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 たくき よしみつの 『ちゃんと見てるよ リターンズ』

 (週刊テレビライフ連載 過去のコラムデータベース)

 2005年執筆分

爆笑オンバト最優秀新人は塚原愛?

 カンニング竹山が「お笑いブームなんてすぐに終わりますよ」と絶叫するわりには、この波はなかなか消えそうにない。
 今のブームを築くのに大きな役割を果たしたのが『爆笑オンエアバトル』(NHK)であることは異論のないところだろう。なにしろこの番組「前世紀」(1900年代)からやっているのだから。
 しかし、若手芸人と呼ばれる人たちにとって、今ではオンバトのプレミアム度は下がってしまった。順位をつけるなら、1位が『エンタの神様』(日テレ)で、その次が大きく水をあけられて『笑いの金メダル』(テレ朝)と『オンバト』だろうか。
『エンタ』は、当初の過剰ににぎやかな司会者席や余計な企画を廃し、ネタ見せに絞ったことで成功した。その逆で、『笑金』は芸人にカラオケを歌わせたり料理を作らせたりといった意味のないコーナーを増やし続け、中身がどんどん薄くなっている。新ネタ披露率も極端に低い。
『オンバト』も、歌ものと隔週になったときは、このまま消えていくかと思ったが、今はまた少し盛り返した感がある。
 5代目にして初めての女性司会者・塚原愛について、「あまりにも下手」などという酷評も目につくが、ぼくはそうは思わない。風貌からすると「ぎこちない岡部まり」という印象もあるけれど、「笑いを取る」ことに貪欲すぎる芸人たちの中にあって、あれだけ染まらず、ぽわわんとしていられるのはある意味すごい。『オンバト』新世代の中で、実はいちばんの成長株かもしれないよ。

(05/01/05 執筆)

複数の視点を持たない報道の危険性


 千葉市動物公園のレッサーパンダが「立ち上がる」というだけで、テレビが一斉に大騒ぎした。ワイドショーだけでなく、一般のニュース番組でも大きく紹介され、果てはこのパンダの名前(風太)を商標登録したり、テレビCMに起用したりという事態にまで至った。
 見かねた旭山動物園の副園長が、WEBサイトのトップにこのことへの警告文を掲載した。レッサーパンダは解剖学的に見て立ち上がるのは当然であり、芸でもなんでもない。動物園という「プロ」が、こんな間違った騒ぎに便乗していいのか、といった趣旨だ。
 たまたま旭山動物園が日本でもトップクラスの人気動物園であることや、この警告文を共同通信が全国配信したことで、この警告がようやく我々の目にとまるようになったわけだが、本来ならテレビ局の内部で「本当に報道する価値のあることなのか」「視聴者にうければなんでもありなのか」と自らに問いかけ、チェックすべきだった。
 大騒ぎした手前格好悪いからか、テレビでは「レッサーパンダは立ってあたりまえ」という検証あるいは反省報道はほとんど見られなかった。
 大袈裟に聞こえるかもしれないが、戦争が起きる前も同じなのだ。あらゆるメディアが、ひとつのことを検証もせず一斉に伝え始める。国際情勢がこれだけ複雑になり、緊迫している今こそ、テレビメディアの中に複数の視点を持ち、常に情報をチェックし続ける姿勢が求められている。それこそ、「風太くん」が教えてくれた教訓なのだが、伝わったのかなあ。
(05/01/19 執筆)

「月10万円で暮らせる」の豊かな可能性


 テレビ東京は他の民放地上波では思いつかなかったような視点で、今までいくつものユニークな新番組を誕生させてきた。
 長寿番組『開運!なんでも鑑定団』、旅番組はヤラセが当然という常識を覆した『田舎に泊まろう』、隠れたヒーローの熱い戦いを生みだした『TVチャンピオン』……。そして今、僕がいちばん注目しているのが『月10万円で豊かに暮らせる町&村』だ。
 毎月の基本生活費が10万円以内でも十分に楽しく豊かに暮らせる地方の生活を見直そうというコンセプト。僕自身、これを30代から実践している。最初に手に入れた越後の古家は、仕事場のある首都圏との二重生活をしながら少しずつ手入れし、ようやく完成と思ったときに、中越地震ですべてなくなってしまった。今はまた別の場所で再スタートをしたところだ。
 通信手段も交通手段も昔とは段違いによくなった現代では、地方で暮らすことの不便さは少ない。むしろ、豊かな自然に接しながら大らかな気持ちで暮らせる魅力のほうがはるかに大きい。
 そのことをこの番組は改めて教えてくれるが、やや美化しすぎという印象もある。田舎特有の旧態依然とした人間関係など、欠点も見せたらどうか。選挙公報もなく、札束が飛び交うしがらみ選挙とか、水争いなどという、都会では考えられない負の部分も存在する。
 また、番組も軌道に乗っているよう出し、そろそろ「月10万円」にこだわるのもやめたらどうか。もっともっと本音の情報がにじみ出てくる番組になることを期待している。

(05/02/02 執筆)

