大学生数学基本調査 なるものが行われたらしい。
数学者で形成された社団法人「日本数学会」が大学生約6千人を対象に行った初の数学力テスト、だという。
これで、「平均」の意味が分かっていない大学生が24%もいた、というのがニュースになっていた。(上の1-1を間違えた学生が24%)
多分、(1)に○をつけた学生はほとんどいなかったのだろうが、(3)に○をつけた学生が結構いたんだと思う。「数学的」には明らかに間違いだけれど、多分、「経験則的」にはほぼこうだろうな……という判断が働いてしまったのだろうと思う。
で、正直に告白すれば、1-1 1-2 2-1 はできるけど、僕は2-2 はできない。↓
……なんて書くと、絶対にネット上で「たくきはこんな基本的な数学もできないバカだと自白している」とか騒ぐ輩が出てくるかもしれないが、解答を示されても「なんか、そんなのあったような気がするなあ……」という程度の認識。
そういえば「上に凸」って言い方、なんかやったような記憶がうっすらと……。このグラフも描いたような記憶がうっすらと……。
そもそも二次関数って、どういう意味合いのものだっけ?
まったく記憶がないということは、学んだとき(中学2年くらい?)以降、数学のテストをしなくなってから今まで、人生で一度も二次関数というものを使ったこともなければ必要としたこともなかった、ということになる。
間接的にでも必要が出てきたらそのときに調べたりするから、記憶は甦るはずなのだが、そういうこともなかった。
軽水炉のBWRとPWRの違いを説明しろと言われればすぐに図を描いて説明できるけれど、そういう理解においても二次関数というものは使う必要がなかった。もちろん設計者とか点検維持をする技師とかなら別なのだろうが。
で、思うのである。
SPEEDIのデータを官邸に渡さなかった、あるいは「訊かれなかったから進言もしなかった」とか言っている文科省とか原子力安全委員会とか保安院とかの連中は、みんなこの2-2は常識中の常識で、さっと応えるに違いないのだろうと。
二次関数の意味が分からない? バカじゃないのあんた……と言うに違いない。
アルファベットを書くのと同じくらいあたりまえの知識として持っているに違いない。
でも、国民の命を救うためにどうすればいいのか、自分で判断もできなければ、自分の職務がなんなのかという根本的なことを理解していない。
そういうのを バカ っていうんじゃないのだろうか?
これで思い出したが、先日、フェイスブックで、元旦の『朝生』に一緒に出た郡山市の農家・藤田浩志さんと、茨城大学の高妻孝光教授(専門は生物無機化学)との間で、日経の奇妙きてれつな記事についてちょっと盛りあがった。
きっかけは、(2012/02/18)夜、
日経がこんな記事を配信したことだった。
福島のコメ、汚染原因一部解明 東大
東京大学の塩沢昌教授は福島県内の一部の水田で収穫されたコメから、高濃度の放射性セシウムが見つかった原因の一端を解明した。セシウムは水田の落ち葉や雑草に付着し、落ち葉などが微生物で分解される際に放出され、稲に吸収されたという。苗を植える前に落ち葉などが分解してなくなってしまうよう、土壌をあらかじめよくかき混ぜれば吸収を減らせるとみている。
放射性セシウムは昨年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故で発生し、雨などで水田に落ちた。塩沢教授は収穫されたコメから高濃度の放射性セシウムが検出された5カ所の水田を調べた。いずれも土壌中では、落ち葉や雑草などが分解されてできた有機物の濃度が高かった。
セシウムは土壌の粘土層に固定されやすく、固定後は稲にはほとんど吸収されないとされる。調査した水田ではセシウムが落ち葉や雑草にくっついて粘土に固定されず、落ち葉などが分解される夏ごろに水中に放出された。水田の土壌は水が染み込みにくいのでセシウムはそこにとどまり、稲が水分を吸い上げる際に一緒に取り込まれたと考えられるという。
これを読んだ多くの人たちが、「なんじゃこれは?」と首をひねった。
//セシウムは水田の落ち葉や雑草に付着し、落ち葉などが微生物で分解される際に放出され、稲に吸収されたという。苗を植える前に落ち葉などが分解してなくなってしまうよう、土壌をあらかじめよくかき混ぜれば吸収を減らせるとみている//
……はああ??
