たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ リターンズ』2012

 (週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)

 2012年執筆分


『朝まで生テレビ』出演裏話

2012/01/10

 年末年始進行の関係もあって、かなり古い話になってしまうのだが、元旦の『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)に出演した。
「激論! 福島発・原発事故からの復興」というタイトルだったが、各話題をこれから論じようというところで発言が遮られて別の話に移ったり、進行がぐちゃぐちゃ。言いたいことの1%くらいしか言えなかったし、「激論」にもならなかった。
 僕の左隣は反原発運動のシンボル的存在になっている山本太郎氏。右隣は前回の出演で「イケメン教授」と評判になった(ことを後で知った)石川正純北大教授。CMの間、どこからともなくおねえさんが出てきて、この二人と、僕の正面に座っていた地元農家の藤田浩志氏(彼も若い)の額やほっぺたをパフパフして回る。僕のところは素通り。……そうですかぁ……。
 隣の山本太郎氏が「ストロンチウム、プルトニウムはどうなんですか!」と叫んだまま話が発展しなかったので、CMのとき「ストロンチウムのことは絶対に後でやりましょうね」「お願いします!」というような「共闘」があったのだが、結局、二度とその話にはならなかった。
 最後のほうでようやく発言機会が与えられたが、残り時間の関係もあり、司会進行役の意に沿う形ではなく、「税金を注ぎ込んで嘘をつき続けるような利権構造を変えない限り、何度でも同じことが繰り返される」と、どうしても言っておかなければならないことを述べた。そうしたら、直後のCMで右隣の石川教授が「まさにそうなんですよ! 私も『組織』の中にいていちばん感じるのはそこです」と声をかけてきた。これがいちばん印象に残った一コマだった。

『カーネーション』出演者関西率

2012/01/21

 NHK連続テレビ小説『カーネーション』は、ちゃんと主人公の不倫エピソードもぎりぎりフォローするようで、ますます目が離せない。
 ところで、大阪人にあのドラマの出演者たちが話す大阪弁は正しいのかと訊いたところ、概ね合格点だそうだ。そこで、主要な出演者の「関西率」(関西出身率)を調べてみた。
 小原糸子役の尾野真千子は奈良県出身。子役の二宮星は大阪。
 糸子の父親(小林薫)は京都。母親(麻生祐未)は大阪。祖母(正司照枝)は北海道生まれだが、大阪での芸歴がメイン。夫(駿河太郎)は兵庫。妹(柳生みゆ)は大阪……と、小原家はほぼ関西率が百パーセント。
 経理のおっちゃん(六角精児)、近所の髪結い安岡家のおばちゃん(濱田マリ)は兵庫。安岡家の次男勘助(尾上寛之)、長男泰蔵の嫁八重子(田丸麻紀)は大阪。電器屋木之元栄作(甲本雅裕)は岡山出身だが、関西高校~京都産大に進んでいるのでほぼ関西育ち。下駄屋の木岡保男(上杉祥三)は兵庫。元ダンスホールの踊り子サエ(黒谷友香)は大阪。泉州繊維商業組合会長(近藤正臣)は京都……と、関西率は極めて高い。
 逆に、非関西出身の役者はというと、旅館の娘で糸子の同級生・吉田奈津(栗山千明)は茨城。不倫相手の紳士服職人・周防龍一(綾野剛)は岐阜出身で高校卒業後に上京。母方の祖父松坂清三郎(宝田明)は日本領時代の朝鮮生まれで東京育ち。祖母・貞子(十朱幸代)も東京。
 こうして見ていくと、関西出身役者たちの中で、関東圏で育った役者たちが醸し出す雰囲気はやはり違う……なんてことを観察して楽しむのも一興か。

タブーに挑戦するお笑いユニット

2012/02/03

「脳性麻痺ブラザーズ」というお笑いコンビがいる。僕は彼らをNHK教育の『バリバラ』で知ったのだが、コンビ名の通り、一人はうまく喋れない、もう一人は車椅子というユニット。
「風邪だと思うんですけど、うまく喋れないんです」とたどたどしく訴える患者に、医者役の相方が「それは風邪じゃなくて脳性麻痺でしょう?」と突っ込む。そんなネタばかりやる。
 健常者のお笑いコンビがこんなことをやったら間違いなく放送禁止だし、謝罪会見を開くことになるだろうが、実際に脳性麻痺の二人がやると、誰も非難できない。ただ、彼らのコントは普通のお笑い番組では無理で、ドキュメンタリーや情報番組の中でしか放送されない。
 もう一組紹介したいのが、福島を拠点に活動している「母心」という漫才コンビ。彼らは3・11以後、意識して原発事故と放射能をネタにし続けている。
「あたしだって放射能あびる前は面白かったんだから」
 これは「アウト」だろうか?
 3・11以降、原発事故ネタをやっているお笑い芸人をテレビで見たことがない。これがイギリスなら、テレビはこの手のネタで溢れているはずだ。
 警戒区域に指定されて人が消えた町を「死の町のようだった」と形容しただけでメディアから総攻撃され、辞めさせられた大臣がいた。今いちばん怖いのは原発がばらまいた放射能そのものではなく、放射能まみれになった日本で、自由な発言、表現ができなくなっていることだ。
 原発の問題点を指摘することを「タブー」にして、国策に従う人間だけを重用した原子力ムラ。タブーがあの事故を生んだことを、忘れてはならない。

