先日の日記にも書いたが、現在、我が家の近所では経営困難になった?材木屋の土地が堆肥工場用地として売却されたことで建設反対運動が起きている。
説明では、「バーク堆肥」の工場を建設するのだという。
その企業はすでに大沢地区で堆肥工場を操業しているのだが、周辺住民は工場から出る悪臭に悩まされていて、だいぶ前からトラブルがずっと続いている。
純粋な「バーク堆肥」そのものは、混ぜ物をせず、きちんと整備した設備で製造すればそんなに悪臭は出ないということになっている。
しかし、堆肥化の工程ではどうしても高濃度のアンモニアが発生するので、堆肥工場は人家から離れた場所に作るのが常道。また、脱臭対策の不備や生ゴミなどの混入、排水の未処理垂れ流しなどがあれば、周辺地域はとても人が暮らせる環境ではなくなってしまう。
バークというのは樹皮のことだが、世の中に出回っているバーク堆肥というのはいろいろあって、Wikiにも、
近年では家畜ふん類、食品残渣・汚泥等が主体の堆肥に樹皮を添加したものがバーク堆肥として販売されているが、これは間違いであり、土壌改良材としての性能的にはバーク堆肥とは似ても似つかないものが多い。
とある。
悪臭や廃液垂れ流しによる汚染問題というのも、この「混ぜ物」が大きな原因であると思われる。
つまり「バーク堆肥」という名目で、家畜の糞尿や生ゴミなどを持ち込んでいると、本来それほど臭わないはずの「バーク」堆肥工場がとんでもない悪臭源となりえる。
で、今回の場合、ここに施設を建てようとしているのがすでに悪臭被害の「実績」のある業者なので、住民は猛反対しているわけだ。
「バーク」の名目で放射性物質が拡散?
ところで、自治会の回覧板を読んだが、反対の理由、懸念される問題に放射性物質拡散の恐れというのがないので、あれ? と思った。
悪臭やトラックの出入りが増えることはもちろん大問題だが、それとは別に、目に見えない、調べようがない、つまり証明しようがない被害として放射性物質が外から持ち込まれ、粉塵として拡散される可能性を考えないといけない。
放射性物質がバーク堆肥という形で日本中に拡散しているという問題は、
⇒ここにまとめられている。
まずは2012年08月3日付 毎日新聞の記事。
原発事故:福島の製材樹皮4万トン滞留 特措法の想定外
東京電力福島第1原発事故による放射性物質の影響で、製材時に生じる樹皮(バーク)が行き場を失い、福島県内の木材業者の敷地に計約4万トン山積みされて保管されていることが、県と県木材協同組合連合会(県木連、約220社)の調査でわかった。放射性物質を国が除去することなどを定めた放射性物質汚染対処特別措置法は、このような事態を想定しておらず、滞留バークは毎月数千トンずつ増え続けている。県木連は「業界の対応だけでは限界がある」として、東電に対策を求めている。
バークはスギやヒノキなどの表皮を3~5ミリはいだもの。家畜飼料や肥料などに使われるが、放射性セシウムの濃度が1キロ当たり400ベクレルを超えると出荷が禁じられ、滞留バークの多くがこの基準を上回っている。東電は汚染されたバークについて、保管場所設置費を損害賠償対象にしたが、処分や引き取りには応じていない。
県木連によると、バークはセシウム濃度の基準値を下回っても買い手がつかず、滞留量は増加の一途。焼却後の灰が同8000ベクレル以下の場合、国は一般廃棄物処分場での埋め立てを認めているが、焼却施設側が受け入れを拒否するケースが相次いでいる。
県木連の宗形芳明専務理事は「バークの体積を圧縮したり、敷地に余裕のある事業者が引き取るなどしてきたが限界だ」と話す。県木連は東電に▽石炭火力発電所での混焼▽仮置き場を東電所有地に設置▽木質バイオマス専用焼却施設の建設--などを要請している。東電広報部は「火力発電所での混焼は社内で検討中だ」としている。
バークの滞留は近隣県にも広がり、栃木県によると、3月末現在で計約3000トンが行き場がない状態だ。群馬県も「相当量が滞留している」という。
廃棄物の排出者責任に詳しい植田和弘・京都大大学院教授(環境経済学)は「将来の原子力事故も視野に入れ、国と東電は責任を持って法整備を含めた解決策を図るべきだ」と指摘している。【栗田慎一】
