08/10/01

カシオFH20を買ってみた

高速連写、強力なブレ補整機能、スローモーション動画……といったうたい文句に惹かれて、カシオのEXLIM FH20というデジカメを買ってみた。
出たばかりで、購入価格は6万7000円ちょっと。デジタル一眼のボディより高い。
暗いところでぶれずに撮れるのなら、シャッター音を出せない室内などでの撮影用に……と思ったのだが、思惑は大きく外れてしまった。
上の写真は日陰での望遠撮影。
92(520)mm、F4.5、1/50秒、ISO800
ISOをオートにすると、この場面ではISO800に設定されていた(後でExifにて確認)。画像の荒れ方はこのくらい。
しかしまあ、暗い場所で520mm望遠で手ぶれしていないのは大したもの。手ぶれ補正機構のない少し前の高級機では無理。

高速連写を利用したブレ補整で撮ったもの↑
上の写真の一部を原寸でトリミングしたもの↓

高速連写で写した画像を合成して、通常の手ぶれ補正機構では直しきれないブレを補整するというモードがある。↑それを使ったところ。普通に撮ってもそんなにぶれない条件下だったから、あまり意味がなかった。しかも、この高速連写での合成による手ぶれ補正というのは、1枚撮るたびにカメラが1分近く止まってしまう。内部で合成・補整処理をしているためで、その間はまったく撮影が続けられない。相手が動いているときなどは使えない機能だ。夜の遠景を撮るといった限定的な状況でなら意味があるだろうが。
全般的に画質が粗く、色が大味なのがとても気になる。1/2.33型高速CMOSというのを使っていて、1000万画素だが、まず、1000万画素が余計。上級機のF1は、1/1.8型CMOSで、一回り大きいのに、600万画素に抑えている。結果、画質はF1のほうが確実にいいはずだ。このFH20に使われている1/2.33型CMOSというのは、他のカメラでは使われていないから、新開発したものだと思うのだが、それなら500万画素、あるいは400万画素程度に抑えて作っておけば、もっときれいな色味を実現できたのではないか?
安い機種は画質を無視して、売るために画素数を詰め込むという商法はいい加減にしてほしい。
α300+18-250mmと撮り比べてみた。↓

α300
160(240)mm、F8、1/320秒、露出補正-1/3


FH20
11.4(64)mm、F6.3、1/200秒



α300 250(375)mm(望遠端)


FH20 48(272)mm、F5.1
この焦点距離だともうフォーカス範囲外になってしまう


上の一部をトリミングして原寸表示してみる。

α300 原寸表示


FH20 原寸表示


まず、大きな問題が4つ。
1)望遠側では撮影可能距離が長くなり、マクロ撮影ができない
通常のAF時では、ワイド端で約40cm〜∞。マクロモードに切り替えて5〜50cm。これはワイド端の数値であり、望遠側だと、最低距離がどんどん長くなり、事実上マクロ撮影ができない。
しかも、望遠側での撮影可能距離が仕様表に出ていない。これは欠点隠しだろう。
上の比較写真で歴然と分かるが、気持ちよくマクロ撮影ができないのだ。
タムロンの18-250mmが、撮影モードの切り替えなく、自動的に強力な望遠マクロが使えることと比べると雲泥の差だ。

2)マクロモードへの切り替えがやりづらい
スイッチは側面に小さく並んだボタン。手探りで操作するのはまず無理。

3)露出補正がしづらい
露出補正をするには、十字キーでパラメータの並んだ画面を出して、そこから数段下にまで十字キーでスクロールさせ、さらに左右に十字キーでスライダーさせなくてはいけない。そんなことをしている間に、被写体は逃げてしまう。
しかも、この設定は電源OFFにすると消えてしまう。
この手のカメラは基本的に露出オーバー気味になっているので、デフォルトで-1/3くらいにしておきたいのだが、それができない。

4)オートブラケットができない
信じられないことに、これだけ高額なカメラにもかかわらず、オートブラケットができない。高速連写よりもオートブラケットのほうがはるかに重要なのに。

これでは写真の基本をまったく無視した設計と言わざるをえない。

次に、画質が気になったので、同サイズのCCD、同解像度(1000万画素)を持つ低価格のコンパクト機(Nikon S600)と比べてみた。


S600  7.3(41)mm、F3.2、1/500秒


FH20   11.4(64)mm、F6.3、1/200秒



S600  上の写真の一部を原寸表示


FH20  上の写真の一部を原寸表示


明るい場所での解像度はまあよいとして、色味が薄いのがどうしても気になる。
これなら、S600のマクロ撮影のほうがマシではないか?
若干、FH20のほうが焦点距離が長い分、背景がぼけるはずだが、ボケ方がイマイチ汚い。
あと、この色味は、ケータイ内蔵カメラの色味に似ている気がするのは私だけだろうか。これが「CMOSっぽい色味」なのか??
このCMOS、どこが作っているのか知らないが、いっそ300万画素くらいにまで落として作れば、かなり色味もきれいに出たのでは? 300万画素高速CMOSというコンセプトにすれば、かなり面白いカメラになったはず。高速連写のためにも、そのほうがよかったはずである。事実、F1ではそういう設計をしているのだから、FH20ではユーザーをなめて(1000万画素を謳わないと売れないと考えて)設計したとしか思えない。
F1の1/1.8型600万画素CMOSがどの程度のものなのかは知らないのだが、それよりも小さな高速CMOSを開発するのであれば、画素数をもっと落とせばいい。

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