2013/11/17

4号機のプールから核燃料取りだし始まる


4号機の燃料プールから、核燃料集合体の取り出しが始まった。最初は放射能をあまり帯びていない未使用燃料から取り出している。
それにしてもこのタイミングで、実は3.11の前から壊れていた燃料棒が数十本ありましたと「告白」した東電。もはやなにをかいわんやだなあ。
使用済み核燃料は剥き出しの状態だととてつもない放射線が出ているので近くに寄れば死んでしまう。だから取りだしからキャスクに収めるまでは全部水中で作業するわけだが、今回はプールの中に大小さまざまな瓦礫が落ちていて、それを取り除くところから始めなければならなかった。
目に見えるものはほとんど取り除いたらしいが、隙間に入り込んでいる細かなコンクリート片などは無理。それが挟まって燃料棒を引っ張り上げるときに損傷したりする恐れが大いにある。
これ↑は東電が公開した写真の1枚だが、見ると、水面ぎりぎりのところまで持ち上げないと移動させられないことが分かる。うっかり露出させてしまったりしたら途端にそこから強烈な放射線が飛び出してくる。
もちろん、遮蔽材として使われている水の層が薄い(つまり水面に近い)ほど水の放射線遮蔽効果は落ちるから、移動のために水面ぎりぎりにまで引き上げているときがいちばん恐ろしい。そのタイミングで大きな地震でもきたら、作業員は心臓停まるくらい怖いだろう。
なにもなくても、この場所は数十μSv/hの空間線量なのだし。

この作業、順調にいっても1年はかかるというから、途中で何か起きてずるずると遅れることが予想される。その間、大きな地震が来たら……と思うと、ほんとにひやひやする。
で、大きな事故が起きずにこれが終わったとしても、1~3号機は手がつけられないから、次の段階としては、鉛などによる石棺化の計画を綿密に立てていくしかないだろう。

で、ふと⇒これを読み返してみた。
AIC(Asahi Internet Caster)のコラムに連載を始めて2年目。69本目の原稿。
『電力不足より怖いもの』と題した文章。10年以上前、2003年4月に書かれている。

このときはまだ、こんなことを書いていた。

//原発は二酸化炭素を出さないから地球温暖化防止に役立つと主張するキャンペーンがあるが、原発完全停止の今、復活した火力発電のせいで二酸化炭素が増えて大変なことになると騒ぐ人はいないようだ。逆に、現場では天然ガス発電を増やさなければと躍起になっていることだろう。 追いつめられて、だんだん本音と事実が見えてくる。嘘がばれてくる。多分、もう大きく逆戻りはしない。利権がらみの様々な闘争を経ながらも、全体としては、原子力エネルギー開発は収束していく方向に向かうと、僕は思っている。//

つまり「いくらなんでも優秀な日本の企業経営者、官僚たちがそこまで馬鹿なことをし続けるとは思いたくない」と書いたわけだ。
ところが実際にはみんな想像をはるかに超えて馬鹿だった。これこそ「想定外」だ。
最後はこう結んでいる。

//書いてから10年以上経った今、僕は、この小説に込めた「志」を、再び噛みしめなくてはと、改めて心に言い聞かせている。//

……と書いてからさらに10年以上経ったわけだ。また噛みしめなくては……と思うのだが、正直疲れた。

で、その3年後の2006年1月にはこんなことも書いている
ホリエモンの逮捕……その裏で何が進行していたのか。今と変わらない。というか、今はもっとあからさまにこうした目くらましが行われている。

翌2007年1月にはこんなことも書いていた。
『日本が世界を破滅させる日』と題されたこの文章の最後はこう結ばれている。

//嘘はどこかで必ずばれる。嘘が大きければ大きいほど、嘘を続ければ続けるほど、取り返しがつかなくなる。 結局、事実を知っている者たちは、「せめて自分が生きている間は何も起きないでくれ」と祈っているだけなのだ。 大きな嘘がばれるとき……それは、日本が地球を破滅させる日になるかもしれない。//

それが自分が生きている時間内で起きてしまった。奇跡的な幸運によって、世界を破滅させるまでにはいかなかったが、そうなっていてもおかしくなかった。

2か月後の2007年3月にも書いていた。
『生きているうちに来る?1億総被曝の日』と題した文章。
最後はこう結ばれている。

//自分が生きているうちに、放射能汚染の修羅場を経験するかもしれない。その思いが、ひしひしと迫ってくる。 2度あることは3度ある、という。1度目(1991年2月美浜原発重大事故)と2度目(1999年6月志賀原発重大事故)の間は8年4か月だった。今回発覚した「2度目」に8年4か月を足すと、2007年10月になる。 生きているうちに、どころか、明日にも修羅場が待っているのかもしれない。//

これもまさにその通りになってしまった。
2007年10月の少し前、7月には、新潟県中越沖地震によって柏崎刈羽発電所で火災が起き、全面停止となった。
仏の顔も3度まで。そして次は8年も待ってくれなかった。3年8か月後の「フクシマ」。
あの頃、川内村の雑木林を見ながら書いていた文章を今読み返すと、虚しさ、無力感ばかりがつのる。

当時、朝日新聞のWEB版にこうした文章を載せることはかなり勇気が必要だった。紙版の新聞では無理だったかもしれない。
こうした文章をそのままWEB版に載せてくれた責任者は穴吹史士さん。その穴吹さんもその後、癌で亡くなってしまった。
書けば書くほど危険人物のレッテルを貼られ、書く場所もどんどん奪われていく。最後はこうして個人の日記レベルで書く。書き続ける。
しかし世の中は逆に、どんどん危険度を増している。

4号機より怖いもの

今いちばん怖いのは特定秘密保護法が制定されることだ。
これは要するに、馬鹿の集団が馬鹿じゃない人たちの意見も聴かず、馬鹿だけで重要なことを決めてしまいたい。そこに文句を言われたくない。責任の所在も見えなくさせたい。……そのための手段だ。
山本太郎が言う「これはクーデター」というのは言い得て妙。クーデターどころか日本国に対するテロと言えるだろう。馬鹿に数と権力を渡すとこういうことになる。
自民党が暴走するのをいさめる歯止め役になると言っていた公明党がまっさきに賛同し、みんなの党も日本維新の会もさっさと転んだ。もはや暴走機関車を止めるすべはない
祖父・鐸木巌は英語教師だったが、若いときにアメリカに十数年留学していて、帰国後も、アメリカに残っていた友人から向こうの情報を知るためにアメリカの新聞の切り抜きなどを送ってもらっていた。
しかし、戦争が始まるとそれを特高にかぎつけられ、アメリカのスパイではないかと身辺をかぎまわられていたという。
父はそのことを覚えていて話してくれた。今の日本はあの当時の日本ととてもよく似ている、と。
治安維持法のもとに、多くの人が弾圧され、投獄されたあの時代のことを覚えている世代はもはやほとんどいない。だからこそ、歴史に学ばなければいけないのに……。
こないだの選挙はそういう意味合いをもつ選挙だったのだけれど、ここまできてもまだ多くの国民は気がついていない。

もう手遅れかもしれない、この国は。



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