう、硬派ジャーナリズムの世界に戻ることはなくなったに違いない。
 新装『ニュース23』が始まった当初、鳴り物入りで登場した元NHKの膳場貴子アナ以上に、横の席で山本モナは終始険しい表情でニュースを読み、強い違和感光線を発していた。
 それに対して、たけしのハチャメチャ番組に出ている彼女は極めて自然に映っていた。
 お約束のビビらせタレントとして呼ばれた格闘技選手の大ファンで、収録後にサインをもらったり、目の前を全裸で乱舞する男たちを笑顔で注視し続けるなど、ああ、これが彼女本来の場所だったのね、と思った視聴者も多いに違いない。
 結局、あの騒動でいちばん得をしたのは山本モナ自身だったのかも。こうなりゃ、次は滝川クリステル……それはないか。
  (07/01/05 執筆)

   

テレビ東京よ、初心にかえれ!

 今までこのコラムでは何度もテレビ東京へのエールを送ってきた。他の民放に比べて、面白い番組が多いからだ。『開運!なんでも鑑定団』や『テレビチャンピオン』の「大食い」シリーズなどは、他局が何倍もの予算を使って類似企画をやったが、本家のテレ東の面白さにはかなわなかった。
 メジャー民放は、金を注ぎ込み、いらないタレントをスタジオに並べ、底の浅い演出をして、本来の面白さを殺していく。
 予算がないとそうした方向には行きようがないから、おのずと内容の面白さが純粋に出る。テレ東の強みはそこにあった。
 ところが最近、え? これがテレ東なの? と思うひどい番組が目立つ。予算がないとか貧乏くさいとかではない。中途半端にメジャー局の真似をした結果、救いようのない中身になるという自殺行為が目立つのだ。
 年末年始特番で、たけしの冠番組はほとんど全部観たが、いちばん中途半端でつまらなかったのが『たけしの新・世界七不思議』だった。あの中途半端さに比べたら、同じ日の昼間に「捨て番組」的に単発で放送した『モヤモヤさまぁ~ず2』の脱力感のほうがはるかによい。
 最も悲惨なのは新番組『マニアの叫び』だ。ネタは『熱中時間~忙中"趣味"あり』(NHK BS)や『山田五郎アワー新マニア解体新書』(スカパーMONDO21)の完全パクリ。
 スタジオに不要なタレントが並び、意味のないリアクションをさせるという、あまりにも無惨な内容。他局なら無視するけれど、愛するテレ東の堕落ぶりに、つい苦言を呈したくなった。テレ東よ、初心にかえれ。面白さの本質を見失うな!
  (07/01/18 執筆)

   

熟年版『ふぞろいの林檎たち』


 久々にテレビドラマを見た。『まだそんなに老けてはいない』(テレビ朝日系1月27日放送)。
 タイトルがあまりに東国原、いや「そのまんま」だったのと、山田太一原作・深町幸男演出の単発ドラマをテレ朝がやるというところに興味を覚えたからだ。
 ストーリーは平板だし、結末も山田脚本の常でカタルシスを得られないグズグズだったが、別の楽しみ方ができた。
 これはもう完全に「熟年版ふぞろいの林檎たち」だ。石原真理子の暴露本で、久々にあのドラマを思い出した人たちも多いと思うが、『ふぞろいの林檎たち』最初のシリーズは1983年放送だから、今の若い人たちは知らないかもしれない。
 中井貴一演じる「仲手川くん」の煮えきらなさにイライラしながらも観ていた20代は今40代、30代で観ていた人たちは50代になっている。その「林檎世代」が今、みんな心の中に秘めている言葉こそが「まだそんなに老けてはいない」なのだろう。
 今回の主人公は58歳の消防士(中村雅俊)。中村はドラマ放送時点ではまだ55歳。若作りの役が多い中村に58歳の役をやらせるのはずるい。中村が恋をする50歳の人妻役は余貴美子で、これは実年齢ぴったり。中村の妻役の原田美枝子は実年齢48歳。実際、いくらおばさんメイクをしても、余より若く見えた。このキャスティングは逆のほうがよかったのでは?
 結局最後までコーヒー飲んでいるだけでセックスしないというお話を、なんじゃそりゃと思うか、流刑地だの失楽園だのよりよほど新鮮だととらえるかは、自由だ~っ!(犬井ヒロシ風に)けどォ、世の中、こんな美男美女の50代ばかりとは違うでぇ。
  (07/01/30 執筆)
   

イギリスの番組はやっぱり凄い

 WOWOWの『コメディUK』シリーズ。『リトル・ブリテン』に続く『エキストラ☆スターに近づけ!』『ハイっ、こちらIT課!』いずれも面白い。『エキストラ』は、毎回スター俳優が実名本人役で登場し、大胆に素顔?を演じる。『タイタニック』の主演女優ケイト・ウィンスレットは、オスカーをとりたくてしょうがない女優という役。「身障者の役ってのも受賞しやすくておいしいのよね」なんて危ない台詞や、汚いシモネタを連発して熱演。日本で真似できるのは中尾彬と江守徹くらいか。
 この『エキストラ』で「あそこに出るようではおしまい」といわれてた「リアリティTV」はスカパーで見られる。中でも、『誘って!誘われて!』というゲームバラエティが凄い。
 4人の女vs1人の男(もしくはその逆)の構成で行われる騙し合いゲーム。4人の同性の中の3人には恋人がいて、1人だけがいない。だれがシングルなのかを1人の異性が当てる。
 同性4人(女性だとする)は全員「私がシングル」と迫る。男は、本当のシングル女を見抜こうとあの手この手を使う。それを3泊4日に渡って特殊なカプセル型スタジオで繰り広げる。毎晩「今夜のお相手」が選ばれて男とベッドを共にするのだが「ああ、我慢できねえ。でも、口でいいよ」なんて会話が……。
 男を騙せた女性は賞金5千ポンド(約百万円)をゲット。男がしっかり本物のシングル女を見抜けたらその女性と賞金を山分け。カプセルスタジオの外では、3人の女性の恋人が中の様子をリアルタイムで見守る。
 日本では、アイデアは真似できても、ここまではやれないね。やっぱりイギリスは凄いわ。
 
  (07/02/14 執筆)
   

東京マラソンは成功したか?

