阿武隈日記 06/05/07の4

PENTAX Optio X を買ってみた(承前

SONY U50PENTAX Optio X
別のサンプルでさらに比較してみた。この程度だとあんまり変わらないかな。
SONY U50PENTAX Optio X
上左はトリミングで実質拡大、右はウルトラマクロモードで撮影
SONY U50PENTAX Optio X
これもまあ、色味が違う程度で、極端な差は出ていないかもしれない。SONYの明るい色味のほうが、日記などには分かりやすくていい、という言い方もできそうだし。
まだ触ってみたばかりの第一印象しかないのだが、 Optio X と比較してみて、むしろU50の使いやすさを改めて認識させられた気もする。ただ、レンズ性能の点で、 Optio X のほうが上であることは間違いないので、いろんな場面で欲を出したときは便利に使えることは確か。外出時、1台しか持っていけないとしたらどっちを選ぶか……難しい判断だなあ。U50の軽さと簡単さは、ほんと、なにものにも替えがたいという気がする。
それにしてもSONYもUシリーズをやめてしまって、つまらんTシリーズを売りまくっているし、本当に使いやすいコンパクトデジカメが皆無というのはどういうことなのだろうか。
デジカメは新製品のほうが高性能なのはあたりまえなので、今までなら慌てて買う必要はさらさらなかった。ところがここにきて、「まともな新製品」が出なくなってきた。
SONYはF828を最後に、明るいレンズを搭載し、レンズが回転するモデルの発売をやめてしまった。F828は一時期7万円台まで値崩れしていたのが、製造中止が決まってからは一気に12万円台まで値を戻してしまった。今はもう新品で入手することは極めて難しい。
新製品ではレンズが暗くなり、回転もしない。F707からの美点を全部捨ててしまってどうするつもりなのだろうか。
F828の後継機種に期待して買うのを躊躇していたのだが、こうなると中古でF828を安く手に入れられるときに手に入れておいたほうがいいかもしれない。
U50に代わる機種も出てこない。Uシリーズはなくなり、薄型お洒落モデルのTシリーズに力を入れているが、Tシリーズは使いにくくて魅力を感じない。実際、借りて使ってみた印象は「レンズが暗すぎて室内では使い物にならん」というもの。
OlympusはかつてC2000という名機を発売し、一世を風靡したが、C2040をピークにどんどんレンズが暗くなっていってしまった。開発・生産も他社に任せる部分が大きくなり、コンパクトデジカメに対する情熱がすっかり失せてしまったのではないかという気がする。
僕はC2000を長い間ほしくてたまらず、8万円も出して購入した1週間後に後継機種が発表されて一気に2万円も値を下げたという苦い経験を持っている。それでもC2000は「デジカメではろくな写真が撮れない」というそれまでの常識を覆す画期的なカメラだったことは間違いない。あれで撮った写真は今でも十分に商用に耐える。
長く使っていたC2000は親にあげてしまったのだが、その後、デジカメ史上最も明るいレンズをもったモデルであるC2040を中古で購入した。実際に使うことはないが「記念碑」的存在として持っておきたかったのである。それほどの購買意欲をかきたてたかつてのCシリーズはどこへ行ってしまったのだろうか。
Canonはおそらくデジカメメーカーではもっとも売れていると思うが、デジタル一眼のEOS以外には魅力を感じる機種がない。レンズは回転しないし、明るくもない。似たような機種が他社にもある……というモデルばかり。実際この業界はサンヨーなどのOEMが多いわけで、結果、当然そうなってしまうのだろうが。
Canonは収益率最重視の賢い企業のようだから、これから先も、本質を問いなおすような志のあるコンパクトデジカメが出てくるとはあまり思えない。

NIKONも、コンパクトデジカメからは事実上手を引いている感がある。理念も情熱も感じられない。アナログカメラから事実上撤退するというのは、ある意味仕方がないのかもしれないと思う。カメラマニアには衝撃的だろうが、これからは銀塩写真というのは、よりマニアックな、特別な世界になっていくことは避けられない。
しかし、それならデジタルカメラの世界で、もっと独自の主張をしたらどうなのか。

