『鬼族(きぞく)』 (特別限定本)


鬼族(きぞく)    書 名:『鬼族(きぞく)』
   著 者:たくき よしみつ
   版 型:A5版並製本 特別限定本
   版 元:文藝ネット(01/05)
   価 格:1,500円
   100部限定製本、内、一般通販は50部を予定。

『鬼族』公式版 2003年1月河出書房新社より発売 現在、無料立ち読み版公開中こちらへhttp://kizoku.org へ

たぬ書房マークたぬ書房でのみ扱っております。売り切れ次第販売終了。→購入へ


 

あとがき

 文藝ネットプロデュースによる、限定本シリーズ第二弾をお届けします。
 第一弾『黒い林檎』のあとがきにも書きましたように、この限定本シリーズは、主に二つの目的を持っています。
 ひとつは、作品をいち早く本という形で読みたいという読者のみなさまにお届けすることです。購入してくださったかたがたは、この作品のパトロンであり、共同出資者です。感謝いたします。
 もうひとつの目的は、出版に携わるかたがたに、一人でも多くこの作品を読んでいただくことです。
 出版不況が長引き、「確実に売れる本」以外はなかなか世に出づらくなっています。良質の本を出すために、作家も出版社も努力していますが、本を出せるかどうかは様々な条件が関わってきます。編集者が惚れ込んだ原稿でも、営業サイドから拒否される。出版社が力を入れて出そうとしても、取次店が部数を制限する。──そうしたいくつもの壁をうまく乗り越えられたとき、ようやく本が出ます。
 作家と編集者が出逢う機会を増やすためにも、こうした限定本制作の試みは無駄ではないと思います。
 
 この作品は、二〇〇〇年十二月に、ある出版社からの依頼で書いたものです。八百枚を超える『呪禁(じゅごん)』、六百枚を超える『黒い林檎』は、分量がありすぎて出版コストがかさむ。三百枚程度で娯楽色の強いホラー作品を書き下ろしてほしいということでした。
 冒頭の「枕草子」の一節は、執筆作業中に担当編集者が「差し入れ」してくれたものです。
 年明けの一月末に完成原稿を渡しました。担当者とは、WEBと連動してPRしていこうという作戦も打ち合わせて、kizoku.org、ki-zoku.com というドメインも取得しました。担当編集者ともども、さあ売るぞ! と意気込んでいた直後、突然、「上から月間出版点数を十五冊から六冊に減らすよう命じられ、事実上出版できなくなった」という通告を受けました。
 その瞬間から、この『鬼族』という作品も、新たな出版元を探さねばならない運命を背負いました。
 もともと、この作品は、長大なシリーズにすることを考えていたので、三百枚規模で話をまとめるにはかなり割り切った書き方をしています。また、現在の出版状況を鑑み、短期決戦を意識しましたし、ゲーム化や映像化も念頭に置きました。自家版で出すならもっと別の書き方があったはずですが、とりあえず、この時点で書き上がっている内容で限定本にし、新たな出版元を求めることにします。「エピソード1」となっているのは、そういう意味合いもあります。
 
 自家版も二冊目になり、作業手順も少しは慣れてきました。
 この本は前回同様、QXエディタで書いた原稿を、QXの印刷機能を使ってそのままフォント埋め込みのPDFファイルに出力し、デジタル版下にしています。扉と奥付のページのみ、ワードを使いましたが、いわゆるDTPソフトすら使っていません。もちろん、従来の電算写植システムとは無縁です。
 校正はQXとアクロバットの画面上で行いました。著者側も印刷側も、一度も全文を紙に印刷することなく、作業をしています。
 極少部数出版の場合、いかに製作コストを抑えられるかが重要な課題ですので、こうした一見大胆すぎる方法も、積極的に採用しています。(……と言うのは半分は言い訳です。もちろん、本当は全文を紙に印刷して校正したほうが間違いありませんので、完全なペーパーレス編集を勧めているわけではありません。)
 日本では、著述家や出版のプロでも、まだまだ文書のデジタル化について理解が浅く、あちこちで無駄なお金をかけています。本というアナログな文化を後世に残すためにも、作家、出版関係者双方のデジタル技術習得は必須です。そのへんのことについては、拙著『テキストファイルとは何か?』(地人書館)をぜひご参照ください。
 
 最後になりましたが、本作品には津軽弁や秋田弁の会話がたくさん出てきます。出版が不可能になったと告げた後も、快く方言指導・校正作業を続けてくださった太田宜邦さん、渡部ちあきさんには、心からお礼申し上げます。お二人の手弁当での応援がなければ、この作品は仕上げられなかったでしょう。

『鬼族』が長く眠りにつくことなく、商業出版されることを念じつつ、本書を送り出します。
 
               二〇〇一年五月一〇日   たくき よしみつ



こぼれ話
 『黒い林檎』は、ダイナフォント(DF平成明朝体W3)がPDFファイルに埋め込みできず(漢字フォントの交差部分に白い抜けが出てしまう)、印刷が遅れました。仕方なく、あまり好みではないJS明朝というフォント(一太郎のオマケ)を使ったのですが、その後、CanonのFGフォントを購入したので、今回はFG平成明朝体W3というフォントを本文に使っています。
 だからなんなんだ……と言われればそれまでなんですが、まあ、それなりに書体にも気を配るようになったということですね。どっちみち、私自身は老眼が進んでいて、本文フォントの美しさなどほとんど分からないですし、前回の書体とどう違うのかも実感できませんでしたが(苦笑)。

 関連サイト:『鬼族』公式サイト http://kizoku.org
      :縄文村 http://jomon.org/


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