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のぼみ~日記2018


2018/04/13

急遽泌尿器科へ



親父のことや壊れたPCや給湯器のこと、全部が未解決のままなので、疲れているのに眠りは浅く、いつもより少し早く起きてしまった。
さっそく紹介状を書いてもらった病院に電話。名医と評判の高いその医師は、とにかく人気があって常時混んでいるとのこと。しかも、来週は2日間休みが入り、前後はさらに混むだろう、と。
親父の場合、病院で尿を採取するのも難しいから、あらかじめホームで尿を採って持っていくしかない。それでも、長時間待たされて、最初はせいぜい問診だけで、細かい検査は後日また来てくださいといわれるのだろうから、初回は尿を僕が持っていって話をして、後日、検査の予約が取れた日に連れていくという方法ではダメかとも訊いてみた。
どうしても難しいならそれでもいいけれど、やはり本人に来てもらわないと……と。
で、その時点でまだ10時半だったので、いっそ今から行くことにして、ホームに電話した。今から迎えに行くので、尿を採って待っていてくれ、と。
ホームに着いたら、施設長が苦笑しながら「ダメでした~。出ませんでした~」と言う。ガックリ。病院で尿を採るのは難しいだろうなあ。

その病院は場所はなんとなく分かっていたが、行ったのは初めて。古い病院で、全体的に暗く、床などはところどころ亀裂が入っている。
尿を採るためのトイレはなく、普通の古いトイレで、男子便所には大便用個室は狭いのが1つしかない(当然、車椅子や松葉杖の人はそんなのところで尿を取れるとは思えない)。
しかも、採尿したカップは普通に廊下に出ているテーブルの上に置くようになっている(これはさすがに驚いた)。
個室が1つ、小便器も1つの狭いトイレなので、ドアを開けたまま採尿に苦労している親父の横に立って、見守る。
「出ないよ。無理だよ」と繰り返す親父に「ゆっくり力を抜いて……」と指示しながら、たまに入ってくる人がいるとドアを軽く閉めて……。
10分くらいして、ようやく少し出たので、こぼしたりしないうちにカップを受け取って、不安ながら、指示された場所に置く。こんなところでこんなにオープンに並べておいていいのか……ほんとに……。

その後、待合室に戻ってまたひたすら待つ。時間はもうお昼をとっくに過ぎていて、待合室から少しずつ人は減ってはいる。
外来患者はほとんどが高齢者だったが、長時間待たされ、何人もが看護師さんらに「まだですか?」と訊いている。
看護師さんたちの年齢はかなり高く、みな疲れた顔をしている。無愛想とまでは言わないまでも、その疲れがこちらにも伝わってきて、ただでさえいるのが苦痛な病院という空間が、さらに息苦しく感じられる。

そんな中、ようやく順番が回ってきて診察室に入れた。
医師は思っていたよりも若くみえた。明るい声で感じはいい。紹介状を読み、いくつかやりとりをしたら、すぐに親父に診察室内のベッドに横になるように指示して、腹部のエコー検査を始めた。
「これが前立腺です。普通の3倍くらいまで肥大していますね」などと、テキパキと説明をしてくれる。
「写真を撮ってもいいですか?」と訊いたら、すぐに「はい。じゃあ、これがいいかな。あ、これが分かりやすい」と、わざわざベストショットポイントを探してくれた。

診察室でエコー検査。「ここに見えている白い部分が……」などと説明を受ける
エコー検査で見ただけでも、前立腺は肥大し、腎臓には結石の卵のようなものが見え、膀胱にもいくつか腫瘍か血腫のようなものがあるので、膀胱の中を一度ちゃんと見てみましょう、と言う。
「それってカテーテルで、ということですか?」
「ええ。でも、今のカテーテルは細くて、痛みもほとんどないですし、1、2分で終わりますから、そんなに怖がることはないですよ」
と説得される。
しかし、これだけ混雑している病院にまた連れてくるというだけでも親父には相当なストレスがかかる。そのことを訴えると、すぐに「じゃあ、今、やっちゃいましょう!」と言う。
「え? 今日、これからできるんですか?」
「普通はしないんですが、そういうことでしたら特別にやっちゃいます。今から準備させます」
であればやってもらうしかない。
決断が早いし、説明は適確で分かりやすいし、何よりも患者の状態をしっかり把握して、合理的な方法をとってくれる。なるほどこれは名医だ。県外からも患者が来るというのも頷ける。

