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のぼみ~日記2018


2018/08/24

「海老名メロンパン」は埼玉で作られていた



義母を葉山の病院から日光の施設に移した昨日、帰りはナビの指示通りに東名横浜ICから一旦名古屋方向に進み、圏央道で東北道に抜けたのだが、途中、圏央道の厚木PAでトイレ休憩をした。
Pが混んでいて、少し離れた場所に車を停めたのだが、20日間の入院で足腰がすっかり弱ってしまっている義母は、なんとかトイレまでたどり着けたものの、1人では用が足せず、助手さんの介助でなんとか用をたした後、今度は車まで歩いて戻れなくなった。
仕方なく、駐車場内を逆走するような形で車をトイレの前までつけてようやく乗せることができた。
その間、僕は朝からおにぎり一個と小さなカレーパン一個しか食べていなかったし、助手さんも朝、梅干しご飯を食べただけで昼は食べていないので、売店でスパムおにぎりみたいなのを1個と派手に宣伝POSをつけて売られていたメロンパン1個を買った。
このメロンパンが、後に事件?の元になる。
メロンパンが山積みになっていたコーナーには、48時間で2万7503個を売り上げて、「焼きたてメロンパンの48時間売り上げ個数世界一でギネス認定」みたいなPOSが嫌でも目に入るように設置されていた。

↑確かに「焼きたて菓子パン」とあるが……

海老名SAのメロンパンのことはどこかで聞いたことがあるような気がしていたので、僕は単純に、「ああ、これがそうか。ここはお隣の厚木PAだけれど、海老名のメロンパンが有名になったので、ここにも持ってきて売っているのか」と思い、230円はいくらなんでもぼりすぎだろと思いつつも、ちょっと迷った末に、試しに……と1個買ってみたのだった。
「焼きたて」といいながらビニール袋に入っているのが気になったが、海老名からここまで運んでくるのに裸では運びづらいし、衛生上の問題もあるからだろうと思った。義母のトイレが気になって、裏のラベルをしっかり確かめることもしなかった。

で、このメロンパン、車内で食べることはなく、家に持ち帰って食べたのだが、袋から出した途端に違和感を感じた。
表面はベタッとして、メロンパン特有のサクサク感がない。なんというか、見た目は黄色い黴がついて変色した鏡餅のような感じなのだ。
「外はサクサク、中はふわふわしっとり」というのが売りのはずが、逆で、外はベタベタ、中はボソボソ。味もお世辞にもうまいというようなものではなく、人工的な味付け感がたっぷり。
結局、半分ほどは捨ててしまった。我が家で食べ物を捨てるなどということは滅多にない。よほどまずいか、身体に悪そうだと感じたときのみのことである。
これが大人気というのはどう考えてもおかしい。本当に「海老名のメロンパン」だったのか? と思い、一旦ごみ箱に捨てた包装ビニールを拾い上げて裏のラベルを確認すると↓

圏央道厚木PA(外回り)で売られていた「海老名メロンパン」のラベル↑

……なんと、製造しているのは埼玉の工場で、販売者の住所は東京都。しかし、名称はしっかり「海老名メロンパン」となっている。
海老名SAの厨房で焼き上げたメロンパンを厚木PAにも運んできて売っていたわけではないのだった。

しかし、海老名で作られていないメロンパンに「海老名メロンパン」と名づけて「ギネスで世界一認定」というPOSをつけて売っていていいのか? そんな商法が許されるのか? 元祖海老名メロンパンから訴えられないのか? と、疑問がどんどん出てきたので、ネット上を検索して少し調べてみたところ、驚くべきことが判明した。
まとめると、

……とまあ、こういうことだったのだ。
だから、「ぽるとがる」ブランドではない「海老名メロンパン」が堂々と「ギネス世界一」というPOSを立てて売られているし、埼玉県の工場で作られて厚木まで運ばれてきても「海老名メロンパン」と名乗れる。
要するに日本中のあちこちで「海老名メロンパン」という名称のメロンパンが大量に作られ、売られている。となると、焼き上げてからの時間や原材料の品質にバラツキが出てくるのは当然だろう。


今では、「海老名のメロンパンは有名な下り線のではなく、上り線のほうがうまい」という評もある
海老名SA上り線でメロンパンを売っているのは箱根ベーカリーと成城石井だが、どちらも「箱根メロンパン」「成城石井自家製」として売っており、「海老名商法」ではなく、味と品質でまともな勝負をしているように見える。

