2011/11/09
タヌパック日光 に向けて始動
長い間、日記が途絶えていて、どうなってしまったのだと思われているに違いない。
どこから書けばいいのか分からないが、新拠点「タヌパック日光」を始動するために、連日、肉体労働を続けていたのだ。
というか、今も終わっていない。
川内村で仕事を続けていくことが困難になっていることは日々感じていた。
距離のわりには放射能汚染は低く、福島市や郡山市の平均値よりも汚染が軽度で済んだのだが、物理的な問題以外に、人間的な?というか、社会的な問題がどんどん悪化していた。
汚染が軽度だったのだから頑張って、今まで以上に魅力的な村造りをしていこう……とはならなかった。
住民が選んだのは、今までもダメだったのだから、この際、徹底的に国や東電に面倒をみてもらうしかない……という道。
村の中心部より空間線量が高い郡山市の仮設住宅に入っている人が「なんとか『緊急時避難準備区域』の解除をさせないように頑張って国に働きかけてくれ」などと村に要望しているという話を聞くにつけ、こりゃダメだわ、と思う。
そんな雰囲気の中で僕のような人間が何かを働きかけても、軋轢を増すばかり。
「頑張りたくても頑張れない」状況は、人によってそれぞれ違う。となれば、状況が刻々と変化していく中で、福島と今後もしっかり関わり続けるためにも、活動拠点を少し外側に移したほうがいいのではないかと考えるようになった。
当初は汚染の低い南福島エリア(矢祭町、塙町、石川町、鮫川村など)を中心に、村の友人たちと一緒に移転先を探していたのだが、どこも高額で手が出ない。
それに、ここ、川内村の家より魅力的な場所はないということをつくづく思い知らされた。
物件探しから戻ってくるたびに「やっぱりここがいちばんいいんだよなあ」と、ため息が出る。
そのうちに、だんだん考え方が変わってきた。
いっそ、ほとんど無人になっている川崎の仕事場をたたみ、川内村と別の新拠点の二地域居住に切り替えればうまくいくのではないか……と。
で、矢板市、さくら市などの栃木県、山梨県大月市、埼玉県秩父郡、果ては北杜市……などなど、数十の物件を巡り歩いた末に、思いもしなかった日光市に新拠点を構えることになった。
東照宮へと続く例幣使街道の脇、鹿沼市や宇都宮市に近い場所。市町村合併の前は今市市だった場所。
周囲は田園地帯で隣はゴルフ場。バブルのときに調子に乗って分譲開発した小さな分譲地の一角に建つ二階建ての家。
タヌパック越後(購入価格280万円)よりは高かったけれど、タヌパック阿武隈よりは安かった。
そもそもこのへんの地域は、忘れられたエリアとでも言えそうな「ブラインドスポット」で、程度のいい住宅が安い価格で売りに出されている。それに加え、今回決めた物件は、駅からは3kmほど離れていて、住宅地としてはいちばん外れにある。ここを開発したリゾートデベロッパーは70年代には倒産していて、その後はほとんど放置状態。おかげで家はぱらぱらとしか建っていないので、息がつまることもない。
このエリアの土地を下請け?で売っていた個人不動産屋が自分の別荘兼モデルハウスとして建てたのが今回の物件。建てたのはいいが、すぐにこの不動産屋さんも破産して夜逃げした。不動産屋に貸し付けていた複数のローン会社、金融機関のうち多くはバブル崩壊後に倒産。物件は最終的に宇都宮地裁で競売にかけられ、それを落札した人が3年前に少し手を入れて別荘代わりに使っていたが、ほとんど来なくなって売りに出した。
でも、しばらく売れなかったので少しずつ安くして……という結果、タイミングよく見つけて購入できたという次第。
周りには店もないし、駅まで歩けば遠いし、仕事圏としては宇都宮や鹿沼市だろうが、もう少し交通の便利な土地や家がいくらでも売りに出されているから、居住する家としては敢えてここを選ぶ必然性はない。
地価はバブル時代、つまりここが分譲地として売りに出されたときの数分の一にまで下がっている。
それにしても、原発震災で壊滅的とも言えるダメージを受けた福島県内の物件よりはるかに安いのは不思議だ。「ふくしま」というのは、なんだかんだ言っても「ブランド」だったのではないだろうか。首都圏の熟年世代にとって、引退後の終の棲家や二地域居住の場所として一番人気だったエリア。その地を放射能まみれにしてしまったことを、福島県の行政は猛省してほしい。
国があてにならないこと、でたらめをやっていることはずっと前から分かりきっていたのに、そこにぶら下がり続けてきた。自分たちで自分たちの場所を守るという気概がなさすぎた。
……と、愚痴っているとまた長くなるのでこのへんにして……。
川崎からの引っ越しは簡単にはできないので、1年くらいかけてやるつもりで、走行距離11万5000kmの中古のバネットバンを購入。リース会社が放出したやつで、中古車相場より10万円くらい安い。
とはいえ、本来これも不必要な出費。金が出ていくばかりでたまらない。
11月8日に家の引き渡しがあり、その日の夜、バネットを引き取るために単身川崎に。
9日にバネットに最低限の荷物を満載して夜の高速道を猛烈な音のするバネットを運転して川内村へ。
10日に荷物を入れ替え、雨の11日、ネコ2匹ともども引っ越し開始……。
それからは毎日、設備屋さん的な作業の連続である。

11万5000km走行のバネットバン。まずは四畳半スタジオのテーブル天板を積んだ

両側スライドドアが便利

一人でバネットバンを運転して高速道路は辛い。三郷SAでようやく飯
2011/11/10

一夜明けて、川内村に到着したバネットバン

川崎からの荷物

まずはこれを降ろして……

倉庫の中を片づけていたら、外から蔓が伸びてこんなところにまで

すごいなあ。こんなところから入り込むのね

とりあえず涼風号を積んでみた

秋晴れ。なんで引っ越ししているのか……理不尽な思いはいつまでもぬぐえない
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ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。
第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛
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