『カーネーション』終盤の見方

2012/02/17

 連続テレビ小説『カーネーション』いよいよ終わりますねえ。
 前に、実際の小篠綾子さん、コシノ3姉妹の生涯とこのドラマがどの程度一致しているか、検証しながら見ていくのも楽しいかもしれないと書いたけれど、物語が終盤になるにつれ「創作部分」が増えてきた。
 例えば北村(ほっしゃん。)にピタリ符合するモデルが実話には見あたらないし、妻子ある男性との不倫エピソードも、実際よりずっと柔らかく終わらせていた。長女と次女のライバル関係描写も、実際とは微妙に違っている。実際のコシノヒロコ、コシノジュンコは、ほとんど接触しないままにそれぞれ別の道を歩んでいるはずだが、ドラマでは東京で苦しむジュンコ、いや直子のところに、ヒロコ、いや優子が助けに行くというシーンが描かれた。これなどは実話を超えた感動を盛り込むことに成功したよい例だと思う。脚本家の腕がすごいのだなあと感心しっぱなしだ。
 ここに来て、何も基礎知識なしでこのドラマを見ていたほうが楽しめたかもしれないなと、ちょっと後悔している。
 歳をとってからの糸子役は夏木マリだそうだが、かつてのセクシー女王が大阪のおばちゃん、おばあちゃん役をどうこなすのか興味津々。しかし、これはもう、実際の小篠綾子さんとはかけ離れすぎているから、余計な比較はせずに、終盤は気持ちを切り替えて、純粋に物語として楽しもうと思う。
 それにしても次女役の川崎亜沙美はうまい。顔もいちばんリアリティあるし、プロレスラーって、基本が「役者」なのね。いくら強くても、吉田沙保里じゃ役者は無理だもんなあ。

BSが31チャンネルに増えたけど

2012/03/05

 気がついている人は多いと思うけど、3月からBS放送の新規チャンネルが登場している。1日にJ SPORTS3と4、BS釣りビジョン、IMAGICA BS、BS日本映画専門チャンネル、ディズニー・チャンネル。17日には無料放送のDlife。これでBSは全部で31チャンネルになったのだが、結果、CSとBSの違いがますます分からなくなってきた。
 スカパー!e2を契約している人にとっては、テレビのリモコンの地上波、BS、CSの切り替えボタンは、単に「3列並んでいるチャンネル系統切り替え」という認識になる。大騒ぎした地デジ化は、地上波の圧倒的優位を脅かす結果になったとも言えるだろう。
 実際、我が家では地上波と衛星放送が視聴も録画もまったく同じ環境になり、地上波だからどうという意識がない。録画もリアルタイム視聴も、衛星放送の割合が日々増えている。BS FOXとかBSスカパー!、IMAGICAなどがしばらく無料放送なので、この間はますます衛星放送を見る割合が多くなるだろう。内容的にもじっくり楽しめるのはBSだし。
 先日BSスカパー!でやった『日テレプラス presents らくらくゴーゴー!そうだ落語で笑おうスペシャル』は、今後のBSコンテンツの可能性を力強く示していた。春風亭昇太と柳家喬太郎という「本当に面白い芸人」が、地上波では見られない自由なノリで生き生きと喋り、演じる。この開放感ってなんだろう。地上波で失われたものがここにはあるなあ、と実感。
 今年はテレビにとって本当の意味での「多チャンネル元年」になるかもしれない。


事故後1年経って出る重大事実

2012/03/17

『裸のフクシマ』(講談社)にも書いたが、昨年3月26日に川内村の自宅に荷物を取りに「自主一時帰宅」したとき、常磐道走行中いちばん線量が高かったのはいわき市あたりだった。
 ところが、その後は通るたびに低くなり、今は首都圏とほとんど変わらないほど低い。他のエリアはそれほど下がっていないのに不思議だなと思っていたのだが、3月11日の『ETV特集「ネットワークでつくる放射能-汚染地図(5)埋もれた初期被ばくを追え』を見て謎が解けた。セシウム汚染は北西方向がひどかったが、ヨウ素131は南の方向に流れたものが多くて、いわき市や茨城、栃木方向がかなり汚染されていたというのだ。ヨウ素131は半減期が8日と短いので、半減期30年のセシウム137などに比べると放射能は急速に減っていく。いわき市の汚染がセシウムよりもヨウ素が中心だったとすれば、他のエリアよりはるかに早く線量が下がったことが理解できる。
 しかし、初期被ばくではヨウ素がいちばん怖いとされている。チェルノブイリのときも子供の甲状腺がんの増加が認められている。いわき市方面にいた人たちが去年の3月15日くらいから相当量のヨウ素131内部被曝の危険にさらされていたという事実が、1年も経ってから、しかも国や東電からではなく、NHK教育の夜10時という目立たない放送からしか伝わってこないということにため息が出る。
 いわき市の人口は約34万人。避難地域なみに1人10万円/月の「精神的損害補償」を支払ったら、ひと月で340億円。1年で4000億円を超える。隠したいから隠したのか? 追及すべきことはまだまだある。
  

