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のぼみ~日記2017たくき よしみつの日記2017


2017/01/18

アレッポの悲劇


いつどこで買ったのか分からないが、手元に残っている最後の2個のうち1個を開く

我が家ではシャンプーも含めて合成洗剤を使わない。洗髪はもう30年以上、固形石鹸でやっていて、リンスはしない。
食器洗いも衣類の洗濯も石鹸。最近は重曹も使うようになったが、合成洗剤は使わない。
で、洗髪は普通の無添加石鹸だとちょっときついので、オリーブオイル石鹸を使っているのだが、有名な「オリプレ」は通販以外ではまず手に入らないので、このアレッポの石鹸をドラッグストアなどでよく買っていた。
だから、ニュースで「アレッポ」ときくと、まず石鹸を思い浮かべる。
この石鹸を作っていた人たちは無事なのか? 石鹸は今でも作れているのか? ……などなど。

シリアをはじめ、中東紛争の裏には石油利権と民族対立、宗教が複雑に絡み合っていて、何が何だか分からない。情報もねじ曲げられて伝わってくるから、情報の一つ一つが本当なのか、演出されたものなのか判別するのが難しい。
日本もどんどんひどい状況になっているが、とりあえずまだ爆弾が落ちてこない、銃弾が飛び交わないというだけでも幸せだ。

そんなことを思いながら、灯油の買い出しへ。


届けてもらえば、という人が多いが、少しでも安く買うためにせっせと運んでいる



久しぶりに男体山が見えた。今年は雪をかぶるのが遅かったが、ようやく雪の男体山に。この景色を見ながらあまり長くはないであろう残りの人生、この土地で暮らし、死んでいくのだなあ……



力仕事の前に山本鉄筋の社員食堂で昼飯。日替わりランチのチキンカツみぞれ餡かけ



こんな感じ



日光連山を横目で見ながら帰宅



さて、腰を痛めないように運び込まなくては……


2017/01/20

アサド大統領の顔



TBSがアサド大統領の単独インタビューをして放送した。
「編集せずにノーカットで放送すること」という条件でのインタビューだそうだが、夜の「ニュース23」では一部を、翌日にCS「ニュースバード」でノーカット版を放送。
インターネットにもノーカット版動画を置いたので、今ならまだ見られる。
インタビュアーが星浩でよかったのか、という疑問があるが、とりあえずアサド大統領の顔と肉声、発言が伝わってきたこの映像は貴重な情報だった。
知的で、言葉の選び方も適確。話している内容は極めてまともで論理的。失礼な質問にも淡々と答える姿は紳士的。え? アサドってこんな人だったのかと驚いた人も多かっただろう。僕もその一人だ。

日本では「無慈悲で残忍な独裁者」というイメージが植えつけられているが、彼の言う「米欧からの情報だけに頼っている馬鹿馬鹿しさ」という批判はもっともだろう。もちろんアサド側の主張にも多くの嘘やごまかしがあるだろうが、米欧側メディアの情報が都合よく歪められていることは間違いない。



シリア情勢やクルド人問題についてのいろいろな説を集めてみた。

藤永茂氏(アルバータ大学理学部名誉教授)はブログで終始、米欧側情報に対して批判的な考察を展開していて興味深い。
シリア問題を考えるにあたっては、「クルド人問題」を少しでも理解しておかないとどうにもならない。
でも、そうした視点からの報道が日本ではほとんどされていない。
「ロジャバ革命」なんて、今回、藤永氏のブログを読むまではまったく知らなかった。
一部では女性解放などの革新的理想を掲げながら米ロの代理戦争に巻き込まれていくクルド人たち……。

米国がイスラム国にもトルコにもロジャバのクルド人防衛部隊にも武器を与えているという事実は、米国が世界に冠たる武器商売の国、死の商人たちが支配する国であることを考えれば、何の不思議もないのかもしれません。(ロジャバ革命は大きなドアを開ける(1)藤永茂)


マスメディアの報道に従っていると、シリアをめぐる戦況と政情は混乱混迷を極めているように見えますが、そうではありません。
ロシアやイランは地政学的算用からシリアのアサド政権を維持しようとしています。
アサド政権を速やかに打倒することに失敗した米国とトルコはシリア国内の戦争状態をできるだけ長引かせること、クルド人問題については、トルコも米国も、出来れば現在バルザニ大統領の率いるイラク北部のクルディスタン地域政府(KRG)の勢力が米国とトルコに支持されてシリア北部(つまりロジャバ)に拡大されることをひたすら願っているわけです。
ですから、ロジャバ革命を積極的に支持する国家勢力は全く見当たりません。このままで行けば、ロジャバのクルド人戦士たちの血は流されっぱなしで、結局、使い捨ての運命にあります。
ロジャバの人たちは米国の新大統領トランプに望みをかけているようですが、裏切られることになりましょう。(同ブログより)

