2011/03/17 18.05

原発事故現場および周辺で、今まで何が起きていたのか

「裏日記」に今日の昼頃書いたものですが、こちらにも掲載しておきます。

今回の原発事故は120%人災です。
呆れ返るのは、バックアップ電源を海側に置いていたということ。まったく馬鹿げています。
そもそも、陸側のエリア(東北電力)は停電になっていないのですから、東北電力からの電源供給ルートを複数確保しておくことで電源喪失は起きなかったはずです。

それ以上に許し難いのは、電源が全部流され、冷却手段を完全に失った時点で、そのことを発表しなかったということです。海側にあった補助電源やポンプが全部流されてしまったということを日本のメディアが伝え始めたのは16日くらいから。それまで保安院の発表では「バックアップ電源が作動しない」「理由は分からない」などとすっとぼけたことを言っていましたが、作動しないのではなく「流されてなくなってしまった」のです。なくなったものが作動するはずはないでしょう。

首相官邸WEBサイトで出している情報を見ると、11日15時42分に、東電は「全交流電源喪失のため、原子力災害対策特別措置法第10条の規定に基づき、1,2,3号機について特定事象発生の通報」を行っています。これがどういう事態なのか、分かる人は分かるわけで、その時点で公表してくれれば、付近に住んでいる我々も、覚悟を決め、避難準備に入っていました。

ところがこの重大なことを最初に知らせたのは、政府でも保安院でも東電でも日本のメディアでもなく、グーグルアースだったのです。
12日になって、ネット上には「海側にあったポンプや非常用電源設備が全部流されている! 政府がいくら隠しても、衛星写真が事実を突きつけている」といった報告が流れ始めました。
私はこれを、ネットが不通になる直前に読みました。
そして、本当か? まさか補助電源が海側にあるわけがないだろう、と、信じようとしたのですが、どんどん不安になっていきました。
大変なことを隠している。本当のことを言っていない。……と思わざるをえなかったところに、いきなり、最初の爆発です。
これではパニックになるなというのが無理です。

情報をすぐに出してくれていたら。
「冷却手段がすべて失われたため、今は大丈夫ですが、これから使用済み燃料も含めて、核燃料がどんどん熱くなり、放射能漏れが起きてくることが予想されます。そうなってもすぐにどうこうはなりません。避難が必要になることが想定されますので、落ち着いて避難の準備に入ってください。今後は風向き情報に注意して、風下に位置する場所では不用意に外に出ないでください。情報はすみやかに、逐一発信しますので、くれぐれも流言飛語に惑わされるようなことなく、落ち着いて行動してください」
……たとえばこんな風に第一声を出してくれたら、どれだけ気持ちが落ち着いたことでしょう。

私が住んでいた川内村では、地震直後に携帯電話網がシャットアウトされ、12日午前中からネットが不通になり、12日午後からは固定電話も使えなくなりました。外から入ってくる情報はテレビだけ(私の家ではラジオの電波はほとんど入らない)。その唯一の情報入手手段となったテレビは、どうやら事実を即座に流していない。あるいは情報を流すことを躊躇っている。
最初にそう感じたのは、地上波で原発関連の報道になると、画面が中央局から地方局に切り替わって、延々と死亡が確認された人の名前を読み上げたり、避難所の風景を映したりし始めたことです。これは意図的に原発情報を地元の視聴者に伝えまいとしていたのか、それとも単に地元局が「そのほうが親切」と判断してのことなのか、今も分かりませんが、仕方なく、そのたびに系列のBS民放に切り替えて中央局が出している原発情報を見る必要がありました。情報はNHKが早いわけではなく、民放のほうが1時間以上早いこともありました。

時系列で、主な事象が起こった日時と報道の様子、公式発表の様子をまとめてみます。

11日 15.24 第一原発ですべての交流電源喪失。1~3号機に関して10条通報
11日 16.36 1、2号機のECCS(非常用炉心冷却装置)注水不能を報告
11日 16.45 2号機についての第15条通報

※11日午後、津波が去った後、電源関連、注水ポンプ関連の施設が失われたと分かった時点で、これから起きることは完全に予想できていた。政府や保安院、周辺自治体にそのことを全部隠さず、いち早く告げるべきだった。それなのに、付近住民への通報はなし。
津波で電源や注水ポンプ設備、タンクが完全喪失したのだから、冷やす手段はないのに、法令に定められた「○○になったので通報」ということしかしていない。これから起きることを明確に示さないで、事後報告しているだけ。バカじゃないのか! 本当に