 3万人のランナーが走った東京マラソン2007。まるでピンポイントでその時間を狙ったかのように冷たい雨が降り、意識不明で病院に運ばれる人も出たが、大会そのものは成功だったと報じられた。しかし、テレビ中継は完全な失敗だった。
 まず解せないのは、君原健二(10km部門)、喜多秀喜、山口衛里、浅井えり子、谷川真理、山下佐知子といった「ゲストランナー」9人が招待されていたのに、まったくと言っていいほど映像が出ず、紹介すらされなかったことだ。てっきり、紹介されながらスタートラインに立つのかと思っていたが、そういうセレモニーもなかった。
 この中で、カメラは終始有森裕子だけは追い続けた。マラソンファンたちは「またかよ」という思いだったのでは。
 注目すべきランナーは他にもいっぱいいた。有森の後ろに透明ビニールの合羽を着てぴったり張り付いていた早田俊幸、爆笑問題田中の奥さん(3時間34分)、代議士の鈴木宗男(4時間7分)、リサ・ステッグマイヤー(4時間31分)、玉袋筋太郎(4時間45分)、水道橋博士(5時間8分)、背中に「増田明美の夫」とデカデカと書いて走った解説・増田明美の旦那さん(5時間33分)、田尾安志前楽天監督(5時間40分)……。
 そうした大衆的興味以外の視点で見ても、例えば、女子最大の見所は、Qちゃんに去られた小出監督が「試しに出してみた」超大型新人・新谷仁美が、2位の谷川真理に19分の大差をつけて優勝したことだが、中継ではこれさえフォローできなかった。来年はもっとマラソンに愛のある中継をしてくれよ!
(文中すべて敬称略にて失礼)
  (07/03/01 執筆)

   

秋吉久美子の歳のとり方に注目

 TBSが世界陸上のPRのためにやっている『秋吉&中井のWe Love アスリート』を見ている。中井美穂は今度の大阪大会でもキャスターをやるのだろうが、この番組ではほとんど目立たず、秋吉久美子が独走(ときに暴走?)するのを横で見ている役回り。毎回、ゲストで登場する陸上選手たちが、実に様々な、そして生き生きした素顔を見せてくれるのは、秋吉の力によるところが大きい。堀尾正明や長嶋三奈や久保純子では、こうはいかないのでは?
 20年以上前、秋吉久美子に一度インタビューしたことがある。そのときは自意識過剰が目立つばかりで実のある面白い話が引き出せず、記事にするのに苦労した記憶がある。そのインタビューで彼女は「等身大の自分」というフレーズを何度も使っていたが、そのこと自体が「等身大」あるいは「自然体」とは遠い印象だった。でも、20年経って、この番組で見せる彼女の会話術は嫌みがない。変わったなあ、面白いポジションを確立したなあ、と感心させられる。
 デビ夫人や加賀まりこのように、自分を無理に演出している空気がそれほど濃くはない。桃井かおりのように、見ていてイライラさせられることもない。
 10年、20年後の彼女がどんな風になっているのか興味深い。
 カメラマンとしても売り出し中。毎回作成するポスターはなかなかのものだと思うけれど、あれは秋吉の腕というよりも、そばでパソコンを操作してレタッチしているおねえさんの力が大きい。まっちがいない!
 あと、この番組はこれでいいけれど、本番の中継ではタレントは出さず、生の勝負だけをじっくり見せてね、TBSさん。
 
 
  (07/03/15 執筆)

   

25年前もテレビライフで書いてた

 祝!テレビライフ25周年!!
 ちなみに僕はテレビライフが創刊されたとき、フリーのアンカーマン(最終原稿を書くライター)として参加し、以来、ずっと仕事をさせてもらってきた。
 先日、TLの若い編集者と話をしたが、彼はTL創刊時はまだ生まれていなかったそうで、時の流れを感じる。
 25年前というと1982年。この年の10月に『笑っていいとも!』が始まっている。今も続く名物コーナー「テレフォンショッキング」もこのときに始まったが、最初のゲスト桜田淳子が翌日のゲストを電話で探すだけで時間がどんどん経過し、番組がこのコーナーだけで終わりそうになったりした。
 2年後の1984年10月に、『いただきます』(現在の『ごきげんよう』の前身番組)が始まった。司会の小堺一機は当時では大抜擢という印象があった。僕はこの第一回目の放送直後に小堺一機にインタビューしている。もちろんこれもテレビライフの仕事。「今朝の新聞の番組欄を見て、初めて『どっきり』じゃないと信じられました」と語っていたのを覚えている。
 彼は1956年1月生まれで、僕とは同学年。このときは28歳だった彼も、今では同じ51歳だ。
 あの日からずっと、彼は毎日新宿アルタに通い続け、タレントたちの相手をしているのだと思うと、なんとも感慨深い。
 さて、テレビライフは50周年を迎えられるのだろうか。その頃、タモリはまだゲストに「髪切った?」と訊き、小堺一機は大きなサイコロを転がしているだろうか。そもそも地上波テレビってあるのか? 見届けたいけど、生きてないだろなぁ。
 
    (07/03/31 執筆)
   

