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 たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ リターンズ』

 (週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)

 2009年執筆分

CATVでアナログTVが延命?

   政府が、日本ケーブルテレビ連盟(全国の330社が加盟)に対して、2011年7月の地上アナログ放送終了後も、3~5年間をめどに、地上デジタル放送の内容を「アナログ変換」して同時に送出するように要請するという。つまり、ケーブルテレビに入れば、当面、従来のアナログテレビでも、地デジをアナログ画質で見られるわけだ。
 これは、事実上、地デジを(普通に中継局を使って)「電波送信」して全国の世帯に届けるのは無理だという判断からである。
 山間地を中心とした難視聴地域にテレビ電波を届けるには、小規模な中継局をたくさん作る必要がある。ちなみに、従来のアナログ地上波中継局は全国で1万4800以上ある。このうちの1000局で、全視聴世帯の約9割をカバーできる。ということは、残り1割の世帯に電波を届けるために、1万3000以上の中継局が必要だということだ。
 この状態にするまでにも、全国のテレビ局は50年を要したわけで、地デジを文字通り「地上波」で全国全世帯に届けるのは到底無理なのだ。
 多分、ケーブルテレビを使ってもカバーできない残りの難視聴地域には、B-CASカード登録制により、首都圏の地デジ放送を、衛星を使って暗号化して送信するというような方法がとられるだろう。
 しかし、そうなると、地方の地デジ視聴者から、「難視聴地域のほうが、中央のテレビ局番組を全部ただで見られていいじゃないか。不公平だ」という反発が起きることは必至。
 地デジというより「アナログ放送廃止」をめぐる迷走は、まだまだ続きそうだ。
 (09/01/09 執筆)

女子マラソン解説者生き残り戦争

 今年の大阪国際女子マラソンは渋井陽子の完勝で、特にドラマや波乱はなかったが、解説やゲストに並べた往年の選手たちに興味が行ってしまった。
 競技場に作られた特設スタジオには高橋尚子が「ゲスト」という肩書きで「MC」の小倉智昭の隣に座り、それとは完全に別室の「放送席」には「日本陸連理事」の「解説」有森裕子がいて、第一放送車にはおなじみ「スポーツジャーナリスト」の増田明美、バイクリポートには「スポーツコメンテーター」の千葉真子という面々。関西テレビ気合い入ってるな、と言いたいところだが、呼びすぎではないか>関テレ
 元選手4人をバラバラに配したのは喧嘩しないようにという配慮なのかと勘ぐってしまったよ。
 事実、4人がのびのびと話せたかは疑問。駅伝中継では瀬古利彦のおやじボケに鋭いツッコミを入れる増田も、実況の馬場鉄志アナから、「癒される声の増田明美さん」と紹介されても完璧にスルー。中継中、一度だけ有森に絡もうとしたが、有森がクールに流したので話が続かず、凡打に終わる。
 唯一増田らしかったのは、いちばんの見所だった渋井のスパートのときにCM入りしてしまったのを、放送車内で騒いでいたらしかったこと。実況アナに、
「CMが長いなんて言わないでください増田さん。民間放送なんですから」とたしなめられていたが、そのシーンは流れていないので、これも実況アナの完全な空回り。
 その空回りの馬場アナから「ベストスマイル」と紹介された千葉ちゃんは、落ちていく選手の背後で「いつものストライドの伸びがないですね~」と、相変わらずの脱力系ボイスでリポート。あの声が耳に入ったランナーは、それこそ二度と盛り返せなくなるだろうなあ、と心配であった。
 Qちゃんの引退でますます生き残り競争が激化した女子マラソン解説者戦争だが、少なくとも「いっぱい呼べばいい」ってもんじゃない。牽制し合って、個性を消すだけだわ。
 有森の根暗な声でまじめくさった解説聞いているよりは、松野明美のバイクリポートとかを見てみたい。
 有森も、あの声で「なにげによく最後まで粘りましたよね」とか言って、なにげに馬脚を現す、の巻。

  あと、脇田のこと、「Qちゃん二世」とかいって、やたら盛り上げようとしていたのが……ねえ。いつもの悪いくせだよ、民放の。脇田は最後の走りを見ていると、脚を痛めた感じだったね。
8位扇が27分56秒、9位脇田が31分16秒で、その差は3分20秒(1km!)もあるのに、扇のことは何も言わないで、脇田のことばっかり言っている。なんだろねえ、あれは。それこそ、頭角表す前に、テレビにつぶされちゃいそうで怖いなあ。
(09/01/23執筆)

『インドの牛乳屋さん』の編曲者はギャラいくらだったのか?

   2月3日に放送された『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)は、テレビ朝日開局50周年記念の3時間特番だったが、メインメニューだった狩野英孝のドッキリ企画がネットで話題になっている。狩野をCDデビューさせると騙し、仕出し観客1000人のデビュー記念ライブまでの記録というもの。あまりにも見事な出来映えだったので、個人的には狩野が100%騙されていたとは信じられないのだが、まあ、それはどちらでもいい。
 考えさせられたのは、「金をかけさえすれば、どんなものでも売り出せるし、形になる」ということだ。アイドルやヒット曲はこうして作られるという、実に見事な「教育番組」だった。
 ところで「デビューCD」に入れるために録音した5曲のオリジナル曲はなかなかなもので、中でも『インドの牛乳屋さん』は、グーグルでの検索ワードを急上昇するという人気ぶりだ。
 狩野の未完成なモチーフを、アレンジャーが細部にわたってうまくリファインしていたが、結局、今の音楽制作って、そういうことなのだろうな。他にも、バックダンサーの演出や、背景に流れていたCGなども相当金がかかっており、一体、総額どれだけ注ぎ込んだのか気になる。
 CDにはしない、というが、現代はもうCDの時代じゃないから関係ないのだろう。ケータイ用にダウンロードはできるようになっているから、反響次第では後から商売にできる。
 ちなみに、エンドテロップを何度も見たが、アレンジャーの名前は出てこなかった。あれだけ見事な仕事をしたのに、「買い取り」で、安いギャラだったのかしら。個人的には、そのへんがとても気になっている。
(09/02/03執筆)

