2013/04/23

ぎりぎりセーフだったニホンアカガエルの卵救出


日増しにちょっとずつ気温が上がっているが、一気に零下まで冷え込んでいた時点からのちょっとずつの気温上昇だから、まだまだ寒い。4月下旬の気温ではない。
しかし、ゴールデンウィークが近づき、近所の田んぼでは水を入れ始めている。
さかんにトラクターが動き回り、水が勢いよく入っていっている田んぼも増えた。
オオカミ池は、昼間はカエルの姿が見えない。寒いのと警戒しているのと、両方だろう。
マツモムシが1匹、こないだから棲みついている。

リュウキンカ


これはもともとあったボケと、なんか生えてきたやつ


リュウキンカ越しにオオカミ池の水面。カエルの視線で撮ってみる


近所のU字溝から救出してきたニホンアカガエルの卵塊。水を吸って膨らんでいる

夕方、涼風号でカエルパトロールに出た。まだ風が冷たくて、水が入り始めた田んぼにもカエルの姿はない。
家のそばの田んぼまで来たら、U字溝に勢いよく水が流れている。
昨日はまだ水が開通していなくて、ごく一部に溜まった黒い汚水の中に、ニホンアカガエルの卵が産みつけられたり、ナマズの稚魚??みたいなのが取り残されていたりしていたのだが、堆積物はすっかりなくなり、勢いよく水が流れている。今日の午前中に、農家の人たちが一気にU字溝掃除をして上流から水を流したのだ。
田んぼに水を引き込む前に、こうしてU字溝に勢いよく水を通すことで堆積物の掃除をする。
昨日、ニホンアカガエルの卵と謎の稚魚を採取した溜まり水の場所も、きれいに底が見えていて、すごい勢いで水が流れている。U字溝の中にはなんにも残っていない。枯れ葉一枚ない。ヘドロもきれいに洗い流されている。
あちこちに残っていたであろうニホンアカガエルの卵や小さなツチガエル(身体が小さく、体力がないのでU字溝から脱出できないでいる)、何かの稚魚、タニシなどの貝類、ヤゴだの有象無象の甲虫類、産みつけられたもろもろの卵、などなど、すべては、掃除で土の上に引き上げられたか、どど~んと流れ込んできた水に押し出されて下流側の川に流れ込んでいったかのどちらかだ。
稚魚などにとっては、うまく押し流されて川に戻れれば命拾いだが、カエルの卵などは絶望的。土の上に掻き出されたらそのまま干からびるし、川に流されれば環境が違うので孵化できない。
カジカガエルやナガレタゴガエルなど、流れが急な環境の場所に最初から棲息するカエルとは違って、アカガエルやツチガエルなどの普通のカエルは、止水で育つカエルだから、卵のまま流れのある大きな川に押し出されたらその時点でアウト。
昨日救出した卵はまさに危機一髪だったわけだ。

昨日、ニホンアカガエルの卵を掬い上げた場所。勢いよく水が入れられ、底が見えている


ここに産みつけられたままだったら、今頃完全にアウトだった


復活の沢の流入口そば。完全に水が干上がって堆積物が溜まっていたU字溝がすっかり底さらいされ、勢いよく水が流れている


復活の沢の流入口。ふたが9割方閉じられているが、沢の側にも水が流れ込むように少しだけ開けてあった。水路を管理している農家のかたの配慮。おかげで、復活の沢は水が流れたまま。
今のところ、暗黙の了解、阿吽の呼吸で、農家のかたがたとのコミュニケーションはうまくいっている感じ。

夜中にオオカミ池を見に行く。
近づくとすぐに隠れてしまうが、カエルが数匹、水面から顔だけ出している。分かりづらい写真だけど、○のところにいる↓

U字溝に水が入り、これからは田んぼに水が入るので、ニホンアカガエルの卵救出作戦はここで終了。
次の作戦はシュレーゲルアオガエルの卵救出作戦。
シュレは田んぼの畦に穴を掘って産卵する。白くてきれいな卵塊。土の中に産むので外からは見えない。
その白いメレンゲ状の卵塊の中でオタマにまでなり、そのタイミングでうまくまとまった量の雨が降れば、卵塊の白身?が溶け出して、田圃の中にオタマジャクシが流れ込む。ものすごくリスキーな産卵方法。