戦後60年番組なぜ地上波でやらない


 NHKラジオ第一でやっている「わたしの戦後60年/だからこそあなたに伝えたい言葉」はすばらしい。生の戦争体験を語れる人がどんどん亡くなっていく中、貴重な証言、遺言ともいえる、重く深い言葉が聞ける。
 これのテレビ版ともいえるのが「あの日昭和20年の記憶」(NHK衛星第2)である。毎朝6時50分から9分間(再放送は夕方6時50分)放送され、日曜日には1週間分まとめたものをBSハイビジョンでもやっている。
 しかし、この番組を知っている人がどれだけいるだろうか。私自身、TVライフ7/8号の1ページ費やした解説を見るまで気づかなかった。その解説は、4~6月までの3か月分の総集編をNHK総合でやるに際してのものだったが、予定されていた7月2日の同時間帯は野茂投手の特番に差し替えられていた。
 戦後60年だから何か特集を組まなくては……というお役所的義務感、動機ではなく、本当に「戦争体験者の生の声を伝えるのはもうこれが最後のチャンス」という覚悟があれば、地上波で流すべきだ。なぜできないのか。それこそがNHKの役割である。
 また、この9分番組だけでなく、ラジオ第一でやっている「わたしの戦後60年」のテレビ版もぜひテレビ地上波で再現してほしい。第6回の中村方子(まさこ)さん(生物学者)、第8回の中村文子(ふみこ)さん(「子どもたちにフィルムを通じて沖縄戦を伝える会」事務局長)など、すばらしい語り部をぜひゴールデンタイムのテレビに登場させてほしい。
 
(05/02/16 執筆)

「脱いで喋れる」この二人に微妙注目


 スカパーの「旅チャンネル」には、ときどき「なんだこりゃ?」と目が点になるキャラの女性が登場する。そんな中から厳選?の二人を紹介。
 まずは先日終わってしまったが『山崎まゆみの混浴秘湯めぐり』の案内役をやっていた「温泉ライター」山崎まゆみ。全国の混浴温泉で次々におっさんやじいさまと混浴しながら、冷静な温泉リポートを敢行。タオルは巻いているものの、混浴させられていたおっさん、じいさまたちはみんな一様に緊張気味。なんとも不思議な絵が面白かった。
 もうひとりは、『美女と湯めぐり』#41&42に出ていた中島京子。地方局の女子アナ風の風貌と語りで、シリーズの中でも異彩を放っていた。この番組はナレーションは別の裏方がやるのだが、中島の回だけは本人がナレーションもやっていた。それだけ彼女が「喋れる」ことの証明だろう。もちろん、入浴シーンでもタオルなしの全裸で湯加減などをリポート。
 ごくごくふつーのアナウンサー風の女性がすっぽんぽんになり冷静な口調で旅番組のリポートをする。実にシュール。
 ところが、彼女はAV界では有名な女優さんらしいと知って二度びっくり。これは、及川奈央が地上波に登場したときの驚きに近い。彼女のときも、このノーブルな顔立ちの女性は誰だろうとネット検索したら、AV関連のページがだだーっと出てきて驚いたものだ。
 山崎まゆみと中島京子は、これから年齢を重ねていくにつれ、地上波でも面白い番組が作れそうな気がする。テレビ東京さん、ぜひトライしてよ。
(05/03/03 執筆)

ビル・トッテン氏の「正論」に注目!


『ブロードキャスター』(TBS系)のコメンテーターとして出演しているビル・トッテン氏に注目している。ソフトウェア開発会社の(株)アシスト社長で日本生活30年以上。番組では、限られた時間の中で、極めて適確かつ厳しい言葉を発する。
 スペースシャトルの打ち上げ後に問題となった断熱材剥離に関しては「あいつら(NASAの技術者たち)はなんにも考えてない。何かに急かされたように動いているだけ」と言い放ち、日本の国連常任理事国入りに関しても「そんな意味のないことに執着せず、もっと自由に世界の国の中で調整役として動けば、自然と信頼される国になる」など、総合司会の福留功男がたじたじとなる正論を次々に決める。
 アメリカ人でありながら、「脱米国が世界安定の始まり」と言いきる。彼は自社のサイトで数百にわたるコラムを発表しているが、そこでは「米国の征服者たちは、戦争を始め、負けたその政府(旧日本政府)に、戦後も日本を統治し続けることを許した。その条件が『米国のために日本を統治する』こと、つまり米国の植民地として日本を支配する政府として政権につくことを許した」と、日本の論客でさえなかなか言えないことをきっぱり言いきっている。
 前任のジョージ・フィールズ氏とは段違いのクオリティに満ちた彼の発言を、もっと聞きたい。本当は『報道ステーション』(テレビ朝日系)で古舘伊知郎とタッグを組むとかしてほしいところだが、とりあえずは日本のメディアが彼を封印しないことを強く願う。
(05/03/16 執筆)

コメディUKに見る英日国民性の違い

 このところすっかりはまっているのが『コメディUK』(WOWOW毎週金曜深夜)。『The Office』というドラマと『ザ・スケッチショー』というショートコント連発番組の2本立て。今でも伝説となっている怪番組『モンティパイソン』を彷彿とさせる、英国流ユーモアを堪能できる至福の時間だ。
 後半の『スケッチショー』のほうが初心者向け。男3人女2人の出演者チームがさまざまなシチュエーションでショートコントを小気味よく連発。
 こういうのを見ると、イギリス文化の奥の深さを思い知らされる。日本で彼らに対抗できるのはラーメンズくらいだろう。
 問題は『The Office』のほう。紙を販売する会社の支社長と部下たちが職場で繰り広げるドラマとも言えないドラマ。スケッチショーのような正攻法ではなく、裏の裏を行くようなねちこいユーモアが売り。
 この番組は、英国だけでなく、アメリカやオーストラリアでも人気爆発で、世界60か国以上で放送され、ゴールデン・グローブ賞などの権威ある賞を総ナメにしたそうな。
 しかし、実際見てみると、最初は「これのどこがどう面白いの?」と戸惑う人も多いはずだ。
 英語のジョークを翻訳する難しさなどはあるけれど、「笑いの先進国」ではこうした「笑い」を楽しんでいるのである。
 かつてCSでやっていた『こちらホゲホゲ法律事務所』もはまったけど、『The Office』はさらに笑いの質が高度。グローバリゼーションなんて騒ぐ前に、これを見て「世界」を勉強しよう。
(05/03/31 執筆)

