2011/06/19

お別れ

里親捜しの団体さんに中継してくださるというかたが、今日、やってくる。
この子たちと一緒にいられるのもあと数時間。
助手さんは昨日あたりから完全に不機嫌で、怖い。
何度も何度もアピールしてくる。
「(ネコ2匹くらい)どうとでもなるんじゃないの?」
「これが人生最後のチャンスかもしれない」
「あなた、(手放すなんて)よく平気ね」
……ちくちくちく。
考えようによっては、この原発震災を乗り切るために天が与えてくれたプレゼントなのかもしれない。
確かに、こんなに可愛くて利口そうな子たちに巡り会うことは、もうないかもしれない。
その気になればなんとか飼えるのかもしれない。タヌと8年。ゴロと11年。なんだかんだでやってこれたのだから、ネコなんてそれに比べれば楽なものかもしれない。
でもなあ……。
悩む間にも、みーちゃんがよじ登ってきて膝の上で眠る。この感触がもうすぐなくなるのだなあ。
疲れる。

あ~、のぼちゃんも登ってきてしまった


のぼちゃん寝る。みーちゃん、ちょっと落ち着かない

そうこうするうちに午後になり、電話がかかってきた。
うちへの道順を説明するのだが、うまく話せない。ほんとにいいのか、これで……。
電話が切れた後、助手さんが冷たく「ほんとに手放す気なんだ……」と。
重苦しい沈黙の時間が流れていく。
夕方、中継係?のみほさんがグレート義太夫にちょっと似た年下の旦那さん(アウトドアスポーツ系)と一緒に到着。
メールのやりとりの印象では、還暦前くらいのおばさんかと思っていたのだが、違っていて、もっとずっと若かった。
途中まで連れて行って引き渡さなかったのは、少しでも話などして、安心したかったからなのだが、それは正解だった。
最初はぎくしゃくしていたのだが、家の中でお茶飲み話をしているうちに落ち着いてきた。
お世話になろうとしている里親捜し団体さんは、横浜市を拠点にしていて、ネコが専門。里親希望者の家まで行って、本当にちゃんと最後まで飼ってもらえる環境かどうか確認し、注意書きや約束事項を書面にして署名してもらって引き渡している、しっかりした団体だという。
ノボちゃんとみーちゃんのように仲のいい兄弟は、極力、二匹一緒に飼ってくれる人を捜すようにもしているという。
みほさんは、田村市に前線基地を設けた別のネコ救出団体の手伝いをしに、ときどき川崎市からやってきているそうだ。すごいことだ。
前回、300gに満たない子猫5匹を横浜のその団体まで運んだが、あっという間に5匹とも里親に引き取られていったということで、「子猫は人気があるからすぐに里親は見つかります」と。

いろんな意味で、都会の力はすごいな、と思う。

で、いよいよ別れの時。
びゃ~びゃ~泣くかと思ったら、二匹ともケロッとしてケージに収まった。ご飯を食べた後だったから眠かったのかもしれない。人間に対しての警戒心はほとんどないようで、車に乗せられるときにも泣かなかった。
ちょっと拍子抜けしたくらいだ。
別れの時まで気を使っているのか。頭いいんだな、つくづくこの子たちは。ほんとに惜しいな。
さよなら。
元気で。
いっぱい可愛がってもらって、長生きしなさいね。


ケージに入れられても大人しかった


ん~~、手放したくないが……


ほんとに最後のお別れ


じゃな、きりがないから……


あ~


行っちゃった……



行っちゃったなあ。
このときより、この日記を書いている今のほうがずっと気持ちが重い。

生き物との出逢いと別れ、縁というのは不思議なもので、一瞬目を合わせただけなのに、一生忘れられないこともある。
30年近く前、犬を飼おうとしたことがあった。結局、飼わなかったのだけれど、一度見に行ったとき、5匹くらい見せられた中の一匹が今も忘れられない。片方の目の周りが茶色くて、変な模様の子だった。他の4匹がそこそこ整った顔なのに、その子だけが変な顔で、しかも性格がぬぼっと抜けた感じ。
今も、あの子をあのとき引き取っていたらどんなことになっていたのだろうと思い出すことがある。

タヌやゴロとの出逢いも、目が合ったときにビビッと感じるものがあった。
もちろん、感じない犬・ネコのほうがずっと多い。
ジョンは、一緒に散歩しているときはバカだバカだと思っていたけれど、いなくなると、ほんとに僕にぴったりの犬だったのだなと分かった。最近は散歩していないので、さっそく腰痛が復活した。
ぐいぐい引っ張るあのバカさ加減で、普通の散歩よりもずいぶん運動になっていたのだ。上半身にも負荷をかけながらクロスカントリーをやっているようなものだったのだなあ。

ノボちゃんとみーちゃんが連れて行かれた後には、しんちゃん一家が残った。
でも、この子たちはなつかないし、野良のまま生きていくのだよなあ。蒲団の上で待っていたり、しつこく足をよじ登ってくることはない。どころか、数メートル以上は近づくこともできない。

最近、定位置になりつつある井戸の蓋の上


こっち見ているねえ。だいぶ目つきが違うねえ


なにもそんなに怖い目で睨まなくたっていいだろが


近づくと逃げる。最初にやってきたボルグ以外、名前も付いていない


別れの日の夕焼け空……とっても紅い


いなくなると仕事がはかどるかというと、逆だなあ。気が抜けてしまって、集中できない。しばらく続くのかなあ、このペットロス状態。


一つ前の日記へ一つ前へ    abukuma.us HOME    takuki.com HOME      次の日記へ次の日記へ



あのとき、さまざまな偶然が重ならなかったら今頃日本は本当に「終わっていた」ということを、的確に分かりやすく解説。 ご案内ページは⇒こちら
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円/平綴じ版 690円(税別、送料別)
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新マリアの父親
「フクシマ」を予言した小説と言われる『マリアの父親』の改訂版が「紙の本」で甦る。試し読みは⇒こちらから
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別、送料別) 





iBooks図書館ガイド  Kindleアプリで本を読む

tanupack音楽館  よいサイト 41.st  たくき よしみつの本 出版リストと購入先へのリンク  デジカメと写真撮影術のことならここへ! ガバサク道場