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のぼみ~日記 2020

2020/04/17

介護保険証


介護保険証なるものが届いた。
親父や義母の介護で使っていたので、どういうものか知っているが、自分の介護保険証となると、やはりちょっと……ね。これが老老介護というものなんだなあ、と実感。
物忘れは加速しているし、身体もガタガタで、何をやるにも辛い。気力も衰えてしまい、アイデアがわいても実行に移すまでに至らずに終わってしまう。
衰えを感じるたびに、ダメだ~、ではなく、今までよりゆったりじっくりやればいいじゃん、って言いきかせている。

2020/04/18

義母の死

そんな中、朝、まだ寝ているときに助手さんのケータイが鳴った。
ここのところずっと、助手さんのケータイが鳴るたびに身構えていた。応じる声が明るければ、その時点でホッとするのだが、今回はそのトーンから、ああ、ついに……と予感した。
「息をしていないって。行ってくるから、のぼみ~にご飯あげて」と言い、助手さんはすぐに身支度をして、大雨の中を出て行った。

ネコどもの世話をしながら連絡を待っていると、ケータイが鳴り、「間に合わなかった。とりあえず来て」と。

コロナ戒厳令で、特養は何週間か前から面会完全禁止になっている。看取りなど緊急事態を除く、とのことで、短時間だけ部屋に通された。
そのときに確認した義母の顔が最期で、そこから翌日の火葬まで、二度と姿を見ることはなかった。

2020/04/19

去年の親父のときは、火葬場に行ってからも棺が開けられて、最期のお別れを……となって、棺の中に花などを入れたのだが、今回はそれもなく、火葬炉に送り込まれる棺を見送るだけだった。
火葬に立ち会ったのは僕ら夫婦二人だけで、去年の親父のときよりさらに少なかった。
神奈川に住む義妹も移動自粛で立ち会えず、義妹には火葬場の周囲の写真などを撮って随時送った。少しでも立ち会っている感じを持てるかな、と。

葬儀場でも、控え室での飲食が禁止になったそう。料理の折り詰めが並べられている部屋もあったけど、列席者はそれを持ち帰るだけ。
仕方がない。むしろ、こんな状況でも精一杯仕事を遂行していく人たちに感謝。
葬儀社の女性スタッフが1人、僕らが到着する前から火葬場で待機していて、僕らが最期に帰るときまでずっといた。葬儀社の社長の話では、火葬場のルールが変わって、どんな場合でも最期まで最低一人スタッフを残し、最期に後片付けと確認をしなければならなくなったのだとか。おそらく、消毒とか、ゴミを残していないかのチェックとかをするということだろう。

葬儀だけでなく、いろんなことに対して、その行為の「原点」は何か? 基本は何だったのか、と考え直すいい機会のようにも思う。
大切なのは生きているとき、コミュニケーションがとれるときの時間。
だから、お棺の中をのぞき込めなくてもいい。骨を拾えなくてもいい。
でも、家族や友人が集まり、故人の思い出を語り合う時間は大切だと思う。それができないのは残念。
そういうのはSkypeでやりたくないものね。

昨日の大雨とはうってかわって、青空、散りゆく桜、新緑、鶯の囀り。そんな中で、静かに見送れたことは幸運だった。

最後の数日は、本当に穏やかに過ごしていて、昨日も、介護スタッフが、面会できない僕らのために、せめて義母の様子を「こんなに穏やかに過ごしていますから安心してください」と、ビデオに撮って伝えようとカメラを持って行ったら、急変したとのこと。
一方、看護師さんの話では「最後の数日は、身体がもう戦うことをやめたので、穏やかな状態になったのでしょう」と。
介護士さんと看護師さんは、やはり見方、感じ方が違うのだなあと、学んだ。
「最後まで褥瘡はできませんでした」「本当に穏やかな様子でした」と言われ、スタッフのかたがたにはただただ感謝しかない。

親父も義母も、いろんなことをいっぱい教えてくれた。物書きの性として、それを残したい、伝えたいと思う。読んだ人からは、死者への冒瀆だと非難されることも多い。でも、自分もまた同じなのだと思うし、生きること、死ぬことに対して、体裁を繕うのではなく、真摯に向き合うことが、故人に対しても、自分に対しても、人としての「礼儀」ではないかと思う。


↑3月24日、病院で診療を受けるのに付き添ったのが最期になった。一般診察を終えた時間帯、人がいなくなった病院内。




4月19日、大安の日曜日。火葬場は午後の予約がいっぱいで、午前中に組み入れてもらったが、人は少なかった。



待っている間、外に出て周囲の景色を見ていた。ウグイスが鳴き、しだれ桜が最期の花を咲かせていた。



骨壺を持って、家に戻る。かわず庵ではヤマブキやリュウキンカ?が咲いていた。



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