その後、外で待っていると、かなり年輩の女性看護師がやってきて、検査室へ促されたが「付き添いのかたはここで待っていてください」と止められる。

親父は小心なので、ついていければ安心するだろうが、仕方がない。無言のまま不安そうに検査室に向かう親父の背を見送る。

しばらくすると、さっきの担当医が車椅子をスーッと走らせながら来て「息子さん、じゃあ、一緒に行きましょう」と声をかけてきた。

診察室に通されたとき、あれ? 車椅子に座っているのは、狭い診察室を動くのに都合がいいからかな? などと一瞬バカなことを思ったのだが、当然そうではなかった。
医師の後について検査室に入る。緑色のシートがかかっている部分には触らないでと注意を受ける。



医師の真後ろに立たせてもらい、一緒にモニターを見ながら解説してもらった。
鮮明なカラー映像が映し出され、ビックリ。
「はい、入りました。今尿道を通って、はい、ここが膀胱です。あ~、これ、真っ赤だね。見えるでしょ?」
と、僕と親父の両方に説明をしてくれる。
膀胱の壁がかなりボロボロで、あちこちに血腫のようなものが浮き上がり、そこから出血していた。

せっかくカテーテルを入れたので、汚れた尿は吸い出し、膀胱の壁をコーティングするような白い薬剤を注入するという。

映像が終わったところで先に外に出て待っていると、まもなく医師がまた車椅子でピューッとやってきて、廊下のベンチ前で説明を受けた。
「組織採取検査をすれば、多分、癌細胞が見つかるでしょう。でもまあ、高齢ですし、見つかっても抗癌剤や手術なんてできないわけですから、これ以上の検査はしないほうがいいでしょう」と言う。
評判通りの名医だ! こちらがそのように願い出る前に、ちゃんと合理的な判断をしてくれる。
薬を出すが、それも長く飲み続けるのはよくないので、1週間のんだらあとは経過観察してください、とのこと。
「ホームのスタッフが、例えば、腫瘍が破裂して突然大量の出血があったりするとスタッフがうろたえるので、心構えをしておきたいと言っていましたが」というと、そういう事態になりそうなほどの大きな腫瘍はないので大丈夫でしょう、とのこと。
ただ、今後も血尿は出る。出ても、本人が痛みもない、辛くもないというのであれば、そのまま見守ればいい。まったく尿が出なくなったり、痛みを訴えるようになったら、また来てください。でも、その場合もできることは対処療法だけです、と。
ホームの様子も簡単に説明したが、看取りまでやるという施設は本当に少ない。すごいですね、と感心していた。
ただ、これからの時代、病院で大量死は困るから、そういう小規模な場所で看取りをするケースは増えていくはずだ、とも。

説明し終わると、またピュ~っと車椅子で去って行った。「颯爽と」という形容がふさわしいような、軽やかな動きと歯切れのよさ。
世の中、こんなお医者さんばかりならいいのに……と、惚れた。

検査室から親父が戻ってきて、階下の会計待合室でもさらに長時間待たされ、それから院外の薬局でもかなり待たされ、ホームに戻ったときは2時をとっくに回っていた。
施設長に報告すると、「よかった。これで私たちも自信を持って対応できます」と、心強い言葉。
1日で終わって本当によかった。

家に戻り、遅い一食目を食べるとすぐにレオの世話の時間。老人と老犬の介護で1日が終わるのだった。



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