芸人が芸を見せるあたりまえの番組

2012/03/31

 少し前になるが、『水曜エンタ 芸人ベストパフォーマンス』(TBS)という番組があった。芸人が自分で演目の時間を申告していいという企画。いちばん長い時間を要求したのはオリエンタルラジオの10分。その次が友近、ナイツの9分。普段1分くらいしかやらせてもらえない渡辺直美でも5分を要求し、まるまる1曲、口パク芸だけでやり通した。芸人の本当の実力が分かるよい企画だった。
 毎週やってくれればいいのだが、とりあえず単発企画だったらしくて、これを書いている時点ではまだ2回目を見ていない。
 それにしても、芸人が芸をやるというあたりまえの内容がこれだけ新鮮で特別なことに思えるということが悲しい。大変な競争率を勝ち抜いてテレビに出られるようになった途端、要求されるのは芸ではなく、一瞬で面白い受け答えをする、あるいは仲間の芸人をおちょくる(いじる)という特殊な瞬発力を磨くことのみに専心させられる。結果、疲弊し、精神はボロボロになり、本来の芸を磨く時間も気力もなくなる。
 民放バラエティ番組のギャラが高いから、あるいは露出しないと「営業」ギャラも高くならないから、事務所も「ひな壇出演」のような仕事を優先して入れる。これは誰にとっても幸せな結果にならない。
 もし、地上波民放キー局がこのままの路線でいくなら、BSやCSのどこかで、この「本来の芸を見せる」番組編成をするチャンネルができないものか。いちばん有力なのはWOWOWだと思うが、ライブチャンネルの活用が全然できていないのはとても残念だ。まだ売れてない隠れた才能はいっぱいいるぞ。

 

戦争時代を描くドラマの役割とは

2012/04/14

 いわゆる時代劇というものを僕たちは「作り物の世界」として割り切って見ている。あんな喋り方をしていたはずがないとか、衣装が変だとか、馬がスマートすぎるとか、そういう粗探しをしていても仕方がない。
 しかし、太平洋戦争についてまで、同じように割り切って見るのには抵抗がある。あの戦争を生き抜いた人たちがこれを見てどう感じるのだろうと思うようなドラマが増えた。
 NHKの連続テレビ小説でいえば、『カーネーション』は合格だったと思う。しかし、『おひさま』や、今やっている『梅ちゃん先生』はきれいごとすぎる。主人公一家が汚れひとつない服を着ていたり、米穀通帳が真っ白に漂白されているといった甘さはともかく、浮いた台詞の数々がとても耐えられない。
 そんな中、TBSでやった『ブラックボード~時代と戦った教師たち』の第1夜には感心した。軍国主義に染まった熱血教師が、戦後、傷だらけになって再び教壇に立つ。それをきれいごとではない物語にしていた。
 教え子たちの様々な反応。失明しても誰を恨むでもなく、ひたすら人のいい子、国家に不審を抱き革命運動に身を投じようとする子。夫を失った女性とその夫の妹との確執……。戦後の混乱期は、原発が爆発して右往左往している今の世相に似ている。このドラマに出てくる人たちの反応は、原発被災者たちの反応と実によく重なっている。
 こんな世の中にしてしまった根本の問題はどこにあるのかを考えさせる脚本でなければ、戦争を描く意味はないし、安易に描くべきでもない。戦争を安易に扱うドラマと表面だけの原発報道も、またよく似ている。

「笑わない回答者」も見てみたい

2012/04/24

 不況になるとクイズ番組が流行ると言われる。今ならそれに「放射能不安」も加わるかもしれない。絶対安全牌としてのクイズ番組。民放では、宇治原史規、伊集院光、ラサール石井、宮崎美子、麻木久仁子といった人たちの出番がやたらと増えた。
 その際、「◎◎大学出身」という肩書きが出ることも多い。ちなみに都立高校中退の伊集院光は「中卒の星」として売れるが、ラサール石井は灘高、東大を共に受験失敗して早稲田中退。麻木は学習院大中退と、学歴をいじるにはなんとも中途半端。
 民放系クイズ番組がタレントのリアクションや一攫千金感に頼っているのに対して、NHKで始まった『連続クイズホールドオン』は一般視聴者を回答者にして、高額賞金もないという正反対の路線を行く。
 この番組はフランスのクイズ番組のフォーマットを購入していて、番組としてはとてもよくできている。民放系のギラギラ感がなく、のんびり見ていられるのでいいのだが、ひとつ気になるのは司会者と出場者が「同じ笑顔」になっていることだ。
 出場者はオーディションで選ばれるが、これはクイズ形式の試験だけではなく、「テレビ的にどうか」という人物の魅力が大きく合否に関係するらしい。
 となるとその「テレビ的魅力」は制作側の価値観、判断によるわけで、表情が暗い人とか個性がきつすぎる人などは排除されてしまうのだろう。いろんな人が出てくるのが視聴者参加番組の魅力だと思う僕としては、視聴者参加クイズ番組くらいは、「テレビ的判断」が一切入らない世界であってほしい。そうじゃないとクイズ番組から「夢」がなくなってしまうもの。

歌声の魅力だけで聴く音楽

2012/05/12

 1981年、アメリカで『ニューヨークシティ・セレナーデ』という曲が大ヒットした。歌ったのはクリストファー・クロスという太ったおっちゃん。クリアなハイトーンが多くの人を魅了したが、彼はデビュー当初、素顔を公開せず、コンサートもやらなかった。自分の容姿を晒してリスナーをがっかりさせたくなかったのだろう。
 欧米では、歌手はあくまでも歌唱力と声の魅力で売れる。最近ではスーザン・ボイルが話題になった。
 しかし日本をはじめ、アジア圏では音楽ビジネスは一種の「動画ビジネス」のようになってしまった。ブス、ブオトコの歌手デビューは、長い間ない。
 FOX bs238(現在無料放送中)で『ザ・ヴォイス』という歌手オーディション番組をやっている。審査するのは音楽業界のプロデューサーたち。応募者に背を向けて、歌声だけを聴いて合否を判定する。合格ボタンを押したプロデューサーはそこで初めて椅子を反転させて応募者の容姿を見られる。
 クリストファー・クロスのようなでぶのおっちゃんでも、声の魅力だけでプロデビューのチャンスを掴めるのがミソだ。
 日本では『フジテレビに出たい人テレビ』で、ブラジルの日系三世メリッサ・クニヨシという9歳の女の子が歌う『ハナミズキ』が話題になっている。
 この子などは、まさに容姿関係なし、音楽は耳で楽しむものだということを認識させてくれる好例だ。(彼女が可愛くないということではなく)。
 さて、日本版『ザ・ヴォイス』は可能なのか。業界ごと変われる可能性はあるのだろうか。道は遠そうだなあ。