「古舘劇場」化した報道ステーション


 旧『ニュースステーション』に古舘伊知郎がゲストで出てきたとき、キャスターの久米宏とのやりとりを見て、僕はこのコラムで書いた。「古舘はポスト久米を意識している」と。その後、実際その通りになった。
『報道ステーション』がスタートした当時、古舘伊知郎はあちこちで酷評されていたが、僕は「予想以上にやるじゃん」「久米宏よりいいかも」と、密かにエールを送っていた。言っていることがまともだったから。
 しかし、最近は評価が変わった。彼の限界を感じたのは衆院選前の各党エース級議員討論での仕切りぶり。ひとりで熱くなって絶叫し、暴走する。おかげで議論は空転し、主役である議員たちの本音も引き出せずじまい。
 地味で実像が見えにくい小林興起氏(郵政民営化法案に反対し自民党を追われた)が、せっかく本音を語り始めたところ、「そんな馬鹿な話を国民が信じるはずはない」とひとりで声を荒らげてさえぎる一幕もあった。
 彼のトークショーも、内容とは関係なく、息苦しさを感じることがあるが、ワンマンショーならそれでもいい。しかし、ニュース番組のキャスターや討論会の仕切り役は、別の技量が求められる。
 それに対して、すっかり好々爺然としてキレを失ったかに見えて筑紫哲也は、党首討論会では落ち着きとゆとりが討論者たちの気持ちをリラックスさせ、本音や実像を引き出すことに成功していた。柔よく剛を制すか。
 それにしても、ニュースキャスターという仕事はつくづく難しいのだなあと痛感させられる。
(05/04/14 執筆)

日本の未来はテレビが作る!?

 自民党の「歴史的大勝」に終わった衆院選。事前予想の上限値をはるかに上回る小泉首相の「思うつぼ選挙」となった。自民党圧勝を実現したのは若い世代だという。
 選挙後、多くの人たちが指摘しているように、この結果を生んだのはメディア、特にテレビだろう。
 国の未来を決める大問題であるのに、やれ刺客だの、造反議員vsくノ一だのと、バラエティ番組を作るノリで、連日面白おかしく、勝手なドラマを作り上げた。
 例えば、田中真紀子候補者の映像は、ほとんどが小泉首相罵倒のシーンをつないでいる。軽はずみな言動をする彼女にも問題はあるが、そうした部分だけを編集でつないで視聴者に伝えるテレビの姿勢にも問題がある。彼女が国際問題などでまともなことを言っても、そうした真面目なコメントは一切カットされてしまう。生放送でそれを言っても、キャスターがさえぎり、「以上、真紀子節でした」などとまとめてしまう。
 すべてこのノリで、日本の将来をテレビが決めてしまっていいのか。少しでも責任を感じている番組関係者がいるなら、今からでもいい、ぜひ、選挙前に報道されなかった部分を伝えてほしい。
 落選した小林興起氏や城内実氏の言い分を、今からでもいい、じっくり聞かせてほしい。城内氏などは「私は郵政民営化法案をなまじ勉強してしまったから反対せざるをえなくなってしまった。中身を知らなければ賛成していたに違いない」と言っている。どの部分を「知ってしまった」から反対せざるをえなかったのかを聞きたい。敗者の声にこそ、重要な情報があるかもしれない。
 敗者の惨めさを伝えるのではなく、彼らが言いたかったことをきちんと伝えるのだ。十分面白いドキュメンタリー番組になるだろう。
 
  (05/04/21 執筆)

民放BSデジタル過渡的救済策

 本誌の読者で、民放のデジタルBSを見ている人がどれだけいるだろうか。
 地上波放送がデジタル化を無理矢理進めている今、BSデジタルチューナーをわざわざ買う気がしない。デジタルWOWOWの視聴料は月額2415円もするから契約していない。結果として、無料で見られるにも関わらず、民放のBSデジタルは見たことがない……という人が多いのではないかと思う。
 視聴者が少ないため、民放各局もBSデジタルにはまったく力を入れていない。見たいと思える番組がないから、ますます視聴者からそっぽを向かれる。
 予算が取れないのであれば、過去の番組をズラッと並べ、一種の「アーカイブチャンネル」化したらどうか。CSでは民放制作の過去のドラマやバラエティなどがかなり流れている。『ウゴウゴルーガ』や『 オレたちひょうきん族』(フジテレビ721)は今見ても面白い。
 先日、スカパーのファミリーチャンネルで『コント赤信号のピンク色のメイドさん』という、大昔のコメディドラマ(30分×4回)をやっていた。腋毛と「ございます」言葉で一世を風靡?したインテリAV女優・黒木香(読者の何%が分かるかなあ)と、今では3人一緒に揃うことは滅多になくなったコント赤信号が主演。しょーもない企画倒れドラマだが、今見ると、まったく別の楽しみ方ができる。なんと、89年TBSの制作。
「今見るともっと楽しい」過去の番組を並べるだけで、民放BSデジタルは「一時的」にでも存在意義を持てるかもしれない。
 それにしても、黒木香はどうしているんだろう。一時、自殺未遂なんて報じられていたけど。

