一つ前の日記へ一つ前へ |  目次へ   | 次の日記へ次の日記へ

のぼみ~日記2018


2018/06/13

小来川のモリアオも絶滅のピンチに


ヒミツ沼にモリアオがいないと分かって、一旦帰宅した後、意を決して小来川のモリアオ棲息地に今年の産卵状況を確認しに行くことにした。
6月も半ばだから、かなりの数が木の枝からぶら下がっているはずだ。20kmくらい離れているので、今年はいいか……と思っていたのだが、一度くらいは確認しておこうと思い、出発。
遠いなあ。
で、ようやく着いて、カメラを持って車を降り、見慣れた木を見上げると……。
え? 木がない!
どういうこと?
驚いた。去年までモリアオの卵がぶら下がっていた木が、根こそぎ消えているのだ。
田んぼはある。でも、その田んぼの上に張りだしていた木がない。
嘘だろ~。
根こそぎ伐って処分されていた。おそらく、田んぼの陽当たりを少しでもよくしようと伐ってしまったのだろう。
で、よく見ると、田んぼの脇の草むらに、ぽつんぽつんと白いものが見える。産み場所を失ったモリアオが、やむにやまれず地面の上に産んでしまったのだ。昨日の雨でべちゃべちゃになっているものもある。
このままでは、たとえ孵化できても下が地面だからオタマジャクシは干上がって全滅する。
なんてこったい。

木がない!


↑これは去年の6月20日。この木が消えていた!



木がなくなったので、やむなく田んぼの脇の草むらに産みつけられた卵。しかし、形が壊れ、雨でぐちゃぐちゃになっている。ヘビなどに食い荒らされたのかもしれない。いずれにせよ、この状態では孵化しても田んぼの中にオタマが入っていけないだろう



田圃から離れた草むらの中にもある。これはもう絶対に無理


この地区では、この田圃ともう一か所、少し上がった場所の田んぼの縁に生えている竹の枝にも産みつけられていたが、去年は竹のほうはほとんどなかった。天候によっては真下に水がないような場所だったので、そちらのほうが生存率は低かったからだろう。
以前、通りがかった人に訊いたら、二か所とも同じ農家の田んぼだという。それを知って、僕は勝手に、その農家ではモリアオガエルを大切にしているんだろうと想像していたのだが、そういうことではなかったらしい。
長いこと、毎年モリアオが産卵していた木が消えた。他の場所からもどんどんモリアオの卵は消えている。地元の人に教えてもらって行くと、池そのものが道路の拡張工事で埋められてしまっていたりする。ここはほとんど「最後の砦」だったのだが、これでもう、あと何年かでこの地域からもモリアオが絶滅するかもしれない。

僕がカエルに興味を持ち始めたのは川内村に住み始めてからだから、まだ歴史は浅い。でも、毎年、いろいろなカエルを見続けてきて分かったのは、カエルが地域絶滅するのはあっという間だということ。
たとえば卵1万個から500匹のオタマジャクシが育ち、50匹がカエルになったとする。そのカエルが翌年まで生き延びる確率は10分の1だとして5匹。その5匹のうち、翌年まで生き延びられるのは1匹もいないかもしれない。
で、この確率は毎年同じではない。ある年は卵1万個が産みつけられた田んぼの水が抜けて、生存率ゼロということもある。そういう年が2年も続けば、その地域のその種のカエルは種を維持することが困難になる。3年以上続いたら、4歳以下の若いカエルはゼロということになり、それまでどれだけ多くのカエルがいても、一気に絶滅の危機に陥る。
川内村にいたときは、年によってオタマの育ち方、カエルになる数がものすごくばらついていることを不思議に思った。目に見える条件だけでなく、人知を超えた条件もいろいろあるようだ。水質や気温の変化など、人間にとっては大したことないことが、オタマジャクシにとっては致命的になるのだろう。
種を維持していくための最低数というのもあるわけで、生息数がある数を切ってしまったら、後は一気に地域絶滅に向かう。

小来川のこの場所も、僕が教えてもらって観察を始めてから、毎年確実に卵の数は減っていた。
おそらく来年は、地面に産みつけられた卵もほとんどないに違いない。
別の棲息地へ民族の大移動だろうか? しかし、適地がないんだよね。池や沼はない。一見きれいに見えても、水が流れていたり、水温が低すぎるとオタマが育たないのだ。この田んぼの水は、水温や水質が合っていたのだろう。これに代わるような場所が簡単に見つかるとは思えない。
ああ、ショックだ。



↑これは私の「遺言」です



医者には絶対書けない幸せな死に方
「医者には絶対書けない幸せな死に方」(講談社プラスα新書)
内容紹介は⇒こちら

以下のいずれからでもご購入いただけます

Amazonで買う   hontoで買う    7ネットで買う  honyaclubで買う  bookfanで買う  LOHACOで買う  Yahoo!  楽天ブックスで買う

カエル講座もあるよ 森水学園第三分校

森水学園第三分校

ガバサク談義へ
たくきのカメラガイドはこちら



更新が分かるように、最新更新情報をこちらの更新記録ページに極力置くようにしました●⇒最新更新情報
  


一つ前の日記へ一つ前へ |  目次へ  | 次の日記へ次の日記へ

 
Kindle Booksbooks    たくきの音楽(MP3)music    目次へ目次    takuki.com homeHOME


Google
nikko.us を検索 tanupack.com を検索