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 たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ』 1996 後半

 (週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)

 1996年7月から12月まで



勝負のドラマに 味付けはいらん!




 友人の漫画家・福山庸治さんが、オリンピックのテレビ観戦について名言を吐いていた。
「要は出来るだけリアルタイムで“見逃げ”して、民放のいかにも下品で頭の悪い感動メロドラマ仕立てのバラエティ系日の丸番組には、決して近づかないこと。選手インタヴューなどもパス。スポーツ観戦は、生きて泳いでるヤツを、さっと醤油でいただかないとね。とはいえ、今回の女子マラソンのように、中継アナウンス&解説自体が劣悪だとストレスが溜まってしまいます」
 まったくその通り。有森の笑顔が感動的かとか、そんなことは見ている者が決めればいいこと。始まる前は「日の丸3本」だとかぶちあげて、意味のないタレントをスタジオに呼んで日の丸の小旗振らせて、いざ金も銀も駄目となると「メダルの色は関係ありません!」なんて叫ぶ。中継の基本を忘れていないか?
 さらに言えば、日曜日のお昼前に女子1万メートル予選をNHK総合で中継していた。第2組では千葉真子が集団を引っぱって日本記録ペースで力走している途中で「では、この結果は後の番組で」と、生中継をいとも簡単にやめてしまい、『今夜の番組案内』なんてやり始める。その差別はなんなんだ!これがサッカーの予選だったら日本中で暴動が起きるだろう。
 志水三千子の五千メートルの4位だって、有森の銅メダルより凄いと僕は思っている。千葉と一緒に走っていた鈴木博美などは有森や浅利よりマラソンの記録はよかったのを、陸連の不透明な選考方法の陰で1万に回された。

■近況■

 暫くは五輪サッカー対ブラジル戦の話題一色になりそう。前園をむさ苦しいと感じるか感じないかが「おばさん度」を計る材料になるのだという説もある。でも、みんな一致しているのは「あのゴールキーパーは男前」。いいなあ、ターゲット広い人は。





商標を出さない? NHKの掟の滑稽





「鍵盤ハーモニカ」と言われてすぐに実物を思い浮かべられる人がどれだけいるだろう? では、「ピアニカ」と言ったら?
 NHKの情報番組にピアニカ前田というミュージシャンがゲストで登場したときのことだ。司会者も前田氏もぎこちなく「鍵盤ハーモニカ」と言っている。ピアニカは商標であり、NHKは商標を口にできないという建前かららしい。でも、ゲストの芸名は「ピアニカ前田」で、これを勝手に「鍵盤ハーモニカ前田さん」とは呼べない。仕方なく「ピアニカさん」と呼んでいる。笑わせてもらった。
同じくNHKのニュース。「マッサージの連続記録を世界の記録集に申請中」というようなニュースが読まれた。「世界の記録集」? ギネスブックのことなのである。ギネスと言えば誰でも分かるのに、わざわざ「世界の記録集」ときた。ギネスはイギリスのビール会社の名前で、ギネスブックもこのビール会社のノベルティとして出発しているからだ。
ドキュメンタリーなどでは、映像に「トヨタ」とかでかでかと映っているのに、ナレーションでは「この自動車会社では」なんて言っている。 その一方で、昨年のWINDOWS95発売騒ぎのときには、NHKもWINDOWS、WINDOWSと連呼していた。れっきとしたマイクロソフトの登録商標なのに。
そもそも固有の企業名や商品名は情報として不可欠な場合が多い。いい加減にしたらどうだろう、「NHK規制」。


■近況■

 8月は例によって越後の隠れ家におこもりモード。今年は誰も入らなかった「虫の間」こと物置ロフトを総板張りに改装して客間にした。命名「百合の間」。床張りは初体験だったが、大工仕事は楽しい。