旧独立U局よもっとしっかり戦え

2012/05/25

 現在、日本には全国ネットに属さない独立系テレビ局が13局ある。関東であれば、東京MXテレビ、テレビ神奈川、群馬テレビ、とちぎテレビ、テレビ埼玉、千葉テレビ放送。UHF電波帯を割り当てられていたため「独立U局」と呼ばれていたが、地上アナログ放送が終わり、すべての地デジ放送がUHF電波帯で放送されている今、この13局は、もはや全国ネット系列の地上波放送局と利便性ではなんの差もない。ところが、内容はほとんどが通販番組で、放送局としての魅力はネット局と大きな開きがある。
 関東では神奈川、群馬、栃木、埼玉、千葉の5局が「5いっしょ3ちゃんねる」と称して共闘しているが、独自制作番組の共有はほとんどなくて、なんのための「ごいっしょ」なのか分からない。UHF帯で孤立していた長い時代にどんどん弱体化してしまった結果だろうか。
 メジャー局と同じ武器を与えられたのに互角に戦えないのはあまりにも情けないし、電波資産がもったいない。予算がなくてもアイデアと努力次第でいくらでも面白い番組は作れる。
 ハンディカメラ1台持った優秀な制作者がいれば、メジャー局の陳腐なバラエティ番組などよりはるかに面白いものが作れることは、YouTubeが証明している。
 それができないのは、通販番組の垂れ流しを許している総務省の責任も大きいかもしれない。しかし、官の管理が強化されると放送文化が萎縮する。これ以上電波の無駄遣いと非難されないうちに、なんとか放送業界の内部から「俺たちは文化を創っている」という自負を持って自主改革を望みたい。

芸人も芸人の親もいろいろ

2012/06/09

 次長課長の河本準一、キングコングの梶原雄太の母親が生活保護を受けていたという「騒動」には、いろいろ考えさせられた。
 僕は今まで一度も「固定給」というものをもらったことがない。基本は出来高払い。また、福島第一原発の事故損害補償金で、避難地域住民の勤労意欲や生き甲斐がずたずたにされている現状も目の当たりにしているので、税金で助けてもらうことの問題がいかに複雑かも分かる。
 キングコング梶原が母親のことを歌っている『おかん』というラップをネットで聴いたが、「完璧な人なんてこの世にいるわけない」「これからは俺、おまえの生活バックアップ」という歌詞が印象的だった。
 この梶原母は、「キングコング梶原おかんのじゃこ入り塩昆布」なる商品を通販していたこともあり、ネット上にはその画像も残っている。河本も自分の母親のことを「うちのおかんは……」と、よくネタにしていた。
 芸人一家総力戦という印象で、いいとか悪いとかは別として、生きることへの意欲、どんなことでも利用して生き抜く姿勢がすごいなと思う。
 NHKの『笑神降臨』に我が家が出たとき、メンバー3人の実の父親が即席トリオを組んで息子たちのネタをやったのだが、その中で、坪倉由幸の父・坪倉良和氏の演技と存在感はピカイチだった。この人、横浜中央卸売市場の「総合プロデューサー」で、経営する「坪倉商店」の年商は10億だとか。YouTubeには良和氏の追っかけ動画までアップされている。そのうちバラエティ番組にもじゃんじゃん出てくるかもしれない。
 芸人も芸人の親もいろいろ。ま、生きるって、大変だわね。

NHKのBSはどうなってるんだ

2012/06/22

 NHKのBSは、かつて良質のドキュメンタリー番組などが多く放送されていた時期があり、気がつくとNHK総合より長い時間視聴していたこともあった。
 ところが、このところ見るべき番組がほとんど見あたらず、気がつくとすっかりNHK BS離れが進んでしまった。
 アメリカの野球、フットボール、バスケットボールの試合中継。韓国ドラマ。あたりさわりのない風景や風物を流す旅もの的番組……その手のものはCSにいくらでも専門チャンネルがある。NHKがわざわざ放送しなければならないものではない。
 NHKは視聴率におもねることなく番組編成ができるはずだが、どうもそれが裏目に出ているように思えてならないのだ。
 この傾向は、NHKのBSが3チャンネルから2チャンネル態勢に減らされてから顕著になったように思う。チャンネルが減った分、厳選して「攻め」の編成になるのではなく、「逃げ」や「無気力」を感じさせる編成になってしまった。
 言い換えれば、「これだけは伝えなければ」という情熱ではなく、「これは問題が起きそうだからやめておこう」という意図を強く感じてしまう。
 例えば、原発問題関連の報道番組は、広告主に支えられた民放にはしっかりした内容の番組はほぼ期待できないのだが、NHKでもBSではほとんどそういうものをやっていない。NHK総合かEテレで探すしかない。
 この状況は以前は逆だった。地上波では深い内容は望めないが、BSならやってくれるかも、という期待があった。
 NHKではBSのほうがタブーが増えているのだろうか。そうは思いたくないが……。

