さて、原発が数十年解決しないまま、周辺地域はどうやって再興していけばいいのか。
具体的に予想してみる。
第一原発周辺は当面(最低でも5年、10年という期間)、立ち入り禁止区域として、居住や農耕を禁止される可能性が高い。
空中の放射線量は確実に減っていき、問題ない量になるが、土壌や地下水の汚染はそう簡単ではない。すでにあれだけの高濃度汚染水を敷地内にまき散らしてしまった以上、周辺の地下水が安全だと宣言できるはずはないからだ。
周辺地域の水源地はどうなっているのかと
調べてみた(双葉地方水道企業団)。
結果、こうだった↓
●水源の水質状況
当企業団の水源は、楢葉町・富岡町・大熊町については浅井戸水や深井戸、伏流水などで、近隣に汚染源が殆どないため、安全で安定した水質です。
広野町大船水源、木戸ダムについては、上流に汚染源もなく、河川水としては安定した水質が保たれています。また、大雨などの濁度上昇時にも適切な浄水処理が迅速に行われています。
●水源とその種類
広野町 大船水源 浅見川表流水
木戸川 木戸ダム放流水
楢葉町 中川原水源 伏流水・浅井戸
寺下水源 浅井戸
木戸川 木戸ダム放流水
富岡町 富岡第一水源 伏流水
富岡第二水源 浅井戸
富岡第三水源 浅井戸
茂手木水源 深井戸
木戸川 木戸ダム放流水
大熊町 大熊第一水源 浅井戸
大熊第二水源 浅井戸
大熊第三水源 浅井戸
木戸川 木戸ダム放流水
双葉町 木戸川 木戸ダム放流水
これを見て、「ああ、これはもうダメだ」と思わざるをえなかった。浅井戸、伏流水……。それも複数箇所から取水している。
ちなみに、水質検査は2011年1月までしか発表されておらず、水銀、鉛、ヒ素、カドミウムなどは検査していない。今後は当然、検査の重点はヨウ素やセシウム、プルトニウムといった放射性物質の検出に移っていくが、どこまで対応できるのだろうか。
これだけを見ても、ライフライン復旧は極めて困難であり、おそらく最低でも5km圏内は居住や農耕を禁止される「管理区域」に指定されるのではないか。
5km圏内となると、双葉町、大熊町は町の中心部が3km程度しか離れていないので、町がなくなってしまう可能性がある。
海岸沿いが津波でやられている上、第一原発周辺に立ち入れないとなれば、物理的に復旧が無理ということになる。
しかし、福島第一原発は今後数十年、管理を続けるために、今まで以上の作業員が必要だ。電気を一切作りださない原子炉6基の後片づけ、廃炉処理のために、気の遠くなるエネルギーと金と人力を注ぎ込まなければならない。そのための「原発雇用」は今まで以上になるから、作業員たちのベッドタウンが新たに必要となる。
その第一候補地は田村市都路町周辺だろう。国道288号線で第一原発と直結しており、都路町は20km圏のほんの少し外側。ここがダメなら、常葉町まで引っ込む(というか、郡山側に近づく)しかない。
富岡町はどうか。
ここは福島第二原発を抱える町だが、津波で町の中枢部がやられている。常磐線富岡駅は海に面しているため流されてしまった。原発のPRをしていた電力館も、その隣にあった大型スーパー、ヨークベニマルもやられた。
第二原発は正常に停止していることになっているが、作業員の証言では施設は内外ともにガタガタになっており、簡単には再稼働できない。無理にやろうとしても福島県が許可しない。ということは、廃炉も決定できず、このままの状態で稼働させず、何年間も冷却だけし続けることになる。
第一原発の後始末で精一杯で、とても第二原発を立て直す余裕などない。
稼働再開の作業は、当然のことながら広野の火力発電所が最優先になる。
広野が再稼働した後は、新しい火力発電所の建設に全力を投入するだろうから、第二原発を復活させるなどということは体力的、経済的にできない。
しかし、第二原発は発電に使えなくても、補修した上で管理し続けなければならず、第二原発での雇用がなくなるわけではない。建屋の強化、核燃料貯蔵プールの補修と改良、バックアップ電源の増設なども行われるはずで(そうでなければ困る)、ここも原発雇用は今までより増えるだろう。
その人たちのベッドタウンはどこになるのか……。
普通に考えれば、いわき側、広野周辺だ。広野は今も、第一原発、第二原発で作業をしている人たちの宿舎としてJヴィレッジを使っているので、このまま原発後始末基地として再整備されるだろう。
川内村にも原発作業員関連のベッドタウンになれという要請があるかもしれない。
そうなったとき、村は人口減、収入源で存亡の危機に陥るので、そうした申し出を断れないだろう。
それはそれとした上で、今度こそ自力で生きていける村にできるのかどうか、そこが問われている。
外から元気な熟年移住者を迎え入れ、「阿武隈発」のビジネスを展開するしか生き残る道はない。原発後始末雇用にぶら下がるだけの生き残りでは、ここで暮らす魅力がないからだ。
ここで暮らすことの魅力を感じられれば、放射能汚染くらいなんでもないよと言って集まってくる元気な熟年世代がいるはずだ。まさにフロンティアスピリッツ。