そもそも海老名SA下り線「ぽるとがる」のメロンパンが人気になったのは、観光バスのガイドや運転手の休憩所に無料で提供したことがきっかけだという。
同社(西洋フード・コンパスグループ株式会社)が着目したのが「バスガイドの口コミ力」だった。
 バスガイドやバス運転手が集う休憩スペースに海老名メロンパンを試食用に提供した結果、観光バスの車内でバスガイドが「海老名SAの名物はメロンパンです」などとアナウンスするケースが相次ぎ、観光客がメロンパンを求めて、売り場に殺到したという。
 日本の“大動脈”とされる東名高速の海老名SAには、全国から観光客やドライバーが集まっており、その人気ぶりは口コミによって、一気に全国に波及したのだった。
「海老名メロンパン」48時間で2万7503個販売、ギネス認定 産経ニュース 2018/06/19)


これは綾小路きみまろが売れたのと同じ手法。(彼は自分の漫談を入れたカセットテープを高速道路のSAで、観光バスガイドに無料で配りまくった)
ここまでは一種のサクセスストーリーとして「なるほど~」と納得できる。

海老名の「ぽるとがる」で売られているメロンパンも埼玉産だった!

しかし、食べ物はあくまでも味と品質が命。さらには、「おいしいパン屋さん」という言葉に人びとが一般的に抱くイメージは、頑固な職人さんが真面目に研究と努力を重ねてコツコツと売っている街の小さなパン屋さん、とか、田舎の夫婦が作る伝説のパンとか、そういうものだろう。数が売れればいいというものではない。
そもそも48時間で2万7503個というと、1時間で573個、1分で約10個という計算だ。となると、そんなペースで売れるものが「焼きたて」であるはずもない。この2万7503個全部が海老名SAの「ぽるとがる」の焼き窯で焼かれたのだろうか? はたまた、海老名SA下り線だけの売り上げ数字なのだろうか? ちょっと信じられない。

厚木PAで売られている「海老名メロンパン」を作っている工場をGoogleマップで見てみたら、巨大な工場だった。公式サイトの企業概要を見ると社員数590名。パートを入れた数なのかどうかは分からないが、とにかく「でっかい工場」だ。工場内の直売所は地元でも大人気で、オープンと同時に行列ができるらしい。きっと、この工場で作られた「焼きたて」のパンは美味しいのだろう。ちなみにここの直売店ではメロンパンは100円とか70円で売られているらしい。多分、大きさは「海老名メロンパン」よりも小振りなのだろうが、もしかしたらそっちは美味しいのかな、とも思った。
しかし、この工場から厚木PAまではおよそ100kmの道のり。おそらく都内の各企業社員食堂や売店などにも配送しているだろうから、もちろん店頭に並んだときは「焼きたて」ではない。真夏の高温多湿下でもなんとかもつようにするためには、いろいろな添加物も加えなければならなくなるだろう。

で、さらにネット検索していくと、なんと!海老名SAの「ぽるとがる」で売られている「海老名メロンパン」も、埼玉の工場で作られたものらしいことが分かった。
こちらの方のブログには、海老名SAで買った「海老名メロンパン」の写真、レシート、裏のラベルすべての写真がクリアに載せてあって、裏のラベルは、今回僕が厚木PAで買ったものとまったく同じだった。

つまり、海老名SAの「ぽるとがる」で売られている「海老名メロンパン」も、埼玉のサンフレッセ工場で作られたものなのだった。これで「48時間に2万7503個」の謎も解けた。巨大工場で大量に作っておいたものを運んできて売ったのだろう。

……今回この日記を書き始めたときは、厚木PAで売られていた「海老名メロンパン」は、海老名SA下り線の「ぽるとがる」で売られているメロンパンとは違うものだと思っていた。だから、気を使ってラベルにぼかしまで入れていたのだが、このブログの写真こちらのツイッターを見て、そうした配慮も馬鹿馬鹿しくなってきた。
一体「海老名SAのメロンパン」とはなんだったのか? もはや海老名SAは関係なくなってしまって(「どこそこの○○」ではなく)、ヤマザキのランチパックはおいしい、セブンイレブンの冷凍ラーメンはおいしい、という口コミと同じ規模の話なのだと分かった。(実際、セブンイレブンの冷凍ラーメンなどは本当に美味しいと思う。正しい企業努力の成果だろう)
しかし、真相を知るにつけ、せっかく有名になった「海老名のメロンパン」の商品価値を、なぜこんなことまでして下げてしまうのだろうかと、つくづく不思議に思う。
そして、口コミ、行列、「ギネス」だの「三つ星」だのの情報に弱い日本人ということを、改めて痛烈に考えさせられたのだった。
一言でまとめれば、今の日本の食文化は「貧乏くさくなった」。





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