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のぼみ~日記2016

2016/10/25

「サ高住」って何?


サ高住(さこうじゅう)という言葉を、今年になって初めて知った。
サービス付き高齢者向け住宅の略だ。介護の世界では完全に定着した用語。
同じような略語に「特養」(特別養護老人ホーム)、「老健」(介護老人保健施設)などがある。
親が実際にそうした施設に入っているとか、これから入れたいと思って調べているとか、あるいは自分が……という場合を除けば、まだまだこうした知識は一般的ではないと思う。自分の備忘録としても、簡単にまとめてみる。

日本では、65歳以上の高齢者のうち97%は在宅、つまり自分の家にいる。しかし、そのうち持ち家率は70%しかない。

介護保険で「要介護」と認定された566 万人のうち 472 万人 (83%)は自宅で家族や介護ヘルパーの手を借りて暮らしている(在宅介護)。
残りの17%がなんらかの介護施設で生活しているわけだが、その施設には、

……などがある。
このうち、②の養護老人ホームは、基本的には病気がなく介護を必要としない自立した65歳以上の高齢者(「要介護1」以上は対象外)で、生活保護を受けているなどの低所得者が対象。しかも「介護保険契約によって利用するものではない」施設でありながら、入所には地方自治体の審査が必要。今の時代には合っていない施設といえ、実際、施設数は1975年から増えていない。これはまず検討対象外になるだろう。

③のケアハウスは、有料老人ホームに似た施設だが、有料老人ホームが民間企業経営なのに対して、ケアハウスは社会福祉法人や医療法人などが運営しており、国や自治体から運営補助資金も供給される。その分、利用料金が有料老人ホームに比べると安いが、細かな入居規定がある。
従来は入居者の所得に応じて入居制限があったが、そのタイプは1990年までで、1990年から新設されたケアハウスでは、所得制限がなくなり、その代わりに入居一時金や家賃が必要になった。
また、大多数のケアハウスは、自立した生活ができる高齢者を入居対象にしており、食事・入浴・緊急時対応などには応じられても、それ以上の介護が必要になったり認知症になったりした場合は退居させられることがある。最近では介護付きケアハウスも出てきたが、数は少なく、希望してもすんなり入居できるケースは稀。


高齢者収容施設の種類



高齢者収容施設の収容人数年次推移

(いずれも、厚生労働省 老健局 高齢者支援課・振興課課長補佐(高齢者居住福祉担当) 山口義敬氏の調査報告書より)


他に、老健(介護老人保健施設)、介護療養型医療施設 があるが、老健は自立復帰をめざすリハビリ施設であり、いられるのは原則3か月まで。介護療養型医療施設は「病院」であり、24時間医療処置が必要な重度介護病人のためのものだから、老後の終の棲家として選べるようなものではない。

……となると、残る選択肢は、
特養、有料老人ホーム、グループホーム、サ高住のいずれかになる。

これらはどう違うのか?

グループホーム

対象者:
65歳以上の認知症患者。「要支援2」または「要介護1」以上の介護認定者。施設の所在地と同じ市区町村の住民であること。

特徴:
部屋は個室だが、スタッフによる介護支援を受けながらの団体生活。9人以下の1ユニット単位で、食事、清掃、洗濯、趣味活動などの日常生活を「共同で」行う。
当然、気に入らない人、相性の悪い人とも一緒に活動せねばならず、一人での生活を好む人向きではない。

介護内容:
介護スタッフは常駐するが、認知症患者が対象なので、原則として医療面でのケアはないが、病院と提携していることもある。
原則終身入居だが、入院が必要な病気になったり重度の介護が必要になった場合は退去しなければならない場合もある。

費用(目安):
入居一時金:0~数百万円、月額利用料:15~30万円

特養(介護老人福祉施設)

対象者:
65歳以上で介護認定「要介護3」以上。入居は各自治体へ申請して判定、順番待ち。2015年4月から入居基準が厳格化され、要介護2以下では原則入居不可能な一方、多くの施設では、重度の医療措置を必要とする場合も入居不可。

特徴:
近年新設されている特養のほとんどは「ユニット型」といって、1室1ベッドの個室タイプ。10の個室(10人)に対して専任の施設スタッフがいて、ロビー、ダイニング、簡易キッチン、浴室、トイレなどを共有する。グループホームのように共同で食事を作るなどではないので、縛りは薄く、ある程度マイペースな生活も可能。ただし、要介護度の高い人を優先して入れていくため、医療体制が整っていないのに「寝たきり」などの重度の要介護者で埋まっていき、施設としての負担は重くなるという面もある。また、簡単に入れないために、人気が高くても選択肢になりにくいのも事実。
経営は社会福祉法人や地方公共団体などで、介護保険制度との結びつきが強い。