11日 20.50 福島県が発電所半径2kmの住民に避難指示
11日 21.23 菅首相、福島県知事、大熊町長、双葉町長、富岡町長、浪江町長に対して、住民への避難指示
※内容は「1号機から半径3km圏内の住民は避難。半径10km圏内の住民は屋内待避。現地の対策本部長から新たな指示が出された場合は、その指示に従うことを区域内居住者に周知されたい」というもの。

12日 00.30 対象住民の避難措置完了。大熊町2805人、双葉町3057人
12日 時間不明 グーグルアースで津波後の原発上空からの写真が公開される

※ネット上で「電源が動かないのではなく、そもそも流出して存在していない!」ことがツイッターなどのSNS経由で広まり始める。海外メディアはすでにこの時点で事態を把握していたのに、日本国民だけが知らされていない!

12日 05.44 菅首相から福島県知事、大熊町長、双葉町長、富岡町長、浪江町長に対して避難指示
※内容は「半径10kmの住民は避難」。該当住民は5万1207人

12日 15.36頃 1号機で爆発。建屋上部が吹き飛ぶ

※定点観測カメラがこの映像をとらえていたのに、テレビではその後1時間半、この映像を出さなかった!
12日 17時頃 地上波テレビで、最初の映像が流れる

※その映像に対する最初の解説は「建屋の外で爆発があった模様」といったもの。これを見て、解説者は「建屋の外ですか? 建屋が爆発していないですか?」「建屋が1つなくなっていませんか?」「映像を巻き戻してください。爆発の瞬間前の映像を見せてください」「ここにあったのが1号機ですよね。今はその1号機が見えていませんよね。これは1号機の建屋が吹き飛んだということではないですか」と、相当慌てた口調で解説を始める。その後「格納容器が爆発して建屋が吹き飛んだのか、それとも格納容器と建屋の間で爆発して、吹き飛んだのは建屋だけなのか、それが大変重要な問題です」という意味のことを発言。この時点でまだ真相が分からず。分かったのは、爆発はすでに1時間半も前に起きていたということ。
私は急遽、避難準備に入りました。それまではじっとしているつもりだったのです。地震による建物被害がなく、電気が来ていて、水も食料も心配ないのですから、混乱している外に出て行くほうが危険だから家にいる、という判断です。
しかし、情報が次々に遮断されていき、最後に残ったテレビの報道からは、実際に何が起きているのか伝わってきません。しかも、重要な情報が隠されていることは明らかです。もし、発表されているよりはるかに多い量の放射能が流れ出しているとしたら……。風が海に向かっている今が移動のチャンス。海側から吹き始めたら、逃げようがない。もはや一刻の猶予もないと、焦りました。

12日 16.17 放射線量が500μSv/h(マイクロシーベルト/時)を超えたことで、原子力災害対策特別措置法15条通報
12日 18時頃 枝野官房長官の会見が始まるが、爆発についての具体的な言及がまったくない

テレビを見ていた私は、この時点で政府がまったく対応能力を失っていることを知り、愕然としました。同時にすぐに家を離れ、風上方向へ避難を始めました。

12日 18.25 首相から、県知事、大熊、双葉、富岡、浪江町長に避難指示
※内容は「半径20kmは避難」。該当住民合計17万7503人。

12日 20.20 1号機に消火系ラインを通じて海水の注水を開始

※ここに来てようやく東電は原子炉廃炉を決めたようです。

12日 20.41 官房長官が「原子炉格納容器は破損していないので安心するように」と発言

※爆発からすでに5時間!!も経っています。


13日 05.10 3号機にECCS注水不能状態で15条通報

※それまで(電気がなくても使える)高圧注入系を使って注水をしていたが、内圧に負けて不能になり、ECCSを起動させようとしたが起動しなかった⇒ECCSが起動しなかったので15条通報に該当するため通報した、という説明。バックアップ電源が「ない」のだから、ECCSで注水できないのはあたりまえで、15条通報するなら11日の時点でしなければならないはず。法令に書いてあることだけを「報告しました」と言っているだけで、馬鹿さ加減もここまでくると怖ろしすぎる!