やっぱりR1がいちばん面白いが……

 今年の『R-1ぐらんぷり』(関西テレビ)決勝はレベルが高く、堪能できた。ピン芸人はコンビやグループの芸人に比べて芸にストイックなのだね。
 新ネタを用意してきた芸人が多かったのもレベルを一気にあげた要因だろう。バカリズム、鳥井みゆき、COWCOW山田よし、中山功太は、完全な新ネタをひっさげてきて、その内容もよかった。ただ、日頃彼らの芸を見ていない審査員には、新ネタも使い古しネタも同じインパクトになってしまう。そのへん、新ネタ組は可哀想だった。
 全員が600点以上という点数バブルも気になった。最下位の夙川アトム622点でさえ、平均89点。優勝の中山功太の683点は実に平均98点である。
 出演順3番のバカリズムが672点(平均96点。審査員の清水ミチコは100点をつけた)を出したときは、これで優勝は決まりだと思ったが、次のエハラマサヒロがそれを上回ったとき、これは……とまたあの悪夢がよみがえった。事実上の主催者であるよしもとの芸人(優勝・中山、2位エハラマサヒロ)に点数が甘いのである。決勝進出10人のうちよしもと所属は4人だが、全員が5位以内。下位の5人は全員よしもと以外だ。
 逆に、敗者復活を決めるサバイバルステージは一般審査員195人+ゲスト5人が選考する形(満点は1000点)だったが、1位の岸学、2位夙川アトム(共によしもと以外)の840点、630点に対して、9位友近、10位天津木村(共によしもと)は、160点、140点という異常な点数の低さだった。
 お笑いをまともに審査するのは今後も無理と諦め、ただ楽しむしかないのかな。
(09/02/23執筆)
 

WOWOWドラマのここが残念

   僕はWOWOWで映画を見ることはほとんどない。映画の視聴は、ネット経由のオンデマンド配信やDVDレンタルというスタイルのほうが自由度が高いと思うし、実際今後はそうなっていくだろう、WOWOWで見るのはテニス中継と、たまにやるお笑い系のライブくらいだ。
 2003年から始まっているWOWOWのドラマWシリーズには期待しているのだが、やはり上質なドラマは一朝一夕にはできないようだ。
 著名な役者を揃えれば上質なドラマができるわけではない。オーディションをして才能ある新人を発掘したり、脚本を一般公募してみるなどの地道な努力が必要なのだと思う。
 最近いちばん勘違いしているなと思ったのは、ドラマWではないが『超人ウタダ』という連続ドラマ。35歳までは死なない身体を持つ刑事(塚地武雅)が、自分の前世だという殺人鬼(片桐仁)に殺人をそそのかされながら、不正に満ちた警察署内で働き続けるという、なんともストレスがたまるお話。ストーリーのひどさもさることながら、お笑い界の至宝ともいえる塚地と片桐、さらには脇役では東京乾電池の脚本家でもあった岩松了などの「無駄遣い」ぶりに腹が立つ。彼らの才能はこんな役柄や凡庸な演出で発揮されるものではない。適材適所というのを考えてほしいのである。
 こんな的はずれなドラマを作るくらいなら、塚地と片桐のお笑いコラボとか、ラーメンズやドランクドラゴンに30分丸ごと書き下ろしコントを披露させる番組にしてくれたほうがどれだけ多くの契約者を獲得できることか。WOWOWの「分かってなさ」には困るなあ~。
(09/03/07執筆)
 

定額給付金報道の腰砕けぶり


 あれだけ批判されていた「定額給付金」だが、この馬鹿げた施策を糾弾する論調はすぐに消えて、いざ各自治体で給付が始まると、テレビ局はどこも「始まりました」と、まるで桜の開花前線を報じるかのような能天気さで報道した。
 特にひどいのは地方局だ。
「我が県で最初に給付が始まった××村では……」といった調子で記者が役場前に出向いたり、通行人にインタビューしたりする。そこで映し出される映像はどれも「家計が苦しいときなので、ほんとに助かります」「これでおいしいものでも食べに行きます」「まずは我が家の大蔵大臣に渡してからどう使うか相談します」などといったお代官様のお慈悲に感謝的なものばかり。なんですか、これは。
 こんなアホなことをする政府にこれ以上政治をやらせていていいのか、という正論は見事なまでに消えてしまっている。
 この変わり身の早さ、反省のなさ、上が決めてやっちゃったことは認めるしかないという受け身姿勢こそが、今の低レベル政治を許してきた土壌だ。為政者の「金を握らせればなんとかなるだろう」という最低最悪の発想を、大胆不敵にも国民全体に向けて実行に移したという、歴史上に残るであろう愚政が今回の定額給付金なる施策だ。
 これを許しただけでなく、何の批判もなく、花見のようなお気楽さで報道するテレビ。年金をごまかされても泣き寝入りし、現金をばらまかれればニコニコ受け取る。
 こんな国になってしまったことを戒め、これでいいのかと啓発することこそメディアの使命ではないのか。いよいよ、ホントにダメですね、この国は。
(09/03/21執筆)

