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のぼみ~日記2018


2018/10/16

レオが最後に挨拶をした?

昼前、注文の本を発送するために郵便局まで涼風号MarkIIで行った。
帰りに、ほんとにもう、絶対に息絶えているだろうと思いつつ、レオの家まで確かめに行く。
自転車を道の脇に寄せて停めたとき、フォンフォンと、かすかなクラクションのような音がした。
そばに停まっている飼い主さんの車がクラクションを鳴らしたのかと思って運転席を覗き込んだが誰もいない。
変だな、空耳か? と思いつつ、物置スペースに近づき、恐る恐る覗き込むと、まだ段ボールはあった。そして、中に横たわっているレオは、まだ息をしていた。
嘘だろ。倒れてから一体何日経過しただろう。もう頑張るなよ。なぜスッと逝ってくれないんだ……と、たまらない気持ちで見つめる。
フッフッとも、ヒィヒィとも聞こえる小さな声に喘鳴が混じっている。
本当に苦しんでいないのか? こんな状態に見えても、夢心地でいるのか? ちゃんとエンドルフィン出ているのか?
分からないし、何もできない。
そっと身体に手をあてたが、それに対する反応はない。
どうにもならないので、静かに立ち去ろうと数歩歩き出したとき、背中から、さっきと同じフォンフォンという微かなクラクションのような音が追いかけてきた。

……レオが発しているのだった。

驚いた。
もしかして、こんな状態でありながら、僕がやってきたとき、去って行くときの気配を感知していて最後の力を振り絞って声を発しているのか?
まさか……。
レオはほとんど耳は聞こえない。一緒に散歩していたときも、目は白内障でよく見えていなかった。倒れてからは目玉が腐り始めていてまったく見えてない。
嗅覚だって、だいぶ前から目の前(鼻の先)に置いたおやつがすぐには分からないくらいだったから、相当落ちていたはずだ。
最後は奥歯も崩れてしまったようで、柔らかいものも食べられなくなっていた。
そんな状態で、そっと近づく僕の気配、去って行く僕の気配を感知できるはずがない。
きっと何かの偶然だ。
そう言いきかせて家に戻った。

でも、家に戻ってきてからも、さっきのフォンフォンという小さな声が耳について離れない。
本当になんだったのか。なんでもなかったのか……。
もしかして、幽体離脱していて、空中?から僕を見下ろしていたのか? それで、ほとんど動かない自分の肉体に信号を送って、あのフォンフォンという声を発したのか?
どんどん妄想が広がる。


最後に見たときのレオ


夕方、ケータイが鳴った。
飼い主の社長からだった。
電話に出る前から、レオが死んだことを告げられることは分かった。

レオが息を引き取ったのは、あの「フォンフォン」からまもなくだったようだ。
最後に身体を洗ってあげたとき、一度息を吹き返したけれど、その後、息絶えたとのこと。
僕も、昼前に会いに行ったときの様子を簡単に説明した。
これからどうするのですかと訊くと、明日、ペット霊園で火葬にするという。朝9時半に予約を入れたとのこと。
そのままどこかに穴を掘って埋めるのかと思っていたので、火葬にすると聞いて少しほっとした。

2018/10/17

レオのお葬式

火葬場に行くかどうか、最後まで迷っていた。
半分以上、行こうとは思っていたが、家族が揃っているところに僕が行ったら変な感じになるのではないか。後はもう飼い主さん一家にすべて委ねるのが分別というものではないか……と。
助手さんにそのことを言うと「でも、9時半って時間まで言ったってことは、来てほしかったんじゃないの?」と。
……かもしれない。やはり行こうと決めた。

朝、助手さんは僕より早く起きていた。
「早起きじゃん」というと、レオの火葬に私も行くという。
涼風号MarkIIで行こうかと思っていたのだが、助手さんも行くというので車になった。
遺影写真を作って、ポケットには犬用おかしを2切れ入れて、助手さんは玄関前に咲いていた白い花を数輪摘んで瓶に入れて……ペット霊園へ。9時半ちょうどくらいに到着。

受付で「○○さんの……」と言うと、受付の女性はちょっと当惑した顔をしたが、すぐに「お別れ室」と書かれた部屋のドアを開けてくれた。
中に入ると、今まさに棺が火葬室の扉を通って中に入っていくところだった。
その場には飼い主の社長さんとスタッフの女性だけ。社長は驚いた顔で僕らを見ていた。
スタッフは僕らが入ってきたのに気づいて、一旦閉めかけた火葬室の扉を開けて、棺を元に戻し、蓋を開けてくれた。
助手さんは持って来た花を、僕はポケットからお菓子2片を出して、棺に入れた。
改めてお祈りして、棺を見送った。
一旦火葬炉に送り込んでいたのを戻してくれたスタッフの配慮に感謝した。


まさに火葬炉に入りかけていたのを、お別れ室まで引き戻してくれた



レオがレオとしての最後の姿



その後、飼い主の社長とお茶を飲みながらレオの思い出話にふけった。社長は「まさか泣くとは思ってなかったですよ」と、ちょっと目を潤ませながら言っていた。レオも、最後に飼い主さんに身体を拭いてもらえてよかった



スマホを取り出し、可愛い盛りのレオの姿を見せてくれた




骨壺は人間のものと同じ



粉骨も受け付けている。これも人間と同じだ



数十年前、新規に霊園を作って経営するという友人に「ペット霊園も一緒にやるべきだ」と勧めたことがある。霊園候補地に一緒に付き添ってもいった。その後、出資するはずだった共同経営者が雲隠れしたとかなんとか……だったかな……



個別墓地の最高ランクは200万円+税……



アンケートに記入していた飼い主さん、この「まあまあよかった」と「よかった」は順番が逆ではないか? と悩んでいた


骨上げ


小一時間で呼ばれた。3人で骨上げ。これもまったく人間のときと同じで、頭蓋骨と喉仏は別に置かれていた



最後に飼い主さんが頭蓋骨と喉仏を拾い上げて……



その後、スタッフに先導されて納骨へ



大きな観音像の下が共同納骨堂になっていた



個別の墓はランクがある。これは中ランクくらいだろうか



帰ります。これからは日光連山がよく見える季節になる
飼い主さん一人だとは思わなかったので、遠慮したほうがいいかなと思ったのだが、来て本当によかった。
気持ちの整理というか、少し落ち着けた。

帰路の車内で、助手さんがぽつりと言った。
「やっぱり火葬はしたほうがいいわね。のぼちゃんみ~ちゃんのときも」

それはまあ、そのときに考えましょ。
僕らも十分老人だし、誰が先かは分からないし。

誰が先かは分からないが、逝くほうも、見送るほうも大変だなあ。
60代はミトリ世代。
思い詰めても仕方がないよね。

遺影として持っていったレオの最後の姿 2018年10月8日撮影


タヌパックブックス



更新が分かるように、最新更新情報をこちらの更新記録ページに極力置くようにしました●⇒最新更新情報
  


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