(05/05/11 執筆)

『プロジェクトX』終了後はこれ

 NHKの人気番組『プロジェクトX』が、来春に終了するらしい。2000年3月にスタートだから、6年間続いたことになる。今も人気はあるのだろうが、最近は「過剰演出」「無理矢理感動ドラマに仕立てている」という声もあった。
『X』がおかしくなっていったのは、ある意味「民放的」になりすぎたからだ。番組のコンセプトが間違っていたわけではない。それならば、『X』の後を受けるべき番組は、ドラマチックな演出を廃して、生の人間像や意外な事実を見せる「知的興奮」を追求する路線だ。
 うってつけのサンプルがすでにある。この夏にNHK教育でやっていた『知るを楽しむ この人この世界 日本一多くの木を植えた男 宮脇昭』だ。
 8回に分けて放送されたこのシリーズは『プロジェクトX』などよりはるかに面白く、興奮させられた。
 宮脇氏は植物学者で、横浜国大名誉教授。しかし、長靴に麦わら帽子というスタイルで登場すると、偏屈な植木屋のおっさんにしか見えない。眼光鋭い表情で「そんなのはにせものの森だ。抜いてしまえ」「本物の森を作らなければダメだ」と迫る。
 彼の半生記も実にドラマチック。日本中を無銭旅行に近い形で回って、列島の「潜在自然植生」(人の手が入らないとその土地はどんな植物で覆われるか)の調査を続けたという。
 これが『プロジェクトX』の枠で流れたら、どんなに反響があっただろうか。残念。
 こうした題材、人材はまだまだあるはず。ぜひ来年からはNHK総合にこの路線の番組を登場させ、日本人の知性と教養を向上させる方向に進んでほしい。
(05/05/26 執筆)

TBSも吉本も時代に逆行だよ

 ホリエモンvsフジテレビの後は楽天vsTBSだって? 創造性を伴わない金だけの話にはうんざりだ。そもそも、民放キー局各社は一種の独占企業になっているためか、経営者は放送メディアとしての志を忘れ、時代のニーズを読み取れていない。
 例えば、現在CSのスカパーには、フジテレビ721&739とTBSチャンネルという民放キー局が運営するチャンネルがある。フジが2チャンネルともベーシックパックという基本パックに入れて開放しているのに対し、TBSチャンネルは共通パックには入っておらず、単独で月額630円(税込)を払わなければならない。ベーシックパックオールという総合パックセットの料金は月額5985円(税込)もするが、これに入ってもTBSチャンネルは見られないのだ。
 それを真似たのか、ヨシモトファンダンゴTVが、今まではオレンジパックに入っていたのが抜けてしまい、12月からはパック料金では見られなくなった。しかも、単独契約料も、従来の月額525円から一気に1300円(税込)に値上げである。
 TBSチャンネルの内容はほとんどが過去の番組の再放送。ヨシモト~は未熟な芸人が馬鹿騒ぎしているだけ。高く売ろうとはおこがましい。ネット時代に逆行する後ろ向き戦略!
 ついでにいえば、CSのペイパービュー番組も、最低でも1本210円というのはぼりすぎ。これを50円に下げれば、視聴数は10倍以上になるだろうに。
 放送企業の経営者たちは、まともな金銭感覚をなくしている。きっと100円ショップにも行ったことがないんだろう。おごれるものは久しからず、だよ!
(05/06/11 執筆)

「視聴者教育」を民放がやると…

 国文太一(TOKIO)と井ノ原快彦(V6)が進行役をつとめる『R30』(TBS)という深夜番組で「靖国問題」を取り上げていた。へええ、と、ついつい最後まで見てしまった。
 この番組、「オーバー30のための人生情報バラエティ」というコンセプトで、スローガンは「信頼できる人が持っている情報にこそ価値がある」だそうだ。
 この日は、評論家・宮崎哲弥氏が靖国問題を解説した。宮崎氏といえば、『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)などの討論番組の常連で、横柄&辛口を売りにしているが、ジャニーズタレントを前に、まるで『週刊こどもニュース』(NHK)のお父さん役のように穏和なキャラに大変身していた。おやまあ。
 解説の中身はよくまとまっていたと思う。しかし、それだけでは終わらない。授業を受けた国文、井ノ原のいずれか(クジで負けたほう)が、若い女の子たちの前で「受け売り講義」をして、その出来を採点するというゲーム仕立てになっているところが民放番組の哀しさ。
 これがあるために、時間配分もとてももったいないことになっている。バラエティ風に演出しなければ不安だというなら、もっと別の趣向があるだろうに、惜しいなあ。
 こうした番組は、もっと増えてほしい。だから、くだらない!と一喝するだけですませたくない。なんとかもう少し頑張って、大人もそれなりに楽しめるレベルに持っていってほしいのだ。
「信頼できる人が持っている情報にこそ価値がある」というなら、その価値ある情報をきちんと伝える工夫をしてみようよ。うまくいけば、後に続く番組も出てくるかもしれない。
(05/06/23 執筆)

