09/06/04の2

平伏沼 2009


平伏沼は驚くほど水がなかった


ヘドロが大きく露出している。この時期、こんなに干上がっている沼を見るのは初めてだ。冬季は水がすっかり干上がることもあるが、6月にこんなに水がないと、相当ピンチである。

卵塊は30個弱。去年のこの時期よりは多い。


これから2週間、雨がどの程度降るかが問題だろう。


去年はうまく溶けないまま干からびる卵塊がたくさん見られた


この石が水量のバロメータ。去年はすっぽり隠れていた


ところで、やすじいに会えると思っていたら、沼への入り口でもっと若い(といっても、僕より2歳上だが)管理人の男性に迎えられた。
今年から村に頼んでこの仕事をもらったという。6月7月の2か月、平伏沼のモリアオガエルが無事に産卵できるよう監視し、卵の数などを記録する仕事だ。
僕もカエルについては初心者だが、毎年、難しさを嫌と言うほど学ばされている。
彼は村の出身だが、長い間村を離れていてUターンし、ブドウの栽培に挑戦しているということだった。

この村で生きていくのは大変なことだ。
村を豊かにするための戦略について、僕はこの土地に来てからずっと、嫌われるのを承知で言い続けてきた。
地域の人から金を得るのではなく、外から金を得なければ強くなれない。環境を切り売りしない。生ものは難しい。隙間商品・サービスを見つけろ。大金を費やして引いたブロードバンドを活用せよ。補助金をあてにするな。
これから先の厳しい状況を考えれば、こうした戦略が自然と出てくる。
具体的な事業内容のアイデアもいくつか提示して、誰かやらないかとけしかけてもきた。
しかし、何をやるにしても、生活基盤を破壊されたらどうにもならない。巨大風車を山の上に並べるなどということを許したら最後、人が暮らせなくなり、過疎化どころか、見捨てられた土地へと一気に加速する。
そんな単純なことさえ理解しようとせず、目の前の金にすがりついていては、何も解決しないどころか、村が終わってしまうだろう。

平伏沼まで来てそんなことを考えさせられるのでは、救いがない。
滝根・小白井風力発電施設が今年の終わりに本当に稼働すれば、来年の今頃、平伏沼はどうなっているだろうか。
ちょっと重い気分のまま、沼を後にした。

家に帰って、夕方テレビを見ていたら、地元のテレビ局が平伏沼でモリアオガエルが産卵を始めたと報じていた。さっき会ったばかりのNさんも出てきた。テレビにとっては、桜前線と同じ「安全牌」ネタのつもりだろう。しかし、現実はまったく違う。
平伏沼を守るのは、簡単なことではない。きれいごとだけ並べていても、無理なのである。実際、過去に周辺の森林伐採で、沼消失の危機があった。それ以前には、沼から水があふれ、沢となって流れていたという。今後、その水量を取り戻すことは、まず難しい。それどころか、新手のビジネスで、こんな山奥までが侵されている。
貧すれば鈍する。人間は弱い。ちょっと考えれば分かることでも、経済的に追い込まれると、信じられないような結論を出したりする。そこで毅然と生きていけるかどうか。それが問われている。考えれば考えるほど怖い。

滝根小白井風力発電が稼働したら、来年どうなっているのか。低周波音で、モグラは異常行動を起こすことが知られている。台湾では400頭のヤギが風車によって殺されたという。カエルはどうなのか? 何も起きなければよいが、本当に、気がかりである。
同時に、自分も含めて、この地に住む人間たちが、まともな理性を保ったまま生きていけるのかどうか……。
こちらが兵糧攻めにあっても大根をかじって堪え忍ぶうちに、敵が億単位の金で首が回らなくなり自滅すればよい。……要するに、持久戦か……。



日本に巨大風車はいらない 風力発電事業という詐欺と暴力


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