「スポーツバラエティ」改革案

 
 番組改編期には必ず出てくる芸能人が体力ゲームを競うバラエティ特番。『DOORS』(TBS系)をちょろっと見ながら、なぜつまらないのかをつらつらと考えていた。
 そういえば、最近面白いのがあったなあ、なんだったっけと思い出したのが『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)の特番でやった「ビーチバレー対決」。浅尾美和・西堀健実ペアに対して、7人のビーチバレー素人が挑むというものだが、今年1月の特番では、セッターに全日本現役選手の竹下佳江を入れて迎え撃った。このとき、フルセットまでもつれ込む大接戦にした立役者はハンドボールの宮崎大輔だった。ひとりで次々にスパイクを決め、浅尾・西堀ペアを何度も粉砕していた。
 宮崎大輔はTBSの『壮絶筋肉バトル!!スポーツマンNo.1決定戦』で2006年、2008年、2009年と3度も優勝している。やはり本物は何をやらせてもできちゃうのねと感心したものだ。そうそう。お遊びとはいえ、どうせならこのレベルのものを見たいのだわ。
 若手芸人が絶叫しながら水の中にジャボンという図はもう完全に見飽きた。彼らには本業の芸をもっと磨いてもらい、芸で楽しませてもらいましょうよ。
 ペナルティやナインティナインなど、運動能力が売りの芸人は、いっそスポーツバラエティ芸人に専念してもらい、一線を引退した元一流スポーツ選手らも入れて、演出なしのドラマチックなお遊びを見せてくれたほうが、視聴者は納得できる。
『筋肉バトル』ほどハードすぎず、かつスリリングで興味深い真剣勝負とはどんなものか?
 ぜひ考えてくださいよ。
(09/04/05執筆)

大河ドラマの画質は4種類ある

   NHKの連続テレビ小説と大河ドラマは、NHK総合(地デジとアナログ)、BS11、BS-hiと4つのチャンネルで時間をずらして放送している。
 そこでクイズ。この4つを画質のいい順番に並べましょう。
 ……答えの前に解説を……。
 誰でも分かるのは、アナログ放送とデジタル放送では画面比が違うということ。アナログは画面比が4対3だが、他の3つのデジタル放送は16対9のワイド画面だ。
 では「きれいさ」、つまり解像度はどうだろうか。
 アナログ放送は走査線525本の飛び越し表示といって、画面を横に走る線525本を1本おきに表示させている。このため、有効な走査線数480本程度といわれており、これをデジタル放送と同じ「解像度」で無理矢理表すと、640×480ドット(30万7200画素)相当になる。
 地デジとBS-hiはどちらも「ハイビジョン放送」だが、地デジは信号送出時の解像度が1440×1080で、これを比率にすると4対3になる。4対3なのになぜ16対9になるかというと、再生時に横方向だけを延ばして表示しているからだ。つまり、縦方向より横方向のほうが若干解像度が低い。
 BS-hiは送出時の解像度が1920×1080で、縦も横も同じ比率で表示している。
 BS11は16対9画面ではあっても解像度は標準画質で、アナログ放送と同等だ。
 というわけで、答えは、
  1. BS-hi
  2. 地デジ
  3. BS-11
  4. アナログ放送(解像度的にはBS-11と同程度だが、画面が狭く、ゴーストも出る分不利)
の順にきれいなのである。
(09/04/17 執筆)

『魔女たちの22時』は即改革を

   4月から始まった新番組『魔女たちの22時』(日テレ系)。初回を見て、「なぜこれだけ面白い素材を用意していながら、こんなにつまらなく演出できるのか」とあきれ果ててしまった。
 例えば、「ミス・ビキニ・ユニバースなのに60億人の前でアレを投げちゃった魔女」というトピック。パラグアイのやり投げ五輪(アテネ、北京に出場)選手、レリン・フランコをスタジオに迎えながら、ドレス姿のままやり投げのポーズをとらせただけ。なんともったいない!
 競技場を借りて日本の男子大学生選手と競わせるとか、室伏広治とやり投げ対決とか、どきどきする企画がいくらでもできるのに、何をやっているのか。
「息子の友達からプロポーズされまくる53歳の魔女」は、いわゆる熟女美人ネタだが、これはどっきり風に20代女性に混ぜてプロポーズ大作戦ゲームをやるとかでしょ。それなのに、再現ドラマだって……アホか。
「一瞬だけ500倍かわいくなる魔女」は、ケータイ内蔵カメラで本物よりずっと可愛く自分を撮れる女性の話だが、これは逆に、ほんとはキレイなのにブスに写る女性と混ぜて、写真を男の子に人気投票させ、ご対面させるとかだろう。そのくらい、誰でも考えつく演出なのにやらない。この手抜きはなんだ?
 まずスタジオを捨てなさい。ゲストやレギュラー陣も全員解雇。もっと素材(元ネタ)に集中して、それをいかに面白く視聴者に伝えられるかという原点に立ち戻りなさいよ。
 ちなみに、最後のくわばたりえの恋人が番組中にプロポーズというネタも、別番組で1本にするべき。中途半端なネタの消化で、もったいなかった。
 
(09/04/24 執筆)

