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のぼみ~日記 2020

2020/11/17

タヌパック「バーチャル」バンド という遊び


去年、『いにしへの恋歌』↓というのを作ったとき、すべて一人でやっている自分が可哀想になり、少しでも気を紛らすために「タヌパック バーチャル バンド」という遊びを取り入れた。
動画の最後に流れるテロップ。
Background voices: Sophie and Ben-G
Acoustic Guitar: George Imai
Koto: Komachi
Taiko and Asian percussion: Mikka Seiroku Group
Drums: Gonta Akai
Electric Bass: Nick Anderson
Upright Bass: Nobuyoshi Sawano
Steinway Piano: Allan Issikov
Vocals: Renri Yamine and Akesato

……本当ならこのくらいのプレイヤーが集まって、他にも録音エンジニアがいて、動画編集者がいて……という協業なのを、一人だけで全部やっているという孤独。
スタジオ内で交わす冗談もなければ、予想外の音に興奮することもない。他のプレイヤーの音に反応して思わず出すアドリブ的な音もない。そういうものさえも計算と編集……。

その孤独を自虐的なジョークで少しでも紛らわせられれば、という思いからだが、傍から見ればますます痛々しく感じるだけで、できあがった作品の評価にはマイナス要因にしかならないだろう。

しかし、自分の人生の中で音楽を創る時間というのはどんどん残り少なくなってきていて、さらには気力と瞬発力、創造力の減退スピードが加速している。
それをカバーするためには、どんなに恥ずかしい手、痛々しい手でも使う、という、爺の開き直りである。

あれから1年半以上経ったが、その間、新曲は『日光のクリスマス2019』くらいで、今年になってからはゼロである。本作りに時間とエネルギーを使っていたせいもあるが、本作りをしているときも、これは音楽からの逃げではないかな、という思いがあった。
文章は苦痛を覚えることなく書ける。というか、書かずにいられない。でも、音楽はアイデアが湧いても作業をなかなか始められない。辛いな~、面倒だな~、どうせまた同じようなフレーズしか出てこないんじゃないか……と、マイナス思考で固まってしまう。せめて楽器演奏の腕が極度に落ちないように、少しでもギターとEWIには触ろうと思って、ギターはケースから出したまま部屋のど真ん中に置いてあるのだが、見ただけで拒絶感に包まれる。面倒だな~、と。つまり、生来、自分は音楽家ではないのだな、と思う。でも、それを認めたくない。
「じゃあ、やれよ……うだうだ言ってないでさ」

このところ本作り作業が一段落した感があったので、このへんでまた音楽に手をつけなければ、このまま死ぬまでできないんじゃないかという思いがあり、重い腰を持ち上げた。

まずはリハビリ。
いい曲が書けないなら、準備運動から……。

そんなわけで↓こんなものをまず作ってみた。

『いにしへの恋歌』でウッドベースを弾いた Nobuyoshi Sawano を召喚して、そのベースの音で自分の創作意欲を刺激できないかという試み。

Nobuyoshi Sawano という名前は忘れていたので、去年作った動画を見て確認した。漢字表記はしていなかったのか。じゃあ、「澤野展吉」とでもするかな。
いかにも実直なベーシストという感じでしょ。(ん? 通じないか……まあ、いいや。ど~せ。ど~せ……)
澤野くんは身長163cm。40代半ば。血液型A型で3人の子持ち。ウッドベースにこだわっていて、エレキベースは弾けるけれど人前では弾きたがらない。
大型の古いウッドベースを愛用している。一部ひび割れしていたのを安く購入して、自分で接着剤流し込んでなんとかした。
口数は少ないけれど、酔っ払うと結構辛口の批評家になる。
ジャズ仲間からは「テンキチ」と呼ばれているが、私は「テンキチ」というイメージではないなあと思うので、素直に「ノブ」と呼んでいる。

で、これだけで終わったらどうしようもないので、なんとか自分も参加して一曲仕上げてみたい。
昔からベースとチェロの音が好きなので、そういうのだけで、ピアノやギターなしで、つまりコードを弾かずに単音楽器のみで歌の伴奏をしてもらうというセッションを試みた。
ベースだけ、というのも考えたのだが、厳しいので、パーカッションも加えることにした。
『いにしへ~』のときは和太鼓グループの「三日清六グループ」がドカンドカンと盛り上げてくれたが、今回は一人だけ。南米系のパーカッショニストがいいな。
名前はニャンニーニョ・ダ・コンタ。ブラジル出身。

160cm、72kg。50代。10代の頃から女性遍歴は華やかだったが、今は独身。猫のニャン(黒)とニーニョ(白黒)と暮らしている。血液型はB型。千手観音ばりの手数の多さが驚異的。
40代のとき日本人女性と一時期結婚していて、日本永住権も取得したが、その後離婚。日本酒と雪駄が好きで、真冬でも裸足。
いつも笑っていて、ジョークをポンポン飛ばすが、そのジョークがちっとも面白くないので、周囲の人たちは反応に困る。

この二人にバッキングをさせて、間奏にはチェロ……と思っていたのだが、二人のスピード感のあるバッキングとチェロがどうにもうまく調和しない。
というか、少しもチェロに聞こえない。
いろいろ試した末に、結局は使い古したEWI USBのヴァイオリン音源──もとい、ヴァイオリニストをワンポイントリリーフで召喚することにした。
攻めた格好で現れたのはキム・マイカ。むさ苦しい男性陣の中で、一人浮く浮く。

両親は韓国系だが、秋田出身で完全に日本語ネイティブの日本人。身長172cm、52kg。血液型はAB型。
彼女は教育熱心な母親によって、3歳のときから秋田市内の鈴木メソード音楽教室に通わされ、ヴァイオリンを習わされた。でも、中級、上級と進むにつれてクラシック音楽の演奏家を目指す訓練というものに反発を覚え、小学校4年生のときにやめてしまう。同じ教室内に、自分より少しだけ上手い1学年下の女の子がいたこともストレスになったらしい。
それからしばらくは音楽から遠ざかって、絵を描いたりしていたが、17歳でジャズにのめり込み、再びヴァイオリンを手にする。
30代に入った今も、クラシック音楽界への未練はなく、世界的なセッションジャズヴァイオリニストを目指している。
使っている楽器は中国人の友人が作ってくれたエレクトリックヴァイオリン。韓国製の安いヴァイオリンをベースにして、ピックアップを取り付けた骨だけのシンプルなもの。この攻撃的な姿勢のせいか、性格のせいか、未だに売れる気配はない。また、男も寄りつかない。

……と、この3人に手伝ってもらって、タヌパックのオーナーであるあたしは、今回は歌だけっす。


澤野くんの適確無比なベース、ニャンの手数の多い(多すぎる?)パーカッション、キム姐さんのクールなソロ。
……うん、うん、余は満足じゃ。

今回のセッションで学んだこと:

「器用貧乏なだけの中途半端なやつ」として、ただでさえ信用されていないんだから、シンプルに、信念を持って、最後までやりきる、ってことかな。自分からの評価はごまかせない。

ありがとうノブ、ニャン、マイカ……と、お礼を言うまえに3人は消えていた。部屋にはスクリーンセーバーだけが映し出されていた……とさ。

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