先週、『次課長州の力旅』(フジ)の制作会社から、総集編を六本木の居酒屋で収録するので、来られないかと電話があった。
4月に『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)への出演のために大阪に行って以来、電車に乗っていないので、そろそろ遠出しておかないとボケてしまうかなあと思い、承諾した。
下小代駅からだと新鹿沼駅で47分待ちなんていう、乗り継ぎ路線バスの旅みたいなことになると分かり、やむなく新鹿沼まではクルマで。
新鹿沼駅は駅弁も売っていないから、途中、セブンイレブンでおにぎり2個と唐揚げ1個(50円)を買って車内で食った。
唐揚げ1個を入れた紙袋が、切取線付きで、手を汚さずに食べられるように工夫されていることに感心。日本って、こういうところはすごいよね。外国人が感動するらしい。
六本木までは北千住からひたすら日比谷線に乗る。若い頃は日比谷線はよく乗ったが、ずいぶん変わったなあ。中国語の案内表示があったり、英語のアナウンスがあったり。
六本木なんて何十年ぶりだろう……と思ったが、よく考えたら、数年前、abema TVに呼ばれて行ったな。テレ朝のスタジオに。あれも狛犬絡みだったっけ。
外は雨らしいが、北千住からずっと地下鉄なので様子が分からない。小さな携帯用傘は持っているが、土砂降りだったら嫌だなあと思っていたら、六本木駅のトイレにビニール傘(しかも大きめの)が落ちていて、ちょっと躊躇ったがそれを拾って地上に出たら、大正解だった。
それにしても、電車の中も居酒屋の中も冷房が効きすぎていて寒い。いらないだろうけど念のために……と、リュックに突っ込んでおいた長袖シャツをずっと着たまま。
居酒屋には言われた時間(15時)の10分前には着いたが、そこから延々待たされた。ここでの収録の前のロケが押しまくっていて、3人が来ないのだ。
おかげで、収録前から「押しているので○○の部分は全部カットさせてください」と言われ、狛犬仲間に無理を言って用意してもらった画像が全部パーになってしまった。ごめんなさい~。
予定より1時間半くらい遅れてようやく収録開始。半袖ジャケットの上から長袖の綿シャツを羽織った変な格好のままカメラの前に。でも、長州力さんは相変わらず短パンにTシャツ1枚の格好だった。裸が衣装みたいな仕事が長かったから、寒くないんだろうか。
小説『神の鑿』の話などをしたのだが、どんな風に編集されているのかは、見てみないと分からないわね。10月にBSフジで放送されるらしい。その後、もしかすると地上波でもやるのかも。
待たされている時間が長かったので、↑こんなものに目がとまった。
野外ロケなどにも耐えられるヘビーデューティ仕様のモニターかしら。それにしてもこのイラストとSUMOという製品名?はなんなんだ?
こういうネーミングと絵を使うのは中国製かしらと思ったが、後で調べたら、どうやら
日本のメーカーらしい。
他にも
SHOGUN、NINJA、SHINOBIという製品シリーズがある。
すごいセンスだなあ。海外向けにこういうネーミングにしているのだろうか? 日本国内だと、むしろこういうネーミングやイラストだと、信用されないんじゃないかと思ったりするのだが……。
ちょうどこのタイミングで、朝日新聞に
「中国製か日本製か、誰も分からない」告発者が語る手法 という記事が載った。
ブロニカという時計販売会社が売っている腕時計は100%中国で組み立てているが、それを日本に持ち込んでから裏蓋に made in Japan の刻印を押している……という内容。
しかし、そんなのとっくの昔からどんな業界でもやっていることで、何を今さら……と思う。
中国の鰻を日本に輸入して、ちょっとだけ生け簀に放してから加工し、「日本産」として出荷するとか、そういうのはみんながすでに知っていること。
家電製品や衣料品なども、今やメーカーの本部がどこにあるかとかは関係なくて、工場は中国や東南アジアにある。もっとも、それらは正しく made in China や made in Malaysia などと記されている。だから、この腕時計の場合、正しく made in China と刻印するべきではないかということだと思うが、そもそも「日本製」の信用度、made in Japan のブランド力って、今でもあるのだろうか。