お笑い芸人たちの音楽通信簿

 私の本職?は作曲である。キャリアは小説家より長い。20代でビクターからレコードデビューしたこともある。だから、テレビを見ていても、すぐに音楽のことが気になってしまう。
 今週は、そんなたくきが独断で切る、ちとマニアックな、お笑い芸人たちの音楽通信簿を。
●オリエンタルラジオ
 向かって左が中田敦彦、右が藤森慎吾。ダンスのリズム感は中田。歌の音程は藤森。途中の♪意味はないけれど~♪のハモりは、合っているのかいないのかビミョーな感じだが、よく聴くと、藤森が高音部をしっかり歌っているからもっている。しんちゃん、ナイスサポート!
●波田陽区
 デビュー当時からモーリスのフォークギターを弾いているが、ある時期から高いモデルになって音がよくなった(多分、メーカー提供)。あのコード、Am7に小指でときどきGをベース音で入れているだけだが、親指の腹で弾いているところが渋い。
●テツ&トモ
 二人とも演歌歌手志望だけあって声量がウリだが、歌はテツ(ギターを弾いていないほう)のほうがうまい。トモのギターはいつまで経っても上達せず。
●はなわ
 ベースで歌うという異様さが当初から注目されているが、実は彼のいちばんの能力は作曲。作るメロディーをテツトモと比べれば一目瞭然。お笑い界一のメロディメイカーだと思う。ベースも少しずつうまくなっているが、ピック弾きをやめて指弾き、チョッパーなんかも入れられれば本物の「ベース芸人」だ。
●友近
 歌は「普通に下手」。もっと本来のネタに集中せよ。
  (05/07/05 執筆)

エイトマン主題歌復活を言祝ぐ

 このところテレビで盛んに流れているNTTの光高速回線のCMで、スマップが歌っている曲。♪光る海、光る大空、光る大地 ゆこう無限の地平線~♪
 本誌読者の大半は、あのCMで初めて耳にしたかもしれない。本来あの歌詞は「走れエイトマン、弾よりも速く~」と続く。
 エイトマンは1963年から週刊少年マガジンに連載され、後にTBSでアニメ化され人気が爆発した。原作は平井和正。作画は桑田次郎。アニメのシナリオ作家陣には、平井和正をはじめ、半村良、豊田有恒ら、そうそうたる名前が並んでいた。
 オープニングはこうだ。
「警視庁捜査一課の刑事は全部で49人。7人ずつ7つの班に分かれている。私はそのどれにも属さない、8番目の刑事エイトマンである。ロボットになった今でも、エイトマンは、優秀な警視庁の刑事なのだ……」
 え? ロボコップそっくりじゃんと思うだろうが、もちろんこっちのほうがずっと古い。
 エイトマンは「暗いアニメ」としてPTAには評判が悪かった。煙草型の「電子頭脳強化剤」を1日4本吸わないと「熱暴走」したり弱体化するというすごい設定。子供たちはこれを真似して、ココアシガレットなるお菓子を買い求めたものだ。
 エイトマンには不幸な出来事がつきまとう。作者の桑田次郎は拳銃不法所持で逮捕され、連載は急遽終了。主題歌を歌っていたスター歌手・克美茂は、その後愛人を殺害し、世を騒然とさせた。しかしテーマソングの秀逸なメロディは生きていた。それが今復活して、喜んでいる人は多いに違いない。再びメロディの時代、ストーリーの時代が来る前兆となればいいのだが。
(05/07/20 執筆)

戌年に狛犬はブレイクするか?

 今年はいぬ年である。いぬといえば、もちろん「こまいぬ」!(ん? 異議あり? 却下!)
 私は全国の狛犬の写真を撮り続けて早四半世紀。25年も続いている趣味は狛犬だけである。
 去年の秋は『狛犬かがみ』という本がバナナブックスというところから出るはずだったのだが、無念にも越年。出すなら狛犬が「旬」の今なんだけどなあ。
 先日、『熱中時間』(NHKBS)から狛犬の企画の打診があった。宮崎駿監督の師匠として知られるアニメ映画界の重鎮・大塚康生さんは狛犬仲間なのだが、大塚さんとたくきが狛犬巡りをする内容を打診したら、しっかり断られた。まあ、あの番組は撮影時間が半端じゃなさそうだから、ボツになってほっとしたのが正直なところ。でも、一度そんな番組をやってみたいという気持ちはある。
 CSに『みうらじゅん・いとうせいこうのTV見仏記』という仏像を観て回る番組があるが、絵的に面白いのは仏像より狛犬。もう、問題にならないくらい狛犬の圧勝。どこかで、あの番組の上を行くマニア企画として『大塚康生・たくき よしみつのこまいぬくんこんにちは』なんて番組、やらないかしら。キー局のゴールデンなんて贅沢は申しません。BS民放でもCSでもいいよ。地方局なら福島がいいな。名品が多いし、準地元だからね。
 いや、冗談抜きに、ヒット現象なんてどこからどう転がり出すか分からない。殺伐としたご時世だからこそ、個性豊かな狛犬の顔を眺めて感心したりなごんだりする。いいじゃないの。2006年戌年。狛犬が小ブレイク…と大胆?予言しておこう。
(05/08/01 執筆)

