あなたの知らない「彫刻屋台」の世界

今市の彫刻屋台を深く楽しむ

春日町二丁目の彫刻屋台内部
日光東照宮の造営にあたっては全国から一流の工芸、塗り、大工、石工、金工など、様々なジャンルの職人が集められました。その後も制作物の保守のために一定数の職人が出入りし、次第に周辺の今市や鹿沼などに住みつく者も出てきたと考えられます。
東照宮の絢爛な建造物、工芸品の数々は権力者のシンボルとも言えますが、後に、集められた職人たちと地元の民衆が生み出した文化が「彫刻屋台」です。
当初は氏神に奉納する付け祭に繰り出す踊り屋台でしたが、次第に彫刻や彩色に懲り始めて、ついには屋台そのものが祭りの主役とも言える芸術作品、文化財になりました。
彫刻屋台が独自の芸術文化として一気に発展していくきっかけとなったのが江戸幕府が出した奢侈禁止令(庶民に贅沢を禁じる法令)でした。彩色された屋台などは贅沢であり、まかりならん、というお達しに対して、庶民は「では、白木で造れば文句はないだろう」と、白木彫刻の技を競うことで対抗しました。
結果として、陽明門の豪華絢爛な彩色彫刻に勝るとも劣らない彫刻を施した屋台ができあがったのです。
東照宮の彫刻群が、為政者が権力と金にあかせて「造らせた」ものであるのに対して、彫刻屋台は庶民が自腹を切り、自分たちが楽しむため、自分たちの精神文化、信仰心を表明するために「作りだした」ものです。

しかし、この「彫刻屋台」という庶民の力が生み出した文化遺産を、ほとんどの日本人は知りません。東照宮の三猿や眠り猫は知っていても、彫刻屋台は知らないという人がほとんどでしょう。日光を訪れる外国人観光客も、もちろん知りません。
彫刻屋台は維持管理が大変なため、長い間、数年に一度くらいの割合で地元の祭りで少しずつお披露目される程度になっていましたが、近年になってもっと多くの人の目に触れる機会を作ろうと、鹿沼や今市では毎年、ほとんどの屋台を出すようになりました。
鹿沼には新旧合わせて27台の彫刻屋台があり、毎秋、「鹿沼ぶっつけ秋祭り」に登場しますが、日光(旧今市)の彫刻屋台は、地元住民でさえ存在を知らない、見たことがないという人が多いようです。
2009年に「今市屋台まつり」として例年行事化し、長い間倉庫に眠っていた彫刻屋台の姿を見られるようになったのは本当に嬉しいことです。
鹿沼の彫刻屋台に比べると、屋台の保存の仕方、PRの仕方、祭りの運営方法などなど、改善すべきところが多々見うけられますが、彫刻屋台そのものの文化財的価値は、鹿沼の屋台群に比べても勝るとも劣らないものであり、現存する彫刻屋台の中でもトップレベルを誇るものばかりです。

このサイトは、今市の彫刻屋台を広く知ってもらって、よりよい形で保存・披露することを呼びかけたいとの思いから作りました。
地元の人たちだけでなく、日本中、世界中の人たちに、このユニークで貴重な文化遺産の価値を知っていただくことで、長く保存していけるように願っています。

彫刻屋台そのものをアートとして見直したいという思いから、2016年からフルカラー写真集「彫刻屋台図鑑」シリーズを編纂し始めました。『鹿沼の彫刻屋台』『宇都宮・今市の彫刻屋台と天棚』の2冊があります。

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今市の彫刻屋台一覧(すべて日光市指定文化財)

春日町一丁目

 鹿沼の麻苧町屋台・銀座2丁目屋台を製作した彫刻師・後藤音次郎の銘(安政6=1859)がある。
 前鬼板は親子獅子と牡丹。前懸魚は鳳凰。脇障子は孔雀。高欄に巻龍。
 前蹴り込みに長さの違う2本の角を持つ龍(一部に赤の彩色)。
 内欄間に籠彫りの珠を奪い合う獅子たち(5頭?)と牡丹。その下に小鳥と菊。
 脇障子、高覧下などに亀、鳥、花など多数。 車隠しに龍と波。

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春日町二丁目

江戸末期~明治初期の制作と推定。「彫刻師 神山政五郎、助刻 大出常吉」の刻銘。
 前懸魚は龍と波。 柱飾りに孔雀と藤・牡丹。。脇障子に龍虎。障子回りに細かな木の枝(松など)と小鳥。
 高覧下は獅子(籠彫りの珠あり)と一角の懸魚、龍、波など二段構え。直高覧。
 内欄間に孔雀と細かな木の枝。外欄間に松と鷹。

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相生町

制作年代は明治7年頃で、大出常吉と石塚吉明によるものとされている。

 漆塗りの土台。緑の控えめな彩色を施した鷹二羽と松の枝が鬼板。
 一木彫りの柱飾り。前蹴り込みに細かな波。
 脇障子は鶏と菊。高覧下と車隠しが一体で波(泡の粒まで)と千鳥。
 障子回りに葡萄と小鳥。後ろ鬼板は二羽の鳳凰と牡丹。
 高覧は直高覧(漆塗り)

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小倉町一・二丁目

江戸末期~明治初期の制作と推定。彫り師は不詳。
鬼板は龍。前懸魚は鳳凰?(ガルーダ風)。龍の目は江戸硝子。
脇障子に親子獅子。外欄間に謎の大蛸と唐子。直高覧に丸彫りの獅子2頭ずつ。
車隠しに獅子と牡丹。障子回りに菊と小鳥。
柱飾りに一木透かし彫り。
破風にも波の彫刻。外欄間に枝と冠鳥、小鳥など。
内欄間に雨の岩戸伝説。その下に巨大な孔雀(羽根に金箔)。
前蹴り込みと横欄間は唐子遊び。

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小倉町三丁目

江戸末期~明治初期の制作と推定。全体に小鳥と花(特に菊)の彫刻が多い。菊、牡丹、小鳥で、これでもかと全体を覆い尽くしている割り切りのいい構成力が魅力。
鬼板は孔雀丹。前懸魚は牡丹。花弁の多さと精緻さが見事。
屋根の上にも彫刻多数。外欄間の木菟をはじめ、鳥の彫刻は表情豊かで見飽きない。

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住吉町

文政~文久年間の作と推定。
鬼板は丸彫りの獅子。
直高覧に絡みつく丸彫りの龍。高覧下の懸魚。車隠しに表情豊かな十二支。
十二支彫刻には、石塚知興・吉明の刻銘がある。
内欄間にオロチ退治の須佐之男。
脇障子に菊と尾長鶏。高覧下に波と懸魚、亀。柱飾りに栗鼠。

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他に、文挟や大沢にも彫刻屋台(文挟の屋台は文化文政期の作と推定され、日光市指定文化財)があるが、長い間、解体収蔵されたままで、地元の住民でさえ近年は記憶から消えつつある。


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彫刻屋台総合サイト

彫刻屋台の世界 こちら

兄弟サイト

参考資料サイト

※このサイトの解説等は以下のサイトの資料を参考にさせていただきました。

祭りの動画

そして、これも敢えて……

「今市の彫刻屋台 保存・運営・PRなどの課題点」



■主な更新記録


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