コメンテーター竹田圭吾氏に期待

 以前、このコーナーで『ブロードキャスター』(TBS系、08年9月に終了)にコメンテーターとして出演していたビル・トッテン氏をほめたことがある。
「地球は膨張しないのだから、人間が増え続け、経済が無限に成長できるはずがない」というあたりまえのことをテレビで堂々と発言したことなどが印象に残っている。このあたりまえのことが、メディアではタブーになっているからだ。
 トッテン氏をその後テレビで見ることはほとんどなくなった。いいコメンテーターは、必ず急に消えてしまう。
 今、少し期待しているのが竹田圭吾氏だ。ニューズウィーク日本語版編集長という肩書きで、
『やじうまプラス』 (テレビ朝日系)、『サキヨミLIVE』 (フジテレビ系)、『情報プレゼンターとくダネ!』(フジテレビ系)と、多くの情報バラエティに出演している。
 草彅剛が、夜中に公園で一人酒の余韻を楽しんでいた事件では「メディアが騒ぎすぎだし、厳しすぎる制裁だ」と冷静に擁護。新型インフルエンザ騒動では、発生直後に「わざわざ『豚インフルエンザ』と『豚』をつける必要はない」と指摘。世界保健機関(WHO)が「豚インフルエンザではなくインフルエンザA(H1N1)と呼び方を改める」と発表した4月30日以前のことだったと記憶している。
 竹田氏は「いかに見ている人の視点に立たないかというのを意識している。普通に見て、他の人が話しているのを聞いて、同じことを言ったら意味がない」(イー・ウーマンの対談)と言っている。竹田氏のようなコメンテーター、キャスターが、あと5人は出てきてほしい。
 (09/05/18 執筆)

『笑神降臨』はなぜ終わったの?

『笑神降臨』が、たった8回で終わってしまった。
「NHK番組たまご」(新番組のテスト版的単発番組)でバナナマンが出てきたときも、これは絶対にレギュラー化すべしとこのコラムでもプッシュしただけに、拍子抜けしてしまった。
 単純にコンテンツ不足になったのであれば、本来実力がある芸人をテレビが酷使しているせいだ。昨今の「はんにゃ」の酷使ぶりなどは目に余る。普通にネタをやらせていれば、もっと大きくなれる逸材なのに。
『笑神降臨』は、毎回違う芸人を呼ぶ必要はない。番組に出た時点で「殿堂入り」と見なし、新ネタをひっさげてくることを条件に、何度でも出せばよい。
 しかし、そうなると、売れている芸人にネタを練り上げる時間を与えない吉本所属の芸人はきついだろう。いっそ、吉本「以外」の事務所が、ネタを書ける芸人を壊さぬために「実力派同盟」を組んだらどうか。
 マセキ芸能社はバカリズムややまもとまさみ。人力舎からは、東京03、ドランクドラゴン、おぎやはぎ、キングオブコメディ、ラバーガールと人材が豊富。鳥居みゆき(サンミュージック)も、実はあの芸風を支えているのは緻密に計算されたネタであり、長丁場も大丈夫である。
 バナナマンを擁するホリプロコムには、実力も経験もありながらなぜか売れないX-GUNがいる。サンドウィッチマン(フラットファイヴ)も忘れてはいけないが、不思議なことにサンドウィッチマンは未だにNHKのオーディションに合格していないらしい。本当か?
 そうそう、『笑神降臨』であれば、別格であるラーメンズも出演するのではないか。
(09/05/30 執筆)

ツッコミの才能が芸人寿命を決める

『やりすぎコージー』(テレビ東京系)で「演技のうまい芸人は誰か」という企画を過去2度やった。2回目では、山崎邦正、バナナマン日村、なだぎ武、カンニング竹山、森三中の村上と黒沢、オードリー春日の7人が審査されていたが、山崎以外はみんなまともな演技ができることを証明してみせた。
 演技力、あるいは演技しているときのオーラというのは天性のもので、経験で身に付くものではない。また、派手なキャラ作りや一発狙いのギャグで売れても、基本的に演技力のない芸人は絶対に長続きしない。
 その意味で、芸人コンビやグループの寿命を決めるのは、人気者になりやすい強烈なボケ役ではなく、それを生かすツッコミの才能だろうと思う。
 例えば、キングオブコメディの高橋健一。今野を生かすためには絶対必要な存在だ。高橋の代わりをラバーガールの飛永翼がやっても「ちょっと違う」と感じてしまう気がする。
 キャラが強すぎるボケ芸人に比べ、一見地味なツッコミ芸人は映画やドラマに使いやすい。
 ザブングル松尾陽介やハイキングウォーキング松田洋昌は、相方のキャラが派手すぎて評価されにくいが、映画の脇役(例えば台詞が少ない、性格異常の犯罪者役とか)に起用したら、そこそこ器用にこなしそうだ。
 どんな役もそつなくこなせそうなツッコミ代表は、はんにゃ川島章良とフルーツポンチ亘健太郎。この二人は構成作家が手抜きで書いたような演目でも、脇で実に細かい演技をしている。
 どんどん幼稚化、陳腐化が進むお笑い番組だが、こんな視点で見ていると、違う楽しみ方ができるかもしれない。
(09/06/13 執筆)

足利事件再審決定とテレビ報道

 1990年5月に足利市内で起きた4歳の少女殺害事件の犯人とされ、服役していた男性が、先日「無実の可能性が高い」として釈放され、再審開始が決定した。事実上の無罪確定だ。
 この冤罪事件を、テレビはどう伝えたか。
 17年以上も自由を奪われた冤罪の犠牲者・菅家利和さんを「悲劇の人」として映し出すばかりで、なぜこの冤罪事件が起きたのかという検証に取り組む報道は少なかった。
 管家さん逮捕の決め手になったのは、殺された少女の下着に付着していた精液をもとにしたDNA鑑定だが、この下着は少女の遺体が発見された渡良瀬川河川敷から泥だらけの状態で見つかり、DNA鑑定をしたのは発見から1年3か月も経ってから。しかも、その長期間、下着は常温保存だったという。
 他にも、驚くべきでたらめがいくつもまかり通っていた。
 そうした問題点を伝えたテレビの報道番組は、今回の冤罪証明を援護した。これこそ報道本来の姿だろう。
 しかし、ようやく冤罪が事実上確定した後に繰り返し流れたのは、殺害された少女の遺体発見現場で黙祷を捧げる管家さんの姿や、頭を下げる県警本部長の姿など、情緒的な絵作り場面ばかりだった。
 どのメディアにも、簡単にできる検証がひとつある。それは、管家さんが犯人とされたときに、自分たちはどのように報道したかを振り返ることだ。犯人と決めつけるような表現はなかったか。DNA鑑定という当時の「おいしいアイテム」に飛びついた安易さはなかったか。
 これができないうちは、足利事件報道は終わらない。
(09/06/25 執筆)