13日 05.58 3号機に15条による特定事象発生の通報
13日 08.56 放射線量が500マイクロシーベルト/hを超えたため15条通報
13日 09.20 3号機にベント(換気)開放処置

※冷却水が回っていない、注水もできないのだから、内圧が上がっていくことは明々白々だったのに、ここに至るまで開放しなかったのは最大の判断ミスだと、海外の専門家などは早い時点で指摘している。多少放射能が漏れたところで炉が破壊されないこと、一刻も早く水を入れて冷やすことが必要だったのに、放射線量増加を恐れて判断を遅らせたとしか思えない。最悪の事態を避けるため、多少の漏れは諦めてさっさと開放すべきだった

13日 13.12 3号機に対して海水注入開始

14日 01.00 1号機、3号機ともに、汲み上げ箇所の海水がなくなって注入不能に
14日 06.10 3号機のドライウェル(蒸気を溜めておく容器)圧力が設計上の最高使用耐圧427キロパスカルを超える460キロパスカルに
14日 07.44 3号機もベント開放で内圧を下げる作業を行う予定と発表
14日 11.01 3号機で爆発。建屋が吹き飛ぶ

※こうなることは分かっていたのだから、もっと早く穴を開けるとかして作業をしやすくすべきだったはず。この爆発で東電社員、作業員、自衛隊員ら11人が負傷

14日 11.01 2号機の建屋パネルを開放して水素を逃がす対応
14日 11.15 東電から3号機の爆発は1号機と同じ水素爆発であり、格納容器、圧力容器は無事との報告
14日 18.06 2号機の逃がし安全弁開放により、水位がマイナス1500からマイナス1100mmに。40cmほど回復
14日 18.22 2号機の原子炉水位がマイナス3700mmに達して燃料棒が全露出

※こうなるととっくに炉心溶融が起こっていて、溶けた燃料棒の一部が原子炉下部に溜まってきているはず。
こうした事態が起きていた14日、富岡町からの避難民を収容している川内村には、原発関係の作業員から、冷却ポンプが11日の地震による津波ですべて流されたことが非公式に(口コミで)伝わりました。
川内村商工会長・村議会議員の井出茂氏は、後日、mixiにこう書いています。

「大きな流れからいうと、冷却できないということは、メルトダウンを避けることが出来ない状況にあるということだ。国、県、東電は大局的な見地から予測できる被害を発表して、避難の対策と事故を最小限に抑える対策を講じるべきである。結果的に予想を下回る結果になれば幸いだということである」

この間、川内村には国からも県からもなんの指示もなかったとのこと。
同じことは南相馬市市長もテレビの取材に答えて言っていました。

15日 03.00 2号機でドライウェル圧力が設計圧力を超える。減圧操作、注水操作がうまくいかず、減圧できない状況に
15日 06.14 4号機で爆発音がして壁に穴が空く。3号機からは発煙。2号機は圧力抑制プール付近で爆発音がして内圧が低下。明らかな異常発生
15日 06.42 2号機の圧力抑制プールに一部欠損がある模様だと官房長官が会見で発表
15日 06.56 4号機の建屋が変形・破壊され始める
15日 08.25 2号機建屋から白煙
15日 09.38 4号機で火災発生を確認。消防に通報
15日 10.01 4号機の火災について、経産省から米軍に応援依頼

※現場はもはやお手上げ状態で、これを見ていた地元消防団員らから、村に「現場は想像を絶する状況で、特に4号機が深刻だ」という情報が伝わる。
15日 11.00 菅首相が「20km~30km圏内の住民は屋内待避」の指示
15日 14時頃 対象住民の避難措置完了

※周辺自治体は、現場の壮絶な状況をリアルに口伝えで知らされながらも、県からも国からもなんの直接指示もないまま「30kmまでは屋内待避」という指示をテレビを通じて知らされるだけ。
この「20~30km圏は屋内待避」という指示は最悪でした。
すでに空は30km圏内飛行禁止になっているので、村に空から救援物資は届かないということです。もちろん、急病人を運ぶ救急ヘリも来ません。
陸路は確保されていますから、ガソリンさえあれば、より遠くへ移動できます。しかし、それも時間が経てばガソリンが尽きてきて、移動手段さえなくなります。すでに村にはガソリン補給が経たれていて、残った車の中にあるだけになっていました。「待機」が続けば続くほど、ガソリンは減っていき、いざ避難命令が出ても、避難することができなくなるのです。
それなのに「避難しろ」ではなく「屋内待避」つまり「動くな」と命じたのです。


