2011/04/27の2

帰ってきたよ(3)

福島県内のテレビは、L字形に情報枠を出して放送している。首都圏の放送とはずいぶん違う。
奇しくも地上波の独自性が出た形。

午後、散歩がてら、ご近所さんたちを回ってみた。
ジョンの飼い主・けんちゃんの家は固く閉ざされている。
ここは要介護の老人を抱えて、東京の親戚の家に避難している。ふさこさんは介護の傍らの畑仕事が生き甲斐だっただけに、狭い場所で夫の介護だけになってしまった今の生活はさぞつらいことだろう。

川沿いの仲五桜は、昨夜はほとんど咲いていなかったが、今日の暖かさで一気に満開に近くなった。

昨夜戻ってきたときはほとんど咲いていなかったのに……


明日あたり満開か。いや、ほぼ満開と言ってもいいかな




正時さんちの前に車が停まっていたので覗いてみたら、なんと奥の佐藤清子さんと娘さんのふみこさんが一緒にいた。
今日は小野新町の眼科に行っていて、今、戻ってきたところだったとのこと。
清子さんは避難先の親戚宅で転んで腕を折っていた。地震では無事だったのに、東電のおかげであちこち避難先を回る羽目になり、余計な怪我までしてしまったのだなあ。まったく理不尽な怪我だ。
正時さんは一昨日戻ってきたという。
「パンツも替えられずに連れて行かれた」
とぼやいていた。他の人たちがみんなさっさと避難所を出て行く中、「ひと月もいたのは俺くらいだ」と笑っていた。

犬のご飯一袋を持って、ジョンがいるはずの義行さんちへ向かう


ジョンがすっとんできた


こちらはもともと飼われている血統書付きの猟犬2匹

一月前にジョンと一緒にいたハスキーっぽい犬の姿はなかった。
ジョンだけが図々しくまだ居候している。

留守だったので、犬のご飯だけ玄関に置いてきた。

三瓶新多郎さんもひとりで戻ってきていた。
息子さんは僕と同い年くらいで、クロネコのドライバーだが、双葉郡がサービスエリア外になったため、目下待機中らしい。そのまま川内村担当で復帰してくれるといいのだが。

徒歩で回れる範囲はそんな感じ。
3.11以前とあまり変わらない。少しだけ静かになったかな、という程度。県道を行く車もそこそこある。大型車が通らないけれど、地元の車やパトカーがたまに通る。

ご近所を一回りして、村の現状や周辺の状況について教えてもらった。
20km圏内は外国人窃盗団などが早い時期に組織的に入り、大型電器店など、金目の物がある店舗から順にごっそりと盗み出したらしい。
避難させたはいいが、警察は放射能を怖がって入らず、警戒しないものだから、プロの窃盗団は盗み放題だったという。手口も、ガラスを割って堂々と入るなど、極めて荒っぽい。
大型店が空になると、ターゲットは金のありそうな民家に移っていった。
一時帰宅するたびに家財がなくなっていると言う話が避難所で交わされていたとか。

プロの窃盗団にとっては20km圏指定は盗み放題のパラダイスが出現したのと同じだったわけだ。
富岡町はもうあらかた盗めるものは盗み出され尽くされたという。誇張されているとは思うが、嘘ではないだろう。村の中でも、テレビを盗まれたという家が2軒あった。かなり早い時期だ。こんな貧乏な村に泥棒に入るくらいだから、商店や裕福な家が多い富岡や双葉はさぞや、と、容易に想像できる。

そうした情報はメディアからは流れない。メディアも20km圏には入っていかないから知らないのだ。
さらには、窃盗団が殺到することを恐れて情報を隠したのだろう。取り締まるだけの力が今の警察にはないからだ。
自治体も、次の段階の対応を考えないと、住民の被害はどんどんひどくなる。避難先で健康を損ない、その間、留守宅では家財がごっそり盗まれている。まさに泣きっ面に蜂。


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