このお店はほんとうになんというか……奇跡のような店で、存在自体がすごい。
ブヴロンのフランスパンをひとりでも多くの人に食べてもらいたいな、と、素直に思うのだ。車で日光に来たら、わざわざ寄ってみてもいいんじゃないかな。お店を見つけること自体が一種のアドベンチャーゲームみたいなもので、楽しい思い出になるかもしれない。
で、寒い中、涼風号MarkII(冬季は改め、寒風号)を停めて立ち話。
そこで、板荷から小来川に向かう道沿いにある
「SPACE riverhouse」という宿のことを教えてもらった。
外国人が外国人旅行者向けにやっている小さな宿らしい。
これは知らなかったなあ。
冬季はお休みらしい。3月末から。
日光はそもそも外国人がその魅力に魅せられて、滞在型のリゾート地として人気が出て行ったという歴史がある。
ところが今は東照宮を見てUターン……になってしまっていて、宿泊施設はどこも寂れてしまった。
原因は……日光の人たちが日光の本当の魅力を理解せず、数多ある日本国内の他の観光地を真似てしまったからではないか。
日光観光に来る海外からの観光客を「滞在型」に変えていくためには、いくつもの改革が必要だと思っている。
日光に住んでみて分かったのだが、外国人観光客が日光の魅力を楽しめるような工夫がほとんどされてない。
東照宮とか、有名スポットの中に英語の看板があるだけで、外国人観光客の気持ちになっての深い「おもてなし」ができていない。
特に、あんまりお金を持っていないバックパッカーみたいな単独の旅行者は、泊まるところも移動手段も極めて限られている。だから、東照宮を見ただけですぐに他の場所に移ってしまう。彼らがもっと自由に長期滞在できる仕組みや施設が必要だ。
日光ゲストハウス 巣み家 -Sumica- などはとてもいい試みだ。
でも、まだまだ足りない。今市あたりにカプセルホテルを作るとか、免許がいらない電動アシスト自転車のレンタル店や充電スポットをいくつか作るとか、自由度の高い、ビビッドなインフラ整備が必要だ。
さらには、外国人ツーリストと地元の人がお茶を飲みながらお喋りできるコミュニケーションカフェとか、地元のおばちゃんたちが惣菜や和菓子の作り方を教える体験教室とか(英語を知らなくても、英語版のレシピを見ながら身振り手振りで教える)、地元のミュージシャンとサクッとジャムセッションできるお店とか、そういうの、じわじわ増やしていきつつ、日光山内から今市や鹿沼に人が流れていくようにする。
そうすれば、「いいところだな。もっと面白いものを見つけられそうだから、もう少しここに滞在しようかな」って思う旅行者が出てくるはずだし、今市周辺の経済や文化にもいい影響が出てくる。
そういう人たちの中から、いっそここに移住しようかな、なんて人も出てくるかもしれない。
この手法はなにも外国人旅行者だけでなく、日本人に対しても有効だ。
日光周辺は地価が驚くほど安いし、車さえあればとても住みやすい。
東京へのアクセスも、東武線があるからすごく楽。
東京近郊にいる人たちだって、箱根や伊豆に行くより、日光に行くほうが簡単かもしれない。
それに気づいた人たちが「定年退職後は日光に住むか」ってことになって移住してくる。
ひとりでやれることは極めて限られているので、地元の人たちをインスパイアして、少しでもそういう方向に動き始められたらいいな、って思っている。
日光の魅力は日光山内や奥日光だけにあらず。周辺の町も面白いし生活の場としてとても魅力的。
その魅力を維持するためにも、邪悪なものは寄せつけない、自然環境、特に「水」を守るという覚悟が必要だ。
しょーもない箱ものを増やすのではなく、昔からある宝物(自然環境、食文化、アートなどなど)を大切にして、世界中にもっと知ってもらう。
そのために少しずつ何かやっていきたいのだが、趣味でできることでもないし、ひとりでやれることは限られているので、なかなか大変だ。