2012/11/12

日光転居1周年記念に?購入したもの(承前)


でかいほう──「芸術は爆発だ」バージョン──のほうは、細部が動物の顔に見えたりして、なかなか飽きない。雨に濡れると色が変わることも分かったので、これもいっぱい楽しめそうだ。

穴の中とか尖った先っぽだけ、透明ニスをちょっと塗ってみた
















↑リビングのガラス越しに見たところ


ついでにハナミズキの紅葉も撮っておく


死んだお袋がハナミズキやライラックが好きだったなあ


手前がコシアブラ、向こう側がマンサク。マンサクはマルバノキと同じ種類らしいのだが、マルバノキはきれいに赤くなったのに、こっちはしょぼく黄色に。いまひとつだなあ。
川内村の家の周囲にはコシアブラなんか普通に生えていて、春には若芽を天麩羅にして食べていた。そういうのがあたりまえだったから、どうもわざわざ金を出してコシアブラの若木を買ってくるという、ここの生活には未だに違和感を覚える。阿武隈のコシアブラ、もう、気軽に口にすることもできないのだよなあ……。


↑11月15日付けで官邸から発令された新たな採取・摂取・出荷自粛指示(Clickで全文)


……と、阿武隈生活を振り返る瞬間が今もあるけれど、うちは本当に幸運だと思う。

さて、ここから例によって脱線する。

長野に移住したみれっとファームの桂子さんが、フェイスブックで、新居のすぐそばが交通量の多い道路なので、音がきついと書いていた。でも、お菓子の製造再開にまでこぎ着けている。
みれっとファームはいわき市の戸渡にあった。30km圏で、川内村の我が家周辺などよりずっと線量は高いが、いわき市が国に要望して、緊急時避難準備区域から外したことで、その後の補償交渉なども難航しているようだ。

佐渡に行った出戸さんと小塚さんからは、ときどき近況報告が届く。きのこ里山の会とか、川内村でやっていたことを佐渡でやり遂げようとしているようだ。

川内村に残っているマサイさんは、獏原人村の満月祭を続けている。去年も今年も満月祭は行われた。これも立派。

……そんなふうに、僕の周囲では、今はもう、これから先どうやって充実した人生を取り戻せるのか、という話題が日常になっている。
俺はこんな感じだよ、そっちはどうだ、という感じで。
ところが、未だにそういう意味での「生きる」とはかけ離れた話をよく聞かされる。

日経BPに、「『弁当有料化』で表出した町民の分断と対立」というリポートが出ていた(藍原寛子氏)。
現在、ただひとつ残っている集団避難所が埼玉県加須市の旧・騎西高校。廃校になった5階建ての校舎に双葉町の住民が身を寄せ合っている。
「災害救助法」二十三条によって、避難所の設置と炊きだし(食事の提供)はワンセットになっているそうだ。しかし、この法では、支援の期間は原則7日としていて、これだけ長期間にわたって避難所が開設されていることは極めて異常な事態。
この避難所では、1年半にわたって3食とも弁当が無料で配られていた。それを、双葉町自らが「8月をもって無料で弁当を配ることはやめたい」と、福島県を通して国に申し出たという。
なぜなら、集団避難所以外の場所に避難している人たちから苦情が出たからだという。避難所に残っている人たちだけが「ただ飯」にありつけているのは不公平だ、と。

東電の賠償では、避難命令が出た自治体住民に対しては、ひとりあたり10万円/月の「避難生活に関わる精神的苦痛への賠償金」が支払われている。この額が、集団避難所だと12万円/月になる。
集団避難所から外に出ると、仮設住宅や借り上げ住宅への住居費援助は出るが、光熱費や食費を自分で負担しなければならず、精神的苦痛の損害賠償金も月額ひとりあたり2万円減る。食料だけでなく、衣料品、日用品などの支援物資も集団避難所には山積みされるし、仮設住宅にも届くが、アパートを借りた人たちなどにはなかなか渡らないということで、
「仮設と借り上げの人で差が大きい。支援物資がこない」
「避難生活の平等化を早くやるべきだ」
「いつまでこの生活を続けなければならないのか」