志の輔はいい仕事をしている

2012/07/05

 首相官邸前で毎週金曜日にやっている原発再稼働に反対するデモは、当初数百人規模だったが、ついに数万人規模に膨れあがっている。しかし、この映像をテレビは長いこと出さなかった。今でも報じない局がある。
 大飯原発再稼働の直前、大飯原発前にはジャンベやドラムセットなどを持った人たちが集まってうねるようなリズムを作りだしたが、この映像もほとんど流れることはなかった。
 このご時世、テレビは何かを怖がっているように思える。従来の安全牌であるお笑いやアイドルもの、タレントのゴシップネタなどは、これでもかというくらい出してくる(杉ちゃんなんか、あそこまで集中して酷使しなくてもよいだろうに)。
 そんな中、WOWOWでやった『志の輔らくご』は救いだった。放映された3本の中で「メルシーひなまつり」というネタは前にも見ていたが、今のこのご時世で見る(聴く?)と、また違った感慨がある。
 勘違いのお役人(話の中では外務省の若手官僚)とシャッター通り化する古い商店街の人たちのずれたやりとりで笑わせる話だが、庶民の幸福感と、官僚、政治家、大企業の価値観、判断基準がいかにずれているか、そして、どちらの価値観に人間の根源的な幸福があるかを考えさせられる。志の輔がこのネタを今また持ち出した意図はとてもよく分かる。
 志の輔はNHKの人気番組の司会もしているし、マスメディアを敵には回せない立場。でも、自分の持ち場を精一杯生かして、自分の芸で、押しつけがましくなく、大切なことを伝える。
 この姿勢、素晴らしい。同時に、とても羨ましい。

ボルトは脊柱側弯症だった!

2012/07/21

 ロンドン五輪はレースや試合の多くが日本では真夜中に実施される。見るのも大変だ。
 で、テレビ各局では事前情報番組的なものを多く放送したが、NHKスペシャルが3回連続でやった『ミラクルボディー』は実に興味深かった。
 なかでも、陸上短距離でとてつもない世界記録を叩き出し続けるウサイン・ボルト選手が、実は脊柱側弯症という障害を持っていて、変則的な走り方を余儀なくされているというショッキングな内容だった。あの、身体全体をうねらせるような奇妙な走り方は、背骨が異常に歪んでいるからだったのだ。
 脊柱側弯症は、程度にもよるが、障害者年金を受け取る資格もある障害である。ボルトの走っているときの左右の歩幅は20cm以上違うという。大変なハンディを背負って走っているわけだが、それでいてあの速さ!
 陸上選手の障害といえば、マラソンの谷口浩美選手が斜頸(首が傾き、顔が回しにくくなる病気)で、常に首を曲げた格好で走っていた姿を思い出す。
 さらには、両脚義足のオスカー・ピストリウス選手(南アフリカ共和国)が初めてオリンピック出場を果たすのも注目だ。
 彼は前回の北京五輪にも出場しようとしていたが、カーボン製の義足による推進力が公平を欠くとして国際陸連が出場を却下していた。その後、スポーツ仲裁裁判所がそれを覆し、健常者のレース参加資格を認めた。
 今後、スポーツ義足の「性能」が著しく向上したら、義足選手の記録を健常者選手と同様に認めるのかどうかでまた議論が起きるだろう。そんなことも考えながら観戦すれば、さらに興味深いかもしれない。

ロンドン五輪中継を見て思うこと

2012/07/31

 ロンドン五輪が始まった。
 今回、中継で気になるのは、基本的に生で見られる競技が少ないということだ。NHKと民放1局が担当する形が多いが、民放で流している映像も音声もNHK BSでやっているのと同じことがほとんどで、同時に中継する競技数が少ない。
 録画やハイライト番組も少ない。テニスなどは錦織圭選手の初戦突破を録画でさえろくに見られなかった。昔はこんなじゃなかったと思うのだが……。
 今回の五輪では、猫ひろしがカンボジア国籍を取得してマラソン代表になろうとして失敗。体操の塚原直也選手(アテネで男子団体金メダル)もオーストラリア代表としてロンドン五輪を目指したが国籍変更が間に合わず断念。改めて国籍変更問題に関心が寄せられたが、実際に卓球などは、相手国がなんであろうと中国からの国籍変更選手だったりする。陸上でも、アフリカ系選手がいろんな国の代表として出てくる。
 日本選手団にも外国から国籍変更で日本代表になった選手もいる。でも、柔道や体操、陸上マラソンといった競技では、いてもよさそうだがいない。
 北京五輪男子マラソンで圧勝したサムエル・ワンジル選手は仙台育英高校~トヨタ自動車九州と進み「日本が育てた」五輪代表だが、金メダルをとった彼に対して日本での「おめでとう!」報道はトーンが低かった。
 ここでふと思う。柔道、体操、マラソンといった「日本の御家芸」といわれた種目の選手が日本国籍を取得しようとしたとき、何かバイアスがかかって取得しづらいのではないか、と。真相を知りたいが、テレビでは追いかけない問題なのかな。