介護内容:
食事、入浴、排泄など日常生活における生活支援。リハビリ、レクリエーションを通した機能訓練。医師常駐の義務はないが、提携医療施設がある場合が多い。

費用(目安):
入居一時金:0円、月額利用料:ユニット型個室:13万円~20万円。多床室(相部屋):8万円~15万円。

有料老人ホーム

対象者:
概ね65歳以上。自立〜要介護。条件は施設により様々。

一口に「有料老人ホーム」といっても、入居規定や提供するサービスにより、以下の3タイプに分類できる。

  1. 介護付(特定施設入居者生活介護)……要介護者が対象。特定施設入居者生活介護の指定を受けていて、常駐のスタッフが介護する。
  2. 住宅型……要介護者だけでなく、介護がいらない老人も入れる。食事などのサービスは提供されるが、施設常駐介護スタッフは基本的にいないので、介護サービスが必要な場合は外部からのサービスを依頼する。(自宅介護と同じ)
  3. 健康型……介護不要の自立高齢者のみ対象。ヘルスセンターに住んでいるような感覚。介護が必要になったら退去させられる。
特徴:
民間企業が運営する施設なので、「特養に入りたくても入れない」要介護者から、ほぼ自立できている老夫婦が食事や社交などを目的に入居するようなケースまで様々。施設によって特徴がかなり違う。費用は当然高いが、高額の施設や部屋は経済的には入れる人が少ないため、「金さえあれば入れる」。

介護内容:
施設によって多種多様。24時間医師・看護師常駐や提携クリニックを併設など、特養よりも医療サービスが充実している施設もある。

費用(目安):
入居一時金:0~数千万円、月額利用料:15~50万円

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)

対象者:
住宅型・健康型有料老人ホームと同じで様々だが、要介護度の高い人には向いていない。

特徴:
有料老人ホーム同様、民間企業が運営するが、自由度が高く、入りやすい。基本的には賃貸マンションと同じで、大阪などでは生活保護受給者の住居代わりになっているケースもある。

介護内容:
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていないため、介護サービスが必要な場合はすべて外部からのサービスを利用する。介護保険の料金は、自宅で訪問介護やデイサービスを利用する時と同じ。

費用(目安):
入居時(敷金):0~数百万円、月額料金(家賃):15~30万円(介護サービス費用は含まない)

今どきの特養



横浜市のユニット型特養の料金一覧表


こうして並べてみると、受けられるサービスと費用のことを考えると特養がいちばんよさそうな気がするが、目下数百人待ちで、すぐには入れない。
また、今から作られる特養はほぼすべて「ユニット型」であり、介護保険適用外の基本料金(居住費、食費)が結構な金額になる。
上の表は横浜市のユニット型特養の料金一覧表だ。
いちばん安い施設でも食費1500円、居住費1970円で月10万4100円。平均はざっと4500円/日で月13万5000円くらいだろうか。
一番高額なのは住居費5000円/日、食費1870円/日の施設。30日だと20万6100円になる。
これはあくまでも基本料金であって、光熱費のうち、電気毛布は1日いくら、ラジオはいくら……と細かく追加費用を計上する施設もあるし、病院などへの送迎は一回いくら、理美容は外部からのサービスで一回いくら……などなど追加費用がある。もちろん介護費用は1割負担で別途かかってくるから、この施設ならなんだかんだで25万円/月くらい必要になるだろう。
平均的な、あるいは比較的安価な施設でも、トータルで月20万円は覚悟しなければならないわけだが、月20万円以上の年金をもらっている人は少ないだろうから、運よく特養に入れたとしても、かなりの蓄えを持っていないと大変なことになる。

ましてや有料老人ホームやサ高住を選択したら、毎月30万円以上は覚悟しなければならない。年間数百万が消えていくわけで、要介護生活が10年続けば数千万円が必要になる。
入居する老人がそれを負担できない場合は子供世代が負担することになるが、その子供世帯は親の世代よりずっと厳しい経済状況の中を生きていて、自分が老人になったときには、社会福祉は確実に悪化している。それに備えて親世代の何倍もの蓄えが必要だが、親の介護のために蓄えどころではない。

一体、「長寿大国」ニッポンはこれからどうなるのか。実際には「長寿地獄」になっていくのは間違いない。

■介護・死に方■  このテーマでの次の日記は⇒こちら









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「福島問題」の本質とは何か?


『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書 240ページ)
『裸のフクシマ』以後、さらに混迷を深めていった福島から、若い世代へ向けての渾身の伝言。
複数の中学校・高校が入試問題(国語長文読解)に採用。大人にこそ読んでほしい!

第1章 あの日何が起きたのか
第2章 日本は放射能汚染国家になった
第3章 壊されたコミュニティ
第4章 原子力の正体
第5章 放射能より怖いもの
第6章 エネルギー問題の嘘と真実
第7章 3・11後の日本を生きる

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裸のフクシマ  『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社 単行本352ページ)
ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。

第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛

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