この件を、前出井出氏はこう書いています。

「原発事故があってから、遅まきながら30キロ圏を屋内退避命令を総理が発表。
二号機、四号機が危険から脱したとの報道にもかかわらず、30キロで屋内退避は解せない話である。11時過ぎの報道では、燃料棒の冷却に失敗したとあり、急遽富岡町・川内村合同の災害対策会議が開かれ、この時点で川内村長は村民の強制避難を決定したのだが、現地対応の東電職員と経済産業省の役人、そして原子力保安院ナンバー2の「20キロ圏外であれば、絶対安全です」という言葉によって、強制避難から自主避難に変更した。
15日川内村長遠藤雄幸は防災無線を通して、以下のようなメッセージを発表した。
『川内村長の遠藤雄幸です。本日災害対策本部は、大変重大な決定を行いました。この度の原子力発電所の事故が好転のきざしが見えるまで、避難できる皆さんは自主的に避難してください。
避難されない皆さんは、屋内退避を続けてください。また自主避難される皆さんは、食糧、寝具、現金をご持参ください。なお、村の機能はこれまで同様に役場となっております。
皆さんお元気で、また川内村にお戻りになった時は川内村の再生のために頑張っていきましょう。
それでは川内村民の皆さんお元気で!!』

翌日、16日に合同災害対策本部は郡山のビッグパレットを避難場所に決め強制避難を開始した。
14日の遠藤村長の決断は実に素晴らしい判断でした。こんな人物を県知事に推したいものです」


★まだ書きかけですが、とりあえずここまでアップします。

2011/03/17 18.13

できることをなぜしないのか

現場からの報告をとりあえず終えたということにして、今、何をするべきなのかについて書きます。

1)高速道路通行制限の緩和
現在、東北道、常磐道、磐越道はガラガラだと、民間ボランティアチームが報告しています。
まず、現在、許可証なしで車輌が通行できなくなっている高速道路に、物資運搬車、一般の運送トラック、ボランティアで現地に向かう一般車両などは簡単なチェックのみで通れるようにすること。
運送会社が放射能汚染を恐れて現地に近づかないといった現象が起きているので、安全だと宣言すること。
高速道路のサービスエリアにあるガソリンスタンドを災害対策本部管理下に置き、補給作業を行う人員を派遣すること。

2)リアルタイムで正確な風向きと各地の放射線測定量を知らせる
核爆発の危険がない以上(そう信じたい)、放射能漏れは相当ひどいけれど、ごく近い数キロ圏以外では自由に活動ができるということを周知させる。怖いのは放射線ではなく放射線を出す放射性物質を体内に取り込むことによる内部被曝。しかし、放射性物質の飛散は、風上には向かわないので、事故現場に近くても風上はかなり安全。
その安全エリア、危険エリアは、風向き、風速などで刻々と変わるので、その予想図を誰もが分かりやすい形で気象庁は全力を挙げて提供すべし。
これは「危険だ」というメッセージよりも「ここは安全だから動けますよ」という情報として活用させるために。

取り急ぎ、この2点は今すぐ実行する必要があります。
津波被災地では刻々と人が死んでいるのです。
原発に近い双葉町の病院では、数百人の入院患者を残したまま医療スタッフが全員消えてしまっているという、とんでもないことが報道されています(後に、どうやらかなり間違った報道だったことが判明。双葉町の病院ではなく「双葉病院」。数百人も間違い。自衛隊員が入院患者を移送するときに、院長や病院スタッフがいなくて患者の状況が分からず、移送先の病院で次々に亡くなったということは事実)。放射能は全然大丈夫なのに。なぜ? 物資が届かないから?
双葉町へは、陸路でいくらでも物資補給できるのに。なぜそんなことになるのですか!
三陸方面の病院でも、あちこちで入院患者が餓死!の危険にさらされているという報道があります。
「汚染は、平時に比べればひどい。でも、ごく近くでなければ、放射線の量は恐れる量ではない。放射性物質を体内に入れることは避けなければならないので、風下のときには注意を要するが、それ以外では命を賭けるようなことではなく、普通に作業できるレベルである」ということを周知させる。

一般人は徹底的に退去させ、移動できない人をケアする専門スタッフが動きやすくする。被災地人口が減ったほうが、活動はしやすいし、物資も有効に使えるのです。
「半径○○キロ」という指示は混乱をきたすだけで意味がない。市町村単位で指定すべき
「○○町、○○村……は、一般住民は極力退去して被災地活動を容易にさせる」といった指示に変える。

