で、こんなのんびりした風景なのだが、8日夜から9日未明にかけて神奈川県三浦半島~東京湾~千葉県というルートで関東地方を襲った台風15号の被害はとんでもなかった。我が家では夜中にちょっと風雨が強かったかなという程度で、グーグー寝ていたし、朝起きたときにはもう穏やかな景色だったのだが、直撃を受けた東京湾岸や房総半島あたりはひどい状況になっていた。
ところが、政府は災害対策会議さえ開かず、ひたすら11日に予定していた内閣改造に集中していた。9日午前の記者会見で、菅官房長官は「政府一丸となって被害状況の把握に努めるとともに、災害応急対策などに全力で取り組んでいる。国や自治体からの最新の情報に注意し、冷静に対応していただきたい」などと語っていたが、この時点で災害対策会議は開かれておらず、翌10日午後2時半にようやく最初の災害対策会議を開いている。
「首相動静」を見ると、9日も10日も台風被害に対しての対応をしている様子はない。そのまま11日(被災3日目)に入ったが、11日は終日新内閣発表にかかりきり。
大規模災害への対応をしなければいけない非常時に新しい大臣選び。要するに、大臣不在でも現場は適当にやってくれるだろうという意識なのだろう。だったら大臣なんていらないよね。
もっとひどいのはテレビ報道の異常さだ。10日午後の番組欄がこれ↓

2019年9月10日。台風直撃で大きな被害が出ているときのトップニュースがこれ

午後のワイドショーのトップ見出しを並べると、
- 「プチプラリメーク達人のお宅潜入」(日本テレビ)
- 「文氏が強行任命…疑惑のチョ氏を法相に」(TBS)
- 「韓国チョ・グク氏が法相に!検察と激突」(フジテレビ)
- 「韓国文大統領が“疑惑の側近”曹国氏を法相任命強行…政権に与える影響は?反日政策が激化!?」(テレビ朝日)
……なんなんだこれは? と目を疑うような見出しが並んでいる。
で、この後、第4次安倍「再改造」内閣が発表になると、小泉進次郎初入閣祭りとでも呼べる報道一色になった。
ネットでは
さすがにこれはひどいという声が上がった。
今回の颱風は、ほんのちょっと北を通っていたら都心部で大きな被害が出ていただろう。その場合はどうだったのか……。同じように韓国のタマネギ男ゴシップやら進次郎入閣祭りをやっていたのか? ここまで無視されるということは、千葉は日本ではないということなのだろうか。
千葉はテレビでは首都圏広域に入ってしまい、キー局ローカル番組もほとんどないから(栃木もそう)、ますます「地域格差」を感じてしまう。
週末になってようやくワイドショーなどでも被害状況を報道し始めたが、これがまた「大変です」と騒ぐばかりで、興味本位の絵作り意図しか見えてこない。
なぜここまで対応が遅れているのか、被害を最小限にするにはどうすればいいのかという「社会システムの問題」を論じなければ意味がない。
千葉県は颱風が去って1週間も過ぎた15日に千葉県内で「全壊3、半壊4、一部損壊1255の住宅被害」と発表した。
千葉県全体で全壊3、半壊4? ……なんと、県のこの発表数字には、県への報告のない17市町の数字は含まれないとのこと。そんな数字なら発表しないほうがマシだろうに。
1週間も経って、ようやく「政府は燕尾服着て新閣僚発表とかやっている場合ではなかったでしょ」という批判が強まると、菅官房長官は開き直って「復旧見通しが正確でなかった」と批判の矛先を東電に向ける発言。
被害状況をまっ先に調査すべきは国や県だろうに。
- 令和元年9月10日(火)、04時00分に空自中部航空方面隊司令官(入間)に対し、また、同日04時30分に陸自第1空挺団長(習志野)に対し、千葉県知事から、災害派遣要請があった。
- 10日、15時25分に陸自第1師団長(練馬)に対し、神奈川県知事から、災害派遣要請があった。
- 11日、06時00分に陸自第1空挺団長(習志野)に対し、千葉県知事から、倒木除去に係る災害派遣要請があった。
- 11日、15時00分に海自第21航空群司令(館山)に対し、千葉県知事から、入浴支援に係る災害派遣要請があった。
(防衛省・自衛隊Webサイトより)
被災翌日になって県から自衛隊に災害派遣要請をしているわけだが、この時、防衛大臣も国土交通大臣も新大臣への引き継ぎ事務に追われていた。
さらには、千葉県内で大規模停電が続いている最中、
安倍晋三首相は17日、防衛省での自衛隊高級幹部会同で訓示した。宇宙空間の監視のために2020年度に新編する「宇宙作戦隊」に触れ「航空宇宙自衛隊への進化も夢物語ではない」と述べた。(略)
防衛省は20年度予算の概算要求で航空自衛隊への宇宙作戦隊の新設を打ち出した。米国や中国が「新たな戦場」として開発競争を繰り広げる宇宙空間で防衛能力の向上をはかる。宇宙作戦隊は他国の人工衛星からの電波妨害などで自衛隊の活動が影響を受けないよう、宇宙空間を常時監視する。米国がつくった「宇宙軍」とも協力する。
(日本経済新聞 2019/9/17 首相「航空宇宙自衛隊、夢でない」 自衛隊幹部に訓示)
あのね~、そんなことよりも、
電力会社や自治体と自衛隊が素早く連携して災害復旧作業に取りかかれるようなシステム作りが急務なのだ。
そのためには、自衛隊の人的物理的資源を使うにしても、命令系統組織などは別体裁にした「名前の違う組織」を発足させ、自衛隊の装備も災害救助・復旧作業に特化したものに予算を集中させるべきなのだ。戦車に使っている金や人員を、災害対策用のヘリ、重機、電源車、給水車などに割り振るだけでも、相当な強化ができるはずだ。
そういう議論をメディアがしないで、隣国のタマネギ男のスキャンダルをトップに持って来るという壊れぶり。
たまらんなあ。