僕はもうどんどん聴力が落ちていて、高音域はガクッと聞こえなくなっているため、あまり音質にはこだわらないようにしようと思うのだが、今も音楽をミックスダウンするときはどうしても気を使う。
- 左耳の聴力が落ちているので(前は逆だった)、右が大きめに聞こえているくらいで実際にはちょうどバランスがとれている。
- 高音域が聞こえないので、どうしてもハイハットなどシンバル類をでかくしてしまう。
この2点は特に要注意。あとは音の分離がよく分からなくなっている。ヘッドフォンではしっかり聞こえていたチェロがスピーカーから出すとどこかに紛れ込んでしまって聞こえない……という具合。
これはメインのシステムで聴くときよりPCのモニターで聴くときが顕著なのだが、自分の耳が悪くなっているだけでなく、PCのモニターシステムの質が悪いこともあるんじゃないかとずっと思っていた。
PCのモニターはアンプに中国製のデジタルアンプ、スピーカーに中国製の小型スピーカー(ブランドはタンノイだが、中国製。しかも、5.1chシステムの後方用(サラウンド音場構築用補助スピーカー)をバラで購入したもの。
このうち、アンプは悪くないことが分かっている。メインシステムにつないでも10万円以上のアンプとほぼ互角の再生音質であることを確認しているから。(ちなみにYAMAHAやビクター、パナソニックなどの10万円以下の重量級プリメインアンプより透明感のある音質)
スピーカーは小さいので、どうしても無理があるが、いちばん怪しいのはパソコンのDA変換部分だ。
パソコンには必ずオーディオインターフェイスが内蔵されていて、WindowsのPCだと、たいてい緑色のステレオミニジャックから音が出力される。それをアンプで増幅してスピーカーから出せば音が聞こえるわけだが、面倒な人はディスプレイ内蔵のちっちゃなスピーカーから蚊の鳴くような声というか音で済ませているかもしれない。
ある程度マシな音で聴くには、パソコンの音声出力端子にアンプ内蔵型のPC用小型スピーカーを接続するのが一般的。
僕も一時期はそれで済ませていた。ある意味、多くの人が聴いているミニマムオーディオの音に近いので、ミックスダウンモニターの最終確認用にも使える。
今までいろいろ使ってみていちばん音がよかったのはこれ。もう製造していないがowltechというメーカーのPC用スピーカー。無指向性ウーハーと中高音用スピーカー2点のセット
これ以上の音を出すためには、アンプとスピーカーをちゃんとオーディオ用のものにするのが王道。現在のシステムはそれなのだが、パソコン内蔵のDA変換を使いたくないため、一時期は
小型の外部DA変換器をつないでいたこともあった。
USB端子につなぐだけのDA/AD変換器。MIC入力もついていたが、この価格・大きさでマイクプリアンプ内蔵というのは怪しい
このタイプ。これだとパソコン内蔵のオーディオインターフェイスと音質はほとんど変わらない気がする

で、EWI USBの中古を買ったときにオマケでついてきたM-Audio製の小型オーディオインターフェイスをつないでみたりもしたのだが、音が出る瞬間にガガッというノイズが出ることがあってやめた。音質もほとんど変わらない感じだったし。
ヤフオクの取引のとき、オマケでついてきた小型オーディオインターフェイス。EWIの外部音源を鳴らすときにメインのオーディオインターフェイスとは別にこれを通してアナログ出力したものをLogicのオーディオトラックに入れたりもしたのだが、片チャンネルに微細なノイズがのることや、内蔵インターフェイスに比べて特に音質がいいとも思えなかったのでお払い箱に
で、先日、Amazonのタイムセールを見ていたら、
DA変換だけで定価が3万円するオーディオインターフェイスがタイムセールでちょっとだけ安く出ていた。


安くても1万円するし、どうせまた大して変わらなかったら無駄遣いだなと思って悩んだのだが、ポチしてみた。
半信半疑のままつないでみたら……いやはや、今度は劇的に音質がよくなった。
専用のドライバーをインストールしなければならないし、USB3.0には対応していないなど、古いスペックのものらしいが、それゆえに安くなっているなら歓迎。DA、AD変換部分はパーツのクオリティがものをいうので、どうしても安くは作れないのだと思う。
であれば、マイクプリアンプとかはついていないほうがいいし、DA(デジタルからアナログへ)部分だけで3万円の値段をつけているこのレベルの製品のほうが安心できる。
この製品はDirect Stream Digital(DSD)に対応していて、PCM(CDなどのデジタルオーディオ規格)の64倍、128倍のサンプリング周波数でのサンプリングができることになっているが、DSD対応機器やソフトはまだ少ないし、必要ない。実際、そのモードで再生したからといっても、元の音源がPCMならそれをDSDに変換したからといって音がよくなるわけじゃない。
普通のPCMモードで使えばいい。それでも、だいぶ耳が悪くなった僕でさえすぐに「おっ!」と分かるような音質の劇的改善があった。
これはうまくいった買い物のひとつになった。
PCからオーディオを鳴らす場合、PCから出てくる音声信号がすでに劣化していたら、そこから先に高価なアンプやらスピーカーやらをつないでもいい音では鳴ってくれない。お金をかける部分を間違えるとダメなんだね。
で、DA/AD変換の部分は、どうしても安くて高性能というわけにはいかないみたいなので、この程度の出費は仕方がないってことだろう。
これでDA変換部分はよしとして、あとはMacにつないでいるYAMAHAのデジタルミキサー(n12)のままでいいのかどうか、というのが悩み。
でかくて邪魔だし、もう、ミキシングは全部Logicのソフト内で行っているので、マイク1本ライン2~3系統だけならもっとコンパクトで質の高いオーディオインターフェイスがありそうな気もするのだが、なんとなく面倒なのでそのまま。
どっちみち、ソフト音源類はインターフェイスに関係ないしな。Vocalとギターしかマイクやライン入力使わないしなあ。
でも、アナログ卓を使っていた頃に比べて、デジタル卓のn12とCubaseにしてから、音質が落ちたと感じたのは確か。思いきって制作環境大改革しようかな……。
ところで、ハイレゾ録音・再生なんてことがいわれている昨今だけれど、もともとの音源がCDレベル(16ビット/44kHzサンプリング)なら、それをハイレゾ規格に持ち上げてリサンプリングしたところでいい音になるとは思えない。解像度の低い画像にダミー画素を追加して大きく引き伸ばすようなもの。
サンプリング周波数やビットレートよりも、AD/DA変換部分の品質に大きく依存するのは間違いない。
音の入り口(マイクやライン入力部)と最終出口(スピーカー)はアナログなんだから。
例えば、HDDの中にこんな動画データがあった↓ 2009年7月の上智での教室ライブをパナソニックLX-3というコンパクトデジカメで記録したもの。
ケチって横320pxの小さな動画モードで撮っていた。
この大きさの動画が元↑
それを少し大きく変換してみたところで、画質がよくなるわけじゃない。
ところが、驚いたことに、こんな動画の音声でさえ、今までのPC内蔵オーディオインターフェイスから出力した音より、今回購入したKORG DS-DAC-100mを通した音のほうがはっきりクリアに聞こえるのだ。