クイズの問題まで パクる厚顔番組





 最近、テレビ東京の番組が他局にパクられるという現象が目につく。今なお「12チャンネルね」と、正式な局名を呼んでもらえないテレ東にとっては名誉なことであろうが、真似をするほうのプライドはどうなっているんだろう。
真似されるのは『開運!なんでも鑑定団』『クイズ赤恥青恥』『テレビチャンピオン』『ASAYAN』あたり。情けないのは、パクッたほうで、元番組を超えているものがないということ。
『アッコにおまかせ!』(TBS系)の中の鑑定コーナーでは、高額なもの、しかもペットやマニアコレクションなど、正統派からは遠いものばかりが出てくる。「こんなものにこんな物凄い値段が付くのだ」というのを強調するあまりに、適正市場価格(?)が迷惑しているという話も聞く。そもそも、珍ペットの値段を自慢するなんて、いい趣味じゃないよ。
『クイズ赤恥青恥』は、最近では本家のコンセプトがぼけてきてつまらなくなりつつあるが、パクる側はもっとひどい。クイズの問題そのものをパクっていたりする。「トンボの幼虫を何という?」「ボンノクボってどこのこと?」など、一コーナーの中で『赤恥~』で過去に出題された問題を三つも四つも使っているひどい番組もあった。これだけ重なるのはとても偶然とは思えない。
 構成作家の「常識」も疑うが、「『赤恥青恥』っぽくね」と注文を出しながら、内容チェックができない制作者も「常識」がないよなァ。


■近況■

 ここ数日、インターネットにはまる。しかし強力な回線につなぎっぱなしで月に20ドルなんていうアメリカと違い、か細い電話線を独占管理されているこの国では、まだまだインターネットなんて貴族の遊びであるな。ソフトも使いにくいし、騙されちゃだめですよ>ALL。




MXテレビで本格 ジャズ番組だって?




 東京メトロポリタンテレビジョン、通称MXテレビ。東京都がかなり出資して作ったUHF局(14チャンネル)であるが、視聴率は限りなくゼロに近いらしくて、税金の無駄遣いだと週刊誌に叩かれたりもしている。
 うちでは、開局と同時にUHFのアンテナを横浜方向(TVK)から東京方面(MXテレビ)へ方向転換させて見ていたが、当初はあまりにしょーもないので『新車情報96』を見るためにまたTVKへ戻そうかと思っていた。
 ところが最近、ぎょっとするような物凄い番組をしらっと流していたりするのである。夜7:10からの『CLUB DATE』は、ニューヨークのライブハウスでの演奏をそのまま伝える番組。9月の第一週には、なんとケニー・バレル、ジョー・パス、ローランド・アルメイダといったジャズギターの名手たちの特集が流れていた。しかもソロやウッドベース+ドラム程度の小編成という渋さ。堪能したが、MTVやWOWOWでさえやらないようなこうした物凄いものを流しながら、なんと番組表には何も出ていない。これではチェックしようがないじゃないか! 運よく今あげた三人だけは見られたが、他にも凄いミュージシャンが出ていたのかもしれない。こういう番組を出演者名も出さずにいるなど犯罪に近い。
 しかも、この後、突然この時間帯は競馬中継に変わってしまっている。許せない。ぜひ再放送を! そして今後もこうした路線を堅持のこと! 競馬や野球はいいよ、もう。

■近況■

 インターネットのホームページは着々と工事進行中。接続と同時にタヌキがククウーと鳴いてお出迎え。わがKAMUNAのCDのサワリも聴ける。狛犬コレクションも続々と拡張中。ぜひ一度覗いてみてね。


いい加減にしたら? おじさんvs女子高生





 おじさんは汚く、かっこわるく、融通が利かない。女子高生は馬鹿で常識がなく、長電話とヘアメイクに膨大なエネルギーをさき、簡単にパンツを売る。……こうした「情報の固定化」は、最近のテレビが重ねている重大犯罪のひとつではなかろうか? 実態を伝えるだけならまだしも、必要以上にその構図を演出するのは芸がない。
 例えば、『上岡竜太郎には騙されないぞ!』(フジテレビ系)で 女子高生とおじさんのお見合い企画みたいなものをやっていた。「おじさんは臭い」なんていう定型化した笑いや、予定調和の女子高生の馬鹿ぶりを引き出して、今さら面白いのか?
 僕が番組制作者なら、石鹸で頭を洗うおじさんを笑う若者が、どれだけシャンプーや洗剤の本質を知っているのか、問いただしてみる。(石鹸で洗髪するほうが絶対に禿げないのよ。あと十年すればいやでも分かるはず)
 音痴なおじさんを笑う若者たちにどれだけ音楽の素養があるのか? 彼らの甘いリズム感を「おじさん」が実証してみせる企画なんかどうだ?
 おっちゃんジャズベーシストとロック兄ちゃんの技比べとか、能楽の鼓奏者とアムラー姉ちゃんのリズム感テストとか。エアマックス履いてる青年に、靴職人のおっさんがいい靴の見分け方を問うなんてのもいいかもね。
 本当の価値、美しさ、かっこよさとはなんなのかを伝え、偽物を笑う……そうした指針がないと、上岡竜太郎も大竹まことも生きないと思うよ。

■近況■

 次の長編小説『アンガジェ』をもうすぐ入稿。拒食症で「援助交際」で最低限の生活費を稼いでいる歌手志望の女性と無名のジャズギタリストの愛の物語。


ロバさんにエアホッケーだなんて!




