ビルマ汁と蕎麦を食って、さて、あとは新町の彫刻屋台を撮影……と、御仮屋へ向かう。
新町の彫刻屋台は文化14(1817)年に宇都宮の押切町で製作され、宇都宮二荒山神社の菊水際に巡行参加していたものを、明治13(1880)年に益子町新町の有志が買い求めたという。屋台そのものは益子町の中でいちばん古いが、彫刻は後から新町で付け加えられたということなので明治13年以降ということになる。
購入時と大正9(1920)年に大規模な改修を施した。平成11(1999)年7月に、ちょっとデリケートな事情で焼失。わずかに障子、錺金具、彫刻の一部だけが形をとどめるだけになってしまったが、その後、復元され、今はピカピカの姿になっている。
御仮屋に着くと、ちょうどこれから出発の儀式を行うところだった。
休憩していた町の人たちが集まってきて、暑い暑いといいながらも、屋台を方向転換させ、その前に整列した。
若い?女性の神主が、町内の人たちに「帽子と首にかけたタオルは取ってください」と言っていて、最初は、神事だから当然か、と思ったのだが、参列者の後方に子どもも何人かいるのを見て、ドキッとした。
気温は40度近い。熱射病になりやすい子どもには帽子を被らせておかないといけないだろうし、そもそも子どもはテントの下などに避難させておくべきだろう。
しかも、祝詞がかなり長かった。誰か倒れる人が出ないかと、ひやひやしながら見ていた。
体の小さな子どもの汗腺は「密」に存在するが、体そのものが成長しきっていないため実際に有効に働いている数は非常に少ない。このため、水分補給が、大人のように体温調節に対して有効ではない。
(略)
「とにかく皆さんに注目してほしいのは、発汗する機能が子どもは非常に弱いということ。18歳以前は未発達と考えなくてはいけないのに、大人は自分の感覚で判断してしまう。水分補給によって大人と同じような予防効果が得られると勘違いしないでほしい。飲水は必要なことではあるが、過信すると大変なことになる」
(「体温超え」が18歳未満の子に超危険なワケ 医学博士「体温調節機能が大人とは全く違う」 東洋経済ONLINE)
とにかく、子ども(18歳以下)は酷暑の屋外になるべく出さない、ということしかない。
益子町益子にある3台の屋台(新町、田町、内町)は、もとは宇都宮にあったもの。外車輪で黒漆塗り彩色仕様の「宇都宮型」と呼ばれるもの。奢侈禁止令が出る直前の文化文政時代に作られている初期型で、彫刻屋台の歴史を知る上では貴重な存在。
3台とも今では収蔵庫兼常設展示場に置かれていて、通年見学可能になっている。今市や宇都宮でもこうした努力を進めていってほしい。
まとめ
新町彫刻屋台
文化14(1817)年建造。宇都宮押切町の屋台を明治13(1880)年に購入。平成11(1999)年7月に焼失したものをその後復元。
田町彫刻屋台
文政4(1821)年建造。明治15(1882)年頃に宇都宮市日野町より購入。
内町彫刻屋台
文政5(1822)年建造。明治14(1881)年頃に宇都宮市新石町(現宇都宮地方裁判所周辺)より購入。
原と松本の屋台は見られず
町の中心から離れた益子町山本地区にも彫刻屋台が2台ある。そのうちの原彫刻屋台が、もしかしたら今日、収蔵庫から出されているかもしれないので行ってみましょうという駒場さん。
収蔵庫に近づくと、屋台を引いた轍が道路に白く伸びていて「お、これは出ているかも!」と一瞬期待したのだが、結局観られなかった。暑いので午前中のうちに曳き回して、また収蔵庫に入れてしまったのだろう。残念。