怪我の功名?レッドカーペット

『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)があちこちで話題になっている。この番組、データ捏造が発覚して放送が打ちきりになった『発掘!あるある大事典II』の穴埋めとして急遽単発番組として登場。2月18日と3月18日に放送されたが、その内容の濃さは多くの視聴者に嬉しい驚きを与えた。
 すでに売れっ子になっている芸人(ますだおかだ、ザ・たっち、笑い飯、チュートリアルら)とまだ無名に近い芸人が入り乱れ、1分前後の短いネタで勝負するという単純明快な構成。時間がなかったのが幸いしたのか、単純さが実によい結果を生んだ。
 なんだ、お笑いってこれでいいんじゃん、と、多くの視聴者が思ったに違いない。審査員として出ていた矢口真里は「これってお笑いの革命ですね」と言っていたが、実は革命でもなんでもなく、お笑い番組が本来あるべき姿に戻っただけなのだ。
 柳原可奈子、にしおかすみこ、バカリズム(いつのまにかひとりになっている)、タカダ・コーポレーション、藤崎マーケット、やまもとまさみなどが、他番組ではなかなか見られないほどの熱気で暴れ放題。柳原とにしおかはこれからすぐ売れっ子になるだろう。バカリズム(升野英知)はラーメンズの小林堅太郎と大喜利対決もしたことがある作家志向芸人。彼が見られるだけでも幸せだ。
 笑い飯などのベテラン組も、時間が短くて大丈夫かと思いきや、緊張感がうまく働いて、ドカンドカンうけている。
 毎週にするとこの緊張感が緩むのだろうか。すでに『エンタの神様』や『爆笑オンエアバトル』をはるかに超えたクオリティ。早くレギュラー化してね。
 
    (07/04/13 執筆)
  ※その後、レギュラー化するまで、ずいぶん時間がかかっていた。
   

「地デジ問題」報道が無理な理由

 先日、『噂の東京マガジン』(TBS系)で、難視聴対策共同アンテナの存続・撤去問題を取り上げていた。千葉県茂原市で、20年前、JR外房線茂原駅が高架化されたことに伴うテレビの受信障害解決策として、JR東日本が金を出して共同アンテナを設置したが、このアンテナが突然「使用終了」になることをめぐるトラブルレポート。
 話はここから、2011年に現行のアナログ地上波放送が完全終了する(ことになっている)問題に飛んだ。当然、全国に多数現存する難視聴用共同アンテナも無用の長物となる。現共同アンテナシステムの撤去費用は誰が出すのか、地デジ用の受信システムは設置できるのか、そもそも、現在のアナログテレビ受像器をすべてゴミにしてしまうことが許されるのか……。
 視聴者にとっても、これほど身近で深刻な問題はないと思うが、実はテレビの中でアナログ放送終了「問題」が語られることはほとんどない。テレビ局も国も報道機関も、みんな地デジを推進する側にあるからだ。だからこのときも「へえ、珍しいな」と思ってみていた。
 出演者たちは、これがタブーだということが分かっているので、どうしても歯切れが悪い。
「使えるテレビが大量にゴミになるなんて、いいんでしょうか」と遠慮がちに言うだけで、それ以上は突っ込めない。そこまで言っただけでもこの番組の良心が感じられたが、本当に、これから先、どうするのだろう。
「2011年はもちろん、アナログ放送完全終了は永遠に無理」と言いきる人も少なくない。
 テレビが、番組の中でこの問題に、きちんと正面から対峙する日は来るのだろうか?
 
  (07/04/22 執筆)
   

「クローズアップ現代」よ永遠なれ

 最近痛感するのは、民放・NHK問わず、もはや通常ニュース番組で物事の真相を知るのは難しいということだ。むしろ、情報を発信する側の意図に沿った形で「思い込まされる」という怖さのほうが大きい。
 最近ではバイオエタノール燃料をめぐる報道がよい例だ。日本では「エコガソリン」と称して微量のバイオエタノールを添加したガソリンが売り出されたが、これが地球温暖化防止に役立つような報道ばかりだった。
 ものを燃やせば必ず熱とCO2は出る。化石燃料だろうが植物油だろうが植物から取りだしたエタノール(アルコール)だろうが同じこと。しかし、ニュースでよく錦の御旗のように出される京都議定書は、植物由来の燃料が排出するCO2は計算しないということになっている。「バイオ燃料ブーム」の裏にあるそうした奇怪な取り決めを正しく分析する番組もない。
 自然の営みの中で更新可能な植物資源だけで人間が文化・文明を維持できるならいいが、現実はまったく違う。結局は、どうすれば儲かるかという「経済論理」が最重視され、情報がコントロールされていく。
 本来食糧になるものを燃料に使おうというのだから、無理が出るのは当然のことだが、これをしっかり伝えたテレビ番組は『クローズアップ現代』(NHK総合)くらいではないだろうか。穀物の国際価格が異常高騰している背景にバイオ燃料ブームがあることを指摘した。
『クローズアップ現代』は、ニュース番組が失ってしまった「情報を冷静に分析する」という役割を、今なお、かろうじて担っている貴重な番組といえるだろう。
  (07/05/10 執筆)

   

M1よりR1のほうが面白い!