ナマドル、逆境アイドル人気の構造

 最近、ナマドル(訛りを売りにするアイドル)や逆境アイドル(すさまじい子供時代を過ごしたアイドル)がバラエティ番組で重宝されている。
 前者の代表は佐藤唯、後者の代表は上原美優。
 視聴者が、ただ美形なだけの女性タレントに飽きてきた頃、金持ちでタカビーなキャラクター(西川史子や叶恭子)が香辛料代わりに使われ始めた。それも飽きてきた頃合いに、隠し味的な調味料としてうまくはまったのが、訛りや逆境といったキャラだったのだろう。
 二人とも、「俺が俺が……」の芸人たちの中に置かれたとき、自然体で、物欲しそうにしていないところがいい。意外と長続きするかもしれない。
 似て非なるものとして「ローカルタレント」という人たちがいる。地方局だけで活躍するタレントたちだが、彼ら、彼女らの多くは、芸が小さくまとまってしまっていて、中央で活躍するには厳しい。地元のおばちゃんたちをいじる手法や、ローカル企業やイベントのヨイショ的リポートに慣れきっていて、そこから計算外の面白さが生まれてこない。大阪で人気の芸人が東京進出に失敗する例なども、そのパターンに近いだろうか。
 そう考えると、ナマドルや逆境タレントが長続きする秘訣は、いつまでも芸能界に「馴染まない」ことかもしれない。
 その道では吉田真由子という大先輩がいる。『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)のアシスタントになったのは94年。それから15年、棒読み口調と、ぼーっと突っ立って、たまに言いたいことをボソッと言うというキャラで生き延びている。
 いいお手本かもしれない。
(09/07/07 執筆)

日食生中継なぜBSでやらない

 7月22日、日本で46年ぶりに皆既日食が見られるということで、事前にメディアがかなり盛り上げていたが、当日は全国的に曇りか雨。テレビできれいな映像を見ればいいや、と、早々と「生」で見るのは諦めていた人も多いだろう。
 ところが、当然やるだろうと思っていた皆既日食生中継は地上波だけで、BSではやらなかった。地デジを高解像度テレビで見ている世帯は、まだ日本の全世帯の半分にすぎない。
 我が家のように、地デジ対応テレビを持っていても、電波が届かず、ケーブルテレビもIPテレビもサービス圏外という場所では、高解像度映像はBS/CSに頼るしかない。でも、地デジを見られない人たちは、この46年ぶりの天体ショーをきれいな映像で楽しんではいけません、ということなのね。
 ちなみに、地デジの映像は高解像度放送だが、送出時の解像度は1440×1080(横長の長方形画素)であり、BSデジタルで一般的な1920×1080(正方形画素)よりは解像度が若干落ちる。つまり、NHKで最も解像度の高い映像は地デジのNHK総合ではなくBS-hiだが、NHKではその時間、BS-hiではのんびりと『お好み寄席』をやっていた。寄席をワイド画面の高解像度映像で見る必要はまったくない。
 NHKだけでなく、貴重なBS電波インフラを有効に使おうとせず、通販番組で埋め尽くしている民放局に対しても、視聴者はもっと怒るべきだ。
 そもそも、BS、CS、インターネット高速回線を使ったIPテレビを有効活用すれば、地デジをムキになって完全普及させる必要はないのである。
(09/07/22 執筆)

『爆笑レッドシアター』の良心

 現在、民放のお笑い番組でいちばん良心的に作られているのは『爆笑レッドシアター』(フジテレビ系)かもしれない。
 姉妹番組?の『爆笑レッドカーペット』は、番組スタート時にあった緊張感が消えてしまい、マンネリ気味。1分ネタで「使い回し」を許してはいけない。
『ザ・イロモネア』(TBS系)は、無作為に選ばれる観衆の中に、絶対に笑わない人がいたりすると、出来のよい芸人がいきなり落ちたりすることがあって、システム自体の欠陥がある。
 いっそ、観客全員をスタッフが分担して観察し、全体の何割が笑っているかをリアルタイム表示させる「野鳥の会方式」にでも変更したらどうか。
『エンタの神様』(日本テレビ系)は、あまりにも学芸会化、幼児化してしまい、もはやお笑い番組とは違うジャンルの番組になってしまった気がする。
 そんな中で『レッドシアター』だけは、今のところ、毎回新ネタを見られる。局内事情でのタイアップなどがうっとうしいが、これは制作者や出演者の責任ではなく、局の「組織」の問題。
 おそらく、この番組は、ホスト役である内村光良の資質が大きく影響しているのだろう。コントにこだわる、ネタ作りにこだわるというという姿勢。
 内村は、お笑い界の中では、評議委員会議長という役割を果たし始めている。『ザ・イロモネア』の司会をしながら、自らもピン芸人「ザ・テルヨシ」として出演するなど、コントへの愛を失っていないところがいい。この姿勢を、若手芸人たちも尊敬しているに違いない。
 この「志(こころざし)」こそ、今のお笑い界、お笑い番組が失ってしまったものなのだ。
(09/08/06 執筆)