『炎の体育会TV』にひとつ提案

2012/08/18

 ロンドン五輪は全般的に男子がひ弱で女子が奮闘した印象だったが、陸上などでは「あれ? この選手は『炎の体育会TV』(TBS系)でもう中学生に負けた選手だな」などと思いながら観戦する楽しみがあった。
 アリソン・フェリックス(アメリカ)は、今回の五輪で200m、400mリレー、1600mリレーで3つの金メダルを取ったが、今年5月28日放送の体育会TVでは、井手らっきょ・森脇健児・小島よしお・もう中学生の4人によるリレーチーム相手に一人で400メートルを走り、完敗している。
 おっさん芸人(井出は52歳、森脇は45歳)を相手に、オリンピックの金メダリストが負けるものかしらと思うところだが、負けてしまうところがこの番組の面白いところだ。
 サッカー女子は、アメリカが金、日本(なでしこジャパン)が銀だったが、体育会TVではこの2チームの精鋭相手に芸人チームがハンディなしのフリーキック戦で勝っている。 
 さて、海外のアスリートたちは、相手が「コメディアン」たちだとは知らされていても、普段どんな芸をやっているのか見たことがないから、対戦するときも今ひとつピンとこないままだろう。これではつまらない。
 そこで、対戦前に、対戦相手の芸人たちが普段やっている芸をショートバージョンでいいから見せたらどうだろう。生で見せる時間がなければVTRでもいい。対戦相手の「本職」「本芸」を見れば、負けたとき「こんな連中になんで私が負けるの?」という悔しさもひとしおだろう。
 それをテレビで見ている我々視聴者も今まで以上に楽しめる。ぜひ一考願いたい。

『高校生クイズ』における難問とは

2012/09/03

『第32回全国高等学校クイズ選手権』(日テレ)を見た。初回放送(1983年)のときはまだ生まれていないという読者も多いだろう。今回は開成高校が史上初の三連覇達成ということだったのだが、多くの人は疑問に思っただろう。
1 頭のよさと関係ない
 ほとんどの問題はただの雑学クイズ。例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた世界的に有名なイラストの名称は? という問題。答えは「ウィトルウィウス的人体図」という。
 だから何? と多くの人が思ったに違いない。その図の意味や、描かれた背景を考察させるというのではなく、単なる名称を記憶して、それが答えとなる問題文、早押しで勝つための技術としてのキーワードと一緒に暗記していくだけのゲームを「日本一頭のいい高校は?」などと言い換えることがおかしい。
2 視聴者をハナから無視
 いくつか物理的な計算問題が出題されたが、その問題文や条件文は一瞬表示されるだけ。どうせテレビを見ている人たちにはなんのことかも分からないから、単に勝負の行方だけをドラマティックに演出して見せればいいという制作側の意図が見え見え。当然、解説もない。
 これではもはや、クイズとさえ言えないのではなかろうか。
 この混沌とした世の中を切り拓いていかねばならない子供たちに求められる能力は、こんなことではない。お遊びだとしても真剣勝負だとしても、もっと有意義な内容を提供し、視聴者とも問題意識や楽しさを共有できるものを作れないのかなあ。それこそが、高校生クイズに突きつけられた「超難問」かもしれないが、ガンバレ、制作陣。

数学の超難問を番組にする努力

2012/09/14

 前回、『第32回全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ)において、「いくつか物理関連の計算問題が出題されたが、その問題文や条件文は一瞬表示されるだけ。どうせ視聴者にはなんのことかも分からないから、単に勝負の行方だけをドラマティックに演出して見せればいいという制作態度はいかがなものか」ということを書いた。
 この直後に、まったく逆の試みをした番組を見た。NHKプレミアムアーカイブズ(BS)『数学者はキノコ狩りの夢を見る~ポアンカレ予想・100年の格闘』と『素数の魔力に囚われた人々 リーマン予想・天才たちの150年の闘い』。
 天才数学者たちが100年かけても解けないという難問、命題をテーマにしている。「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」(ポアンカレ予想)なんて理解できる人は限られているが、NHKはやさしく解説しようと努力する。
 番組は授業ではないのだから、ポアンカレ予想やリーマン予想そのものをどれだけ理解させられるかはあまり問題ではない。
 一般視聴者にとっては、そういう世界があるのだなあということを知ること、あるいは、知的好奇心を拡張させて楽しめることが大切なのだ。
 テレビは先に結論を用意して、しかも演出済みの内容を視聴者に与えるだけだ、という批判がある。実際、今の日本のテレビ番組はことごとくそういう傾向にある。しかし、本来、テレビを含め、メディアには、個人に問題を提起し、自分の頭で考えさせるという役割があるはずだ。
 マスメディアの代表であるテレビには、この「命題」に命がけで取り組んでほしいものだ。

若者版『新婚さんいらっしゃい』?

2012/09/25

 オリエンタルラジオが恋愛&エッチの極意(?)に迫る、長寿人番組『新婚さんいらっしゃい!』の若者版」……なる番組をご存じだろうか? 『君たちナイスカポー』(CS LaLaTV)という。ちなみに冒頭のフレーズは番組公式サイトの紹介文をそのまま引用してみた。
 番組自体はしまりのない内容なのだが、2つ印象に残った。
 1つは、オリラジが成長した、というか、落ち着いたこと。
 デビューしていきなり売れてしまって有頂天になり、一時期は、このまま消えていくだろうと思っていた。転機は、ネタを考え、リーダーを自負していた中田敦彦を「チャラ男」という予想外のキャラが売れてしまった藤森慎吾が人気の点で逆転したことだろう。中田は相当落ち込んだだろうが、ふてくされず、謙虚さを身につけて成長した。
 この番組でもリードトークは藤森が引き受け、中田はボケ的ツッコミに徹していることでうまくこなしている。
 オリラジは一時期地上波キー局で冠番組を持つほど持ち上げられていて、それが今ではCSかあ……と考えると落差が激しいように思うかもしれないが、こうしてしつこく生き延びる術を身につけることで芸人の寿命は一気に伸びるのだ。
 もう1つは、番組が「元祖」として認めている『新婚さんいらっしゃい!』が、いかに完成された様式美?を持っているか気がつかされる、ということ。桂三枝のリアクション芸(椅子ごとこける)というのは、今ではこの番組くらいでしか見られない。単独で見るとしょーもなー、と思える番組も、真似する番組が出てきて比較すると、偉大さ?が分かるのだねえ。

『純と愛』多分みんなこう感じてる?