 だいたひかる、浅越ゴエ、ほっしゃん。、博多華丸、なだぎ武……こう並べてピンとくる人はかなりのお笑い通だろう。
 では、インスタントジョンソン、アンガールズ、キングオブコメディ、東京03、キャン×キャン……ならどうだろうか?
 最初の5人は、「R1グランプリ」の歴代優勝者。次の5組は「お笑いホープ大賞」の歴代優勝者である。
 漫才日本一決定戦を標榜する「M1グランプリ」に比べると知名度は落ちるが、中身はM1より面白い。M1は出場者が普段より力が入りすぎて空転することが多いのに対して、R1やホープ大賞は、逆に、力が入ることでいつもより面白くなることが多いというのも対照的だ。
 ただ、R1とホープ大賞はかなり「色」が違う。R1の歴代優勝者は全員が吉本興業所属なのに対して、ホープ大賞歴代優勝者はすべて吉本以外の事務所所属(在京プロダクション40社の所属芸人という条件だが、東京吉本所属の芸人の出場も少ない)。R1の優勝賞金が500万円とM1と同格なのに対して、ホープ大賞の優勝賞金は30万円。3人組で分けたら10万円。賞金というよりは「ギャラ」だわね。
 ホープ大賞第一回での出演者たち&司会者ガダルカナルタカvs女性審査員の場外バトルは、メインの演目より面白かった。そういうのが見られるスカパーバージョンが、編集済みの地上波バージョンよりお勧め。
 R1は、決勝に残れなかった芸人を見てみたい。また、Rは「落語」の頭文字だそうだが、落語家がほとんど出てこないことも残念。立川志らくあたりが殴り込みするくらいになればもっと世界が広がるのだが…。
 
 
  (07/05/24 執筆)
  ※ほっしゃん。、博多華丸、なだぎ武……みんなその後、それなりに無事売れましたね。
   

銭金を踏み台にして新番組を?

 先日、村に2つしかないコンビニ(夜9時に閉まる)で買い物していたら、友人の大塚愛ちゃんにぱったり(歌手ではなく大工をしている。念のため)。「今度『銭金』がうちに取材に来るんですよ」と言っていた。あれ? 同じ「獏原人村」のマサイ&ボケ夫妻が去年出たばかりなのに、また原人村なの?
 まあ、友人・知人が出なくても、『銭形金太郎』(テレビ朝日系)は面白い。ここに出てくる「ビンボーさん」は、実は「貧乏」さんではない。六本木ヒルズに住んでいるITバブルでおかしくなった社長さんなんかより、はるかにリッチな暮らしを楽しんでいる。誰もが、心の奥では望んでいる真の贅沢を、迷うことなく実践している人たち。「ビンボー」というのは、視聴者からの嫉妬をかわすための方便にすぎないのだ。
 ただ、テレビに出てくる人たちは、まだ若干邪心が抜けきっていない(あるいはよほどのお人好し)。「本物」のビンボーさんや、銭金サポーター芸人の力量では到底ツッコミきれないような変人さんは、テレビになんか出てこない。実際、ご近所には「話があったけどきっぱり断った」という友人もいる。
 そういうコアな人たちを突撃訪問する、ディープバージョンのビンボーさん、変人さん番組も見てみたい気がする。
 当然、ゴールデン枠じゃなくていい(むしろ、しがらみの多いゴールデン枠は避けたい)。
 レポーターは村上ショージ。銭金サポーターたちのようにツッコミ芸が確立されていないし、なにより計算に弱そうな自然体がいい。本物の変人さんは、計算する人間をいちばん嫌うから。
 ……そんなのを見てみたい。
 
    (07/06/07 執筆)
   

注目の劇作家・永井愛を讃える

 NHK土曜ドラマ『こんにちは、母さん』が終わった。久々に見応えのあるテレビドラマを見た満足感に浸れた。NHKのドラマ品質も最近はすっかり落ちているかと思っていたのだが、まだまだ健在だった。
 加藤治子、平田満らの演技も評価が高かったが、最近では博多華丸の物真似がブレイクして「アタック21の司会の人」という認識がますます固定化された児玉清が、俳優としての実力を存分に見せつけたのが印象深い。
 しかし、それもこれも、2001年に読売演劇大賞を受賞した同名舞台作品(作・演出・永井愛)という優れた作品があってこその話。とにかく作品がすばらしい。
 永井愛は、大石静と共に1981年に「二兎社」という演劇集団を立ち上げた劇作家・演出家。演劇界では数々の受賞歴を誇るが、テレビドラマや映画界ではそれほど知られる存在ではなかった。それは永井の責任ではなく、真面目な作品を真面目にテレビドラマ化する努力をしていないテレビ界の責任だ。
 永井愛は向田邦子を彷彿とさせる。かつて、NHKは『阿修羅のごとく』『あ・うん』など、いくつもの向田作品を世に送り出した。奇しくも、向田邦子が飛行機事故で亡くなったのは、永井愛が二兎社を立ち上げた1981年である。向田は51歳でこの世を去ったが、永井はその向田の歳を超えた55歳。向田邦子が書き続けられなかった分まで、これからも健筆をふるってほしい。そして、こうした真面目な力作を、舞台だけでなくテレビでも普通に楽しめるよう、NHKだけではなく、他のテレビ局にも見習ってほしいと思うが、まあ、無理かなあ。
 
 
  (07/06/22 執筆)
   

『タモリ倶楽部』はタモリの栄養素

「流浪の番組」がキャッチフレーズの『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)は、スタートが『笑っていいとも!』と同じ1982年10月というから、なんと四半世紀続いていることになる。
 スタート当初から番組の基本構成は少しも変わらない。野外ロケがメインで、毎回「そういう手があったか!」と思わせるような意外なテーマを、ゆる~い気分で料理し、電波に乗せる。
 よく見ていれば分かるが、タモリはこの番組に出ているときがいちばん幸せそうである。
 毎日、午前中からスタジオ入りして同じことを繰り返す『笑っていいとも!』は、タモリにとって相当きつい労働に違いない。番組スタートが同時ということは、タモリにとって『いいとも!』のガス抜き的存在として『タモリ倶楽部』が用意されたのかもしれない。
 ところで、この番組、他のバラエティ番組に見習ってほしい美点がたくさんある。まずは毎回のテーマを真剣に面白がる精神。最近の例では「世田谷連続みこすり犯事件特別捜査」というのがあった。車がこすった跡のある電柱を調査するという企画だが、こんな企画、この番組以外では成立しそうもない。
 次はテーマの料理法。「三大大仏が今夜決定!? 日本全国大仏総選挙」は、大仏を立候補者に見立てたところが技ありだった。「定数3」のところ、開票早々に奈良の大仏と鎌倉の大仏が当選確実になるというのも、エスプリ?が効いていてグッド。
 そしてなによりいいのは低予算に徹していること。余計なセットは作らない。余計なゲスト(特にギャラの高そうな)は呼ばない。他番組は、まずはここから真似するといいね。
 