世界陸上今回もちゃんと見てるよ

 今回も、BSで生放送をやってくれないため、地デジ対応テレビがありながら電波が届かない我が家では、ボケボケのアナログで見るしかなかった世陸。
 織田裕二は今回妙におとなしく、今までのテンションを知っている者としては、なにをそんなに不機嫌になっているんだと思ってしまうほどだった。山本高広のものまねを意識したのか。
 昨年末には、織田の所属事務所が「本人のイメージを尊重していただくようなものまねのルール作りをお願いしたい」と言って不快感を表明したという話も伝わっていたが、感謝こそすれ、何を無粋な……ねえ。
 それ以外の「ちゃんと見てるよ」ポイントとしては、
  1. 国際映像より日本のカメラの独自映像のほうが映像がきめ細かかった。
  2. ボルトが100m、200mでとんでもない記録を出したが、あのときにメインキャスターの織田裕二や「スペシャル」キャスターの高橋尚子の表情をずっと映していたカメラマン、背中側で歴史的なドラマが起きているのに、それを見ることを許されないなんて、ああ可哀想!
  3. ゼッケン番号に記されたスポンサー名が、男子はTDK、女子はトヨタ。世界のトヨタも、独占する力がなくなったのか?
  4. 女子1万メートルで中村友梨香が、2人のケニア選手、3人のエチオピア選手、1人の米国選手に次いで7位入賞という快挙を達成したのに、ゴール前の映像はなく、ゴール後は、身長142センチの佐伯由香里がダントツのビリでゴールしたのが場内で大喝采を浴びてまったく目立たないまま。でも、地味女王にこそ輝かしい未来がある!
あたしはちゃんと見ているよ。
(09/08/21 執筆)

2009衆院選報道を振り返る

 今回ほど選挙速報が待ち遠しかったことはない。開票直前の各放送局の予測では、自民は96(日テレ)~106(テレ朝)。民主は315(テレ朝)~326(テレ東)だった。しかし民主党の全立候補者は330人。比例区で不足が出るぞ、と思っていたら、案の定、近畿ブロックで2議席も足りなくなり、自公候補へ譲るという大失態。
 結果、メディアが騒ぐほどの「民主圧勝」ではなかった。改選前の自公連立与党の議席数は331もあり、民主党が取った308議席はそれより23議席少ない。そういう伝え方をするメディアはなかったが。
 開票速報は福島県内で見ていたが、NHKも含めて、地上波がすぐに県内の候補者情報になってしまい、全国の様子が分からないのにはいらいらさせられた。仕方なく、NHKのBS1とBS11デジタル(ビックカメラ系列)を交互に見ていた(他のBS民放では平気で通販番組などを流していた。呆れる)。
 BS11は共同通信社からの情報を中心にスタジオ構成していたが、司会役の二木啓孝氏(BS11の取締役でもある)は他局にゲスト出演しているときよりもずっとおとなしかった。
 ブログでは、「吉田茂が『バカヤロー解散』なら、孫の麻生は『バカヤローの解散』だといった政治家がいた」など、面白いことを書いている二木氏だけに、もっとはじけてくれてもよかったのに、残念。
 それにしても、NHKのアナログハイビジョン廃止跡地に一緒に入ったTwellVが1日中通販番組を流し続けているのに比べれば、BS11は一応「報道制作」がある分、頑張っているとは言えるか。
(09/09/04 執筆)

WOWOW制作番組への期待

 2011年は、地上波アナログが完全終了すると予告されているが、BSアナログ放送も終了する。こちらのほうがむしろ延期がなさそうな分、確実だ。
 現在、BSアナログはNHKBS1とBS2、およびWOWOWが、デジタルと同じ内容を同時放送している。2011年にこれがなくなり、空いた電波の「跡地」には、スターチャンネル(映画)×2、アニマックス(アニメ)、そしてWOWOWの新チャンネル×2が入る。
 英国営放送BBSの申請を総務省が却下したのは許し難いが、WOWOWが3倍になることには大いに期待している。
 WOWOWといえば、今までは映画ばかりという印象だったが、このチャンネル増で、一気にオリジナルのドラマや舞台中継などが増えてほしいものだ。
「ドラマW」というWOWOWオリジナルのドラマ制作には、地上波民放では絶対できそうもない硬派な内容のものがある。
 過去の作品では、自動車会社のリコール隠しが人命を奪う事故につながった事件を題材にした『空飛ぶタイヤ』なんて、絶対に地上波民放では作れない。
 今放送している『ママは昔パパだった』も、タイトルはコメディ風だが、性同一性障害者が法改正に立ち上がるという、見方によっては相当重たい内容。
 実に真面目に作られていて、なかなか見せる。ドラマWはまだ試行錯誤状態と感じるが、このまま臆せず、あらゆる可能性を試し続けてほしい。2011年のチャンネル3倍増の頃には、かつての「ドラマのTBS」ならぬ「ドラマのWOWOW」になっている、なんてことも夢ではないだろう。でも、できれば視聴料は据え置き希望だわ。
(09/09/15 執筆)

25年前のたけしを今楽しむ至福

 CSのフジテレビONEで、ときどき『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』を放送している。懐かしいビートたけしの冠番組だが、調べてみたら第1回が放送されたのは1983年3月。四半世紀以上前のことだ。ほんの数年前に見ていたような気がするが、本誌読者の中には、まだ生まれていなかった人も多いだろう。
 当時、たけし番組の構成をやっていた景山民夫(故人)が、ロス疑惑事件の三浦和義(故人)に扮して出てきたり、小川宏、俵孝太郎、露木茂、佐々木信也といった、当時の人気アナウンサーやスポーツキャスターを引っ張り出してきたり、今ならば絶対「ピー」が入るような危ないギャグを連発したり、たけしが今以上にやりたい放題やっていた時代だ。
 当時話題になった予備校生が金属バットで両親を殴り殺した事件などを、実名のままギャグにしていたりして、今見るとびっくりする。
 そのまんま東(現宮崎県知事)は、当時からつまらなかったなあ、とか、ツーツーレロレロで東の相方だった大森うたえもん(たけしにとっては東に次ぐ二番弟子)は今どうしているのかしらとか、大島渚や坂本龍一って、なんでこういう番組でコントやっていたんだろうとか、本当にいろいろな驚きやハテナ、新発見がある。
 今のお笑い番組はもう腹一杯で食えないよとそっぽを向きつつある人は、80年代のお笑い番組を振り返るのもいいかもしれない。いや、当時を知らない人たちにとっては「振り返る」のではなく、初体験になるわけで、どんな風に感じるのか、ぜひ感想を聞いてみたいものだ。
(09/09/30 執筆)