毎日新聞 2012年08月03日 02時30分(最終更新 08月03日 02時51分)
2012年3月の時点で栃木県内に約3000トンのバークが行き場をなくしていて、福島県では数万トン単位が山積みされていた。
除染バブルが起きて、汚染地域の山林がどんどん伐採された。住宅の周囲も伐採された。さらには古い木像建物の取り壊しも金が出てどんどん進められたから、廃材も大量に出た。それらが一体どこに行って、どんな処理をされたのか、あるいはされていないのか……。多くの人は注目していないが、これはとてつもなくやっかいな問題なのだ。
400ベクレル/kg以上だと出荷できない決まりだが、それから2年半経過して、ベクレル値が下がってきたバークがどんどん出荷されている可能性は否定できない。
しかも、焼却して灰にしてしまえば8000ベクレルで埋めてしまってもOKというのだから、何をやっているのか分からない。問題が表面化する前に「バーク堆肥」ってことで拡散させてしまえ、それでもダメなら燃しちゃえ……広くばらまいてうやむやにしてしまえ、ってなるのは目に見えている。
堆肥を作るというのは、原材料を集めてきて粉砕、攪拌し、発酵させ、移動して最後は袋詰めにするわけで、その工程で粉塵、目に見えない細かな微粒子が飛び散る。そこにどれだけのホットパーティクル(放射性物質の付着した微粒子)が含まれているか、まず検査したり調査したりすることはしないだろう。したと言われても、今までの「フクシマ」問題でさんざん見てきたとおり、まったく信用できない。
住民、市民レベルで調査することも難しい。
住民はずっと見えない恐怖・不安を抱えながら生活しなければならない。
我々は今も「うっすら放射能汚染された環境」の中で暮らしている。「フクシマ」以前に比べて、そう考えるだけでストレスが増えた。
でも、多くの人はもうすっかり忘れているかのようだ。
現状では、微量の放射性物質を含んだ食べ物を食べたり微弱な放射線(主にガンマ線)を外から浴びるだけなら心配しすぎても仕方がないレベル。もはやそういう環境で多くの人たちは生活を営んでいる。
最も怖いのはホットパーティクルを吸い込み、肺などに付着させてしまうことだ。これはそうなったとしても確認する術がない。
だから、放射性物質を含んだ粉塵が環境中にまき散らされる可能性はとことん排除しなければならない。
例えば、うちの町内の道はすべて私道で、デベロッパーが最初にやった舗装工事がいい加減だったために、今では普通の砂利道になっている。トラックの轍ができたり大雨でえぐられたりするので、ときどき市の費用で砂利を持ち込んでえぐれた部分を修復しているが、この砂利が一体どこで採取されたものか分からない。
雨が降るたびに道路表面に付着している放射性物質は流されて減っているが、補修のために外から砂利を持ち込めば、新たに放射性物質が運び込まれている可能性もある。
だから、補修作業のたびに敷いた砂利の表面に線量計を近づけて、補修前より線量が上がっていないかチェックしているのだが、微妙に線量が上がっているようなときもある。
薪ストーブの薪、菜園に入れる肥料や腐葉土、基礎工事などに使うコンクリートなどにも同じ不安がつきまとう。
放っておけば自然に放射能は低くなっていくはずだが、何らかの形でよそから新たな放射線源が持ち込まれれば、せっかく減ってきた生活環境中の放射能を強化させることだってありえるわけだ。
空間線量が大きく変われば気づけるかもしれないが、まあ、ほとんどの場合は誰も気づかないままだろう。
「フクシマ」後は、こういうことがあちこちで起きている。
こういう状況をどこまでなら諦めるか、どこまでなら我慢するか、無視してストレスをためないように暮らすか……という問題になってくる。
そのことを自分でも忘れないように、久しぶりに線量計を家の外に持ちだしてみた。
こういうのを出すと、すぐに線量だけを見てワーワー騒ぐ人たちがいるので嫌なのだが、このところ、自分たちがどんな環境で暮らしているのかをすっかり忘れているような人も多いので、敢えて出してみた。