    (07/07/04 執筆)
  ※08年年末時点でも、まだこの番組だけはハイビジョンになっていないらしい。
   

『怪奇大作戦~』の英断ともやもや

 今年4月にNHKBShiで、5月にBS7で放送された『怪奇大作戦セカンドファイル』が、7月に地上波でも放送された。
『怪奇大作戦』といえば、かつてTBS系列で1968年9月から半年だけ放送された番組。ウルトラマンシリーズの怪獣との派手な対決とは趣を異にして、もう少し大人のSF娯楽を意図していた。アメリカの人気番組『トワイライトゾーン』(日本では『ミステリーゾーン』というタイトルで放送)も意識していた。それを「セカンドファイル」と、これまたアメリカドラマ風の呼称でリメイクしたのがNHKというのが面白い。
 今、こうしたSF短編作品を作る心意気には拍手を送りたい。
 ただ、手放しで誉める気になれないのは、自分が歳を取ってしまったからか、現代社会があまりにも夢のない世界になってしまったからか。
 オリジナルの『怪奇大作戦』を手がけた故・実相寺昭雄監督へのトリビュートという意味合いはよく分かるのだが、本当に現代において、良質のSF短編を作ろうという志があるなら、円谷プロや実相寺ワールドを引きずらず、まったく新たなシリーズとして立ち上げてもよかったのではないだろうか。そのほうが実相寺監督らへの真のトリビュートにもなるはず。
 過去に使い尽くされた怪奇やSFネタを繰り返すだけでは、現代の闇は料理できない。現代だからこそ切り込めるフィクションのテーマがあると思うのだ。
 まあ、いきなりそこまで求めるのは欲張りすぎかもしれない。願わくば、実験的な散発シリーズに終わらせず、堂々とゴールデン枠に定着させるだけの力作を続けてほしい。
 
  (07/07/19 執筆)
   

『週刊オリラジ経済白書』のタブー

 だいぶ前『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉著)という本が大ベストセラーになった。副題は「身近な疑問からはじめる会計学」というくらいで、どうも会計学の本らしい。
 こうした専門書もどき?がベストセラーになったのは、一にも二にも題名の付け方がうまかったからだ。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」という命題は、どうやら万人が一度は思ったことがあるということだろう。物事に興味が持てるかどうかは、実にびみょーなことなのだ。
 それをコンセプトにうまく取り入れたようなテレビ番組が『週刊オリラジ経済白書』(日本テレビ系)。
 商店街の中にある食器店。一日観察していても店に入る人はほとんどいない。「なぜ潰れないのか?」という疑問を解明する……まさに「さおだけ屋~」と同じ視点での番組作りだ。
 他にも、激安99円ショップはどこで儲けを出せるのか? 噂に聞く、楽して高額報酬の怪しいバイトの正体は? 誰もが見たことがあるけれど値段が見当もつかないあの品この品……などなど、万人が潜在的に抱いている好奇心うまく発掘することに成功している。
 日テレでは以前から『驚き!謎マネー100連発・世間を騒がすアノ値段一挙公開スペシャル』という特番があり、コンセプトはこれにとても近い。
 うまいとこついたな、と思わせるよい番組なのだが、いちばん理解できないのはオリラジの存在。とても言いにくいが、どう考えてもいらない。この二人、番組進行役やリポーターなどには向いていない。ファンのためにも、新しいネタ形態を考えて芸の幅を広げるべきでは?
  (07/07/31 執筆)

   

「暑い」というだけの報道でいいの?

 気象庁が「猛暑になる」という長期予報を出したら、寒くて雨ばかりの7月。その長期予報を修正したので、お、暑くなるな、と思ったら、記録的な猛暑。長期予報は常に逆だと思っていれば間違いないのね。
 しかし、お盆休み前後、報道は連日「○○では40度を超え」「観察史上の最高気温を更新し」などなど、単に暑いというニュースだけ暑苦しく繰り返していたけれど、それでいいの?
 この暑さで、電力の使用量も記録破りだったはずなのに、なぜかそっち方面の報道が少ない。
 北陸電力の志賀原発は事故で動いていないし、東電の柏崎原発も地震で動いていない。それでも、この猛暑の中、停電になったというニュースはなかった。
 普段動かしていない火力発電所の余力がかなりあったということだろうが、それを知られてしまうのがまずいから?
 こういうときにこそ、日本の発電所の発電能力について、正確なデータを知りたいもの。
 報道が一斉に電力不足の危機を騒ぎ出したのはお盆休みが明けてからのことだった。電力会社からアピールがなければ取材もしないという姿勢が見え見え。報道は「広報」機関じゃないんだから、もっとしっかりしてよ。
 節電といえば、六本木ヒルズのような巨大ビルでは、入っている事務所が休みになって誰もいなくなったとき、空調はそれに合わせて能力調整できるのか? そんなことも知りたい。
 暑い暑いと報道しているだけで済むうちは、まだ極楽で、エアコンを入れたくても電力が足りないというような事態になって、本当の「地獄」を知ることになるんだろう。それも、そう遠くない将来……か?
 
  (07/08/17 執筆)
   

ようやく日本の子役もここまできた?