2012/10/12

 10月からの新NHK連続テレビ小説『純と愛』。大阪制作の番なので(このところずっと、面白いのは大阪制作)若干期待していたのだが、見ていてただただ疲れる。
 離島で小さなホテルを経営していた祖父を愛し、自分も、客が笑顔で帰る理想のホテルを経営したいと思う女性が主人公。
 そこに絡む青年が一種の超能力者?という、連続テレビ小説としてはかなり異例の設定自体はOKだ。だから、この「疲れる」感覚はストーリー展開から来るのではない。
 いちばんの原因は主人公を演じる夏菜のフル絶叫型の演技だ。身振りは大袈裟。表情も毎回最初から最後までこわばったまま。
 一本気で表裏がないというのはテレビ小説の主人公共通のキャラだが、その純粋さと同時に、ほっくりとした暖かみを感じさせてくれないと、見ているほうはひたすら疲れる。「純と愛 疲れる」でグーグル検索したら、352万件ヒットした。
 今回は主人公だけでなく、キャスティングに若干失敗している感じがする。父親役の武田鉄矢はやる気のないホテル経営者で登場するが、サービス精神が隠しきれず、見ていて、こんなホテルオーナーならホテルは繁盛するんじゃないかしらと思う。
 超能力?少年が出てくるのであれば、バランスをとるべく、他の人物描写や演出はリアリティがないとしらける。
 連続テレビ小説の視聴率は、数字と面白さが反比例する傾向がある。面白いと判断されれば、録画してじっくり見る視聴者が増えるからだ。録画するほどじゃないと判断されると、朝の慌ただしい時間帯に流し見され、数字は上がる。さて、今回は?
 

『梅ちゃん先生スペシャル』雑感

2012/10/26

『梅ちゃん先生~結婚できない男と女スペシャル』(NHK BSプレミアム)を見た。
 すでに終わっている本編?のほうは、最初から最後まで違和感だらけだったが、このスペシャル版はなぜかすんなり見られた。本編とは切り離されて放送されたので、時代背景などを意識しないで見られたからだろう。
 そもそも主人公の下村梅子(堀北真希)は昭和4年生まれという設定。今生きていれば83歳だ。戦争を経験した世代が、誘いを断るときに「大丈夫です」と言ったりはしない。そういう違和感が本編にはあちこちにあったのだが、スペシャル版では現代のドラマのように見ていた。だから違和感なく見られたのだ。
 脚本家は僕より5歳若いが50代。それでも、ドラマ職人としては、今風の恋愛ドラマを書きたかったのではないのか。
 それが、「震災復興プロジェクトの一環として位置づけ」とか、いろんな縛りを受けたせいもあって、あちこちに無理のあるドラマになっていた。最終回間際の中谷広志(戦災孤児から苦労して製薬会社の社員になった青年)のエピソードなどは、なんでこの時期にこれを突っ込むかなあと、本当に疑問だった。
 お役所的な縛り(連続テレビ小説とはこういうものだ的な)とトレンディドラマ的なものを取り入れたいという中途半端な色気の間で腰が据わらない。結果として、実にへんてこなものができあがってしまう。
 今の『純と愛』もそう。(純が住んでいるマンション、家賃いくらすんのよ……とかね)
 昔に比べて確実にアップしているのは役者の演技力。それを生かせる環境が整わないと、頑張っている役者たちも可哀想だ。

トトリとメンタリストの違い

2012/11/09

『メンタリスト』(CS スーパードラマチャンネル)シーズン3が終わり、次のシーズン4放送までしばらくは再放送期間に入った。シーズン3の最終回は録画を3回見て、最後のシーンは英語字幕版にして見直したりもした。見直すと、ああ、ここでこいつはちょっと目が泳いでいたんだな、とか、このシーンで後ろを横切っているピンぼけの人物がレッドジョン(主人公ジェーンの妻子を殺したサイコ殺人鬼)の手先だったんじゃないか? とか、いろいろ確認ポイントが見つかって何度でも楽しめる。
 さて、NHKで始まった土曜ドラマスペシャル『実験刑事トトリ』の第1回目を見た。
 最初から犯人が分かっていて、そのトリックを「変な刑事」が暴いていくという構成は、ピーター・フォークが演じてヒットしたかつての名シリーズ『刑事コロンボ』と同じ。相棒が若くて真面目な刑事というのは水谷豊主演でヒットした『相棒』シリーズなどと同じ。こうした手法は海外(特に英米)の刑事ドラマでは昔から使われている定石だが、日本の刑事ドラマはなぜか最後「人情もの」になる。犯人が家族を愛するあまり極悪人を殺すとか、ヒロイン的登場人物が愛する父親と実は血がつながっていなくて、実父が犯人だった……的な展開が多い。
 で、最後に登場人物(主人公 or 犯人自ら)が延々とそのいきさつをが語るというベタベタのパターン。『トトリ』もこの路線を踏襲するようだ。
 こういうんじゃなくても、人間の心の闇とか愛憎って、うまく埋め込めるのだけれどなあ。あ~『メンタリスト』シーズン4、早く始まらないかしら。


