いつも行くコンビニの若旦那から、「社長(父親)が趣味でやっているカラオケ小屋にあるBOSEのスピーカーが調子悪いので診てもらえないか」と言われ、見に行った。
BOSE802という、一般家庭用には普通はまず置かないPA用スピーカーを十数年前に購入してカラオケセットにつないでいるのだが、どう考えてもまともに低音が出ていないという。
すでに事前に聞いた話で、専用イコライザーをスピーカーとアンプの間に挟むなど、とんでもない接続をしているらしいことは分かっていたのだが、いざ見てみてびっくり。
なんだこれは??
ありとあらゆるところが「間違って」いる。
まず、専用イコライザーとアンプをつなぐケーブル(片方がXLRのバランス端子で片方はRCAピンのアンバランス)を自作している(ケーブルを切って、手で寄り合わせてつないでいる)のだが、なんと、ホットとコールド線を一緒にしている。つまりショートしたケーブルを作っているわけで、これでは音が出るわけがない。
そのショートしたケーブルをさらに接続ミスしていて、ただのダミーのような配線になっている。つないであるだけで、まったく信号が来ていない「飾り」になっているのだ。
さらには、スピーカーの接続も間違い。インピーダンス設定も間違い(接続機器を考えれば-10dBにすべきところを+4dBにしてある。これでは音量がガクンと落ちる)。予想以上にひどい結線ミスが何重にも重なっていて、頭が痛くなってきた。
う~~~ん……。
今月、オーディオの本が出る。『大人のための新オーディオ鑑賞術』(講談社ブルーバックス)というのだが↓、
これはそういう話とも違う。
弱電だからこうして笑い話になるが、電源配線とかでこんなでたらめをやったら、電気製品がことごとく壊れたり、家が燃えたりしかねない。
とりあえず、BOSE802本来の音が出るようにはしてみた。
時間があればもっと調整したいところだが、とにかく普通に音が出るようになっただけでも気持ちがスッキリした。これで、ここに集まるみなさんが今までより気持ちよく楽しめればいいのだが。
ちなみに、カラオケの音というものは、MIDI音源で、安く手っ取り早く作られている。通信カラオケは、100%MIDI(カラオケセットの中に入っている音源を鳴らしているだけ)である。
これらは、ハイファイオーディオやクオリティの高い演奏などとは違う世界のものだから、これ以上の音質を求めても意味がない。鳴らしているアンプもカラオケセットのアンプだし。だから、このシステムでは、BOSE本来のど~んとした迫力のある音が出ていればそれでOK。やっぱBOSEだね、という状態にできればいいのである。
しかしまあ、こういうことって、あちこちでかなりいっぱいあることなんだろうな、と思った。
趣味の世界にはありがち。
クルマも、お金をかけて変なアクセサリーパーツをつけまくり、走行性能を落としているカーマニアはたくさんいる。趣味というのは不思議な世界だ。で、その趣味の世界においては、理屈ではありえないような商品が生まれ、売れたりする。考えてみれば、1000万画素超のコンパクトデジカメなどは、そうした奇形商品かもしれない。あれは、素人の思いこみをメーカーが利用して、わざと変なモノを作ってしまった例だ。
なんであれ、商品が売れればメーカーは儲かる。経済というのは、実に難しい。