 TBSの世界陸上について書こうと思っていたが、あまりにひどくて、このスペースではまったく足りないので、やめた。
 NHKの土曜ドラマ『勉強していたい!』(8月18日から3回放送)の初回に出てきた子役二人(内田流果と真嶋優)がよかった、という話をしたい。
 日本の子役レベルの低さは世界でも類を見ないほどひどくて、どんなにいいドラマでも、子役の棒読み台詞ひとつで台なしになることが多かった。しかし、このドラマでは、逆に、主役の長野博が一本調子にテンションを上げた演技をしているのを、二人の子役の落ち着いた演技が救っていた。
 欧米のドラマや映画のレベルに比べればまだまだで、ようやく「見られる」程度の演技ができるようになったということにすぎないのだが、それでも「普通に見ていられる」演技をする子役が日本にも「普通に存在する」ようになってきたのだとすれば、実に喜ばしいことだ。
 子役に限らず、ドラマや映画のキャスティングでは、事務所の力などではなく、きっちりオーディションをしよう、ということを以前から言い続けているのだが、少しは実現しつつあるのかもしれない。
 あとは、主役も事務所とのおつきあいではなく、ゼロからオーディションで決めるようになれば、もっと質の高いドラマが作れるようになるだろう。アイドルタレントを主役に据えるなんてことは、民放のドラマだけでたくさん。NHKが作るドラマでまともなやり方ができなければ、他では可能性はゼロだ。NHKには、そうした責任感、使命感を忘れないでほしい。
 
      (07/08/30 執筆)
       

『サラリーマンNEO』は革命である

 なんという不覚! 『サラリーマンNEO』という番組をNHKでやっているらしいことは知っていたのだが、やり手サラリーマンが主人公のドラマだとばかり思い込んでいた。まさか、コメディだったとは!
 この番組を「平成のゲバゲバ90分」と評している人がいたが、クオリティははるかにこちらが上。生瀬勝久がついに本領を発揮する場を得たという意味では、むしろ読売テレビでやっていた『週刊テレビ広辞苑』(88年4月~89年3月)を彷彿とさせる。
 あの番組で僕は初めて槍魔栗三助(生瀬のかつての芸名)の存在を知った。生瀬が後にNHKのドラマに出てきたとき「これって、もしかして槍魔栗三助? まさかね」と思ったものだ。
 英国のBBCと日本のNHK最大の違いは、質の高いコメディ(敢えて「バラエティ」とは言いたくない)番組が作れるかどうかなんだよなあ、と常々思っていたのだが、NHKもその気になればやれるんじゃないの。
 NEOの監督・吉田照幸氏は、ついに総合放送での2分間のPR番組に橋本元一NHK会長を引っぱり出すことにも成功。巨大怪獣のような会長がNHKの社屋に積もった埃でむせるというシーンを放送するという快挙も成し遂げた。同じ国策放送局でも、数十年前から『モンティパイソン』などで社会風刺や体制批判をパロディ形式でガンガンやっていた英国BBCに比べ、NHKにはそうしたことを許容するゆとりがまったくなかった。NEOがじわじわと革命を進めていくことを熱烈に応援したい。
 それにしても、CSやWOWOWで、イギリス制作のコメディばかりチェックしていたのだが、灯台もと暗しだったなあ。
  (07/09/11 執筆)

   

テレビこそ劇場型政治の共犯者だ

 安部前総理突然の辞任から福田新総理誕生までの間に、この国の政治は過去の悪をすべて復活させた感がある。ヤクザの跡目相続と変わらない「組長」同士の談合によるボス選び。結局、政治家不在でも、世の中は動いていく。官僚主導は変わらないのだな、という国民の諦感……。
 それをテレビ報道では「けしからん」と訴えるわけだが、こうした風潮を生み出した元凶はテレビではないのだろうか。
 例えば、安部辞任直後、某局のニュース番組では、CM前の「つなぎ」として、麻生太郎氏がにんまり笑いながら廊下を闊歩している映像を流した。おそらくこれは当日撮ったものではないだろう。「安部が辞めていちばん喜んでいるのは麻生」という印象を視聴者に与える、恣意的な「イメージ映像」で、報道番組としての良識を疑う。
 そもそも、混乱を招いたのは安部前首相ひとりの責任ではない。そうした総裁を担いだ自民党全体の責任だ。自民党のお家騒動に野党がつき合う義理はさらさらないのだし、首相がドタキャンしたら、その下のポストの者が「代理」を勤めるのが筋というものだ。だったら、テレビ局が声をかけて、これから国会で質問をしようとスタンバイしていた野党議員を集め、あのとき自民党ナンバー(幹事長)だった麻生太郎氏や、首相代理とも言える与謝野馨官房長官を相手に、スタジオで質疑応答を実現させる、といったことはできなかったのだろうか。
 ただ外野席から、どっちが勝ちそうだとはやし立てるだけでは、それこそ理念も政策も不在の「劇場型政治ショー」を生み出す。テレビこそ、政治不在最大の共犯者と言えるだろう。
 
    (07/09/25 執筆)
   

「独裁国家で何が悪い」に学ぼう

 4月と10月の番組改編期前には、しょーもない特番を長々やられてしまうので、僕は「テレビトホホ月間」と呼んでいる。
 が、今回は一つだけ面白い特番があった。『たけしの独裁国家で何が悪い!?』(9月29日放送・日本テレビ系)だ。
 独裁国家というと、昨今では北朝鮮を思い浮かべる人が多いが、オープンな選挙で為政者が決まるわけではない国、国王や大統領などの元首が絶対的な権力を持っている国という定義であれば、世界にはかなりの数の独裁国家がある。
 この番組では、トルクメニスタン(中央アジア。サパルムラト・ニヤゾフ大統領が90年以来、06年で死去するまで完全独裁)、スワジランド(アフリカ南部。世襲制の国王による事実上独裁)、キューバ(南アメリカ。フィデル・カストロ議長により76年から事実上の独裁)、リビア(北アフリカ。69年のクーデター後は事実上カダフィによる独裁)、ブータン(ヒマラヤ山中の仏教国。長期間、ワンチュク家世襲の国王独裁)といった国々に実際にカメラが入り、国民の暮らしぶりなどをバラエティ番組の味付けで伝えた。
 独裁国家はトップダウンで決定事項がすぐに実践されるから、よい政策であれば、むしろ民主主義よりも効率的で、国民も幸福感になれる可能性がある……ということを示唆したところが面白かった。特に、キューバの医療制度の充実ぶりや、ブータンの平和を守るための国王の苦悩などは、現代日本で暮らす我々にとっても大いに考えさせられるテーマで、「意外といいじゃん」と思った視聴者も多かったのでは? 発想の転換で価値ある番組が生まれた好例だろう。
 