新型インフルエンザ報道の裏側

 今年4月下旬にメキシコで「豚インフルエンザ」が発生して、感染者1000人、死亡者20人に拡大しているという内容が発端だった「新型インフルエンザ」報道。その後、国内最初の感染者を追跡するだの、入院している病院の前から中継するなど、馬鹿げた報道をしていたが、最近では新型インフルエンザと従来の季節性A型インフルエンザを特に区別する必要はない、といった治療方針を打ち出す医師も出てきている。
 タミフルが効くかどうかも分かっていない時点から、タミフル備蓄を急げといった論調の報道も相次いだ。おかげで、多くの日本人はタミフルという薬を、名前だけはよく知っている。
 タミフルは、ブッシュ政権時代のラムズフェルド元国防長官が会長を務めていた米国ギリアド・サイエンス社が開発し、ライセンスを持っている。同社の大株主であるラムズフェルドは、タミフルが売れれば売れるほど儲かり、米共和党政権を支える資金にもなっていた。
 これは米国CNNが報道したことで世界中に知られていることだが、なぜか日本では報道されない。ちなみに、タミフルの筆頭輸入国は日本だ。
 先日放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀・新型インフルエンザを食い止める』の中では、ロシアがWHOが提供しようとするタミフルを拒否していると受け取れるシーンがあった。その理由はなんなのかを追うことこそ本当のドキュメンタリーだと思うが、同番組では、他の番組同様に、タミフルを肯定し、新型インフルエンザ脅威を訴える方向性だった。
 報道番組も、裏の裏まで読まないといけない時代になった。
(09/10/19 執筆)

「地球温暖化防止」という枕詞

 テレビをつければ、必ず出くわすフレーズがある。
「地球温暖化」「二酸化炭素」「温室効果ガス」……。
 広告でも、背景には風車だの氷の上のシロクマだのペンギンだのの映像が映っている。
 これだけ繰り返されると、「地球は丸い」「水がなければ生きていけない」というのと同じように、議論の余地のない常識のように思いこまされるが、実はそうではない。
 二酸化炭素が増えるから温暖化するのではなく、暖かくなると海水温度が上がり、海中に溶けている二酸化炭素が空気中に放出される(原因結果が逆)。
 最大の温室効果ガスは水蒸気であり、二酸化炭素の温室効果は主に温帯より寒い地域で働く。
 現在まで続いている温暖化傾向は化石燃料の使用が急増する前、1800年頃に始まっている。そもそも、温暖化するより寒冷化するほうがはるかに怖いということは歴史が証明している。穀物がとれなくなり、食糧を巡って戦争が起きるからだ。
 ……こうした別の視点をまったく提示することなく、「温暖化防止」と一方的に、繰り返し叫ぶのはなぜなのだろうか。
 最近、風力発電による環境被害や健康被害(風車が発する低周波騒音や耳に聞こえない超低周波が原因と思われる)がようやく問題にされるようになったが、これも必ず「地球温暖化防止のために風力発電は絶対に必要ですが……」という「枕詞」をつけて報道される。
 風が吹かなければ発電できず、いつ発電できるか予測不能の風力発電が、実際に使い物になっているのかどうかという検証が先に必要だろう。莫大な税金が注ぎ込まれているのだから。
(09/11/02 執筆)

脳科学者・篠原菊紀と茂木健一郎

 先日、偶然に録画されていた『カン違い実験サロン脳は判ってくれない』(フジテレビ系)というのを見た。バナナマン、山田五郎、梶原しげるらが被験者になり、人間の脳がいかにいい加減にできているかを検証するという趣旨の、最近ありがちな番組である。しかし、この手の番組には必ず登場する茂木健一郎氏は出てこない。
 解説役は、なぜか額縁にはめた曇りガラスの向こうで顔を隠している。ラフな口調で、なんか学生みたい。「先生・シノハラ」というテロップが一瞬出た。番組の内容より、この解説役のことばかり気になってしまった。
 番組のエンディングで、出演者が悪ふざけしている絵を撮っているとき、背景に映り込んでいた曇りガラス額縁の裏から、ほんの一瞬、頭の薄いおっさんが覗いた。ピントが合っていないし、一瞬のことだったので顔までは分からなかったが、どうやらバイトの学生というわけではなさそうだ。
 後日、ネットで「シノハラ 脳」で調べたところ、篠原菊紀という人だった。現在の肩書きは諏訪東京理科大学共通教育センター主任など。NHKの『ためしてガッテン』はじめ、数多くのテレビ番組で、ちょっとした解説役やら相談役を務めているらしい。それにしても曇りガラスの向こうに隠れるとは、あの出まくり茂木健一郎氏に比べてなんと奥ゆかしい……。
 と思っていたところ、翌日、茂木氏が3年間、テレビ出演料や本の印税など約4億円の申告をまったく!していなかったというニュースが流れ、唖然。
 脳科学者という人たちは、常識ではとらえられない人たちが多いのかしら?
(09/11/10 執筆)