 番組改編期の特番ってのはおしなべてつまらんのだが、唯一期待してしまうのがスポーツ選手が異種対決をするというような企画もの。
 TBSの『筋肉番付』も、元はといえば特番からスタートしている。その本家は、今回『最強の男は誰だ!壮絶筋肉バトルスポーツマンNo.1決定戦』と題して特番を組んだが、アトランタ五輪直後の世界のメダリストを集めた気迫はやはり凄かった。ルイスは身体をかばって本気を出していなかったけれど、室伏ジュニアが世界一線級選手たちを圧倒する図はなかなか。
 体操のメダリストを一堂に会しての跳び箱も凄かった。本気を出すやつと出演料だけ貰って何もしないやつの落差というのも、それはそれで見ていてドラマではある。
 テレビ朝日の『めざせ!シドニー五輪あとわずか1400日すでに戦いは始まった夢の大挑戦スペシャル(3)』も、ワキウリが本気でクオーターマラソンを走り、それなりに楽しめた。中山はもうワキウリに勝てないのかと思うと寂しいけれど。
 ひどかったのは『さんまの第9回オールスター!スポーツするぞ大放送』(フジテレビ)。マラソンの金メダリスト・ロバさんを呼びながら、スタジオで有森とエアホッケーさせて終わり。一流スポーツ選手をお笑い芸人が「いじって」、はい、バラエティ番組一丁上がりという姿勢、いい加減にせえよと言いたい。選手をいかに本気にさせるか。そこがこの手の番組の命なのだ。分かってないなー。

■近況■

 次の小説は12月上旬に読売新聞社から刊行。書き下ろし長編で、タイトルは『アンガジェ』。久々の純文(?)恋愛路線。拒食症の女性シンガーが主人公。で、この作品から筆名を漢字(鐸木能光)にしようかと思っているのだが、どうでしょね。やっぱ読めない? うーむ。


猿岩石の同行カメラマンが気になる




『進め!電波少年』(日本テレビ系)で、いつの間にか大人気コーナーになった猿岩石のユーラシア大陸横断ドキュメント(?)が、ついに感動のゴールで幕を閉じたらしい(実は見ていない)。
 二人の道中での苦労が半端なものでなかったことは認める。でも、やっぱりしっくりこない部分が多すぎる。
 画面にはいつも二人しか映っていなかったが、同行しているカメラマンが最低一人はいるわけでしょ? あと、コーディネーターとか、テレビ局との連絡要員とかも。そういう「カメラのこちら側」のスタッフはどうなってたの?
 同行カメラマンは最初から最後まで一人だったのか? それとも交代制だったのか?
 猿岩石が野宿しているとき、スタッフ(最低一人)はどうしていたのか? 
 全道中をたった一人のカメラマンだけが同行していたとする。その場合、彼こそ最も苦しい旅をした功労者である。重い機材を担ぎ、いつもバッテリー切れの心配をし、二人が寝ているときもその姿をカメラに収め続け……。
 交代制だとするなら、猿岩石はいつでも複数のスタッフに見守られて旅を続けていたわけだ。サーカスや船の甲板作業員のバイトなども、コーディネーターが行く先々で用意していたのではないか? 
 室井滋が「猿岩石やーい」なんて捜しに出たスペシャル版は最もインチキ臭かった。この手の番組を今後も続けるなら、最低限、撮影方法やスタッフの介在限度を明確にするべきではなかろうか?