      (07/10/12 執筆)
   

TVドラマに隠された陰謀への妄想

 最近、情報番組だけでなく、テレビドラマを見ていても、これは裏に何か隠された意図があるのではないか、と妄想するようになった。以下は「妄想」として聞き流してほしい。
 例えば、NHK BS11でやっている『アグリー・ベティ』。不細工な容姿に生まれたために就職もままならないという女性が、ひょんなことから一流ファッション誌の編集長助手を務めることになり、数々の嫌がらせや障害を乗り越えて成功していくというお話。面白いけれど、要するにこれって、現代の格差社会を正当化しているのでは? と勘ぐってしまう。セレブ社会に仲間入りすることが幸せ、あるいは善であり、チャンスはどんな人間にも平等に与えられている、という話なのだから。
 同様に、NHK土曜ドラマでやっている『ジャッジ 島の裁判官奮闘記』も、素直に見ていられないところがある。
 離島に赴任したエリート候補裁判官が、民事、刑事はもちろん、家事、少年裁判までをひとりでこなしていく中で人間として成長する……というお話だが、映し出される裁判所の建物には「裁判員制度スタート」の垂れ幕が。これって、議論の多い裁判員制度をさりげなくPRするための「広報番組」の役割を担っているのかしら、と勘ぐってしまうのだ。
 人を裁くのは大変です。さあ、みなさんご一緒に考えてみましょう……というメッセージを、まるでサブリミナル効果のように発しているのではないか?
 裁判員制度を国民にうまくすりこもうとしているかどうかまでは分からないが、テレビの力は大きいからね。どうしても身構えて見てしまうのである。
  (07/10/24 執筆)

   

「生中継」の本当の魅力とは何か?

 お昼のNHKニュースが終わると、『生中継ふるさと一番!』という番組が始まる。以前の『ひるどき日本列島』のときからずっと思っているのだが、この番組の「落ち着かなさ」はなんとかならないのだろうか。
 生中継を看板にしているが、秒刻みできっちり映像が管理され、「一体どれだけリハーサルを繰り返したのだろう」と思わせる閉塞感がなんとも息苦しい。
 23分間の短い時間の中に、あれとあれをこの順番で入れる、という「台本」がきっちり見えてしまう。生中継だから失敗は許されないという気持ちが視聴者にも伝わってしまい、昼休みののんびりムードが壊される。
 この対極にあるのが『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(日本テレビ系)の「ダーツの旅」コーナーだ。こちらは生中継ではないから、「村人」たちとゆったり、台本なしで接することができる。結果として、予測不能の面白さや、人々の気取らない素顔が見られる。
 昼休みに視聴者はどちらの映像を見たいだろうか。生中継にこだわるあまりに「管理された」映像になるのであれば、いっそ生中継をやめたほうがいい。
 生中継にこだわるのであれば、どんな放送事故が起きても驚かないくらいの根性を据えて、演出なし、台本なしで、本当の「ふるさと」映像を見せればよい。マイクを向けた人が商品名を連呼したとか、暴言を吐いたとか、そういう始末書ものの日があっても仕方ない。生中継というのはそういうものなのだ。
 23分間、誰とも会えず「今日は静かな昼休みでした」で終わっても、今のようなきちきちの映像を見せられるよりは「ほっとできる」と思うのだが……。
 
      (07/11/09 執筆)
   

MX『5時に夢中』の確信犯ぶり

 前回、「生放送をする覚悟」について書いたが、生放送につきものの放送(放言・暴言)事故なんのその、というとてつもない番組がある。夕方5時という難しい時間帯に東京MXテレビがやっている『5時に夢中』という番組がそれ。
 いわゆる「ワイドショー」とも違うし、最近、すっかりおとなしくなっている各局の情報バラエティとも違う、なんとも言い難い番組なのだが、とにかくコメンテーター陣がえぐい。
 月曜・ダンカン、さかもと未明。火曜・北斗晶、だいたひかる。水曜・マツコ・デラックス、若林史江。木曜・岩井志麻子、中瀬ゆかり。金曜・トニー・クロスビーと不定ゲスト……という布陣。これはもう、わざと暴言・放言・問題発言を引きだそうとしているとしか思えない。
 月曜と水曜は政治的、思想的な問題発言が飛び出しやすい。木曜は、すっかり「シモネタ姉妹」として人気?を得ている「志麻子とゆかり」コンビが放送コードに挑戦している。
 ……と書いていくと、なんか誉めているように思われるかもしれないが、決してそうではない。放言・暴言の質が低く、見ているほうにねと~っとした後味悪さが残るのだ。天に向かって吐いたつばが自分に返ってくるような気持ち悪さというか。
 MXテレビには、『談志陳平の言いたい放だい』という、放言が売りの番組があるが、こちらは『5時に夢中』のような後味の悪さはない。ああ、談志がまた暴走しているな、と見ていればいい。この「差」はどこから来るのだろうか。
「生放送の根性」を持つのも、なかなか難しいことなのだと再認識させられる番組ではある。
  (07/11/22 執筆)

