2026/08/19
Mistaken Lover
終活アルバム『My Homeport -Singing Soda-』の配信登録を終えたので、最後に録音した Mistaken Lover をYouTubeとFBにUPした。
この曲は1975年か1976年、大学生のときに書いた。
当初は『Song for M.』というタイトルで、3歳年上の失恋の相手の名前をアクロスティックに組み込んだ日本語の歌詞が付いていた。
若気の至りで、とんでもなく恥ずかしいことを平気でやってたんだわねえ。
同じ相手のことを歌った『セピア色の恋』という曲もあって、これとSong for M. をつなげて演奏する、ということもやっていた。
そうそう、もう1曲『Rainy Graduation』というのもあったな。
どれもオフコースの影響を強く受けていて、きれいなメロディとハーモニーを持っていたが、なにせ歌詞がねえ……。
あれから50年経ち、さすがに70代の爺さんがそんな歌を歌っていたら、恥も忘れて惚けたと言われるので、英語の歌詞に替えた。今回もアクロスティックだけれど、歌詞の冒頭の文字を縦読みしても、単にタイトルワードになるだけ(苦笑)。
歌詞はともかく、メロディは今でも気に入っている。
Dメジャーキー(ニ長調)で始まり、途中からG(ト長調)に転調して、さらにA(イ長調)に転調して、最後はまた元のニ長調に戻る。しかも、メロディとしてはAに戻らず、A-B-Cという構成になっているところがいいな、と。
この転調が続く部分のコード進行はなんとも気持ちがいい。
伴奏はギター(1992年製作のConde Hermanos)一本だけでサクッと仕上げた。
コンデ・エルマノスの話
コンデ・エルマノスのエルマノスというのはbrothersという意味のスペイン語。
コンデ・エルマノスの歴史をざっとたどると……。
- 1915年、マヌエル・ラミレス(1866-1916)の弟子でサントス・エルナンデス(1873-1942)と並ぶギター製作家ドミンゴ・エステソ (1882–1937) がマドリードにギター工房を創設し、甥のファウスティノとマリアーノ・コンデ・シニアを指導。その後、フリオ・コンデ(1915-1995)も加わった。
- 1937年、ドミンゴ・エステソが死去し、甥のコンデ3兄弟が工房を引き継いだ。
- 1950年代初頭、フリオ・コンデは新たな手工芸ギター製作拠点を設立。
- 1960年から1988年~1989年にかけて、彼らはその工房を引き継ぎ、「ソブリノス・デ・ドミンゴ・エステソ・コンデ・エルマノス」(エステソの甥たち、コンデ兄弟)または「エルマノス・コンデ・ソブリノス・デ・ドミンゴ・エステソ」(コンデ兄弟、エステソの甥たち)と名乗った。
- その後、マリアーノ・シニアは王立劇場の近くに自身の店を設立。「コンデ・エルマノス・スセソレス・ソブリノス・デ・エステソ」と名付けた。
- マリアーノ・シニアの2人の息子、1957年生まれのフェリペと1959年生まれのマリアーノ・ジュニアは、15歳頃、父と叔父のファウスティーノのもとで修業を始めた。ファウスティーノは1988年に、マリアーノ・シニアは1989年に死去。
- フェリペとマリアーノ・コンデ(マリアーノ・コンデ・シニアの息子たち)は、マドリードの工房でフラメンコギターを製作。「コンデ・エルマノス・スセソレス・ソブリノス・デ・エステソ」(コンデ兄弟――エステソの甥たちによる後継者)として知られた。
- その後、フェリペとマリアーノは事業上の提携関係を解消。二人は別々の工房で活動し、異なるモデルのギターを販売。
- 1995年、ギター製作を続けていたフリオが死去。現在は彼の息子たちと孫娘が「コンデ・エルマノス」を引き継いでいる。
あたしが持っている1992年製のコンデ・エルマノスはフェリペの工房で作られたものだ。
フェリペは1971年に工房に入り、以後ずっとギターを作り続けている。
フェリペは1957年生まれだから、私より2歳年下。これは意外だった。1992年には35歳だったわけで、その年に37歳になっていたあたしは吉原センセについてギターを学び始めている。

↑1992年 Felipe とある

↑手前からコンデ・エルマノス(1992)、松子(1993)、杉作(1995)

現在、フェリペのコンデ・エルマノス フラメンコギターは一番廉価なモデルが2500ユーロ、約46万円。
あたしが買ったときはまだ円が強かったし、黒澤楽器店でちょうどセールをやっていたので20万円台だった。今はとてもその値段では買えない。
張りがあるのに弦高が限りなく低いので弾きやすい。音が狂わないのも驚きのレベルで、古い弦を張っていても一度合わせるとピタッと音程が安定する。
そういう高級なフラメンコギターをあたしのような下手くそが軟弱なフォーク風アルペジオで弾いているわけだ。ギターにしてみても心外だろう。もっと上手いギタリストの元に行きたかったと思っているに違いない。
せめて、あたしの死後、うまくそういう人の手に渡るといいのだが。
タイムカプセル
さて、これで終活アルバムの録音が完了。
何度か聴き直してみた。細かいところが気になるけれど、多分、これ以上もがいてもよくなる感じがない。71歳のあたしとしてはこれが限界なんだわ。
1200人収容のホールでKAMUNAとしてこれらの作品を演奏することは叶わなかったが、その分も上乗せするつもりでこの終活アルバムを録音した。
すでに配信アルバムとして登録してあり、9月5日に発売予定だ。
あたしが死ぬまでは、これらの曲が認知されることはない。
死んだ者とその作品に対しての評価は、生存中より公平・公正・冷静にできるだろうが、完全に忘れ去られ、葬り去られる可能性のほうがずっと高い。
それでも、デジタルデータとしてどこかに残り続けていれば、50年後、100年後に発掘する人がいるかもしれない。その頃に、再び音楽がメロディ中心の価値観になっていればいいのだが……。
そんな夢想をしながらあがくのが、今のあたしの健康維持方法なのだな。
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