そもそも、落ち葉だらけ、雑草だらけの水田なんてものはない。
まあ、獏原人村の田んぼとか「俺は耕さない。不耕起栽培でやるんだ」とか言っている人の田んぼは別だろうが、一般に米を出荷している田んぼではありえないこと。
//土壌中では、落ち葉や雑草などが分解されてできた有機物の濃度が高かった//
それは肥沃な「いい土」だってことだ。でも、3月の段階で田んぼには草も生えていなければ落ち葉も積もっていない。普通に土がむき出しになっていたはず。
//苗を植える前に落ち葉などが分解してなくなってしまうよう、土壌をあらかじめよくかき混ぜれば吸収を減らせるとみている//
……田植えの前には必ず土をかき混ぜるのよ。言われなくたってね。
//落ち葉などが分解される夏ごろに//
……だからそんな田んぼはないんだってば。
この記者は何をどう理解してこの記事を書いたのだろうか。
同じ内容を、翌日、
東京中日新聞ではこう書いている。
水田でのセシウム移行 雑草蓄積→水に放出→稲 東大の2教授らが解明
水田でイネに放射性セシウムが移行する仕組みを、東京大農学生命科学研究科の根本圭介教授、塩沢昌教授らが解明した。雑草など水田の有機物が事故直後にセシウムを蓄積し、それが水を介して稲に移行したという。
福島県では昨秋、福島第1原発からかなり離れた地域のコメから散発的に暫定規制値の1キログラムあたり500ベクレルを上回るセシウムが見つかったが、理由は分かっていなかった。
根本教授は、土壌ではなく、水から直接セシウムを吸収すると、高い濃度のセシウムを含むイネが育つことを実験室の水耕栽培で示した。1リットル中10ベクレルのセシウムを含む水で育ったイネから、1キログラムあたり5700ベクレルのセシウムが検出された。
水にセシウムが増えた原因は、有機物によるとみられる。塩沢教授は現地調査で、草や稲わらが多く、水がたまりやすい水田のイネから高濃度のセシウムが出ている点に着目。「春先の事故直後、大量に降ったセシウムを有機物が保持し、それが夏に分解したとき、水田の水にセシウムが放出され、イネに吸収された」と説明した。
津波に襲われた水田でも、海藻など有機物が表面に残り、イネへのセシウム移行率が高かったという。
塩沢教授は「セシウムを保持した有機物は多くがすでに分解したとみられ、今年はセシウムが大きく減ると考えている。地中へのすき込みや乾燥によって、水田表面の有機物を減らすことが鍵だ」と話している。
ずいぶん内容が変わっている。
それでも、話の内容はにわかには信用できない。
「春先の事故直後、大量に降ったセシウムを有機物が保持し、それが夏に分解したとき、水田の水にセシウムが放出され、イネに吸収された」
ほんとかいな?
//津波に襲われた水田でも、海藻など有機物が表面に残り、イネへのセシウム移行率が高かった//
津波に襲われた水田で作付けしたのかしら? 塩害がひどいだろうし、海草などの有機物云々より、海砂の流入がすごかったんじゃないだろうか。であれば、粘土質ではない田んぼでは、粘土がセシウムを吸着する比率が下がるから稲が吸い上げやすい……ということはあるかもしれないが。
とにかく何を言いたいのかさっぱり分からない研究発表と、そのいかがわしさを見抜けない記者が理解不足あるいは勝手な思いこみ、曲解で記事を無理矢理書いてしまった感が強い。
学者が言うことは全部本当だろうと思いこむのがまずダメ。
で、そもそも「地中へのすき込みや乾燥によって、水田表面の有機物を減らすことが鍵」とか言っているが、有機物が乏しい土でうまい米が作れるわけないだろうが。アホか。
ところで、話を大学生の数学力チェックに戻すと、このテストの前に行われたアンケートというのがある。
僕も記入してみよう……こんな感じかなあ。