スマホでは最高ブランドであろうiPhoneも中国工場で作っているわけだし。
一方で、カメラのレンズなどは、日本製であっても、わざわざドイツに本部がある企業にライセンス料を支払って「ライカ」や「カールツァイス」というブランドを冠している。作っているのはコシナ、シグマ、タムロンなどの日本メーカーなのに、わざわざさらに金を払ってドイツのブランドを冠したほうが高級品のイメージが作れるということなのだろう。
コンパクトデジタルカメラは一時期サンヨーのシェアが圧倒的だった(そもそも「デジカメ」はサンヨーの登録商標)。しかし、サンヨーが生産シェア世界一を誇っていた時期、そのほとんどは他社へのOEM供給だった。「サンヨー」のカメラでは売れないが、オリンパスやニコンのブランドをつけると売れる。
東芝の洗浄便座は安くて高性能ということで人気を得た時期があったが、製造はサムスンだったという。うちでも購入したが、数年で壊れ、パナソニックに買い換える羽目になった。
そのサムスンに勝てる日本の家電企業は今どのくらいあるだろう。
液晶テレビが出始めたとき、大型家電店の液晶テレビ売り場に見に行ったことがある。どのメーカーの画面がいちばんきれいだろうとじっくり見て回った結果、国内メーカーのテレビよりもひときわきれいな画面だったのがサムスンのテレビだった。日本の家電メーカーへの信頼が一気に揺らいだ瞬間だった。
その液晶テレビでは、一時期シャープがブランド力を持った。
2002年、三重県亀山市に三重県から90億円、亀山市から45億円の補助金を得て工場を作り、「世界の亀山」ブランドとして吉永小百合を起用したテレビCMなどで大々的にPRした結果、「液晶はシャープ」というブランド刷り込みに成功した。今でもその「亀山ブランド」を信じている人は多いのではないだろうか。
しかし、
亀山第1工場は2009年初頭より操業を停止。生産施設をすべて中国企業に売却し、建屋のみが残った状態となった。莫大な補助金を投入した工場が、わずか6年で操業停止して設備を売却と言う事態に、シャープは県から補助金約6億4000万円の返還を求められた。(Wikiより)
液晶テレビ「アクオス」の生産拠点として2004年に稼働して以降、一時代を築いた“世界の亀山”ことシャープの亀山工場(三重県・亀山市)。テレビ事業が大幅に縮小してからも、生産ラインを一部売却し、スマホやタブレット向け中小型パネルの生産に乗り出すなど、形を変えながら存続してきた。
だが昨今、シャープを買収した台湾・鴻海精密工業が進める“分業体制”により、亀山工場の稼働率が大きく下がっていることがわかった。
(東洋経済ONLINE シャープ「世界の亀山」液晶工場が陥った窮状 外国人労働者3000人解雇の裏に「空洞化」)
シャープといえば、かつてはNECやゼネラル、サンヨーなどと並んで、国内家電メーカーとしては二流のイメージがあった。
デザインがかっこよくて、アイデアとしても面白いものを出してくるが、気がつくと壊れている、という経験を、実際にうちでも何度もした。
お金があるなら、ナショナル(現パナソニック)、東芝、三菱、日立、ソニーなどを買いたいが、少しでも安く買いたいから、シャープ、NEC、ゼネラル、サンヨーあたりでも我慢しよう……みたいな感覚は、今60代以上の人たちなら説明不要で理解してもらえるだろう。
そこからPR戦略で抜け出したシャープはうまいことやったなあ……と思っていたが、個人的には「液晶のシャープ」は信じていなかった。売り場で実際に見て、サムスンのテレビがいちばんきれいに映っていた印象が強かったし、
テレビでいちばん重要なのは録画機能だからだ。
早くからテレビに外付けHDDをつけて、テレビ本体の操作だけで録画ができるようにしたのは東芝REGZAだった。「W録画」をするためにチューナーを2基、3基積んだ機種も作っていた。その頃、他社のテレビはDVDレコーダーやブルーレイレコーダーを売りたいがために、テレビだけで録画できる機能を搭載するのには抵抗を示していたが、東芝はそのタブーを破って、ユーザー本位の設計をしたといえる。
しかし、その
東芝も、テレビ事業を受け持っていた「東芝映像ソリューション」が、株式の95%を中国のハイセンスグループに譲渡した。東芝のテレビブランド「REGZA」は今もあるが、もはや日本メーカーではなく中国のメーカーといえるだろう。
