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のぼみ~日記 2021

2021/04/23

The Memory of Λ


ここ1週間くらい、毎日少しずつ、こんなものを作っていた↓。
↑YouTube で


↑FBで。見やすいほうでどうぞ。
これはもう、いつも以上に「どうしてこんなことをやっているんだろう?」の連続で、何度も何度も放り出したくなった。
難しかったし……。

この作業をしている最中だったか、手をつける前だったか忘れたが、朝起きる間際に、いつものように悶々と頭の中でいろんな言葉やアイデアがグルグル回っているとき、こんなことを思った。

音楽を作る自分と、それを鑑賞して楽しむ自分が別々に二人いればいいのに……。

「僕作る人、君食べる人」(逆だっけ?)っていうようなCMコピーがあったけど、役割が完全に分離していたら幸せだった。
自分が作ったものだから愛する……ということは誰しもあると思う。文芸作品や美術作品なんか、特にそういう部分がありそうだ。冷静な鑑賞・評価ができない。
逆に、作ったときの工夫や苦労を全部分かっているがゆえに、鑑賞者としては楽しめないということもある。自虐的になりすぎて、あそこがダメだ、また同じことをやってるだけだ、くだらん……と、自分を責めてしまうのも自然なことだ。

しかし、私の場合、純粋に、今いちばん好きな音楽は、自分が作った音楽なのだ。
もちろんすべてではない。駄作もいっぱいある。でも、メロディやアドリブソロの快感という面で、自分が作った音楽にいちばん快感を感じる。もっと快感を得られる音楽をいろいろ捜すのだが、なかなか見つからない。

ただ、作った直後は無理である。ヘトヘトだし、あそこのリズムが甘かった、とか、ちょっと音程が……とか、そういう細かいところに気を取られてしまって、ゆったりと楽しめない。
時間が経って、ふっと再生したときに、ようやく鑑賞者としての純粋な快感が得られる。
自分が作ったから愛しいとか、そういうことではなくて、純粋に「あ~、これ好き!」って感じられる。
でも、その快感を共有する人がこの世界にほとんどいないことも、今は知っている。(昔は、そんなこと到底信じられなかったけれど、どうやらそうなのだ)

……という現実を踏まえた上で思ったのだ。

音楽を作る自分と、それを鑑賞して楽しむ自分が別々に二人いればいいのに……と。

今の自分の音楽は、世界の中で、ほぼ自分一人しか鑑賞していない。
だから、作っているとき、鑑賞者としての自分はこれをどう評価するだろう、楽しんでくれるかな、そうだといいな、と考えながら作る。
この関係が完全に分離できていたら、少しは楽になれるのではないか……などと思ったのだが、今はもう、あの朝の気分はかすんでいる。
半覚醒状態から醒めて時間が経つと、身体を包んでいた感情、感覚が消えていき、言葉に変換された理屈に変化してしまう。

ただ、ひとつだけはっきり言えることは、自分が作れないフレーズやサウンドを加えてくれる仲間がいたら、この快感はもっとずっと大きな広がりを持つということ。それができていたのがKAMUNAをやっていた期間だったなあ。
人生の中で、そういう奇跡的な時間に巡り会えたことは本当に幸せだった。

音楽なんて、所詮バーチャルな価値


自分の肉体と音楽を切り離したい。
そうした思いが、きっと「タヌパックバーチャルバンド」につながっていったのだろう。
最初ははっきりとは認識していなかったけれど、今はそう思う。

