のぼみ~日記 2015

2015/07/22

猛暑の池は……

ニュースのトップはどこも連日の暑さのこと。暑いけれど、ここは山が近いし、標高も200m以上あるので、耐えられないほどではない。
池を見に行くと、オオカミ池と方舟の水温の差がすごい。オオカミ池はぬるま湯とまではいかないが、ぬる~い感じ。方舟は一応「水」だと思える(感じられる)温度。これはすぐ後ろの杉林(地主が伐らせてくれない)のせいで、方舟側(林に近いほう)の日照時間が短いのと、方舟のほうが水深があるせいだ。
池の補給用に汲み置きしているバケツの水は完全に風呂状態で、これはもうぬるいとか言うよりも「お湯」。
池にいるのはトウキョウダルマガエルばかりで、暑い日は池の中でちゃぷ~~んと漬かったままになっているやつが多い。


マツモムシ。池の中では常時腹を出して背泳なので、こうして掬い上げたときだけ背中側を見ることができる


背中側がまだ黄緑色なのは幼い証拠。ぴょんぴょん跳ぶが、まだ空は飛べない


木漏れ日をあびるトウキョウダルマガエル


大雨のせいか、復活の沢の入り口には派手に枝やら葉っぱやらゴミやらが引っかかっていた


暑いので冷やしうどん おいしくいただきました ごちそうさま

今日のオマケ 安倍政権がめざすのはシンガポールのような国?

安倍政権がめざすのはシンガポールのような国?

フェイスブック経由でこんなのを見つけた↑
igiveadayoff.orgというサイトのトップページにある動画。

画面の左側に子供の母親、右側にその子供のお守りをしているメイド。
「シンガポールの家庭で働く外国人家政婦は22万5000人」

……へえ、そうなんだ。
シンガポールの世帯数は114万6,200世帯(2011年)だというから、約2割──5世帯に1世帯は外国人の使用人を雇っている計算になる。実際には複数の使用人を雇っている家があるだろうが、それでも富裕層が多いのだなということは分かる。

さらに英語のキャプションを見ると……、この22万5000人のメイドの多くは24時間勤務(住み込み?)で休日もほとんどないらしい。
で、この動画では、「子供は将来何になりたいと思っているか?」「好きな教科は?」「学校での親友は誰?」などという質問を母親とメイドにぶつける。その結果、74%のメイドは母親よりも正しい答えを知っていたという。

このキャンペーン動画の最後のメッセージは、
Shouldn't we spend more time with our children?
(私たちは自分の子供ともっと多くの時間を過ごすべきでは?)
「家政婦たちにもっと休みを与えましょう」
……というもの。

これを見てドキッとした。と同時に、いろんなことが頭の中で渦巻いた。

まず、最後のメッセージの主語はwe(私たち)だ。この動画を作った団体は外国人労働者を使う側、つまり富裕層ということになる。
サイトのドメイン名は「igiveadayoff.org」  I give a day off. は、直訳すれば「私は休日を与える」だ。ここでも自分が主人の側だと明言している。
このサイトの親サイトは twc2 (transient workers count too) というところで、直訳すれば「非正規雇用者もちゃんと数に入れましょう(「人」としてみなしましょう)」となる。低賃金で休みなしに働く外国人労働者たちの人権を守りましょう、と呼びかける団体らしい。

団体の発起いきさつの説明を読むと、おおよそこんなことが書いてある。
シンガポールには海外からの移民労働者が約100万人いるが、これはシンガポール全人口のおよそ2割に該当する。
低賃金で働く外国人労働者の多くは、インド、中国、バングラデシュ、インドネシア、フィリピンから来ているが、過酷で極端な低賃金という労働条件、エージェントによる不当搾取や給与未払い、医療や衣食住などの基本的な生活環境の欠如に苦しんでいる。
当TWC2は彼ら低賃金移民労働者の過酷で理不尽な雇用状況を改善するために生まれた。

低賃金で24時間働く人たちは、自分たちの権利をネット上で主張するだけの余裕もないから、雇う側が彼らの権利を守ってあげなくては……ということなのだろうが、自然と「I give..」というフレーズになるあたり、ああ、まさにこれこそが「格差社会」なのだな、と感じた。

自分がこういう違和感を感じる人間として育ったことはものすごく幸せなことだ。
この日本という国では、まがりなりにも人はみな平等であり、基本的な人権は守られなければならないと教わり、実際にそういう社会で大人になることができた。
憲法という最高法規がそのことを保証してくれている。だから、いろいろ理不尽なことを経験しても、最終的にはとんでもない目に合うことはないだろう……多くの日本人はそう感じて育ってきたと思う。
しかし、シンガポールという国では、すでに違う規律というか、秩序、空気がしっかり確立されている。
かつては欧米先進国や南アフリカでも、この「格差はあってあたりまえ」「生まれつき、利用する側の人間と利用される側の人間に分かれている。それが社会であり、その秩序を守るのが富裕層に生まれた人間の務め」といった価値観(正義感、倫理観といってもいいかもしれない)があった。
日本も戦前はそうだった。童謡『あかとんぼ』の世界。
幼くして子守りなどの雑用をする使用人として裕福な家に女の子が売られていく。その女の子(ねえや)の背中に負ぶわれて見た夕焼けを背景に飛ぶ赤トンボの光景を歌った歌。
「15歳でねえやは嫁に行き」……その子守りのねえやも、15になるとさらに「(農家の)嫁」という労働力として別の家に行く……そういう完璧な格差社会だった日本。
それが徐々に変わっていって「人はみな平等である」という考え方こそがまともなのだという社会になってきた。
ところが、それは長く続かなかった。ここにきてまた、ゲーム感覚の金融社会の出現と爆発的な経済成長、そしてお山の大将的な精神構造を持つ独裁者の出現が、社会秩序を昔のような格差社会に戻している。
暴力を使わなくても、情報や教育で人を支配できるようになったから、昔のように露骨な支配構図が見えにくいが、その分、タチが悪い。

