2013/06/17の2

渇水で今年も絶望的状況・平伏沼のモリアオガエル産卵(2)


動画バージョン
写真だと全体像が分かりづらいかもしれないので、見づらいけれど動画も並べておこう。

その2


その3


その4


その5


その6



管理人が常駐していたときは、こういうときは卵の下にトロ箱を置いて水を張り、オタマが地面に落ちるのを少しでも防ごうという努力をしていた。
しかし、これだけ水がないとどうにもならないだろう。
いわなの里あたりに、救援用の沼を作って、一部を移動させたらどうだろうか。背後に森が迫っているロケーションじゃないとまずいが。
あるいは、もっと簡単に、今ある監視小屋の裏手とか、少し離れた場所に一時避難用プールを設置する。発泡スチロールのトロ箱なんかじゃダメだ。美しくないし。

毎年水が抜けてしまう沼ならば、沼もモリアオガエルも消滅していくのも仕方がないかもしれない。
でも、カエルの生息環境を圧迫したのは人間なのだから、その何百分の一、何万分の一の規模の作為で、野生生物の生存権にも目を向けられないものか。

沢水や地下水がゆったり流れ込む小さな水たまりが周辺に点在していればいいのだが、もともとあった小さな水たまりの類は、林道整備のときにつぶしてしまうケースが多い。
うちのそばの「ふるさと林道」の舗装工事でも、工事が終わると、それまであった水たまりが見事に消滅していた。
下川内方面では国道399号が整備されるたびにやはり道沿いにあった小さな水たまりが消えていったそうで、分散して棲息していたモリアオガエルが産卵場所を求めて移動している。
獏原人村の田んぼやマリ山の農家の田んぼにもある年から突然産むようになった。木がないので、田んぼの縁にある草にからませて産みつける。これも、本来の棲息場所が消滅してしまったために、移動した先で苦肉の策的な産み方を工夫しているのだろう。
中には、下にまったく水がないのに樹上高く産みつけてしまうやつや、自動車道路の脇にやけくそのように産みつけてしまうのもいて、そういうのを見つけるといたたまれなかった。
どんどん追いやられているのだ。

平伏沼への車での上り口は2箇所あるが、その入り口には大きなカエルの石造が置いてある。
これは、かつて村にゴルフ場建設をメインに据えたリゾート開発を持ち込んだ大手ハウスメーカー系デベロッパーの先遣隊長役の社員が、バブル崩壊後、計画を撤回して村を引き上げる際に置き土産として置いていったものだと、僕はその本人の口から聞いた。
そんなことで嘘を言うとも思えないので、本当なのだろう。
「カエル好き」で知られた詩人・草野心平がよく避暑に訪れていたこともあって、川内村は「カエルの村」というイメージで観光戦略を立てていたようだが、村人たちがカエル好きというわけではない。
それは別にこの村に限ったことではない。
今住んでいる日光でも、農家の人たちはカエルになどなんの興味もない。水たまりや小さな湖沼、沢が消えるとカエルの生息場所がなくなるということも気にかけていない。

おいしいパン屋さんや蕎麦屋さんは、やはり店主がパンや蕎麦を愛している、好きだからこそ頑張っておいしいものを作ろうと努力する。このへんにはパン屋がないからパン屋をやれば儲かるかな、という程度の動機で始めたパン屋のパンは、おいしくなるとは思えない。砂糖を入れると固くならないとか、その程度の浅知恵で作るから、本物のパンの旨みとはほど遠い代物しかできない。

勝手にカエルは生きている、そのへんにいくらでもいるからカエルの村ってことにしよう、という程度の「カエルの村」であれば、他の土地と同様、カエルは徐々にいなくなる。
圃場整備をする際に、従来の沢も並行して残しておくとか、U字溝のあちこちに小動物脱出用スロープがついたユニット(今はそういうものが製造されて商品になっている)を入れておくとか、林道工事の際、道から引っ込んだ場所に湧水や沢水が溜まる水たまりを意識して作っておくとか、やり方はいくらでもあるのだが、そういう発想がない。

平伏沼に通じる道の入り口に鎮座するカエルの石造(よくあるつまらないやつ)を見るたびに、「外からの金によってされるがまま」の象徴だなあと思っていた。

「愛」があるのか、情熱やこだわりがあるのか、生き甲斐は何なのか……こういうことが、田舎の文化・経済を持続させるには不可欠だと思うのだが、そういうものを感じられる村は、日本中、案外少ない。

例えば、奇譚クラブが作るカエルのオブジェには、愛がある。大げさな言い方をすれば、カエルに敬意を払っている。本物なのだ。
「かえるかわうち」のデザインだってそうだ。
「カエルの村」川内村を応援しようという気持ちがあって、しかもデザイナーや制作者たちが真面目な思いでやっている。
しょーもないゆるキャラなんかじゃない。便乗商法根性なんかじゃない。
それが分からないようだと、「カエルの村」は名乗れないのではないだろうか。

平伏沼に水がない痛みをみんなで感じながら、ちょっとそんなことにも思いをはせてみたら……。

「ったく、あいつがまた思い上がったことを言っている。何も分かってないよそ者はすっこんでろ」
「余計なことを書いて、本当に平伏沼が国の特別天然記念物指定を外されたりしたらどうするんだ」
……と非難されることは承知の上で、やはり書いてしまった。


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