陸路が使えるのに、また届ける物資が用意されているのに、物資が届いていないというのはあまりにもひどすぎる。

また、津波から一週間が経過した今、完全に破壊された地区での瓦礫撤去作業よりも、孤立している避難所(公的なものだけでなく)、孤立被災者への救済、救援に全力を投入すべきでしょう。
首相官邸からはそうした指示が的確に出ているんでしょうか。

テレビメディアはヘリによる散水や放水車の放水シーンを劇的に流そうとしていますが、そんなものはどうでもいいんです。死にかけている被災者をいかに救えるかという報道に最重点を置いてください。
民間からの援助物資を集めるなどということではなく、企業や組織の援助がスムーズに届くよう、上から適確に指令が飛ぶこと。これが最重要。

2011/03/18

今後の予測とメディア報道の危険性

海外のメディアでは、一部、落ち着いた報道に切り替えているところも出てきました。
アルジャジーラ経由で伝わってきたところによれば、国連原子力委員会は、「これ以上悪化はしないだろう」と予測しているとのこと。ただしそれは、あくまでも日本から離れた国から見ての話で、国内の事情はそう簡単ではありません。
2日前、ニコニコ動画の生中継では終始にこにこ笑顔で(彼の場合、テレビカメラの前ではいつもそうですが)話していた「安全な原発推進派」を宣言している武田邦彦氏は、ここにきてテレビ報道の重大な間違い or 意図的なごまかし報道について強い警戒を表明しています。
そのまま一部を引用します。

もう一つ極めて危険な報道があります。
これは NHK ではなく、民放の女性のアナウンサーでしたが、
「放射線レベルは低いので心配することはない。」
と大きな声で叫んでいました。
その番組で示された図は全く間違っている図で、アナウンサーが口にしている数字は「1時間あたりの放射線の強さ」であり、図に示しているのは「最終的にその人がどのくらいの被曝するか?」という値です。
女性アナウンサーは、
「10マイクロシーベルトだからこの図から言えばとても小さい。まったく問題ない」
と繰り返していました。このアナウンサーは放送を降りた方が良いと思います.?人の命に関係することですから「私はアナウンサーだから知らない」ということではすまないのです。
1時間に10マイクロシーベルとということは、たった1時間しかそこにいない人ならその数字で良いのですが、生活をしていて1ヶ月あまり同じ場所にいたら、10ミリシーベルトになります。これは法律でも許されてないような大きな値なのです。
重要なことなので繰り返して説明します。
時間に10マイクロシーベルとというのは放射線の強さですから、1秒あたりで言っても、1ヶ月あたりで言っても良いわけです。
1秒あたりで言えばとても小さな値になりますし、1ヶ月あたりで言えば大きな値になります。
瞬間的にその場所を通り過ぎるのならば、1秒あたりでも1分あたりでもいいと思いますが、今多くの人が判断しようとしているのは、「ここに住んでいて良いのか」、「赤ちゃんは大丈夫か」ということです。
そうなると1ヶ月はそこにいますし、子供は感度が高いのです.
恐らくは東京にいるアナウンサーだから、原発の近くにいて不安に思っている人の気持ちがわからないのだと思います。
またその横にいた専門家は、それに気がついたようでしたが、間違いを指摘しませんでした。だれかに「危険を煽ってはいけない」と言われて、逆に危険なことを言っているということです。

武田氏のような専門家ですら慌てる事態にあって、ましてや我々一般人が放射線・放射性物質汚染についての基本知識を学ぶことは困難です。しかし、今言えることは、「あらゆる情報を、一度自分の頭で整理し直し、判断しなければいけない」ということです。
とりあえず、

1)X線検査のような瞬時に浴びる放射線量と1時間あたりの放射線量(テレビで発表されているマイクロシーベルトやミリシーベルトはすべて「毎時」で1時間あたりの量)を同じに比較しても意味がない。

2)「放射線」は一時的に浴びてもダメージは自然治癒力などで回復できるが、「放射能」(正確には放射性物質が放射線を発する能力のことだが、ここでは大まかに「目に見えない微粒子としての放射性物質」と同義)は体内に取り込むと、その後もずっと体内被曝をもたらすので、これも放射線量の数字と同義に考えることはできない。

という2点は重要です。

海外の過剰反応は怖いですが、今の日本のメディアの報道規制ぶりも怖いです。
とにかく、原発に近い人で、離れられる人は極力離れることが必要である、という状況には間違いないです。

2011/03/18 19.03

事実、パニックは起きていない。とにかく情報を隠すな!