笑神降臨の神が泣いている

「笑いの神は怒っている」……というのは、一組の芸人が29分間、渾身のネタだけをやるのが売りである『笑神降臨』(NHK)のオープニングに流れるナレーションだ。良質のお笑い番組に小細工はいらない。その姿勢に期待して、バナナマンがやった「番組たまご」版(レギュラー化の前のテスト番組)のときから、期待を込めてこのコラムでも何度か取り上げてきた。
 しかし、最近の笑神降臨には、笑いの神も泣いているだろう。
 最大の原因は、出演芸人のレベルを落としてしまったことだ。
 秋のシリーズでは、サンドウィッチマン、ロバート、キングオブコメディ、二丁拳銃、友近、TKO、麒麟、よゐこが選ばれたが、この中で29分耐えられるのは、サンドウィッチマンとキングオブコメディくらいだろう。25分ノンストップ漫才をやった二丁拳銃も、心意気よしとしよう。しかし、他はあまりに安易で未完成なネタ、あるいはそもそも実力がレベルに達していないため、全然もたない。
 どうも、大手芸能事務所との力関係で、番組に演者を押し込まれているのではないかと疑ってしまうのである。もっと敷居を高くしなければ、せっかくの番組コンセプトが壊れてしまう。
 本当に力のある芸人が新作を作ったときだけのために、この番組は開放されるべきである。シーズン3に向けて、初心に戻った大改革、大反省が必要だ。
 なにより、芸人を選ぶ段階で事務所の圧力に負けないこと。本当に面白ければ、無名の新人でもいいし、同じ芸人が何度出てきてもいい。NHKでもそれはできないと分かれば、期待していた分、お笑いファンの嘆きはかえって大きなものになる。
(09/11/28 執筆)

獏原人村とテレビ番組需要

 僕が住んでいる福島県川内村は、川崎市の1・4倍の面積に家は千戸しかない。水道がないので、役場も学校も井戸水を使っている。その川内村の外れにある「獏原人村」は、さらに電気も電話もこない超僻地だ。
 ここはかつて、ヒッピー(死語だなあ)が理想郷生活を描いて地主に内緒でこっそりコミューンを作って生活していた場所だが、現在はそのときのリーダーだったマサイ・ボケ夫妻と、大塚しょうかん・愛一家(4歳の息子と今年生まれた娘の4人家族)が住んでいる。
 先日、しょうかんさんがお昼に「テレビ見せて」とうちにやってきた。『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)の中の「山本晋也の人間一滴」コーナーに一家で出ているので見たいとのこと。大塚家にはテレビがないからね。一緒に見た。
 大塚家はつい先日もテレビ東京系の『自給自足物語』に出た。以前は、原人村の大家であるマサイ・ボケ夫妻がテレビ朝日系の『銭形金太郎・大自然ビンボーさん』に出て、全国のスピリチュアル系?人間たちを「テレビに出るとは、マサイも人間が丸くなったなあ」と驚かせた。この分だと、獏原人村最大のイベント「満月祭」(毎年8月にやっている野外音楽祭。世界中から怪しい格好の人たちが集まる)にテレビカメラが入るのも時間の問題かもしれない。
 全国に知られるのはいいけれど、無理に「エコ生活」だのとレッテルを貼るのはいただけない。大塚家は、電気が来ていないからソーラーパネルで自家発電しているんであって、都会の人たちが全員これを真似したら、かえって資源の浪費になるのよ。勘違いしないようにね。
(09/12/04 執筆)
★ついでに、デジタルストレス王に掲載した『大塚愛伝説』もどうぞ。⇒こちら

2010年テレビはどこへ行く

 2010年。テレビの世界は変わっていくのだろうか?
 地デジ化PRは今年も続くだろうが、どうでもいいよ、と思っている人が多い。画面がきれいになっても、番組の内容が面白くなるわけではないのだから。
 デジタル放送に切り替わっていくと、試聴スタイルが変わっていくだろうなとは思う。録画予約しやすくなるので、ハードディスクにとりあえず録り溜めておき、時間のあるときに見る。その際、リモコンでCMは飛ばしてしまうから、スポンサーにとってはテレビ広告費の価値がどんどん下がっていく。
 となると、今後は視聴料で成立するペイチャンネルが伸びていくかもしれない。デジタルテレビの普及で、BS、CS放送も今まで以上に身近になる。荒れ果てた土地を今からでも少しずつ耕す努力はするべきだ。
 例えばWOWOWは、2012年に今の3倍の帯域を得るから、コンテンツも増える。今後はドラマだけでなく、報道番組やドキュメンタリーも制作し始めるかもしれない。期待したい。
 報道番組にスポンサーがついていると、公平な報道ができない。公平・公正な情報を得るには、自分で金を出すしかないという意識が根付けば、日本にも報道専門の有料放送制作会社が誕生するかもしれない。
 BS11デジタルは、ビックカメラなどが主要株主になっている無料放送だが、平日の午後10時から1時間『INsideOUT』という報道帯番組を持っている。現在は、時事解説風の地味な番組だが、これを土台にキャスターやゲストの質を上げて見応えのある内容にしていけば面白い。小さな挑戦・工夫の積み重ねをしてほしいものだ。
(09/12/19 執筆)
       
■ここに収録したのは提出原稿の控えで、最終稿では一部訂正が加えられている場合が多いです。
 縦書き原稿のため、二桁算用数字は半角、その他の数字やアルファベットは全角になっていて、横表示にすると若干読みづらいですが、ご容赦を。
 年末年始は、執筆時期が早いため、掲載号が越年しています。



右翼からエコロジストへ転向した大西熊笹の痛快人生↓



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