「第3極」をめぐる報道の公平性

2012/11/23

 衆議院が解散して年内に選挙。テレビの年末年始番組編成も大混乱。この号が出る頃はすでに公示され、各候補者が選挙戦の真っ最中のはずだ。
 日本は不思議な国で、選挙の前に候補者による公開討論会などが自由にできない。公職選挙法違反になるらしい。金のかからない選挙には欠かせないインターネットも、WEBサイトやツイッターなどを使った活動は違反になると解釈され、選挙期間中はサイトの更新やツイッターも自粛している政党、候補者が多い。実にナンセンス。
 一方で、テレビの報道は匙加減ひとつで視聴者に大きな影響を与えられる。例えば盛んに使われる「第3極」という言葉の本来の意味は「第3の勢力」。
 解散時の衆院議席数で言えば「第3極」(民主・自民2大政党に次ぐ勢力)は、47の議席数(全議員の1割)を持つ(11月21日時点)「国民の生活が第一」だ。しかし、マスコミが言う第3極は、絵的に使いやすいキャラクターである石原慎太郎氏、橋下徹氏が引っ張る日本維新の会に情報量が片寄っていて、多くの視聴者は「第3極=日本維新の会」と思いこんでいるのではないだろうか。ちなみに日本維新の会の衆院議員数は11名(11月21日時点)で、全議席数の2%にすぎない。
 よくも悪くも、報道量が多ければ国民の目はそこに向く。政策の中身よりドラマ性に期待する。危険な「第3極マジック」?
 具体的な政策についてのことは、このコラムでもいろいろな制約があるので書けない。ただ、問われているのは候補者の資質以上に、投票する側の資質と責任感なのだということだけは、はっきりと言っておきたい。

みうらじゅんの露出度と社会不安

2012/12/19

 最近、ほんの数日の間にみうらじゅんの冠番組?を3つ立て続けに見た。面白かった順に並べると、『みうら&リリーのうすくてゴメン 相談に答えてない番組』(テレビ東京)、『みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ』(CS・衛星劇場)、『みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショー12』(WOWOW)の3本。
 みうらじゅんといえば、肩まで伸びた長髪とサングラスで、放送コードぎりぎりの内容を訥々と喋る変なおじさんという認識をしている人が多いかと思うが、まあ、その通りだと思う。
 日本全体が右傾化して戦争のにおいがするとか、自由な表現を制限する法律がどんどんできてくるぞ、などというムードに包まれている今、テレビで(特に地上波で)みうらじゅんを見るとほっとする。みうらじゅんが出ているうちはまだ日本も大丈夫かしら、と思えるから。
 特に『うすくてゴメン』は、こんな面白い番組を地上波でやっていたのかと嬉しくなった。
 相手のリリー・フランキーも、この番組では実にのびのびと話している。最近では引っ込み思案な父親役みたいなのをやらされている映像でよく見るが、この人も本領はこれだよね~。
「70近い義父が恋をしているようだが、近所で噂になる前にやめさせたほうがいいか」という相談に、「この人は義父と何かあったんですかね」「義父と嫁は定番ですからね」などと、どんどん話がそっち方向に進む。
 ちなみにこの番組のスポンサーは「薄さ」で売っているコンドームの会社で、そのCMも秀逸。テレ東がこんな風に「健全」なうちは、まだ日本も大丈夫?


数字と確率で実感する「フクシマ」

数字と確率で実感する「フクシマ」

 (2013/05 Tanupack、99円)……もしもあのとき夜だったら? もしも北東の風が吹いていたら? もしも1週間早く起きていたら? ……シンプルな7つの「もしも」を想定して、「フクシマ」がこの程度の被害で済んでいるのは奇跡的な幸運に恵まれた結果だったということを検証。「一歩間違う」どころか、偶然に偶然が重なった結果の幸運だった!
 「フクシマ」を忘れようとする国、国民に向けて、スタート地点に戻って見つめ直そうという問いかけを分かりやすい確率論で展開。

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新・マリアの父親

新・マリアの父親

 (2013/01 Puboo、250円)……「フクシマ」を予言していたと言われる「20年早すぎた問題作」をデジタル版として改訂し、発表。たくきは福島県川内村で実際に原発人災を間近に体験したが、無力感に包まれ、20年前に書いた『マリアの父親』を読み返す気持ちにすらなれなかった。
避難体験から1年半以上経過し、古書が高額で売られていることを知り、原本を全ページスキャンすることから始めて、最低限の改訂を加えてデジタル版を作成。『新・マリアの父親』として発表。

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改訂新版 神の鑿

改訂新版『神の鑿』

(12/04 狛犬ネット 1000円税込)…… 江戸時代天保年間に福島に流れ着いた高遠石工から始まる天才石工三代記。小松利平、小松寅吉、小林和平の生涯と作品群を、豊富な画像とドラマチックなストーリーで解説。通算第6版は最終版のつもりで1000部製作。

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『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

(12/04 岩波ジュニア新書 820円+税)…… 大人にこそ読んでほしい、福島原発人災から1年を経過して分かったこと、今起きていること、これから先考えなければいけないこと。
第1章 あの日何が起きたのか
第2章 日本は放射能汚染国家になった
第3章 壊されたコミュニティ
第4章 原子力の正体
第5章 放射能より怖いもの
第6章 エネルギー問題の嘘と真実
第7章 3.11後の日本を生きる

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裸のフクシマ

『裸のフクシマ』

(11/10 講談社単行本 1600円+税)…… ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。
驚愕の事実とメディアが語ろうとしない本音の提言が満載。
第1章 「いちエフ」では実際に何が起きていたのか?
第2章 国も住民も認めたくない放射能汚染の現実
第3章 「フクシマ丸裸作戦」が始まった
第4章 「奇跡の村」川内村の人間模様
第5章 裸のフクシマ
かなり長いあとがき 『マリアの父親』と鐸木三郎兵衛

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