2011/05/04

もしも「大熊双葉原発」という名前だったら

浜岡原発からの放射能拡散予想
原発震災から50日も経つと、その間、いろいろなことを考える。
例えば「低量被曝1円貯金説」。
低い線量の被曝を続けても健康には絶対に影響はないと主張する学者がいるかと思えば、低い放射線被曝の健康被害は確率的な問題なのであって、どんなに低くても絶対安全などということはないと言う学者もいる。
これを分かりやすく喩えれば、低量被曝というのは1円貯金のようなものではないのか。
1円ずつ貯金して、100円貯まったところで宝くじを買う。(今、宝くじって100円じゃないのかもしれないが、とりあえず100円で買えるとして)
これを一生続けたところで、ほとんどの人は宝くじには当たらない。でも、当たる人もいるかもしれない。
低量の被曝を続けて将来それが原因の病気になる確率というのは、そういうことなのではないか。
当然、1円ずつではなく、10円ずつ溜める人、100円ずつ溜める人、1000円ずつ溜める人は当たる確率がどんどん高くなる。
これに対して、一気に10シーベルト(1万ミリシーベルト=1000万マイクロシーベルト)浴びるなどというのは、宝くじをすべて買い占めるようなもので、確実に当たる(死ぬ)。

もうひとつ、福島原発はなぜ「福島」原発という名前だったのだろうということも考える。
チェルノブイリ、ウィンズケール、スリーマイル……みんなせいぜい町の名前であって、郡や州の名前ではない。
改めて調べてみたら、県名が原発の名前になっているのは、福島以外には島根原発だけだった。福島や島根は十把一絡げにしてもいいくらいの田舎だって認識なのだろうか。
もし、福島第一原発が「双葉原発」あるいは同じ東電の柏崎刈羽原発のように「双葉大熊原発」という名前なら、今回の事故での風評被害の度合もずいぶん違っていただろう。
「双葉原発ってどこよ? 福島県? 海側? ふうん」……という程度の認識だったかもしれない。
それが「福島」原発という名前をつけられていたために、世界的には「FUKUSHIMA」がチェルノブイリと同じように歴史上に名を残すことになり、日本国内では福島県全体が汚染された場所として印象づけられてしまった。

さらには、今回の事故が浜岡原発だったらどうだったかと想像してみる。
浜岡原発が何県にあるのか、今も知らない人がたくさんいる。
浜岡原発が福島第一のようになっていたら、汚染の問題は静岡県ではなく首都圏を中心に語られることになる。首都圏が風下になる可能性が高いので、東京が今の飯舘村並みに汚染されるかもしれない。そうなったら、静岡県がどうのという話ではなく、メディアは連日、東京を中心にした汚染状況を伝えることになる。
ちなみに上の図は、浜岡原発でメルトダウンが起きたと想定したときの放射性物質拡散予想だそうだ。
■事故想定:突然、1~4号炉のうち2号炉がメルトダウン事故(BWR1タイプ)。
■事故原因:ミサイルテロ、東海地震、等考えられるが、ここでは特定しない。
■風向き:多くの場合、御前崎から首都圏に向かう南西風(偏西風)
■日時:実測の大気データ2002年8月9日で拡散した場合

◆放射性物質発生データ提供:京大原子炉実験所(小出裕章助手)
◆拡散分布シミュレーション計算協力:鈴木基雄(元日本気象協会調査部)
http://stop-hamaoka.com より転載
いずれにせよ、原発の名前にあっさりと県名を使わせてしまった福島県は、それだけで脇が甘かったと言える。

ついでに書けば、方向からして、宮城県丸森町あたりはそこそこ汚染されているのではないかと思っていたのだが、宮城県内の放射能汚染について、中央のメディアでは報じられているのを見たことも聞いたこともない。
福島と宮城の県境でしっかり線が引かれて、宮城は関係ありませんよと宣言されているかのようだ。福島県に比べて、宮城県はガードが堅いと言うべきか。津波被害が甚大でそれどころではないというのが正直なところか。
WEBで探したところ、しっかり検証している人がいて、丸森町の場合、3/15~5/2までの49日間で積算0.66msv。このところずっと0.2μSv/hくらいで安定してしまったので、このままいけば年間2.66mSvくらいの積算被曝になると計算している。
内部被曝も合わせれば3mSvは超えるかもしれない。
年間1mSv以下というのは、やはり広範囲にわたって無理なのである。
我が家の場合でも、家の中が0.4μSv/hくらいあるから、このまま推移すれば、外出しなくても外部被曝だけで3.5mSvになる。実際には5mSvを超えるような気がする。井戸水がもし汚染されていたら、内部被曝で一気に数値は上がる。
毎日1000円ずつ宝くじを買っているようなものかもしれない。




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