マクモニーグルと細木数子の相違点

 天災や凶悪犯罪の報道が続く昨今、人々は無意識のうちにテレビに現実逃避を求めるようになる。
 現実味の薄い韓国製恋愛ドラマ、超一流の奇術、お笑い……。そんな中、このところの細木数子再ブームは興味深い。
 かつての細木ブームは、純粋に「細木の占星術は当たる」という評価に裏付けされたブームだった。しかし、今の彼女は、保守思考のおばさんが傍若無人に毒舌を吐くというキャラクターとして利用されている。デビ夫人や以前の野村左知代に近い。自信や指針を持てない人たちに「あれだけ図太く生きられたらすごいよね」と思われるキャラ。
 これに対して、超能力者ジョン・マクモニーグルの「透視術」は、思想や人間臭さとは無縁で、徹底的に「非現実」「超常世界」を打ち出すことで成功している。
 なんの手がかりも必要とせず、「対象」となる人物の現在の居場所や境遇を透視するなどということは、もちろん普通に考えればありえない。その「対象」も、モザイクだらけで、公には検証できない人たちばかり。唯一のまともな可能性は、番組まるごとヤラセということだが、あそこまで大胆不敵にヤラセをやれるものだろうか、と、一般視聴者は当惑する。
 人間的になりすぎて予言者としてのカリスマを失い、キャラクタータレントになった細木数子と、個性を殺すことで超能力者としてのリアリティをあげることに成功しているマクモニーグル。好き嫌いや議論はいろいろあるだろうが、どちらも今のテレビが求めている人材には間違いない。
(05/08/18 執筆)

ノロウイルス報道における「タブー」

 昨年末、牡蠣を食べてひどい食中毒になった。生食用の高級品だったが、あたるのが怖くてフライパンで炒めて食べた。それでもあたるときはあたるらしい。潜伏期間中に立て続けに2回目を食べたため、発症して1週間、たっぷり苦しんだ。病院での細菌検査は陰性。間違いなくウイルス性のものだ。地震といい、昨年は「当たり年」だった。
 WEBで「牡蠣 食中毒」というキーワードで調べ、勉強した。ウイルスの名前はノロウイルス。冬場に感染が多いという。
 患者の実体験談が掲載されたサイトもあり、牡蠣フライや牡蠣鍋など、加熱調理したのにあたったという人の報告も多かった。熱の通りが不完全だとダメらしい。
 年が明けてしばらくしたら、広島県の老人養護施設を皮切りに、次から次へとノロウイルス感染のニュースが報じられ、死者も二桁にのぼった。
 しかし、テレビでも新聞でも決して「牡蠣」とは言わない。言っても「二枚貝などに……」どまり。まるでノロウイルスが単独で地上にはびこっているかのようだ。
 感染者の便や嘔吐物から二次感染するのは確かだろうが、最初の感染者は「何か」を食べて感染しているわけで、産業保護もここまでくるとさすがに不自然さを感じる。
 潜伏期間が24~48時間あるので、「食べ物」が原因だと気づかず、風邪と間違えている人も多い。実際の感染者数は相当なものだろう。
 まあ、ノロウイルス感染では人は滅多に死なない。そのことも含め、一度は実体験して学ぶしかないのだろうか?
(05/08/31 執筆)

Wコージのままで別にいいじゃない

 島田紳助「司会者」(ニュースでこの呼称を初めて耳にしたときは「メンバー」や「幹部」以上にのけぞったが)が戻ってきた。
 紳助司会者の謹慎中、彼がレギュラー出演していた膨大な番組の多くで、今田耕司、東野幸治という二人の「コージ」が代役を務めていた。その代役初日の「儀式」は実にあっさりしていたが、再び司会者が元に戻るときはもっとあっさりしていた。収録タイミングの問題もあっただろうが、「今週で今田耕司さんの司会は終わりで、来週から紳助さんに戻ります」という断りもなければ、紳助司会者復帰後初回冒頭でも、それまでの「代役」の名前を挙げての挨拶みたいなものはあまりなかったように思う。
 二人のコージ、特に今田耕司の代役ぶりは見事で、単なる代役を超えて違和感がなかった。司会者としてのツッコミ芸風は紳助風ではあるが、紳助より柔らかい。その分、楽に見ていられた。復帰直後の紳助司会者に必死さが見て取れたため、あのまま今田耕司でもよかったかな、と思った人も少なくなかったのでは?
 あれほど盤石に見えていた島田紳助司会王国も、実は極めて微妙なバランスの上に築き上げられていたということにも改めて気づかされた。毒舌芸は、発する人間の人間性に安心感がなければ成立しにくいということだ。
 そのことを、やがてテレビ界は痛感するかもしれない。そのとき、今田耕司司会大帝国が誕生しているのではないか。同じ吉本だから、吉本王国が続くことに変わりはなさそうだけど……。
(05/09/14 執筆)

そのワイドテレビは本当にワイド?