コニカミノルタはレンズを自社生産できる数少ないメーカーで、面白い存在だったが、A200の改良をすることなくカメラビジネス全体から撤退するという衝撃的な結末を迎えた。SONYと提携した後も、一眼レフ以外の製品でイニシアティブを取ることはないだろう。コニミノのレンズとSONYのデジタル技術がうまく合体し、その上で本当に「いいカメラ」を世の中に問い直すような気概が社内で発露されたら、とても魅力的なデジカメが生まれる可能性もあるのだが。
考えてみると、U50、F707、A200……と、今僕が日常で使っているデジカメはSONYとコニミノばかり。「明るいレンズで回転する」を条件にしていくとこれしか残らなかったということなのだが。

京セラは面白いデジカメを作っていたが、はやばやとカメラ戦線から消えてしまった。

フジは「これじゃなきゃダメ」というモデルが見つからない。
カシオはカメラ文化を覆す方向がもともとの社風だろうから、携帯電話機やメモリメディアプレイヤーとの境界線をなくしていく路線で活躍していけばいいし、それをどうこういうつもりはまったくない。ただ、カメラとしての本質を問うモデルが今後カシオから出てくるとも思えない。

そんなわけで、レンズを自社生産できるPentaxには、最後の(一縷の)望みをつないでいるのだが、いいカメラを開発し続けるのは難しいだろう。技術的なことではない。単純にお金の問題としてだ。
僕が今回 Optio X を買ったのは、Pentaxには、 Optio X を改良して、よりよいカメラにするだけの余力(精神的余裕)がもう残っていないのではないかと思ったからだ。おそらくU50と同じで、これを最後に製造ラインから消え、今後しばらくは「レンズが回転する、明るいレンズ搭載の軽量コンパクトモデル」は出てこないのではないだろうか。
薄型の外観と「画素数」の数字だけに振り回され、実際には使いづらいデジカメが売れ続ける限り、いいカメラは生まれてこない。
Optio X の改良版を作るなら、
  1. 撮像素子を大きいものにする。画素数はむしろ300万画素くらいに落ちてもかまわない。
  2. レンズをもう一段階高性能に(例えばF2.0固定焦点で32mmくらいとか、F2.4-4.0くらいで広角側は28mmくらいまでのばし、その代わり望遠側を諦める)
  3. レンズの搭載方向を90度変えて、全体の形状を見直す(厚くなって高さがなくなり、棒状に近い方向になれば操作性もホールド性も上がるのでは?)
  4. シーンセレクターではなく、ちゃんと、絞り優先モード、シャッター速度優先モードをつける
  5. マクロへの切り替えは一発でできるようにする
  6. 本体にもUSB端子をつける
こんなところでしょうかね。実現したら、すごいカメラになる。

しかし、現時点でも、Optio X に代わる現行商品はまったくないのだから、メモ代わりカメラとしてはこれを勧めるしかない。
ちゃんとした写真を取りたいならパナソニックの明るいレンズを搭載したモデル。メモ代わりの軽量モデルならOptio X 。
仕事や芸術クオリティを求めるならF828。
一眼レフが必要なら、Eos Kiss Digitalなどに35mm用の明るいレンズをつけて使う。
テレビでさかんに広告しているモデルのほとんどは、僕にはまったく魅力がない「こうすれば売れるということを学習してしまったメーカーが作る戦略新製品」にすぎない。
カメラは表現の手段としての道具であるはずだが、今売れているデジカメの大半は、神社の胡麻札みたいなものなのだろう。一家に一台、あれば安心。
よい道具を作るのか、たまたま話題になっているキャラクター商品を大量に売り抜けるのか。メーカーとしても、そのくらいの違いがありそうだ。


一つ前の日記へ一つ前の日記へ    目次へ     次の日記へ次の日記へ

★タヌパック音楽館★は こちら

『デジカメ写真は撮ったまま使うな! ガバッと撮ってサクッと直す』(岩波アクティブ新書)  ご購入はこちらから