☆この原稿を送信したところ、珍しく編集部から書き直し依頼が来た。あの番組のメイキング番組も放映しており、「ちゃんと見て」いないで書くのはどうか……という趣旨のことを言われた。で、書き直したのが次の原稿。


猿岩石の同行カメラマンが気になる



『進め!電波少年』(日本テレビ系)で、いつの間にか大人気コーナーになった猿岩石のユーラシア大陸横断ドキュメント(?)が、ついに感動のゴールで幕を閉じた。
 ところで、僕は以前からこの手の番組では、画面に映っているタレントの動向よりも、それを映しているカメラマンや同行スタッフのほうに興味がある。今回の旅でも、いちばん大変だったのは猿岩石を撮り続けた同行カメラマンだったはずだ。
 何が起こるか分からないシナリオなしの道中記というドラマ性を強調するなら、いっそ最初からそのカメラマンの存在も「三人目の旅人」として公開したほうがリアリティが増すのではないだろうか?
 じゃないと、どうしても僕のように疑り深い人間は、どこからどこまでがシナリオ通りなんだろう……とか、画面に映っていない部分に、いったい何人のスタッフがいるんだろうとか、余計なことを考えながら見てしまう。「裏側見せます」や「NG集」という別枠ではなく、本編そのもので、よりシビアなリアリティを演出してほしいのだ。
 シナリオといえば、少し前に、室井滋が猿岩石を探しに行くという特番があったけれど、ああいうのもしらける。猿岩石の「現在位置」をスタッフが把握していないはずがないし、行く先々での「イベント」(例えばトルコ風呂で湯女をやるなどの)も、ある程度コーディネイトされていたものに違いないからだ。
 アメリカ大陸編をやるなら、ぜひそのへんも考えてみて。


■近況■

 12月上旬に読売新聞社から刊行する書き下ろし長編『アンガジェ』から、筆名を漢字表記の「鐸木能光」にすることに決定。文芸家協会へも筆名変更届を提出した。でも、なんだかまだこの漢字に馴染めない。戸籍名なのに。平仮名時代が長かったからなあ。


///追記/// ☆猿岩石のヒッチハイクはインチキだったというすっぱ抜き報道が行われたのは、この直後のことだった。



ダチョウ倶楽部と 爆笑問題の偉さ




 毎週録画セットしていた『アヘラ』(テレビ朝日系)が終わってしまい、『アメジャリチハラ』とかいう番組に代わってしまった。最近、まともに芸を見せるお笑い番組がなかった中で、『アヘラ』は珍しくお笑い芸人本来の「持ちネタ」を楽しめる番組だった。後継番組『アメジャリ~』は、若手芸人3グループを起用しているが、彼らに本芸をさせず、客いじりや行き当たりばったりのお遊び企画でお茶を濁している。十年どころか五十万年早い。
 芸人が「芸」をしなくなり、ただの使い捨てタレント、うるさい司会者、ギャラの高いサクラになっていくことを「出世」とは思いたくない。また、こうした「脱本芸」番組が、グループやコンビを無惨に引き裂き、ばら売りしていくのもやるせない。
 ダチョウ倶楽部は以前から絶対にばら売りをしないグループとして好感を持っている。上島がソロで起用されるような企画でも、必ず画面の中に他の二人が収まっている。このあいだ『恐怖の法則』(テレビ朝日系)で一人だけが出ていると思ったら、ちゃんとその後、他の二人も順番に同番組の中で別のコーナーのリポーターを務めていた。
 爆笑問題もそうだ。彼らにはいつまでも漫才をしていてほしい。彼らに正統派漫才をさせられる番組が、今どれだけあるだろう。『恐怖の法則』では「道ばたには軍手が落ちている」法則の検証なんていうことをさせられていたけれど、とりあえずは二人揃っていた。でも、きわどいなあ。


■近況■

 新刊『アンガジェ』(読売新聞社)のゲラ戻しをさっき終えたところ。今度の小説はなぜか性描写満載。これだけセックスを書いた作品は初めて。インターネットホームページに立ち読み版も掲載中。



情報の真偽をどう チェックするのか?




 先日、昼間のワイドショーを見ていたら、爪にマニキュアを塗るだけで痩せられるとか体の調子がよくなるというふざけた話を紹介していた。
 情報源は整体師らしき人物。爪の真ん中、両脇など、マニキュアを塗る場所によって効能が違うという。モデルの女性にマニキュアを塗らせて「ズボンと右のおなかの間に左手を入れてみてごらん。ほら、さっきは入らなかったのに今度は入るでしょう? マニキュアのせいで痩せたんです」なんてやっている。
 ほとんどお笑いのネタかと思うようなひどい話だが、なんと番組ではこれをかなりの時間を割いて紹介し、提唱者を「先生」なんて呼んで、権威付けに協力までしている。
 今、霊感商法もどきで世間を騒がせている某も、最初はテレビにこんなふうに出てきていた。あの坂本弁護士一家惨殺事件も、元はといえばテレビ局が水中君馬鹿じゃない「クンバカ」なるいかがわしい「ショー」を放送しようとしたことと無関係ではない。
 視聴率というのはある部分では、盲信、煽動、情報操作などに密接に関係している。それだけに、情報を流すという行為の裏には、必ず「検証」がなければならない。
 マニキュアを塗ったその瞬間に体重が減るなどという馬鹿げたことを、テレビ局の人間が本気で信じているとはとても思えない。では、どういう意図で番組は作られたのだろう?
 なんか、最近はこんなシーンばかり見ている気がするのだが……。