 昨年末、テレビを買った。小型の液晶テレビで、チューナー部分が別になっているワイヤレスタイプ。画面は普通の4対3。解像度も低いが、テレビ本体に電源コードしかついていないのはとても気分がいい。ハードディスクレコーダーや衛星チューナーなどはまとめて隣の部屋の隅に置いて、テレビ本体は食卓の上にのせて見ている。間近で見るので、画面が小さいことは気にならない。
 その際に現在売られているテレビについていろいろ調べてみたのだが、「薄型ワイドテレビ」として売られているテレビには、画面が本来の16対9ではなく15対9しかないものがかなりあることを知って驚いた。お宅の「ワイドテレビ」は本当に16対9の画面比を持っているだろうか?
 仕様表で、画面のドット数が1366×768とあるものは確かに16対9になるが、1280×768というモデルが結構ある。横幅1280ドットというのは、パソコン用の高解像度モニターの横幅と同じ解像度なので、パネルの切り分けに都合がいいのだろう。
 しかし、これは割り算してみれば分かるとおり、15対9にしかならない。16対9の映像を映す場合、両端を少し切り落とす、横だけ縮める、あるいは横の解像度を落として表示するしかない。
 また、1366×768ドットでも、本来のハイビジョン映像の高解像度には不十分なため、画素を間引いて表示している。やはり、本来ハイビジョンというのは相当な大型ディスプレイを要求する代物なのだ。少なくともあたしゃいらんな。
(05/09/28 執筆)

「芸能界暴露型バラエティ」の末期

「先週の当番組で未成年のタレントの不法行為を取り上げるという不適切な放送がありました。視聴者及び関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」……こんなテロップを冒頭に流す羽目になった某番組。しかし、この事件のだいぶ前から、バラエティ番組では芸能人の「人に言えない」面を暴露することが娯楽の要素であるという風潮がはびこっていた。
 今をときめくお笑いタレントたちも「芸人仲間の××の財布から2万円抜いたことがある」「△▽の家に行くたびに何か盗んでくるんだけど、あいつは馬鹿だからいまだに気づいてない」なんてことを平気で喋る。
 そういう場面が日常化してきて、番組制作者もタレントたちも(そして視聴者も)感覚が麻痺してしまった。この勘違いこそが恐ろしい。実際、冒頭の文面も「視聴者及び関係者の皆様にご迷惑」ってのがピント外れだし、他局ではこの事件後も「この番組は○月○日に収録したものです」というテロップを一瞬出しただけで、当人を平気で登場させていた。要するにいまだにズレたまま。
 どこかに救いはあるか?
 最近ちょっと面白かったのは、芸能界××王決定戦という企画で、天地真理と漫才のかつみ・さゆりのさゆりがピアノ演奏の腕を競った場面。あのボヨヨ~ンのさゆりが盛装して「オリジナル」やクラシック曲を結構上手に弾いたのには驚いた。タレントの「意外な一面」を見せるなら、やはりタレント(才能)を見せてくれないと。「カラオケ王」なんかじゃダメよ。
(05/10/12 執筆)

タレントに頼らないバラエティ番組

 前回、タレントの「暴露型バラエティ」に対する苦言を呈したが、今のバラエティ番組は企画が中途半端なまま、タレントのお喋りやリアクションに頼りすぎている。
 例えば『デッドエイジ』(フジテレビ系)。企画の趣旨はそれなりに面白いのだが、スタジオ部分は不要。『TVのチカラ』(テレ朝系)。これもスタジオでのタレントの喋りは邪魔なだけ。本編の質に自信がないからタレントにリアクションさせてごまかそうとする。
 いくつか実際に番組企画を出してみたい。
●どっちがうまいでショー……コンビニの惣菜を高級な器に盛って高級料亭で出す。リポーター役の料理評論家、一流タレント、財界人などの反応を楽しむ。このパターンで、一流シェフといなかのおばあちゃんの料理対決とか、中華の達人のフランス料理vsフランス料理シェフの中華料理対決とか、いろいろできそう。
●ザ・対決~あんなやつには負けられん……引退したプロ選手と現役アマ選手の対決。プロの女子選手とアマチュア男子選手の対決。50代男子選手と現役女子選手の対決。松岡修造はシャラポアに勝てるのか? 誰もが興味津々。間違いない。
●あなたもライブドア……フジテレビがニッポン放送を元気にさせる案をテレビで公募。実際にラジオの1時間枠を提供して優秀企画番組を放送し、その制作過程や反響をテレビで報告する。
 視聴者に支持される番組作りとは何か? ホリエモンにガツンと言うためには、この程度の知恵と工夫はすぐに実行に移せなくちゃね。
(05/10/26 執筆)

「どっきり」番組を殺したのは誰だ!?

 4月の番組改編期。例によって芸能人がさまざまないたずらネタでだまされる企画が目立った。
 どっきりカメラ的企画そのものは、ちゃんと作り込めば面白い。でも、今の地上波民放で、本当にタレントをだましている「どっきり」がどれだけあるのだろう。
 いちばんしらけるのは、だまされ役のタレントが誰もいない部屋で「あれぇ?」「かんべんしてくれよぉ」などとひとりごとを言うシーン。せっかくそこまで面白く見ていたのに、「なんだ、ヤラセか」としらける。あまりの不自然さに、もしかしてこの部分だけあとから編集で付け足したのかなどと疑ってしまう。
「は~いOKで~す。××ちゃん、最後のリアクション最高! でも、そこまでの、さっきのひとりで部屋にいるシーンがちょっと寂しかったから、あそこだけ撮り直しさせてもらえる? 表情とぼしかったから、もっと不安な感じ出してみて」
 ……なんて演出があったりして? 視聴者もだますなら、最後までしっかりだましてほしい。
 だましの面白さをシンプルに引き出しているのは『オオカミ少年』(TBS系)かもしれない。ああいう知的なだましこそが基本で、練り上げればもっと面白くなる。
 逆に、お笑い芸人を危険な目にあわせたり、過酷なことをさせたりして笑うというイジメ方向の企画は、笑いの質を低下させるばかりか、この国の文化度も下げている。取り返しのつかない事故やつまらぬ事件などが起きないうちに、番組製作者は考え方を根本から変えたほうがいい。
(05/11/09 執筆)

