10/04/30の2

「環境負荷の大きい車」とはなにか


ティグラのバッテリーが5年を超えているので、上がってしまう前に交換しようと思って、重い腰を上げ、韓国製5500円のバッテリーを買った。ところが取り付けボルトが奥のほうにあって、特殊な工具がないと外せないと判明。仕方なくガソリンスタンドに持って行って交換してもらった。
レジの中ではまだストーブを炊いていて、猫が寝ていた。
車と言えば、今年も自動車税の請求書が届いた。
驚いたことに、去年よりぐんと上がっている。なんで?

調べたところ、2002 年(平成14年)度から、「排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車はその性能に応じ税率を軽減し、新車新規登録から一定年数(ガソリンエンジンで13年、ディーゼルエンジンで11年)を経過した自動車の税率を約10%程重くする税率の特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化」)が実施されていることが分かった。
うちのティグラとX90は、平成8年の車なので、今年から13年経過に該当し、本来の自動車税額(ティグラは1500cc未満で34,500円、1600cc未満のX90は39,500円……昨年まで)から一気に、37900円と43400円に値上がりしたのだ。

これにはさすがにぶち切れた。
そもそも「排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車」というが、該当するのは、要するに「新車」のことである。
トヨタの高級車クラウン(2500CC)でさえ、「重量税50%減税対象車」なのだ。
この2500ccのクラウンは、公称燃費が12.4kmだが、街中で走ればおそらく10km走らないだろう。
そもそも2500ccのクラウンを買える人はかなりの富裕層であろうし、どれだけ深刻に自動車を必要としているか疑わしい。そういう富裕層が高級車を買うのを、税金で援助しているのだ。
一方で、本当に車が必要な過疎地の人たちは、農作業用の軽トラで通勤していたりする。
初回登録から13年を経過して「環境負荷の高い自動車」であるとされた古い車にのり続けている人もたくさんいる。壊れていないし、燃費も落ちていないし、買い換える必要がさらさらないのだから当然だ。
これがいちばん環境負荷が低い車の乗り方であることは議論を待たない。どんな製造物であれ、製造するときと廃棄するときには環境に大きな負荷をかける。
13年前にどんな車があっただろうかと、ちょっと調べてみる。
例えば、シビック 1.5 VTi という車は、95(H7)年09月〜96(H8)年08月に最初のモデルが製造されており、「13年経過」している。このシビック1.5VTiの5速MTモデルの10-15モード燃費は20.0km/リットルだ。当時の新車価格は143万円。いわゆるカローラやサニーなどの「大衆車」に入る。
このシビック1.5VTiにはCVT(ベルトによる無段階変速)モデルもあり、それも公称燃費は17.2km/リットルを誇っていた。
こうした低燃費を売りにしていた13年前の乗用車に今も乗り続けている人は、環境負荷をなるべくかけない使い方をしているとして表彰されてもいいくらいだが、逆に、増税されるのだ。
反吐が出るのは、このふざけた法律を「「グリーン化税制」などと呼んでいること。
長くものを使い続けることを邪魔して、新しいものを買えと圧力をかけるのだから、明らかに環境破壊推進税制ではないか。

なるべく不愉快なものは見ないで、ストレスをためないようにしたいと思っているのだけれど、こういう場面にぶつかるたびに、この国は一体なんなのか、世界を席巻するエコエコ詐欺はどこまでエスカレートするのかと、うんざりする。

石油があるうちはどんどん使って、金持ちはもっともっと金を儲けなさい。私たちはそういう社会を応援します、という政治。だったら正直にそう言えばいい。そういう政治を望む人たちも少なからずいる。
それを、「グリーン」だ、「エコ」だと、大衆を欺く言葉で粉飾するのはやめなさい。

仲五桜が満開に


このヤマアカガエルはこれから産卵だろうか。腹がずいぶん膨れている


地下水がしみ出している部分に生えてきたこれはなんだろう


ツクシも姿を現した
……ちなみに、X90は冬の越後で暮らすため、2003年に購入した。走行距離は3万7400km。34万円だった。
冬の越後で暮らすにはどうしても四輪駆動車が必要だったが、普段の車として四駆を使うのは無駄が多かったし、四駆は高価なので、中古でもなかなか買えなかった。
買った直後はいろいろな不調が出ていたが、走るにつれて調子が出てきて、その後、なんの問題もなく快調に走っている。燃費も年々よくなってきている。
整備工はみな同じことを言うが、自動車のガソリンエンジンは5万キロを超えて10万キロにさしかかったあたりがいちばん調子が出てくる。これは僕自身、経験からそうだと言える。もちろん、サスペンションなどはどんどんへたっていき、乗り心地は悪くなるが、燃費などはむしろ走り込めば込むほどよくなることのほうが多い。
過去に手放した車も、手放す寸前がいちばんエンジンの調子はよかった。電気系がボロボロになったり、飽きたりして手放したが、その気になればまだまだ乗れる車だった。
義弟などは、結婚したときに父親が乗っていたマークIIを譲り受け、娘が成人になろうという今もまだ乗り続けている。彼もまた、毎年、理不尽な割り増し自動車税を払っているのだ。
ようやくエンジンの調子が出てきて、自動車の寿命としてはようやく半分にきたかどうかという時期の車に増税し、維持させづらくするという税制は、環境破壊税制としか言いようがない。固定資産税にしたって、長くもてば持つほど安くなるのが当然なのに、自動車はなぜ逆なのか?
要するに自動車会社が新車を売りやすくするためであり、言い換えれば、本来必要のない自動車を作らせるためだ。
ほとんどの現代人は過剰な経済行為の中毒症状に陥っていて、これを根本から治癒する意志がない。それを肯定し、最後の最後、どうしようもなくなって壊滅するときまでは、エコだのグリーンだのとお題目を唱えながら、とことん経済行為を加速させる、というのが、現代の政治だ。これは日本だけではなく、欧米の「先進」諸国と呼ばれる国ではみなそうだ。本音は「とことん行き着くところまで突っ走れ。その頃にはどうせ現代文明は終焉を迎えているのだから」というところだろうか。
そのおこぼれにあずかって僕を含めた一般大衆が快適な暮らしを続けられていた頃は、気づかないところでとんでもない破壊行為が起きていた。
しかしここにきて大衆へのおこぼれが少なくなり、格差がどんどん広がってきた。
さて、ここから先はどんな歴史になっていくのか。



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