   

『ちりとてちん』役者演技力ランク

 NHKの朝ドラ『ちりとてちん』を毎日録画して見ている。朝ドラを録画して欠かさず見るというのは初めてのことだ。
 勢いのある女性脚本家のオリジナル脚本を起用したことと、配役を決める際、役者の知名度よりも演技力や自然さを重視したことが成功の原因だろう。
 お話としては、どうやって食べているのか不思議な登場人物が多すぎるのがちと気になるが、まあ、それはご愛敬か。
 役者たちの演技が楽しい。
 演技評価1位は母親糸子役の和久井映見か。まだ30代なのに、大きな娘がいる母親役。この配役は勇気が必要だったろうが、結果は大成功。「女優」やね!
 2位は四草役の加藤虎ノ介。細かい演技がお茶目で、これから人気爆発するだろう。
 3位は主人公喜代美の親友・野口順子役の宮嶋麻衣。女子駅伝の選手のような地味さがいいなあと思っていたら、趣味は本当にマラソンらしい。
 ……こう見ていくと、どうも脇役の演技が光る。主役の貫地谷しほりはというと、日常部分の演技が大袈裟すぎるのと、出演者の中でいちばん芸能人っぽいのが引っかかる。不器用な女の子には見えない。で、そのプロっぽさが、落語の演技で出てしまう。どう見ても、師匠役の渡瀬恒彦よりはるかに話芸がうまそうだし、才能があるのだ。
 逆に、渡瀬は普段の演技は渋くていいのだが、落語のシーンが下手。落語家にしては男前すぎることも手伝って、弟子たちが惚れ込んだ落語家というリアリティがないのが残念。
 しかしまあ、いろいろ変なところがあっても、毎週土曜日は必ず泣かせる場面で終わる。うまいなあ。当分楽しめるわね。
  (07/12/03 執筆)

   

「決して真似しないでください」

『生活笑百科』(NHK総合)と『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)は、番組の基本コンセプトは同じなのに、実際にはこれだけ違う番組になってしまうという興味深い例だ。
 というよりも『行列~』は、司会の島田紳助のゲストいじりにあまりにも寄りかかりすぎ、異常な変質を遂げてしまった。
 代議士麻生太郎氏をゲストに迎えた回、島田は「スケートは得意なんや」と、ローラーブレードを履いてスタジオ内を滑ってみせた。それだけならいいのだが、同じくゲストのたむらけんじを床の上に寝かせ、その上を跳ぶふりをして思いきりスケート靴で踏んづけるというパフォーマンスを2度も行った。
 床に寝かせた裸の男をスケート靴で踏んづけてみせるという信じがたいシーンが、国会議員や弁護士たちの前で堂々と行われたこと自体にも驚くが、いちばん信じられないのは、それを平気でゴールデンタイムに放送する放送局の神経だ。
 画面下には「決して真似しないでください」というテロップが出た。真意は何か?
「これは芸能界で強大な権力を持っている人気芸人が、まだ売れているとは言えない、弱い立場の芸人に対してやるから許されるのです。普通の人は決して真似しないでください」というメッセージだろうか? 
 世の中にはこのように、はっきりと上下関係があり、上の者は何をやっても許されます。国民の年金をネコババしても、上の立場の人間であれば知らん顔して高額な退職金をもらい、のうのうと老後を過ごせるのです。
 ……と、歪んだ格差社会を生きる庶民を教育してくれる、ありがたい訓辞なのか?
 
        (07/12/17 執筆)
   

地デジPRの前にやるべきこと

 毎日のようにスマップのKくんが「地デジの準備お願いします」と言っている。しかし、僕が住んでいる山間部のこの村では、今なお、地デジはおろか、アナログ地上波をきれいに見られる家は一軒もない。まともに映るのはBSとCSのみだ。
 ところが、民放BSは一日中通販番組か、どこから引っぱり出してきたのかと思うようなボロ番組ばかりでお話にならない。いっそ地上波をそのまま流してくれたら、我々難視聴地域の家がどれだけ助かることか。
 NHKは複数の地デジチャンネルの他、従来のBSアナログ2チャンネル分、BSデジタルはハイビジョンを含めて3チャンネル分、地上波も総合と教育の2チャンネル分と、大量のチャンネルを持っているが、番組の配分がめちゃくちゃである。
 BSハイビジョンで、ハイビジョンの意味がない番組をよく流している一方で、教育テレビで深夜にラーメンズのライブをひっそりやっていたりする。
 大晦日、『紅白歌合戦』は地上波総合とBS11でやるが、『ゆく年くる年』は地上波総合でしかやらない。うちは、紅白は見ないが、年越しは除夜の鐘を厳かに聴きたいのだ。BSでやってくれればクリアな画面で全国のお寺の画像を見られるのに、地上波が映らないこの家ではそれも叶わず、ストレスを抱えた年越しになる。
 地デジ地デジと騒ぐ前に、難視聴地域がたくさんあり、それが今までも切り捨てられてきたという現状を顧みなさいよ。
 逆に、貧しくて従来のアナログ地上波を小さな古いテレビで見ている人たちも、そのうちに切り捨てられる。一体、なんのための地デジ政策なのか?
 
  (08/01/02 執筆) 
■以上が2007年の『ちゃんと見てるよ』 です。
 ここに収録したのは提出原稿の控えで、最終稿では一部訂正が加えられている場合が多いです。
 縦書き原稿のため、二桁算用数字は半角、その他の数字やアルファベットは全角になっていて、横表示にすると若干読みづらいですが、ご容赦を。
 年末年始は、執筆時期が早いため、掲載号が越年しています。



YouTubeでの動画は20万ビューを突破している話題の書↓

一つ前の日記へ一つ前へ |  目次へ   | 次へ次の日記へ  | takuki.com