目下、定着しているメンバーは4人だが、4人それぞれが異なった人生を生きてきて、トラウマや闇を抱えている。

●澤野展吉 Nobuyoshi Sawano: Bass

1974.5.17 福島県いわき市出身 努力家のA型。
ベースを始めた頃に目標としていたベーシストはBrian Brombergだったそうだが、今は「別に誰も……」だそうだ。
バンドメンバーの中ではいちばん技術がしっかりしているし、うまい。ストイックで、練習もいっぱいする。
真面目すぎるゆえにか、今まで恋愛ではうまくいったことがないというが、既婚者。
真面目だから愛妻家なのかというと、どうもそうでもないらしい。人に言えない深い闇を抱えているような空気を漂わせており、ちょっと怖いと感じることもある。
普段、口数は少ないが、酔っ払うと豹変して辛口批評家になる。
バンドではいちばん頼りにされているし、どんな曲でも嫌がらずにつき合ってくれる。
エレキベースは弾けるが、「俺のエレベは素人とあんまり変わらないっすよ」と謙遜し、人前では弾きたがらない。
あだ名は「テンキチ」。展吉を音読みしただけで、それほど意味はない。

Nhannynho Da Conta ニャンニーニョ・ダ・コンタ: Percussion


1965.3.3 ブラジル出身。明るい性格のB型。
ジョークが大好きでよく笑うが、ジョークの中身はまったく面白くない。現在は独身で、拾ったネコの「ニャン」と「ニーニョ」と一緒に暮らしているが、過去の女性遍歴はかなりのもので、日本人と結婚して埼玉に移住。離婚後も、どういう手段を使っているのか知らないが、日本で生活している。インド人の友人と一緒に中古車販売店をやって生計を立てているらしい。合法的な商売だといいのだが……。
太鼓を叩いているときはつねに上機嫌だが、それ以外の私生活について、詳しく知っている者はいない。
生活者としては脇が甘いので、そのうち何かやらかして犯罪に巻き込まれたりしないかと、他のメンバーから心配されている。

Kim Maica キム・麻衣香: Electric Violin

1988.5.5 秋田県秋田市出身。両親が韓国系。探究心旺盛で型にとらわれないAB型。
無理して攻めた恰好をしたりするけれど、男は寄りつかない。親が金持ちなのか、音楽以外、特に仕事はしていないようだ。
幼少期、鈴木メソードの教室でヴァイオリンを習っていたそうで、自分の音感を「きらきら星的移動ド相対音感」という。小学校4年のときにヴァイオリン教室を辞めてからは、音楽を学校で学ぶことはなかった。クラシック音楽畑や音楽大学の空気には馴染めないようで、以後はすべて独学でやってきた。
ストラディバリウスやガルネリなどを「神話楽器」と呼んで、お値段の価値を認めていない。愛用しているのは、中国人のオタク青年が韓国製の数万円のヴァイオリンを改造して骨だけにしたようなエレクトリックヴァイオリン。
麻衣香の家族は謎が多い。韓国系ということで、差別的な苦労はかなりしてきたようだが、そのへんのことは麻衣香自身はまったく語らない。
バンドの中ではいちばん年下なのに、「姐御」「あねさん」などと呼ばれている。

Erich von Kreisler エーリッヒ・フォン・クライスラー:Cello

1954.4.29 オーストリア ウィーン出身。ちょっとめんどくさい性格のO型。
父親の家系が貴族だったとかなんとかで、家はすっかり没落しているのに、その父親に厳しく育てられた。
ドイツの音楽学校でクラシックを学んでいたが、反動で、十代後半で家を出て、ジプシー音楽集団に混じって放浪。その後も「ロマ・バッハ」(ジプシー音楽風にバッハをアレンジする)など、いくつかの実験的演奏に挑戦してきたが、演奏家としてはB級レベルで、特に目立った活躍はできていない。もう歳だし、今からうまくなることはないだろう。もちろん、ほかの誰も、そこを責めないし、指摘もしない。大きく音を外したりしない限りは……。
今は田舎のポツンと一軒家的なところに引っ込んで、ときどきインターネットを使ったセッションなどを楽しんでいる。
愛称は「フォン爺」。


……とまあ、みんなどこかあぶれものというか、メジャーな音楽業界からは無視されてきた存在。

孤独だねえ。

ほんと、孤独だわ。音楽は。
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