アメリカ復員兵士たちがほぼ全員口にするのは「広島と長崎に原爆を落とすことになったのはカミカゼの直截の結果だ」ということで、つまり、神風攻撃を肯んじるような「人間とは異なる何か違う生き物」と日本本土で戦えば、いったいどれだけの人間が死ぬだろう、という意識を全員がもっていたようにみえる。
戦争指導部も「トルーマンに原爆投下を決心させたのはカミカゼだよ」というが、この認識は日本で見聞きした日本人の考える投下理由とおおきく異なっている。
日本人からみれば、(当然だと思うが)民族の力を傾けて華々しく、アジア人同胞のために、少なくとも初期には互角以上に「白人」と戦ってみせたつもりの太平洋戦争は、アメリカ人やイギリス人にとっては、ナチと四つに組んで戦っているのをいいことに、後ろから襲いかかってきた卑怯者との戦争にしかすぎない。
正面の門に大悪魔の軍勢が攻め寄せてきたときに裏庭からこそこそとはいってきて不意打ちをくらわせた卑劣な敵、というのが日本人のイメージで、まさか日本人に面と向かってそうは言わないので、日本の人はのほほんと「割とよくやった」と思っているが、当の「白人」たちのほうは、まったく異なる印象をもって戦争を記憶している。
日本人は八紘一宇の大義に燃えて、文字通り国運と自分の身命を賭してアジアのためにたちあがって反人種差別戦争を戦ったが、同じ戦争をアメリカ人は、ヒトラーが連戦連勝で勝ちすすみ、イギリスもロシアも全力を挙げて戦っても勝てず、欧州のパワーがアジアで萎んだのをみて、いまならアメリカが参戦しても二正面なので勝てる、と踏んではじめた「計算高い卑怯者相手の戦争」として戦った。
殺しても殺しても自分の生命ごと爆弾を叩きつけてくる薄気味の悪い敵にアメリカ側も完全に理性を失って皆殺しを神に誓っている。
「一億総特攻」を呼号しだした日本人たちの動向をアメリカ人たちは正確に知っていて、何度もカミカゼ攻撃をうけた爆撃手が
「I knew it would be a terrible loss of life to attack the mainland.」
とインタビューで述べている。
「Everybody was a walking kamikaze.」
本土から離れた沖縄島の攻略だけで12600人を失ったアメリカ軍は、将校から兵卒に至るまで、全国民が人間をやめてカミカゼになれと命じられた日本人が充満する本土に上陸すればどれほどの損害がでるかを考えて戦慄していた。
アメリカ人たちは、すでに欧州の主戦場で戦争が終わりを告げたのに、次から次に戦闘目的ですらなく飛び込んでは殺されにくる日本兵たちを殺し続けるのに疲れ果ててもいた。
西洋世界は、戦争が終わったあと、石器時代にもどってしまった都市の廃墟に立って日本人が求めたもの、その手ににぎりしめたいと思ったものは「自分が自分でいられる自由」だと思っていた。
安倍晋三が首相になって、高い支持率を誇っているのを見て、どうやらそれは間違いだったらしい、と皆が思い始めている。
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