うちのあたりは、日光市の中では放射性物質が降ってきた量が特に多いわけではない。ここより南の鹿沼や宇都宮あたりはほとんど問題ない。都内の一部よりずっと影響はなかった。
逆に、北部はベルト状にかなり汚染された。那須エリアは栃木県の中ではもっとも深刻で、僕が3.11当時に住んでいた川内村の自宅周辺よりずっと汚染された。今でも東北道を通ると、那須を通過するときに線量計の数値が上がる。
この現状を分かった上で、僕らは暮らしていかなければならない。
僕自身は、概ね以下のように考えている。
1)食べ物に関してはほぼ心配していない。特に米は気にしていない。相当汚染された田んぼで育てても、白米にしたときの残留は限りなくゼロだからだ。キノコ類、ベリー類、魚などは多少気にしているが、自分が食う分にはもうしょうがないなあ、ストレスをためないようにすることのほうが大切だなあ、と思う。
2)空間線量の数値そのものもあまり気にしないようにしている。突然上がり始めたら慌てるけれど、0.XXμSv/h というレベルでいちいち騒いでもしょうがない。そういう場所はたくさんある。
3)土壌や地表面の汚染に関しては、付着している放射性物質が再び「飛び散らない」ようにすることが重要。道路は舗装することで放射性物質をそこに固定できる。未舗装路は舗装するのが有効。
4)いちばん怖いのは、放射性物質を無理に移動させたり処理したりすることで再拡散させること。特に空中に浮遊させることは絶対に避けるべき。食べ物と違って、空気と一緒に吸い込んだホットパーティクルが肺などに付着すると致命的になりえるからだ。しかもそれは確かめようがない。特に、大人より地表に近いところで呼吸をし(吸い込みやすい)、細胞への影響もずっと大きい子供たちが心配だ。
5)森林伐採による除染なんてのはやってはいけない。土や樹皮に付着している(そこに留まっている)放射性物質をわざわざもう一度空中に拡散させる行為だからだ。作業員の体内被曝も心配だ。
6)反原発ムーブメントの一部で自然エネルギー信仰とかリサイクル礼賛の風潮があるのを利用して、放射性物質の付着した樹皮(バーク)、チップ、落ち葉、廃材などを加工して堆肥や燃料にするという行為に税金が投入されているが、これは放射性物質の再拡散を意味する。移動させるだけで粉塵として放射性物質が空中に再拡散する。
7)山の中に穴を掘って最終処分場云々というのは最悪の愚行だ。なぜわざわざエネルギーを使って高所に移動させるのか。物質は高いところから低いところに移動する。地下に埋めたら後々管理ができない。高所で焼却すれば灰や煤煙に乗って放射性物質が再び空中に放たれる。塩谷町の山中(水源地!)に処分場を作るなどと言っている環境省の計画は狂気の沙汰。
8)これらは「儲け話」としてどんどん進む。経済行為なので、関連企業に所属する人たちなどは、深く考えずに話を進めたがる。反対する人たちと対立し、憎悪の念が生まれ、地域社会や人間関係が壊れていく。
……この8)が実はとてもやっかいで、反対運動などが起きると、必ず現地では住民同士の反目や気持ちのすれ違いが起きる。
地方では建設関係の仕事になんらかの形で関わっている人が多く、また、土建業界と自民党政権との結びつきも根が深い。
土地の有力者との関係、雇用関係、そこに機械やら原材料やら消耗品を納入している業者もいれば、運送関係で仕事をもらっている人もいるだろう。
子供の学校での親同士が利害関係で対立する関係にあることが分かってぎくしゃくしたり、選挙のたびに挨拶回りに来る自治会の顔役にはじいちゃんの代からお世話になっているやらなにやら……必ずなんらかの人間関係に影響が出る。
今回のことでも見事にそういう図式が浮かび上がっている。
これこそ放射能被害以上にやっかいでダメージの大きい人為的被害だ。
僕はもう長くは生きられないが、この土地でこれからもずっと暮らしていく若い世代にとっては、こうした問題の一つ一つが、これから先、ボディブローのように心身にダメージを与え続ける。たまらないなあ、と思う。