文科省のサイトでは、モニタリングカーを走らせて原発周辺の線量測定値を公表しています。
この中で気になるのが、原発から北西30km地点(R114 津島付近。葛尾村と川俣町の境界あたり)での計測値が、

17日 14時00分 170.0マイクロシーベルト
17日 15時00分 158.0マイクロシーベルト
17日 15時15分  78.2マイクロシーベルト
18日 11時33分 140.0マイクロシーベルト
18日 13時32分 150マイクロシーベルト

……と、常に他よりも2桁高いということです。
原発正門前とかのごく近くでの計測値が280マイクロシーベルト前後で推移していますので、30km離れていて同じ3桁数値は異常です。

例えば、ここよりも距離的には10kmも原発に近い川内村の計測点(R399と小野富岡線がぶつかる交差点から少し南)では、

3月17日11時50分 2.1マイクロシーベルト
3月17日15時00分 2.0マイクロシーベルト
(これ以降、川内村内での測定値見つからず)

です。約80倍違います。
なぜこうなるのか?
乱暴な推察ですが、葛尾と川俣の境には山が続いていて、海側からそのへんにかけては概ね大きな谷状に低くなっているので、西風(海側に向かって吹く風)のときでも、風がゆるやかに逆流し、吹きだまる感じなのでは?
その先ずっと北西には福島市があり、福島市の数値も距離が相当離れている割には高いので、どうも原発から北西方向に風の通り道がある感じがします。
これが海側への風のときの数値なので、風が逆転して海側から内陸に向かって吹いたとき、どういうことになるのか? 簡単にミリシーベルト単位に上昇するかもしれません。
そうなってから、外に出て移動するのは放射性物質を吸い込む可能性が高く、危険。西風の今のうちに、山の稜線から東側の人たちは、極力山を越えて西側に避難すべきです。
葛尾村や川俣町に、県や国はきちんとこの情報を伝えているのでしょうか?
非常に心配です。
どうも、テレビでは地域を名指しで告げることを極力避けているようです。
今まで、パニックが起きていないことを見ても、それによってパニックになるようなことはありません。
ここは過疎の山村で、もともと人がほとんど住んでおらず、老人の割合が多いのですから、都会のような集団パニックは発生しえません。でも、私がそうだったように、情報を隠されている(見殺しにされる!)と察知したときは、どんな人間でも慌ててしまい、冷静な行動が取れなくなります。
メディア最前線にいる人たちへ。
あなたがたの使命はなんなのか。今一度考えてみてください。
「パニックになることを避けるために」というお題目でなんでも免責されると思っていたら大間違いです。知っていて知らせないのは見殺しにするということです。
大して危なくないのだから今のうちにゆっくりと落ち着いて逃げなさい」というのが今の正しいメッセージの出し方でしょう。

海からの風に変わったとき、数値が跳ね上がり、そのとき慌てて国が避難指示を出すなどという無様な真似は許しませんよ。
周辺の線量測定値地図 値は3月17日9時20分~15時00分
↑周辺の線量測定値地図 値は3月17日9時20分~15時00分のもの

18日
↑同、18日10.09~18.00のもの。依然として北西30kmあたりが奇妙に高い
追記(3/18 20.15):電力会社は原発を建設するとき、周辺の風の吹き方を一定期間測定し、放射能が漏れたときにどこに流れていきやすいかをデータとして最初から把握しているといいます。そのデータは無論社外秘で厳重封印されているわけですが、こういう非常時にも絶対に外に出さないのでしょうね。

2011/03/19 20.50

多分このまま収束すると思うが……

福島原発が今後どうなっていくのか? 我々周辺住民でなくても真剣に事態を見守っているわけですが、テレビはすでにレギュラー番組に戻しています。
公共広告機構(AC)のCMが大量に流れていて、苦情が殺到し、ACのサイトも現在落ちているようですが、あれって、テレビ局がCM枠が埋まらないために出した損失を補填する機能があるんでしょうか?
そうであれば、ACにプールされている資金で、被災地に有用な情報を流すとか、何かできないものでしょうか。