その「先進的」モデル地区がシンガポールなのだろう。

シンガポールという国を、多くの日本人は普段あまり意識していない。しかし、この国のことをもっと知るべきだ。
基本情報としては、

実は、上の動画を見たとき、僕はすぐに、以前に読んだ内田樹氏の「日本のシンガポール化について」という文章を思い出した。
以下、いくつか抜き出してみる。

日本メディアのシンガポール関連記事はその経済的な成功や、英語教育のすばらしさや、激烈な成果主義・実力主義や、都市の清潔さについて報告するけれど、シンガポールがどういう政治体制の国であるかについては情報の開示を惜しむ傾向にある。
だから、平均的日本人はほとんどシンガポールの「実情」を知らない。
シンガポールの「唯一最高の国家目標」は「経済発展」である。
平たく言えば「金儲け」である。
これが国是なのである。

政治過程や文化活動などはすべて「経済発展」の手段とみなされている。
だから、この国には政府批判というものが存在しない。
国会はあるが、ほぼ全議席を与党の人民行動党が占有している。1968年から81年までは全議席占有、81年にはじめて野党が1議席を得た。2011年の総選挙で人民行動党81に対し野党が6議席を取った。この数字は人民行動党にとっては「歴史的敗北」とみなされ、リー・クアンユーはこの責任を取って院政から退いた。

大学入学希望者は政府から「危険思想の持ち主でない」という証明書の交付を受けなければならないので、学生運動も事実上存在しない。「国内治安法」があって逮捕令状なしに逮捕し、ほぼ無期限に拘留することができるので、政府批判勢力は組織的に排除される。えげつないことに野党候補者を当選させた選挙区に対しては徴税面や公共投資で「罰」が加えられる。新聞テレビラジオなどメディアはほぼすべてが政府系持ち株会社の支配下にある。
(略) たしかにこんな国であれば、経済活動はきわめて効率的であるだろう。外交についても内政についても、社会福祉や医療や教育についても、政府の方針に反対する勢力がほとんど存在しないのだから。

日本の権力者や富裕層たちは、「日本がシンガポールのような国になれば面倒がなくていいなあ、もっと効率よく儲けられるし、安泰な人生を送れるだろうなあ」と思っているのではないか……というのが内田氏の読みだ。
これを内田流の穿った見方だと片づける人は多いだろうが、僕にとってはドキッとする指摘だった。

「メイドにもっと休日をあげましょう」というキャンペーン動画を見てぞっとしたのは、まさに今、日本という国が、金持ちと権力者によって着々とそうした国へと作りかえられようとしているからだ。

富裕層がますます金儲けをしやすくなるために、あらゆることが動いている。
欧米先進国のように武器輸出で儲けたい、というのもそのひとつ。
箍が外れてしまっている。その流れを止められない。
安保特別委員会。浜田委員長は委員長席で「一旦休憩を」と訴える我々に「もう止められないんだ。止められないんだ」と何度も呟いてた
(寺田学議員のツイッター)
↑この夏、いちばん怖いつぶやきではないか?

日本がシンガポールのようになるのと、その前に天変地異やデタラメな政策で破滅的なことが起きるのとどちらが先か……。

ちなみに、Wikiでの「シンガポール」解説ページでは、冒頭にこういう一文がある。
同国は高度に都市化され、原初の現存植生はほとんどない
今の日本には、まだ森も豊富な地下水も残っている。でも、潜在自然植生はほとんど残っていない。明治以降に一気に消えたのだ。
放射性物質をばらまいても平気な顔をして経済成長率がどうのとか言い続けている人間たちに、いつまでこの国の政治を任せておくのか。









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「福島問題」の本質とは何か?


『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書 240ページ)
『裸のフクシマ』以後、さらに混迷を深めていった福島から、若い世代へ向けての渾身の伝言。
複数の中学校・高校が入試問題(国語長文読解)に採用。大人にこそ読んでほしい!

第1章 あの日何が起きたのか
第2章 日本は放射能汚染国家になった
第3章 壊されたコミュニティ
第4章 原子力の正体
第5章 放射能より怖いもの
第6章 エネルギー問題の嘘と真実
第7章 3・11後の日本を生きる

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裸のフクシマ  『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社 単行本352ページ)
ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。驚愕の事実、メディアが語ろうとしない現実的提言が満載。

第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛

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