シャープや東芝の没落は日本の工業製品神話崩壊を強く印象づけた。
特に東芝は、家電製造やノートPCの技術や設計のセンスは非常に優れていたのに、経営陣が原発ビジネスに傾いて、バカみたいな失策を続けた。真面目に家電に取り組んでいた社員たちは、さぞ悔しい思いをしていることだろう。
日本で初めてラジカセを発売したといわれるAIWAは、国内では安売り店でよく見かける二流ブランドという認識だったが、海外、特に中東などでは大変な人気と信用があったという。
2002年ソニーに吸収され、2008年にはブランドそのものが消えてしまったが、2017年にソニーの下請け工場などをしていた秋田県の十和田オーディオという会社がソニーからAIWAブランドを譲り受けて自社製品開発を始めた。
AIWAよりも「十和田オーディオ」のほうがいい音を出しそうな気がしてしまうけれどなあ……。
アメリカにチボリオーディオという高級ラジオを作るメーカーがあって、かなりのお値段で売られている。今、あたしの目の前にあるミニマムオーディオセットのスピーカーユニット(8cm)もチボリオーディオの刻銘がある。
中国工場から流れてきたユニットを2個1000円+送料で入手したいい加減な中古エンクロージャに組み込んだものだが、とても気に入っている。
このユニットは1個2100円もした。あのとき一緒に買った無印の10cmユニットが1個690円だから、3倍もする。このユニットにAIWAと印字されていたら2100円も出して買わなかったけれど「TOWADA AUDIO」と印字されていたら買ってしまったかもしれない。
ラジカセのブランドならAIWAでもいいけれど、高級オーディオブランドをめざすなら、絶対に「十和田オーディオ」のほうがいい音出しそうだよね。
↑690円の無印中国製ユニットと2100円のチボリオーディオの8cmユニット。後方は中国製のタンノイ
↓AIWAのミニコンポについていたスピーカーから外したウーハー。これと無印10cmユニットを交換して、フルレンジシステムに作り替えたらすごくいい音になった
ま、そんなこんなだから、今はもう、製造国やブランドは関係ない。怪しい中国製が日本の老舗ブランドの製品より高性能・低価格だったりすることは普通にある。もちろん、怪しい中国製が、しっかりダメダメで、すぐに壊れたり、設計がおかしかったりすることも多いわけだが。
技術力の高い台湾で開発・設計を行い、コスト競争力の高い中国で生産・組立を行う「チャイワン」と呼ばれる分業体制が構築され、国を跨いで競争構造が急速に変化した。かつて業界を席巻していた日本の電子産業、AVメーカー各社が2000年代に市場シェアを一気に落とし衰退を見せた背景として、垂直統合・自前主義に陥ってこうした世界的な製造・物流インフラの流れを捉え切れなかった、などと各所で論じられた。
(Wikiの「EMS(製造業)」の項より)
SUMOというモニターは、なんじゃこりゃ、なイラストとネーミングは関係なく、業界で評判になって信用度を上げているのだろう。
デジタル時代になってからは、もはや過去のブランド力は全部消去して、自分の経験や情報収集力、眼力で品定めしないといけないのだわ。
話を腕時計に戻せば、カシオは、元は「安い電卓を作るメーカー」というイメージだったが、知らないうちに国外で腕時計のG-SHOCKシリーズが大人気になり、その人気が逆輸入されるような形で日本国内でもブランド力を持つに到った。
でも、日本で作っているのは少なくて、タイや中国製が多い。
腕時計に「日本製」を要求するセンスがすでにずれている。正確な時刻を知りたければ、スマホがいつでも教えてくれる。腕時計はもはや時刻を知る道具ではなく、アクセサリーのカテゴリーに入るだろう。センスのよいデザインであっても made in China ならアクセサリーとしての価値が下がるというのであれば、それはもう裸の王様の世界というか、特殊な趣味の世界ということで、放っておけばいいのではないか。ブロニカの腕時計が made in Japan か made in China かなんて、ほとんどの人にとってはどうでもいいことだ。
そんな「不正」問題よりも、もっと大きな不正問題、国全体の行方を誤らせる危険に直結する不正(公文書破棄・隠蔽・改竄や政治権力者による大胆な不正優遇)をちゃんと報道してほしいものだ。
(この話は少し整理・追補して、
⇒ブログにも掲載した)