保安院が今頃になってバカみたいなイラストつきで放射能から身を守る方法などをやっていましたが、あそこまでいくと我慢も限界を超えますね。引っ込め! 二度と出てくるな! 貴重な放送時間を無駄づかいするな。国民をバカにするのもいい加減にしろ。なにより、世界の恥だ。日本人の評判をこれ以上下げないでくれ。

原発はすでに放射能漏れを止める手段はなく、あとは少しずつ冷えていくのを待つだけ。放水や外部電源を引っ張る(今頃?)という作業がすべて効果を上げたとしても、それは冷やす時間を短縮できるだけで、だだ漏れ状態が止まるわけではありません。冷えて、出てくる放射線量が低くなってきたところで、今は筒抜け状態になっている原子炉をすみやかに遮蔽し、その後、安定して放射能を閉じ込められるように廃炉処理をすることになりますが、最終的にどれだけの放射能が漏れ出してしまうのか、それによって周辺住民の活動への制限も変わってきます。当然、すぐそばの人たちは、同じ場所に住み続ける気にはなれないでしょうが、廃炉や後処理にも作業員を確保する必要があるので、ドーナツ状に臨時の「廃炉作業員村」が形成されるのかもしれません。

あとは、今後、東風の日が少なく、強い西風の日が多くなることを祈るばかり。
収束するにつれ、付近の汚染「濃度」地図が出てくるはずですが、正確な情報が出てくるのか、付近住民は注視しています。
なぜ北西方向の汚染がひどいのかという謎についても、分かりやすい説明をしてほしいものです。
最終的に汚染がひどい場所(放射性物質の降下が多かった場所)と薄い場所が出てくるのは仕方がないことで、それを妙に隠して一律に安全だとか言われると、地元はもっと困ります。
風評被害というのは、そうしたいい加減な安全宣言があったほうが大きく広がります。「本当のことは言わないつもりだな」と察知した人たちが、実態よりもさらにひどい方向へと想像するからです。
付近住民はすでに多少の放射能汚染は仕方ないと覚悟してこれからあの地で生きていこうとしていると思います。
忘れてはいけないのは、いちばん想定されていた東南海地震がまだ起きていない、ということです。
浜岡原発もまだ止める気配がありません。

2011/03/19 22.25

標高が高いところのほうが数値が高い?

R-DANという放射線量のおおよその変化を測定する機械があり、川内村では獏原人村のマサイさんや獏工房の池田さんが持っています。
センサーにガイガーミューラー管を使用し、管に入った放射線の数をカウントし、1分ごとに表示するというもの。
マサイさんによれば、原人村では普段20前後で、たまに30を超えることがあるくらいだそうです。

マサイさんは現在、奥さんの実家、茨城県坂東市に避難中ですが、今日、残してきた鶏の世話のため、原人村に行ってきたそうです。以下はその往復で計ったR-DANの数値です。


出発地の坂東市 20(平常値)
那須     200
郡山     400
小野      60
川前      45
荻      300
川内村の峠 1000 (少々びびる)
宇津川    300
原人村入り口 300
獏原人村   200
戸渡     400
十文字の峠  800
小川     100
いわき市街   80
日立      30
坂東市     20

印象としては、距離よりも標高が高いところでの数値が高いのではないかとのこと。
いずれにせよ、平常値の数十倍を示していることは事実です。

2011/03/20 01.09AM

今、NHKで東京消防庁の隊員3人による記者会見を見ていました。
昨日行われたのですが、生中継では、真ん中の部長が「もう一つ言っておきたいことがあります。私たちは11日の時点で福島原発がダメだと把握し準備を始めていましたが……」と、言い始めた途端、ブチッと中継が途絶えたものを、夜中にようやくその後も含めて放送したというものです。
危険なことを言わなかったと分かったので放送したのでしょう。
それはともかく、この3人の立派な受け答え。涙が出てきました。
保安院や東電の会見とのあまりの違いに、悲しくなります。
最初からこういう人たちに任せれば、ずいぶん違っていたんでしょうに。

この映像は世界にぜひ何度も発信していただきたい。日本人はバカばかりじゃないのです、と知ってもらうために。

てっちゃんから教えてもらったページ。
⇒boston.com による写真ニュース

こうした映像を流さず、さっさとお笑い番組やしょーもない番組を流している日本のテレビ。
すでに被災地見放しモードですか?


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