問題は、卵塊の中で孵化する前、しっかりオタマとして安定する前に大雨が降ったり、田んぼの畦塗りや勢いよく流れ込んだ水にえぐられて卵塊ごと田圃の中に流れ出したとき。こうなると、直後に代掻きに入ったトラクターに巻き込まれて粉砕されたり、粉砕を免れても、孵化しないままの卵塊が水の中に長時間浸かっていると卵が冷え切ってしまって、受精卵が孵化できずに、あるいは孵化しかけのオタマが成長できずに卵塊の中で腐ってしまう。
シュレの卵塊の中で受精卵がうまく孵化してある程度泳げるまでのオタマに成長するには、卵塊が水浸しの環境ではダメなのだ。そこがアカガエルやトウキョウダルマガエル、アマガエルなど、水中に直接卵を産みつけるカエルとの大きな違いだ。
これはモリアオガエルも同じなのだが、実際に卵塊を観察し続けた結果、モリアオガエルよりもシュレのほうがずっとデリケートで、孵化する確率は低いということが分かった。
モリアオガエルは水面上の枝にぶら下げる形で産みつけるので、そこから落下しない限りは卵塊が丸ごと水浸しになることはない。卵塊の中で孵化するところまではそこそこの確率で成功する。
しかし、そのまま日照りが続いたりすると、卵塊の外側がパカパカに乾ききって分厚い壁となり、オタマは卵塊の中に閉じ込められたまま腐ってしまう。そういう卵塊も何度か見たことがある。
シュレは田んぼの畦というか土手の中に卵塊を産みつけるので、土が乾きすぎたり、土が崩れて露出してしまい、そのままミイラ化するリスクも、孵化する前に田んぼに流れ出してしまって水浸しになり卵塊ごと腐ってしまうリスクもある。乾きすぎてもダメ。びしょびしょでもダメ。ものすごく難しい。
産みつけられた直後に、田んぼの水面にプカプカ浮いている卵塊は、そのまま孵化できない可能性が高いのだ。
適度にオタマが育ったタイミングでそこそこの雨が降って流れ出す……なんていうのは、相当に幸運なことであって、確率的にはとても低い。
また、孵化したばかりのオタマも、モリアオガエルに比べてひ弱だ。水の中に流れ出すのが早いと、全身真っ白な弱々しいオタマのままで、水温の変化に耐えられなかったり、動きが鈍いからそのままマツモムシやイモリや、他のすでに大きく育ったオタマなどに食われてしまう確率も高い。

こういうことを、僕は川内村に住んでいた7年間で少しずつ学んだ。
どんなカエル本にも書いてないことで、まさに経験を積むしかなかった。

シュレーゲルアオガエルやアカガエルは、孵化できないリスクが高いカエルなので、数で勝負して生き延びるしかない。だから、生息している場所で普通に見られているからと安心していると、何かの環境変化で一気に絶滅の危機を迎える。
2年連続して田んぼに水が入らなかった川内村をはじめとする原発30km圏では、カエルの生息地図が大きく書き替わった可能性がある。

ここ、日光市では、ニホンアカガエルやツチガエルは絶滅危惧種II類で、実際に見かけることは少ない。
その代わり、繁殖期には田んぼに無数のトウキョウダルマガエルが見られる。
水が入っている時期が短い現代農業の環境には、アカガエルやツチガエルよりもトウキョウダルマガエルのほうが適応できるということなのだろう。

2013/04/24


一夜明け、またまた雨の水曜日。オオカミ池は今日も静か。暖かくなって、救出卵からたくさんのオタマが孵化するのが楽しみだ。


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