……といった苦情が噴出しているのだそうだ。

しかし、こうした不公平、「支援格差」問題は、避難地域住民の中よりも、避難区域外の福島県民、他県住民との間のほうがはるかに大きい。
上のリポートをしている藍原寛子氏が、先月、「支援から取り残された『県内自主避難者』」というリポートもしている。
災害救助法によって避難生活の援助を受けられる人の対象が、避難区域からの避難者と避難区域外からの県外避難者となっている。
つまり、避難区域外(例えば福島市や郡山市など、線量の高い都市部)から県外に自主避難した人たちには、災害救助法によって、転居先のアパートなどを「借り上げ住宅(みなし仮設住宅)」として家賃援助や日赤からの家電7点セットの支給などを適用するが、福島県内での避難(例えば線量が高い福島市から線量の低い会津エリアや南福島エリアへ)にはこれが適用されないという。
避難地域の人たちは、借り上げ住宅の家賃補助などの他に、毎月一人10万円の避難生活による精神的苦痛に対する損害賠償金が支払われ、就労不能への補償もあり、自宅への往復や荷物運搬などに対する費用補償もある。結果として、3.11前よりも総収入が増えた世帯もかなりある。一方では、一部の避難地域よりも高い汚染に見舞われながら、そこからより汚染の薄い場所へと自主避難したことによって、家族が分断され、家賃や生活費も二重に出ていくという悲惨な生活になってしまった人たちもいる。
……ひとつひとつ問題を挙げていけばきりがないのだが、これが福島で今起きていることの一端なのだ。

双葉町が福島第一原発に7号機、8号機を増設してほしいという要望を決議したのは1991年のこと。
その後2002年8月には、東京電力が原発の保守点検などに関するデータを改竄していたことが発覚。
きっかけは2000年7月に、福島第一原発の設計をしたアメリカのゼネラル・エレクトリック社系列の技術者が、通産省(現経済産業省)に告発文を実名で送ったことだったが、国はこれを2年間も見て見ぬ振りをして、真相解明の努力をしなかった。
佐藤栄佐久福島県知事(当時)は、国と東電への不信感を募らせ、2003年4月には東京電力の原発すべてが停止する事態になった。
そんなことになっても、原発増設要望の先頭に立っていた岩本忠夫双葉町町長(当時)は、「町長として原発誘致に町の命運をかけることに疑いを抱いていない」と言いきっている。
「(東京電力と)長いつきあいをしてきたということで、原子力発電所それ自体についても、その中で自分も生きてきたと思っているのです。単に原子力発電所との共生をしてきた、共生していくということだけではなくて、運命共同体という姿になっていると実は思っています。ですから、いかなるときにも、原子力には期待もし、そこに『大きな賭け』をしている。『間違ってはならない賭け』をこれからも続けていきたいと思っております。(中略)私はどのようなことがあっても、原子力発電の推進だけは信じていきたい。それだけは崩してはいけないと思っています」(2003年、社団法人原子燃料政策研究会の会報『プルトニウム』42号でのインタビューより)

岩本氏は5期20年にわたって双葉町町長を務めている。双葉町の町民が「原子力発電と運命共同体になるという賭け」を選んだ結果だ。
その賭けの結果が今の双葉町の姿だ。

この歴史をそのままにして、補償や再興の議論をするなどありえないではないか。
もう原発とは縁を切る町として再出発するという住民の共通意志がないまま、あれをしてくれ、これが足りない、不公平だ……では、いつまでもまとまるわけがない。
国や県が何をしてくれるのか、ではなく、自分たちは何をしようとしているのか、を語らなければ始まらない。
もう一度、原発運命共同体という道を選ぶのか否か。これからも原発共同体として生きていく道を選ぶなら選ぶと、堂々と宣言すべきだ。それが、義援金を出し、増税や電気料金の値上げで金を出している日本中の人たちに対して最低限度の責任ではないのか。
双葉町が失ったものは、土地だけではない。生きていく意味を知るという心だ。

原発運命共同体として生きるという賭けをした岩本町長は、かつては社会党に所属する県会議員で、熾烈な反原発闘争を展開した「双葉地方原発反対同盟」のリーダーだった。

拙著に何度も掲載したし、ブログにも書いてきたが、彼が県議会議員として初めて議会の質問に立ったときの言葉をここに再掲したい。

「山と水と森、それは、すべての生物を生存させる自然の条件です。

 地域開発は、まさにこの偉大な自然の中で、これを活用し、人間の生命と生活が保護されるという状態で進められることが大切です。
 しかし、今まで現実に進められてきた開発行政は、一般住民の生活基盤の整備が放置されたままに、大企業の立地条件がすべてバラ色に装飾された図式のもとで、至るところ、企業の誘致合戦が展開されてきました。
 人間が生きていくことに望ましい環境を作り、それを保持することが、今日最大の必須条件ですが、現実にはこれが尊重されず、企業本位の開発進行がなされてきたために、人間の命が軽視され、公害が発生しました」


双葉町が失ったものは、この言葉に集約されている。
この失ったものをそのままにして、ただただ、あれが足りない、あれがほしい、ここが不便だ、不公平だといった議論を積み上げても虚しい。


……話がどんどん脱線していったけれど、「弁当問題」の裏側にあるものは、こういうことなのだから、はっきりさせておかないと、ね。



このページの写真はフジフィルムのX-S1とパナソニックのLX5で撮っています

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