真偽はともかく、こうした見解を、日本のメディアで見たことはない。

アサド大統領はインタビューの中で「あらゆる戦争は悪である。いい戦争などない」と言っていたが、例えば、「シリア軍に空爆された瓦礫の中から人々を救うボランティアグループ」として米欧のメディアでさかんに紹介され、ノーベル平和賞の候補にまでなった「ホワイトヘルメット」に関しても、賛辞だけでなく、情報操作された演出だという話もあって、一体何が本当なのかさっぱり分からない。
「イスラム国」の正体もよく分からない。彼らには莫大な資金援助があるはずで、その提供者は誰なのか。

この指摘はシリア政府からだけでなく、多くの人たちがしている



小林よしのり氏は「独裁の方が無秩序よりはるかにいい」と言っているが、これはまったくその通りだ。誰に殺されたのかもよく分からないまま毎日大量殺戮が続く状態をとりあえず収めることができるなら、多少のデメリットがあってもどうするのがいちばんいい(マシな)のか、てっとり早いのか……と考えるのは当然だろう。

どれだけ現在の情報が錯綜していても、ていねいに検証すれば歴史は嘘をつかない。大昔のことは検証できないとしても、近現代にどこで何が起こったのか、大まかなことは分かっている。
明治維新の頃、ヨーロッパ列強やアメリカは世界のどこで何をしていたか。
太平洋戦争を始める前までの日本はどんな空気に包まれていたのか。
そんな大昔のことではない。生で見てきた人もまだ少し生きている。

「神の鑿」の時代、日本はどんな国だったのかを知ろうと、いろいろ調べているうちに、「アメリカって、一体どれだけ戦争をしてきたのだろう」と思った。 調べると、「アメリカは、その歴史のうち93% - 1776年以来の、239年中、222年間が戦争」という記事を見つけた。
すさまじいな。
今もやっているわけで、ほとんど「休みなく戦争をしている国」という気がする。

嘘は、大きい嘘、大胆な嘘ほど見破られず、簡単に信じられてしまう。二酸化炭素温暖仮説とかはその代表だろう。
30年前、「石油はあと30年か50年で枯渇する」なんて言われていた。だから原子力エネルギーは必須だとか、核燃サイクルこそ資源のない日本が生き延びる唯一の道だとかいわれていた。30年経った今も、僕らは灯油を燃やして暖を取っているし、この冬もやっぱり寒い。

あと、この論も一理あるだろう。










特に最後の「日本は国際法に則り、今までのように中立の立場を守るべきだ」という主張はその通りだろう。
いかに戦争から遠ざかるか、近づかないか、下手に地雷を踏まないようにするかという戦略は、かつての自民党外交政策の柱だったはずだが、今の政権は自分から戦場に近づこう近づこうとしている。
かつての自民党政治家たちが苦渋の選択を重ねてきた歴史を、無知と傲慢でことごとくひっくり返している。
さらには、アメリカの大統領が単純なガキ大将タイプのトランプになったことで、この先どうなっていくのか、まったく予測がつかない。

アサド大統領の会見で、最後に触れた、国民のPTSD問題についての言葉は特に印象に残った。
今まで、一国の最高権力者が、国民の心の荒廃について深く憂慮している、その問題こそがいちばん深く、解決困難だと述べる姿を見た記憶がない。

CSのニュースバードでは解説役として国枝昌樹氏(元シリア全権大使)を呼んでいたが、彼もこの点に触れていた。
「人の頭をサッカーボール代わりにして遊んでいる子供たちが、正常な精神で大人になれるはずがない」と。
こうした問題を自ら口にするアサドは、計算ずくでそういう言葉を発しているのだろうか? そうは思えなかった。
今回のインタビューも、国枝昌樹氏がインタビュアーだったらよかったのに。現地に行くのが大変なら、今の時代、ネット回線で対談もできるだろうに。
用意した質問をたどたどしく読み上げるだけならインタビュアーはいらない。国枝氏のような人が行って、少しでも生の会話に引き込めれば、アサドの素顔ももっとよく見えてきたはずだ。

医者でもあるアサドは、もともとは政治や軍事からは遠く、学者肌で温厚な人物であるという。
そうした経歴や背景を知って、今回のインタビューを見ると、なるほどと思える場面や言葉が随所にある。国民のPTSDを最も憂慮しているという言葉もそうだ。

英国ガーディアン紙が報じた「アサドのメール」の記事も興味深い。まったくのデタラメではないような気がする。
一方で、アサドが「自国民の殺りくを主導しながら、制裁を逃れてiTunesのアカウントを得ているなんて、残酷非道な人間の姿を象徴するようなものだ」と言っている米政府報道官には、余計なお世話だろと言いたい。
「残酷非道な人間」なんだから音楽を楽しむような素養や権利はない、とでも言いたいのだろうか。
そういう言質こそが、アサド自身がいう「ばかげている」思い込みと偏見ではないのか。

ともかく、情報の真偽を知ることの困難さ、物事を複数の視点から見通すことの大切さを教えるきっかけとなった今回のインタビューは、とても貴重なものだったことは間違いない。









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