「超能力番組」はとてもむずかしい

 こういう不安なご時世だと、テレビに現実離れした世界を求めたくなるのは自然なこと。
「地球の裏側を見る男」ジョー・マクモニーグルはすっかり日テレの顔になった感がある。しかし「超能力番組」にはテレビ局側の強い自主規制が感じられて、いつも消化不良感が残ってしまう。
 例えば、4月10日放送の特番ではマクモニーグルが「北朝鮮拉致被害者の行方を追う」という触れ込みだったが、「透視結果」は、行方不明の女性は北朝鮮ではなく神戸にいるというもの。しかも見つからなかった。
 マクモニーグルの今までの「透視」が全部本当なら、なぜ横田めぐみさんら、北朝鮮拉致被害者の現在を透視させないのか、と視聴者なら誰もが思うはず。でも、それはやらない。
 テレ朝では、ロシアの13歳超能力少女・ヤーナというのを登場させた。
 最近ではワイドショーなどにも出ずっぱりの杏林大学佐藤喜宣教授がロシアに行って、超能力を検証するというシーンもあったが、どうにも食いたらない。テレ朝で超能力といったら早稲田の大槻義彦教授。いっそ大槻教授を連れて行けば断然面白いと思うのだが、それはやらない。
 こういう見えない自主規制を感じながら見ているうちに、いつしか視聴者側にも「やっぱりそこまではできないよな」というあきらめというか、物分かりのよさが芽生えてくるのだろう。
 あまりマジにやるとカルト事件まがいのことに発展したりするし、ああ、これが超能力番組の限界なのかなぁ。むずむず。
(05/11/23 執筆)

「報道バラエティ」番組の傍若無人

 先日、滋賀県大津市の4つの神社本殿内から木製の狛犬が盗まれるという事件があった。神社から仏像などの美術品が盗まれることはそんなに珍しいことではないが、大手の新聞が「誰がなぜ?」という見出しをつけたせいか、僕のもとにまでテレビ局の番組制作者らしい人物から問い合わせメールが来た。「狛犬コレクター」のような人物を知っていたら紹介してくれという。無視した。
 僕のところには一件だったが、日本参道狛犬研究会事務局には全部で10社のテレビ、新聞から問い合わせがきたそうだ。
「"狛犬会員"は何人いるか」「会員の中にマニアっぽい人は何人いるか」「新聞の記事に書かれていた狛犬の値段は相応だと思うか」「盗まれた狛犬はネットオークションに出したらどのくらいに値段がつくか」
 事務局長のMさんは極めて温厚な人柄で会員の信頼も厚いが、怒ってこう答えたという。
「あなたは何のために大学で勉強したのですか? ものごとを金とヨタ番組仕立でしか考えられないのですか?」
 しかし考えてみれば、テレビ番組をここまで貶めてしまったのは他ならぬ視聴者でもある。
「そんなバカなことに夢中になっているやつがいるの?」「売ったらいくらになるの?」「どうやったらうまく儲けられるの?」……興味の中心がそうした下卑た次元に留まっていて、文化を楽しむだけの心のゆとりや教養がない。テレビに求める情報の質が低下すれば、情報番組と名乗っても、中身がどんどん腐っていくのは必然なのだろうな。
 
(05/12/06 執筆)

テレビと新聞における漢字の扱い方

 最近、某新聞社に提出した原稿で、「梱包の『梱』という字はうちでは使えない字です」と言われ、驚いた。
 新聞では、常用漢字(一般に使われる漢字1945字を定めたもの)に新聞協会が数十字を加えた2000文字少々ですべての記事を書くという決まりがあるそうだ。もちろん、それでは困ることが多々ある。
 例えば、嵐・誰・謎・鍋……などの字は常用漢字に含まれていない。つまり、常用漢字だけで文章を書こうとすると「春の嵐」とか「謎マネー」なんていう言葉も使えない。これでは不自由だというので、新聞協会でも、誰もが読めるであろう文字を数十字、独自に追加したらしい。
 一方、新聞よりはるかに多くの人が目にするのがテレビのテロップ。多分、テロップでも常用漢字以外の漢字は排除されているのだろうが、それよりも気になるのは、「よい」を「良い」、「なる」を「成る」と書くなど、現代の印刷物ではまずひらがなで書く言葉を漢字まじりに表記していることだ。多分テロップを生成する「テロッパ」という機械に付属している漢字変換ソフトに問題があるのだろう。昔のワープロ専用機にはこうした「過剰な漢字変換」をするものが多かった。
 テレビや新聞という巨大メディアが間に入ると、誰かが決めたこと、どこかで開発した一ソフトが、日本という国の漢字文化や日本人の国語力を決めてしまうのだなぁ。
 そんなことを考えながらテロップを見てれば、多少は脳の刺激になるかもしれない。
 
(05/12/16 執筆)
■以上が2005年の『ちゃんと見てるよ』 です。
 この年は、前年に中越地震が起きて12年かけて改築していた越後の家を失い、福島県の川内村に新天地を求めて移った年でした。

 ここに収録したのは提出原稿の控えで、最終稿では一部訂正が加えられている場合が多いです。
 縦書き原稿のため、二桁算用数字は半角、その他の数字やアルファベットは全角になっていて、横表示にすると若干読みづらいですが、ご容赦を。



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