■近況■

 新刊『アンガジェ』(読売新聞社)に合わせて同名の音楽CDを制作中。全曲オリジナルで、演奏はギターデュオのKAMUNA。年内に完成。入手方法などの情報はインターネットホームページで。



バラエティなら ヤラセが許される?




 猿岩石のことを書いた途端に、「飛行機に乗っていた」という報道が……。
 このニュースでいちばんひっかかったのは、「バラエティ番組なんだから、視聴者もそのくらいは分かっているはず」というテレビ局広報のコメント。もし本当にそういうことを言ったのなら、番組を作る側と見る側の「常識」ギャップというものを痛感せざるをえない。
「面白さ」というのは、「真面目さ」と表裏一体のものだ。どんなに「面白く」作っているつもりでも、いい加減なものは面白くない。
『恐怖の法則』(テレビ朝日系)で、地面の上に置いた10cmの橋は渡れるが、それが地上数メートルになると緊張して落ちてしまうという「実験」をやっていた。ところが、これが極めて「不真面目」で「いい加減」なのだ。
 まず、「街で見つけた一般の人たち」というふれこみの被験者たちが、明らかに仕込みのセミプロ。演技が臭いのですぐに分かる。劇団所属の売れない役者か何かだろう。
 次に、プールの上に渡した10cm幅の橋が、ゆらゆら揺れている。これでは条件がまったく異なるから、実験としてはまったく意味をなさない。コマネチだって(古い?)揺れる平均台からは落ちてしまうかもしれないもの。
 つまり、最初から結論が用意されているわけだ。それで「法則認定」だのなんだのと言われたって、しらけるだけ。工夫次第では面白い番組になるのに……。魂を込めて作ってよ、軽い番組ほどさ。


■近況■

 CD『アンガジェ』(KAMUNA)がついに完成。今度のははっきり言って凄い。「なぜ店で売らないのだ」という問い合わせもあるのだが、今の日本はそうなのよ。インターネットで試聴できます。小説『アンガジェ』もよろしく。




下品もここまで くると末期症状




しつこくお笑い番組の「芸軽視」と「笑いの質」の低俗化について書く。本当に腹が立っているからだ。
▼『タモリのスーパーボキャブラ天国』(フジテレビ系)が素人作品を閉め出し、若手芸人たちの一発駄洒落ギャグで一時間埋めるという構成になって久しいが、もしこれが短くても彼らのちゃんとした「芸」を見せる番組だったらどんなに面白いだろうと思うのは僕だけだろうか?
▼一二月七日深夜『NEXT TV』(フジテレビ系)の「お笑い新世界強運バトルロイヤル」。若手芸人たちを集め、バスで富士山あたりにツアーするのだが、「最初にバスに乗った人がアウト」「サービスエリアで最初にジャンボフランクを買って食べた人がアウト」などという意味のない馬鹿なゲームで一時間半。最後にオチでもあるのかと思ったらそれもない。途中で出演者たちも怒りをどこにぶつけていいのか分からないという顔に変わっていた。モリマンの太いほう(ごめん、名前知らないんだ)なんか、「なんやねん。趣旨が分からん!」と叫んでいたし、「ギャラがよくても絶対出たくない番組」という問いに「ボキャブラ天国!」「笑っていいとも!」と答えていたやつもいた。たまっているんだなあ。同情。
▼『スターどっきり○秘報告』で、世界チャンピオンや演歌歌手を電気椅子に座らせて感電させることが笑いにつながると信じている構成者の頭ももう完全に末期症状だろう。 モリマンのちゃんとした(?)漫才を見せろ!

■近況■

 CD『アンガジェ』(KAMUNA)通販開始。詳細はインターネット(http://tanupack.com/music/)でも。







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